トルコ軍がシリアとの国境近くに集まり、クルドに支配されている地域への攻撃を準備している
トルコはシリアの北部からクルド勢力を一掃しようとしてきた。そのクルドをジハード傭兵に替わる手先としてアメリカが選んだことからトルコとアメリカとの関係は悪化、トルコをロシアへ追いやることになっている。
アメリカをはじめとする外国勢力がシリアに対する侵略戦争を始めたのは、準備期間を除くと、2011年3月。その外国勢力とはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟、フランスとイギリスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、オスマントルコの復活を目論んでいたと言われるトルコなど。
戦争の長期化で矛盾が生じ、トルコとカタールは離脱。トルコの場合、経済的に結びつきの強かったロシアとシリアを敵にしたことから必然的に経済が破綻、しかもトルコが敵視するクルドをアメリカが手先にしたこともトルコを侵略勢力から離脱させる要因になった。
アメリカがクルドを手先にした理由は2015年9月末からシリア政府の要請で軍事介入したことにある。アメリカをはじめとする外国勢力が送り込んだサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)のようなジハード傭兵を敗走させた。そこでアメリカはクルドと手を組まざるをえなくなった。
アメリカとトルコは8月、シリア北部に「平和回廊」を作ることで合意、シリア人を帰還させることになったのだが、後にアメリカとトルコによる合同パトロールが実現不可能だとトルコ政府は判断、この合意は壊れたようだ。アメリカはシリア侵略の柱に据えているクルドを守ろうとしているだけだとトルコ側は理解したわけだ。
こうした動きに対し、シリア政府はアメリカだけでなくトルコの動きも批判してきた。シリアはシリア人のものであり、クルドはシリア人だという立場だ。クルド勢力の中には、そうしたシリア政府と話し合っている人たちもいると伝えられている。
ジョージ・W・ブッシュが大統領だった2003年3月、アメリカはイラクに対する先制攻撃で自国の軍隊を前面に出すが、戦争は泥沼化して失敗。バラク・オバマ政権はジハード傭兵を使った侵略に切り替えたものの、これもロシアが登場して失敗した。その間にイスラエルの影響力が低下、サウジアラビア王室はアメリカの傭兵会社に頼らざるをえなくなりそうだ。頭脳を使わず、軍事力で自分たちの妄想を実現しようとしたネオコンは、アメリカを厳しい状況に陥らせてしまった。