《櫻井ジャーナル》

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2015.02.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ギリシャの庶民は自分たちを食い物にしてきた「国境なき巨大資本」、その代理人を務めている欧州委員会、IMF、欧州中央銀行に反旗を翻した。巨大資本がギリシャの支配層と手を組んで甘い汁を吸い、作り上げた「危機」の尻ぬぐいを「緊縮財政」という形で押しつけられた庶民の怒りが形となったということだ。

 言うまでもなく、イタリアやスペインなど、こうした支配グループに反発している国は少なくない。スペインでは大規模な抗議活動が行われたが、こうした動きはEU全域に広がる可能性がある。支配層の強欲が過ぎたということだ。スロバキア、ハンガリー、オーストリアなどもアメリカへの反発を強めている。

 実は、これまでもEUのエリート層内でも強欲な政策を懸念する人はいた。例えば IMFの専務理事だったドミニク・ストロス-カーン 。2011年4月、ブルッキングス研究所で次のように主張していた。

 失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねず、不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきであり、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットで市場が主導する不平等を和らげる。健康や教育への投資は決定的で、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だ。

 ストロス-カーンがレイプ容疑で逮捕されたのはその翌月。ブルッキングス研究所での発言で怒ったアメリカの支配層が仕組んだ事件なのかどうかは不明だが、そう思われても仕方がないタイミングだった。

 アメリカはEUに強者総取りの「新自由主義」を広めるだけでなく、ロシアを制圧してボリス・エリツィン時代のように略奪しようとしている。その重要なステップが昨年2月にネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を使い、ウクライナの首都キエフで行ったクーデター。それに反発する東部や南部の住民を殲滅する作戦を展開しているが、戦況はキエフ側にとって不利な展開のようだ。住民を敵に回しているうえ、キエフ軍の将兵も戦意を喪失していることが大きな原因なのだろう。

 アメリカはロシアに対し、「制裁」という名目で経済戦争を仕掛けているが、これで最もダメージを受けているのはEU。アメリカにとってEUは属国だが、潜在的なライバルでもある。EUの弱体化は彼らにとって重要な目的のひとつ。ロシアとEUを戦わせ、双方を疲弊させようとしている。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相のようにドイツ嫌いでアメリカに従属している人物も少なくないが、フランスのフランソワ・オランド大統領は昨年12月6日にロシアを突然訪問し、モスクワの空港ビルで会談している。アメリカ政府が「偽旗作戦」を計画しているという噂が流れ始めたのはその頃だった。年明け後、オランド大統領は西側のロシアに対する「制裁」を辞めるべきだとも語っている。フランスの週刊紙、シャルリー・エブドが襲撃されたのは1月7日のことだった。



 1月29日、 アメリカ上院の外交委員会でジョン・マケイン委員長は反戦活動のグループのメンバーに対し、「黙らないと逮捕させるぞ」と威嚇したうえ、「ここから出て行け、下層のカス」と言い放った 。これは彼だけでなく、支配層の中に広まっている考え方だろう。その日、委員会にはヘンリー・キッシンジャーが呼ばれていた。

 新自由主義が実際の政策として導入されたのは、軍事クーデター後のチリ。1973年9月11日のことだ。このクーデタを裏で操っていたのが国家安全保障担当補佐官だったキッシンジャーだ。キッシンジャーの意向に基づき、CIAの支援を受けてクーデターを実行したのはオーグスト・ピノチェト。

 クーデターでサルバドール・アジェンデは死亡、その後、アメリカやチリの巨大資本にとって邪魔だと見なされた約2万人が殺されたと言われている。クーデター前、アメリカはSOAでチリ軍の幹部に対し、反乱鎮圧技術、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などを訓練したほか、チリに教官を派遣して軍隊を反コミュニストの武装集団に作り替えていた。

 クーデター後、チリでは国有企業の私有化が推進され、輸入も自由化された。その手先として動いたのがアメリカで教育を受けたチリのエコのミスト。その師匠にあたる人物がシカゴ大学のミルトン・フリードマンだ。このフリードマンと同じようにシカゴ大学の教授だったジョージ・シュルツを1969年に労働長官として押し込んだのもフリードマンだという。その前には後の国防長官、ドナルド・ラムズフェルドがシカゴ大学でセミナーに参加してフリードマンに影響を受けたとされている。

 新自由主義とは「レッセ・フェール(なすに任せよ)」を復活させたような「理論」。その復活ではフリードマンとフリードリッヒ・ハイエクが重要な役割を演じたようだが、そのハイエクと親しかったのがイギリスのマーガレット・サッチャー。そしてイギリスにも新自由主義が導入され、世界へ蔓延していく。サッチャーの政策でイギリス社会は破壊されたが、北海油田でその影響は見えにくくなった。

 その北海油田は生産量が減少、原油価格の急落でイギリスは厳しい状況。イギリスだけでなく、アメリカ、EU、日本など西側では社会の腐食が進み、その腐臭に耐えられなくなって立ち上がったのがギリシャ。そのギリシャに続く国が出てきそうだ。以前、グローバル化に反対する動きが強まったときは「9/11」で勢いを失ったが、今回はどうなるだろうか?





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最終更新日  2015.02.01 06:19:42


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