《櫻井ジャーナル》

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2019.07.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 アメリカのドナルド・トランプ政権は板門店で朝鮮の金正恩労働党委員長と会談する一方、イランに対する経済戦争は続けている。朝鮮もイランと同じようにアメリカとの交渉に意味はないとしていた。トランプ大統領は譲歩するようなメッセージを伝えたのかもしれないが、所詮は形式的なものにすぎないだろう。トランプ政権に限らず、アメリカが交渉したがる理由は時間稼ぎが必要なときだ。

 1979年にイスラム革命で倒されたイランのパーレビ朝はイギリス、アメリカ、そしてイスラエルの強い影響下にあった。そのパーレビ朝は陸軍の将校だったレザー・ハーンが1921年にテヘランを占領し、25年にカージャール朝を廃してから始まる。

 その背景には油田の発見があった。1909年にイギリスは石油利権を支配するためにAPOC(アングロ・ペルシャン石油)を創設している。オスマン帝国を解体して中東を支配するため、イギリスは第1次世界大戦の最中、1916年5月にフランスとサイクス・ピコ協定を結んでいる。

 協定が結ばれた翌月、イギリス外務省アラブ局はアラブ人を扇動して反乱を起こす。その部署にトーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」も所属していた。その際、イギリスの工作員がワッハーブ派のイブン・サウドに接触。この人物は後にサウジアラビア国王を名乗ることになる。1927年にサウドは国を作り上げ、32年から国名はサウジアラビアになった。一方、APOCは1935年に社名をAIOC(アングロ・イラニアン石油)へ変更した。

 第2次世界大戦が始まるとレザー・ハーンは親ドイツの姿勢を示し、イギリスとソ連は1941年8月にイランへ軍事侵攻。国王は逮捕されて国外追放、そして退位させられた。替わって即位したのが息子のムハマンド・レザーだ。

 イランはイギリスの植民地になり、ムハマンド・レザーを介して支配するようになるのだが、大戦後に民主化の機運が高まり、選挙でムハマド・モサデクが首相に選ばれた。

 議会はAIOCの国有化を決めるが、イランの石油利権を手放せないイギリスの支配層はアメリカの力を借りてクーデターを実行、1953年8月にモサデクを排除することに成功、ムハマンド・レザーを国王とする体制が復活する。この体制は1979年1月に国王が国を脱出するまで続く。

 当初、アメリカやイスラエルは革命政権の一部と結んで支配を目論むが、失敗。1970年代にアメリカで台頭した「イスラエル第一」のネオコンは80年代にイラクのサダム・フセイン体制を倒し、シリアとイランを分断、最終的にイランを制圧するというプランを描いた。

 このプランはフセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤と認識していたアメリカの一部支配層とネオコンを対立させることになり、イラン・コントラ事件などスキャンダルの発覚につながる。

 1991年12月にソ連が消滅する頃になるとネオコンの力が相対的に強くなり、92年2月にはネオコンの中核グループに属すポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)らは国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成する。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。

 このドクトリンはアメリカが唯一の超大国になり、誰もアメリカの軍事行動に刃向かえなくなったという前提で描かれている。国連も無視、単独で行動できるという考えだが、そうした方針に反する考え方をしていた細川護熙内閣は1994年に潰された。その翌年にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」で日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれることになる。

 ところが、ウォルフォウィッツ・ドクトリンの前提条件が21世紀に入って崩壊する。ウラジミル・プーチンがロシアを曲がりなりにも再独立に成功させてしまったのだ。そこでネオコンはロシアを再度、属国化しようとする。それに対し、ベンヤミン・ネタニヤフのようなウラジミール・ジャボチンスキーの流れにある人びとは大イスラエルの実現を優先、イランの体制転覆をまず実行しようとしている。

 もっとも、ネオコンにとってもイランの現体制は倒すべき相手。ロシア打倒を優先するべきだと考えているだけだ。(つづく)






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最終更新日  2019.07.02 15:01:47


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