《櫻井ジャーナル》

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

サイド自由欄

寄付/カンパのお願い

巣鴨信用金庫
店番号:002(大塚支店)
預金種目:普通
口座番号:0002105
口座名:櫻井春彦

2017.07.31
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
ロシア、イラン、朝鮮に対する「制裁」法案を下院は7月25日に419対3で、上院は27日に98対2で可決、ドナルド・トランプ大統領は署名する意向だと伝えられている。ロシアとイランはアメリカの支配層にとって邪魔な存在。朝鮮は東アジアの軍事的な緊張を高めるため、アメリカにとって欠かすことのできない国であり、対象国に含めておく必要がある。本来なら中国も入れたいのだろうが、現在の経済状況を考えるとアメリカ自身を制裁しなければならなくなるので無理だ。法案が成立した場合、ロシアは報復を考えているようだ。

この「制裁」でロシアより厳しい状況に陥るのはEU。ドイツやフランスなどから反発の声が挙がっている。2014年にフランスのBNP-パリバはアメリカの制裁対象国との取り引きでドルを使ったとして90億ドル近い課徴金を払わされたが、この屈服は批判されていた。フランスの法体系の下で、この取り引きは合法だったのである。

トランプが反対したTPP(環太平洋連携協定)はISDS(国家投資家紛争処理)条項によって参加国の政策が「国境なき巨大資本」にとって利益になるかどうかで決められる。EUとアメリカで進められてきたTTIP(環大西洋貿易投資協定)も同じこと。この2協定とTiSA(新サービス貿易協定)によってアメリカの巨大資本は自分たちが国のような公的権力を上回る力を持とうとしてきた。つまり、フランクリン・ルーズベルトが言うところのファシズムだ。

今回、EUが反発している最大の理由はバルチック海とドイツをつなぐ天然ガスのパイプライン、ノード・ストリーム2の建設だろう。ウクライナ、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャはアメリカに隷属、ロシアとEUとをつなぐパイプラインの建設を止めている。残されたルートは北回りのノード・ストリーム、そしてノード・ストリーム2。アメリカはロシアに対する制裁という形でこれを潰しにかかっている。



アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟を中心としたシリア侵略が思惑通りに進まず、これまで3国同盟に協力していたカタールやトルコは離反する動きを見せている。カタールとイランが共同で生産した天然ガスをシリアとトルコを経由してEUへ運ぶというプランが浮上しているが、これも3国同盟は潰しにかかっている。

3国同盟側はイスラエル、キプロス島、クレタ島、ギリシャ、イタリアというルートを考えているとも言われているが、バラク・オバマ政権からアメリカはシェール・ガス/オイルを戦略の中心に置いてきた。これをポーランドへ運び、そこから旧ソ連圏の国々へというプランなのだが、これには大きな問題がある。

まず、原油価格が大幅に下落しているときから言われていたが、シェール・ガスやオイルは生産コストが高く、必然的に販売価格は高くなる。しかも、生産を持続できるのは4、5年程度で、7、8年経つと8割程度下落すると言われている。つまり、シェール・ガスやオイルに頼るわけにはいかないのだ。EUも中国もこれはわかっているはず。しかも、この採掘方法は地下水を汚染するが、そうなると地下水に頼っているアメリカの農業は壊滅的な打撃を受ける。アメリカに食糧を頼っている国にとっては深刻な事態で、早めに手を打つ必要がある。

もしアメリカの命令に従い、ロシアやイランとの関係を断ったなら、EUはエネルギー源をサウジアラビアとイスラエルに頼らざるをえなくなる。これは受け入れられないはずで、今回のアメリカ議会による制裁法案の可決はEUをロシアへ追いやることになりかねない。中国とロシアを戦略的なパートナーにしてしまったのと同じ間違いをアメリカの支配層は犯している。

こうした間違いを軍事力で解決しようとしているのがネオコンを含む好戦派だが、その考え方も成功しないだろう。その先にあるのは全面核戦争である。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2017.07.31 07:01:22


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: