《櫻井ジャーナル》

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2021.02.14
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 有力メディアやシリコンバレーの巨大ハイテク企業による情報操作を「プロジェクト・ベリタス」は明らかにしてきたが、ツイッターはその団体、そして創設者のジェームズ・オキーフが持っているアカウントを閉鎖した。他人の個人情報を明らかにしたからだという。それに対し、それならば有力メディアのアカウントも閉鎖しなければならないと具体的にオキーフに反撃されている。

 ベリタスは有力メディアの偏向を批判したことでシリコンバレーの企業に嫌われているが、アメリカの戦争犯罪や権力者たちの不正行為を明らかにしたウィキリークスの場合、創設者で象徴的な存在でもあるジュリアン・アッサンジが逮捕されている。ジョー・バイデン大統領はそのアッサンジの引き渡しを求めている。

 イギリスで引き渡しの法的な手続きを進めていた​ 担当判事のバネッサ・バラツァー ​は、権力者にとって都合の悪い情報を伝えることは重罪だというアメリカ側の主張を認めた。その上でアッサンジの健康状態が悪いことや自殺の可能性を理由にして引き渡しを認めなかった。引き渡しによるダメージを回避しつつ、内部告発を牽制するための判決なのだろう。これはジャーナリズムに対する挑戦であり、言論統制を進めるという宣言だと思われても仕方がない。

 ツイッターから問題にされたプロジェクト・ベリタスのビデオには、このプロジェクトのクリスチャン・ハートソックがフェイスブックのガイ・ローゼンにインタビューする様子が映されていた。場所はローゼンの自宅の前だと見られている。ヘイト・スピーチや暴力的な文脈である可能性がある発言を凍結できるシステムをフェイスブックは持っているとする情報についてハートソックは質問したのだが、ローゼンは何も答えずに家の中へ入ったという。ちなみに、フェイスブックが所有するインスタグラムは、ワクチンの危険性を訴えているロバート・ケネディ・ジュニアのアカウントを消している。

 インターネットの検閲システムには「シャドー・バンニング」と呼ばれる仕組みがあり、支配層にとって都合の悪い情報をインターネット上から発信者であるユーザーに気づかれないように消し去っているという。ツイッターでもそうした検閲が行われているとされている。

 ツイッターはドナルド・トランプ米大統領のアカウントを今年1月6日に閉鎖、1月12日から「QAnon」に関係していると見なされた7万以上のアカウントの使用を停止した。こうした検閲の動きはフェイスブック、ユーチューブ、グーグルといったシリコンバレーの巨大企業全般で見られる。

 その間、1月8日にツイッターCEOのジャック・ドーシーは多くのアカウントを長期にわたって使えなくすると内輪で語っている。その様子を内部の人間が秘密裏に撮影、それをジェームズ・オキーフのプロジェクト・ベリタスが公開した。

 西側の有力メディアがCIAのコントロール下にあることは指摘されてきた。例えば、「ワシントン・ポスト紙」の記者としてウォーターゲート事件を取材、リチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込む一因を作ったカール・バーンスタインは1977年に「CIAとメディア」という記事を「ローリング・ストーン誌」に書いている。その直前にバーンスタインはワシントン・ポスト紙を辞めているが、辞めなければかけなかった記事だとも言える。

 その記事によると、それまでの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、そのうち200名から250名が記者や編集者など現場のジャーナリスト。残りは出版社、業界向け出版業者、ニューズレターで働いていた。また1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 またデボラ・デイビスによると、情報をコントロールするために情報機関は「モッキンバード」というプロジェクトを実行していたという。そのプロジェクトを指揮していたのは4人で、第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムである。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)

 2014年2月にCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出した「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙」の元編集者、​ ウド・ウルフコテによると ​、世界各国のジャーナリストがCIAに買収されている。

 そうしたジャーナリストは人びとにロシアへの敵意を持たせ、西側がロシアとの戦争へ向かうように誘導するロパガンダを展開、引き返すことのできない地点にさしかかっていることに危機感を持って告発を決意したのだという。そのウルフコテは2017年1月、56歳の若さで心臓発作のために死亡した。

 ベリタスは隠し撮りでCNNのプロデューサーたちが自分たちの「報道」はインチキだと語る様子をインターネット上に流している。CNNに限らず、西側の有力メディアが描く国際情勢はインチキだ。

 しかし、1990年代までのCNNにはジャーナリズム的な側面は存在していた。例えば1998年6月には、アメリカ軍のMACV-SOGが1970年に逃亡米兵をサリンで殺害したと報じている。

 その作戦名は「テイルウィンド(追い風)」。その作戦に関する証言をしたひとり、トーマス・ムーラー提督は1970年から74年まで統合参謀本部議長を務めた人物だ。MACV-SOGは情報機関と特殊部隊が母体で、指揮系統は正規軍と別。つまりムーラー提督はテイルウィンドと無関係であり、沈黙を守る必然性もなかった。

 しかし、CIAや特殊部隊にとっては大問題。CNNは軍関係者だけでなく有力メディアから攻撃される。そして調査を行ったふたりのプロデューサー、ジャック・スミスとエイプリル・オリバーは誤報だと認めるように要求されるが拒否、解雇された。オリバーによると、放送では示されなかった重要な情報をCNNは隠しているという。

 MACV-SOGは北ベトナムに対する特殊工作を実行するため、サイゴン(現在のホーチミン)で設立された。暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領はベトナムからのアメリカ軍撤退を決めていたが、副大統領から昇格したリンドン・ジョンソンは大統領に就任した直後、その撤退計画を取り消している。MACV-SOGはベトナム戦争にアメリカが本格的に介入する口実に使ったトンキン湾事件にも関係している。

 1964年7月30日に南ベトナムの哨戒魚雷艇が北ベトナムの島を攻撃、北ベトナムは高速艇を派遣する。攻撃した哨戒艇は姿を消すが、そこにはアメリカの駆逐艦マドックスがいて、情報収集活動をしていた。

 7月31日、海軍特殊部隊Sealのメンバーふたりに率いられた約20名の南ベトナム兵が再び島を襲撃、北ベトナム軍はマドックスを攻撃する。アメリカ政府は北ベトナムが先制攻撃したと宣伝、8月7日にアメリカ議会は「東南アジアにおける行動に関する議会決議(トンキン湾決議)」を可決、翌年2月に北ベトナムに対する本格的な空爆を開始することになる。

 その後、ベトナム戦争は泥沼化。アメリカ軍は化学兵器の一種である枯れ葉剤(エージェント・オレンジ)やナパーム弾を使用、CIAはベトナムの共同体を破壊して抵抗を弱めるため、フェニックス・プログラムを実行した。さらにカンボジアやラオスを「秘密爆撃」している。そうした中、テイルウィンドは実行された。

 戦争の泥沼化は1968年1月の「テト攻勢」で広く知られるようになるが、その前年の4月4日、ニューヨークのリバーサイド教会で「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」が主催する集会が開かれた。その時、主催者は「沈黙が背信である時が来ている」と訴えている。

 その集会で演説したマーチン・ルーサー・キング牧師は主催者の訴えに賛意を示し、「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」を人びとに語った。大半のアメリカ国民はベトナム戦争の悲惨な現実から目をそらし、自分自身を欺いていると指摘、そうした偽りの中で生きることは精神的な奴隷状態で生きることを意味すると訴え、ベトナム戦争に反対すると宣言したのだ。

 ​ ロン・ポール元下院議員によると ​、キング牧師の顧問たちは牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。そうした発言はリンドン・ジョンソン大統領との関係を悪化させる、つまり権力者が設定した枠組みからはみ出すと判断したからだが、そうしたアドバイスを牧師は無視。そして1968年4月4日、キング牧師テネシー州メンフィスのモーテルで射殺された。

 テイルウィンドをテーマにした番組を作ったジャック・スミスとエイプリル・オリバーが解雇された翌年、アメリカ陸軍の第4心理作戦群の隊員が2週間ほどCNNの本部で活動している。「産業訓練」というプログラムの一環で、編集に直接はタッチしていなかったとされているが、心理戦の部隊を受け入れると言うこと自体、報道機関としては許されない行為だ。アメリカ軍の広報担当だったトーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの社員と同じように働き、ニュースにも携わったという。

 有力メディア本体は昔から私的権力のプロパガンダ機関にすぎないのだが、わずかながら、ジャーナリストが活動する余地は残されていた。その余地が21世紀に入って完全に消滅する。そうした流れを象徴しているのがテイルウィンドと第4心理作戦群の話だと言えるだろう。言論統制のネットワークは有力メディアだけでなくシリコンバレーの巨大ハイテク企業にも張り巡らされている。勿論、言論統制を喜んでいる人びとが言論の自由を望んでいるわけがない。






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最終更新日  2021.02.14 00:00:14


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