反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしているとアメリカの軍事情報機関DIAは2012年8月に報告
この報告書が作成される3カ月前、シリアのホムスで住民が虐殺され、西側の政府やメディアはシリア政府側が実行したと宣伝していたが、すぐに嘘だということが発覚する。現地を調査したひとり、 東方カトリックの修道院長は反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵が虐殺したと報告
、 ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も
、キリスト教徒やスンニ派の国会議員の家族が犠牲になっていると伝えた。
修道院長の報告内容はローマ教皇庁の通信社が伝えたているが、その中で修道院長は次のように語っている:
「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は、地上の真実と全く違っている。」と修道院長は主張、キリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムは外国からの干渉が事態を悪化させていると批判している。
つまり、シリアでの戦闘を「内戦」と表現することは間違いであり、プロパガンダ。シリア軍は外部から侵略してきたサラフ主義者、ムスリム同胞団、アル・カイダ系戦闘員と戦っているのである。だからこそ、シリア国民からアサドは支持されている。
シリアで活動しているアル・カイダ系武装集団はアル・ヌスラだと伝えられていたが、DIAによると、それはAQIがシリアで活動するときに使う名称にすぎない。AQIは2004年に組織され、06年にISIが編成された際の中核になった。ISIは現在、IS(ISISやダーイシュなどとも表記)と呼ばれている。ISはアル・カイダ系武装集団の中から生まれたということ。そうした反シリア政府軍を支えてきたのは、アメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO諸国、イスラエル、そしてサウジアラビアやカタールのペルシャ湾岸産油国だ。
その中でも中心的な役割を果たしているのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国。1979年7月にアメリカ政府はズビグネフ・ブレジンスキーのプランに従ってアフガニスタンで秘密工作を始めているが、それ以来の同盟国だ。なお、ソ連の機甲部隊がアフガニスタンへ入ったのは1979年12月。
2007年には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌に興味深い記事を書いている。 アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作
を始めたというのだ。
この記事をWikiLeaksが公表した文書も裏付けている。その文書によると、2006年にアメリカ政府はサウジアラビアやエジプトと手を組み、宗派対立を煽ってシリアを不安定化させる工作を始めたというのだ。そうした工作の延長線上に2011年3月の戦闘はある。
イスラエル政府はシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すためならアル・カイダ系武装集団と手を組むと公言している。例えば、 ベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近として知られるマイケル・オーレンは駐米イスラエル大使時代の2013年9月、シリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語った
。
ISやアル・ヌスラのような戦闘集団がアメリカなど好戦派の傭兵にすぎないことは公然の秘密。アメリカが主導した国々がISに対すると称してシリア領空を繰り返し侵犯し、攻撃を繰り返してきたが、シリアの施設を破壊したり民間人を殺すだけで、ISはダメージを受けてこなかった。それどころか、アメリカが「穏健派」に提供した武器、弾薬、そして小型トラックなどがISへ流れている。内陸部では「誤投下」も繰り返されてきた。
その象徴がトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」。ISの戦闘員がパレードに使ったその小型トラックはアメリカの国務省がシリアの反政府勢力へ提供した43台の一部だという。そのせいではないだろうが、パレードをアメリカ軍は攻撃しなかった。

アメリカの国務省が提供したトヨタの小型トラックがISへ
ところが、9月30日からロシア軍がISやアル・ヌスラなどを空爆、司令部や武器庫などを破壊し、少なからぬ戦闘員が死傷、あるいは隣国へ逃亡した。ネオコンのデービッド・ペトレアス陸軍大将は「穏健派アル・カイダ」への支援を主張、ジョン・マケイン上院議員はそうした勢力へ地対空ミサイルを供給してロシア軍機を撃墜させるべきだと語り、ヒラリー・クリントンは飛行禁止空域の設定を求め、ズビグネフ・ブレジンスキーはロシア軍の武装解除、つまりロシア軍を攻撃しろと言っている。そうした中、アメリカ軍は反シリア政府軍に対する物資の提供を強化するらしい。ロシア軍に破壊された一部を補充しようということだろう。
で、アメリカ政府は誰を支援するつもりなのだろうか?
DIAは反シリア政府軍の主力をサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)だとしていた。最近、アメリカ政府は大金を掛けて10名未満の戦闘員を育てたらしいが、そのグループがISと戦えるわけがなく、武器を携えて「投降」するのが関の山だろう。
アメリカは自らが「テロ」を実行し、「テロリスト」を支援する国。「民主主義を押しつけている」のではなく、民主主義を破壊してきた。そのアメリカが展開している軍事侵略を実行する戦争マシーンへ日本を組み込んだのが安倍晋三政権であり、その手助けをしてきたのがマスコミだ。かつて日本のマスコミは「大東亜共栄圏」という幻影を宣伝、軍事侵略を後押ししたが、同じようなことをまた繰り返している。