《櫻井ジャーナル》

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2016.04.04
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は訪問先のアメリカでも言論を暴力的に押さえ込もうとした

 今回の訪米でエルドアンはバラク・オバマ大統領と差しでの公式会談を申し入れていたのだが、これは拒否されていた。その一因は エルドアン政権による露骨な言論弾圧 にあるだろう。勿論、アメリカでも有力メディアは支配層にコントロールされ、プロパガンダ機関以外の何ものでもないが、報道内容が気に入らないからといって編集者を露骨に逮捕したり、新聞社を政府が乗っ取ったりはしない。巨大資本が会社を乗っ取り、会社を介して気骨あるジャーナリストを追放するだけ。逮捕するにしても別件。たまには変死という形で排除されることもあるが。

 2011年3月にシリアで戦闘が始まったが、その裏で暗躍していたのはアメリカをはじめとする西側諸国、サウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエル。当初からトルコのインシルリク空軍基地は侵略軍の拠点で、アメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員が戦闘員を軍事訓練していると伝えられている。目的はバシャール・アル・アサド体制の打倒だ。

 2011年2月にはリビアでも体制転覆を目指す戦闘が始まり、10月にはムアンマル・アル・カダフィが惨殺されている。この侵略はNATOから空爆の支援を受けた アル・カイダ系のLIFG を中心とする勢力によって実行され、その後、戦闘員はシリアなどへ移動していった。 移動の拠点になったのはベンガジにあったCIAの施設 で、アメリカの国務省は黙認、その際に マークを消したNATOの輸送機 が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられている。

クリストファー・スティーブンス大使 も殺された。スティーブンスは戦闘が始まってから2カ月後の2011年4月に特使としてリビアへ入り、11月に一旦リビアを離れ、翌年の5月には大使として戻っていた。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていた。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、 アメリカのオバマ政権とトルコのエルドアン政権は2012年のはじめにアサド政権を打倒するための工作に関して秘密合意 に達した。トルコ、サウジアラビア、カタールが資金を提供、アメリカのCIAがイギリスの対外情報機関MI6の助けを借りてリビアからシリアへ武器/兵器を送ることになったという。この国々が支援したのがアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)だ。

 ハーシュは 2007年3月5日付けのニューヨーカー誌 に、アメリカがサウジアラビアやイスラエルと共同でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したと書いている。1991年に国防次官だった ポール・ウォルフォウィッツは、シリア、イラン、イラクを殲滅すると語っていた が、そのうちイラクは2003年にアメリカ主導の連合軍が先制攻撃して破壊済み。

 残されたシリアとイランにレバノンが加わった形だが、 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると 、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されて間もなく、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺ではイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランを攻撃する計画を立てていたと語っている。リビア、ソマリア、スーダンというアフリカの国が残されていると言うことだ。

 1991年の段階でネオコン/シオニストはイラク、シリア、イランを殲滅しようと考えていたが、2000年にカタールがシリア政権の打倒を目指し始める。サウジアラビア、ヨルダン、シリアとトルコを経由するパイプラインの建設を計画したのだが、シリアのアサド政権が拒否したのだ。この計画はアメリカやサウジアラビアとも密接に結びついている。そして、こうした国々にとって都合良く、2001年9月11日の出来事が起こる。

 この「9/11」が引き起こされた直後、「アル・カイダ」は攻撃の実行者だとアメリカ政府に断定され、「テロリスト」の象徴になるのだが、いつの間にかリビアやシリアで体制転覆を目指す「自由の戦士」になってしまう。こうした露骨なタグの付け替えを西側ではメディアだけでなく「リベラル派」や「革新勢力」も気にしていないようだ。

 アメリカ軍の情報機関 DIAが2012年8月に作成された報告書

 こうした構図を考えると、トルコとイスラエルは同盟関係にある。ところが 2009年1月にエルドアン大統領はスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムでイスラエルのシモン・ペレス大統領を批判 した。ガザで虐殺していると言ったのだ。2010年5月にはガザへの支援物資を運んでいた船団をイスラエル海軍の特殊部隊「シャエテット13」が襲撃、船団の中心的な存在だったトルコの「マビ・マルマラ号」では9名が殺され、多くの負傷者が出ている。一連の出来事でエルドアンはトルコで人気を博し、権力を掌握するのだが、背景を考えると人心を操作するための茶番だった可能性が高い。

 そして昨年12月、イスラエルとの敵対関係を演出する必要がなくなったエルドアン政権はマビ・マルマラ号に絡む三文芝居に幕を下ろす。 トルコの外務次官がイスラエルの情報機関モサドの長官や首相の側近と会談 、マビ・マルマラ号をめぐる対立を終わりにする方向へ動き始めたというが、実際の関係はそれほど悪くなかっただろう。何しろシリア侵略の同盟国で、両国ともアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを支援してきた。アメリカ支配層には、この両国やサウジアラビアなどとの関係を見直すべきだと考える勢力が力を持ち始めているように見える。





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最終更新日  2016.04.05 04:33:19


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