シリアの地中海側、ラタキアにあるロシア軍のフメイミム空軍基地をアル・カイダ系武装グループが非武装地帯からロケット弾で攻撃、基地には届かなかったものの、周辺の住宅に被害が出たようだ。こうした武装勢力は戦闘を漸減させるために設定された地域から撤退しないと宣言、それに対して政府軍とロシア軍は停戦合意に違反する行為が続くなら攻撃を再開するとしている。
現在、シリア政府軍と戦っている部隊は当初、統一されていた。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟、イギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビ、アメリカ、イギリス、フランスと軍事的に結びついているカタール、オスマン帝国の復活を妄想していたトルコなどがシリア侵略に参加、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とする戦闘員が傭兵として投入されてきた。
2011年3月に侵略を始めてから傭兵部隊はアメリカ/NATOの偵察衛星や哨戒機からの情報で政府軍の動きを把握、そうした情報を持たない政府軍を劣勢に立っていた。そうした情況を撃劇に変化させたのが2015年9月のロシア軍介入。シリア政府の要請に基づくものだ。戦闘の過程でロシア軍の強さを明らかにすることにもなった。
その結果、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)の支配地域は急速に縮小、その過程でトルコはロシアへ接近する。カタールも侵略勢力と一線を画している。
現在、傭兵部隊がいるのはシリア西部のイドリブ、シリアのダマスカスとイラクのバグダッドを結ぶ幹線の途中にある要衝のアル・タンフ。ここにはアメリカ軍が基地を勝手に建設、イギリス軍の特殊部隊も駐留し、傭兵の訓練も行われていると伝えられている。
ロシア軍が介入するまでダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が支配していたユーフラテス川の北側の地域はアメリカ軍がクルド軍を使って占領している。トルコがアメリカから離れた最大の理由は戦争が長引いてトルコ経済が苦境に陥ったことにあるが、アメリカがクルドと手を組んだことも理由のひとつだ。アメリカ軍はデリゾールいを含むユーフラテス川沿いの地帯を死守する姿勢を見せているが、その理由は油田にある。
侵略勢力とは傭兵の雇い主でもあり、雇い主の分裂は傭兵部隊の分裂につながった。イドリブにはトルコとの関係の強い戦闘集団がいるのだが、撤退する様子は見せていない。クルド軍との戦闘を想定しているのかもしれないが、情況によってはイドリブに対する本格的な攻撃が始まるかもしれない。
一方、クルド側にもシリア政府との話し合いを進めている勢力もあると言われ、イラクと同じようにクルドがシリア政府軍と手を組む可能性もある。