アメリカ政府を後ろ盾とするフアン・グアイドは何かが23日に起こると予告していた。その23日にイギリスの富豪が主催するコンサートが開かれ、グアイド支持勢力は参加者を20万人とも30万人とも主張している。が、その様子を撮影した写真をみると1万5000人ほどにすぎない。
似たような手口がウクライナのクーデターでも使われた。そのときは2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で抗議活動が始まる。その演出はEUへの憧れを刺激するカーニバル的なものだった。その演出が功を奏したのか、12月に入ると50万人が集まったと言われている。その再現をベネズエラで狙ったのかもしれないが、成功しなかった。
コンサートが開かれた23日には「人道的援助物資」を積んだUSAID、つまりCIAのトラックがコロンビア領内に出現、現在は使われていない橋を渡ってベネズエラ領へ侵入しようとする。不法入国を目論んだわけだ。こうした「援助」を容認した場合、プロパガンダに利用されるだけでなく、CIAの要員が侵入してくるとベネズエラ政府側が考えても不思議ではない。
そうした物資の持ち込みを阻止するためにベネズエラは治安部隊を配置、それに対してグアイド派の一団は石と火炎瓶を投げ始める。その直後にトラックが火に包まれた。その原因はベネズエラ側にあるとグアイド派のメディアは主張、西側の有力メディアは同調する。催涙弾が原因だというのだが、通常の催涙弾で火がつくというような話は聞いたことがない。
ウクライナでは人びとが集まったところでネオ・ナチが登場し、棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を警官隊に投げつけるだけでなく、ピストルやライフルを持ち出す。
2014年2月7日にロシアのソチで冬季オリンピックが開幕、それに合わせて抗議活動は暴力的になり、街は人血の海に化した。2月中旬になると広場で狙撃が始まる。
西側の政府や有力メディアは狙撃の責任はビクトル・ヤヌコビッチ政権側にあると主張したが、25日にキエフ入りして調査した エストニアのウルマス・パエト外相はその翌日、EUの外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)だったイギリス人のキャサリン・アシュトンへ電話で次のように報告 している:「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新しい連合体(クーデター派)が調査したがらないほど本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合体(反ヤヌコビッチ派)の誰かだというきわめて強い理解がある。」
当時、広場で抗議活動を指揮していたのはネオ・ナチのアンドリー・パルビー。ヤヌコビッチ政権でSBU(ウクライナ治安局)の長官を務めていたアレクサンドル・ヤキメンコはそのパルビーが狙撃の責任者だと言っていた。
その後、この狙撃に関するテレビ番組が2017年11月にイタリアで放送される。その中に自分たちが狙撃したするジョージア人3名が登場、警官隊と抗議活動参加者、双方を手当たり次第に撃つよう命じられたとしている。この3名は狙撃者グループの一部で、治安部隊のメンバーとしてジョージアから送り込まれたいう。( その1 、 その2 )この3人も狙撃の指揮者はアンドレイ・パルビーだと語っていた。
ソチのオリンピックが閉幕する前日、2月22日にヤヌコビッチ大統領は憲法を無視する形で排除された。このクーデターで中心的な役割を果たしたのはネオコンでヒラリー・クリントンと親しいというビクトリア・ヌランド国務次官補だ。
ベネズエラ軍の掌握に失敗したアメリカ政府は暴徒を利用したウクライナ、あるいは武装勢力を侵入させてリビアやシリアの再現を狙うかもしれない。
ニコラス・マドゥロ政権を倒し、アメリカ支配層が傀儡体制を復活させたたがっている理由は石油にあるとジョン・ボルトンも口にしているが、その石油はグアヤナ・エセキバという地域の地下に眠っているという。この油田は2015年に発見されたのだが、ここはベネズエラとガイアナが自国領だと主張している場所。石油を利権を獲得し、大儲けしたい欧米の石油資本は自分たちの言いなりになる人物、たとえばグアイドを大統領にしたいのだろうとジャーナリストのF・ウィリアム・イングダールは指摘している。