陸上自衛隊、アメリカ海兵隊、そしてフランス陸軍は5月11日から17日にかけて「合同軍事訓練」を実施すると4月23日に防衛省は発表した。参加するのは自衛隊が約100名、アメリカ軍が約60名、フランス軍が約60名だというが、海上自衛隊、アメリカ海軍、フランス海軍も加わる方向で動いているようだ。
フランス海軍は今年2月、核攻撃用の潜水艦1隻と2隻の軍艦を南シナ海へ派遣、航行させて中国を威嚇 しているが、それ以外にも 中国を威嚇する動き があった。例えばイギリスが空母打撃群を南シナ海へ派遣、カナダは1月に日本、アメリカ、オーストラリアとの軍事演習に参加するがために軍艦を派遣するが、その途中、台湾海峡を航行させた。
4月17日には南シナ海から三沢基地へ戻る途中の4機のF-16戦闘機が横田基地で撮影されたのだが、いずれも5機のAIM-120C-7 AMRAAM(視程外射程空対空ミサイル)やAIM-9サイドワインダーが装備されていたことから、中国に対する威嚇飛行を行ったと見なされている。
ジョー・バイデン政権による中国威嚇は3月に入ってから目立つようになった。例えば3月8日から韓国と合同で大規模な軍事演習を実施。3月12日にはアメリカ、日本、インド、オーストラリアの4カ国の首脳がオンライン会議を開いたが、この4カ国は「クワッド」と呼ばれ、アジア版のNATOを創設しようとしていると見られている。
この会議後、3月15日にアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官は日本を訪問、茂木敏充外相や岸信夫防衛相と会談した。その際にブリンケン国務長官は中国の「威圧的で攻撃的な姿勢」を批判、3月18日にオースチン国防長官は朝鮮を威嚇する。 アメリカ軍は朝鮮を「今夜にでも攻撃する準備ができている」 と口にしたのだ。
その3月18日と19日、アメリカと中国の外交責任者がアンカレッジで会談した。アメリカ側の要請だったという。アメリカからブリンケン国務長官と国家安全保障補佐官のジェイク・サリバンが、また中国からは中央外事活動委員会弁公室の楊潔篪主任と王毅外交部長がそれぞれ出席した。
アメリカ側は中国の「人権侵害」を批判したというが、中国側は「馬鹿馬鹿しく、全く事実に基づかない主張だと」反論、主権や安全保障に関してアメリカに妥協する意思がないことを明確にし、国土を守る中国の決意を過小評価するなと警告したという。
新疆ウイグル自治区や香港などの話は西側の人びとに対する事実の裏付けがないプロパガンダにすぎないことは本ブログでも書いてきた。それを中国政府との交渉の席で口にしたということは、この席でアメリカ政府が何らかの交渉をするつもりがなかったことを示している。単に中国を脅し、それを西側で宣伝するつもりだったのだろうが、予想以上に強い反発を受けたと言えるだろう。
アメリカ側のこうした姿勢は中国も織り込み済み。予定通り、3月22日にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が中国を訪問、桂林で王毅外交部長と会談して両国の同盟関係をアピールした。翌日に中国とロシアは貿易決済で自国通貨を使うようにすることで合意、つまりドル離れを確認している。
アメリカを中心とする支配システムは大多数の国がドルを基軸通貨として認めていることで成り立っている。その前提が崩れれば、支配システムも崩れる。西側の私的権力もドル体制を維持することが困難だと認識しているようで、新たなシステムを構築しようとしている。それがWEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブが言うところの資本主義の大々的な「リセット」であり、それを実現するためにCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を利用するとしている。
その後、ロシアと中国だけでなく、イラン、インド、パキスタンなどの接近が明らかになり、イランとサウジアラビアの関係修復の動きも消えていないことが判明した。「クワッド」に加わっているインドはアメリカから離れる可能性がある。
アメリカのは2018年5月、「太平洋軍」という名称を「インド・太平洋軍」へ変更、太平洋からインド洋にかけての海域を一体のものとして扱うことを明確にした。日本を太平洋側の拠点、インドをインド洋側の拠点にし、インドネシアが領海域をつなぐ計画だが、インドが離反したなら、その構想も揺らぐ。
日本はオーストラリアと相互アクセス協定(RAA)の大筋で合意、「グローバルNATO」を視野に入れているとされている。既存のNATOで事務総長を務めるイェンス・ストルテンベルグは「NATO2030」なるプロジェクトを始めると2020年6月8日に宣言、NATOの活動範囲を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにする計画を明らかにした。
韓国はロシアや中国とのビジネスを盛んにすることで経済的な発展を実現しようとしてきたが、アメリカはそれを力尽くで押さえ込もうとしている。3月8日の米韓軍事演習はそうした動きの中で実行されたわけだ。
ユーラシア大陸東部における軍事作戦を実行するため、アメリカはヨーロッパの軍隊を使わざるをえない状況なのだろうが、そのヨーロッパではウクライナ、チェコ、ポーランドなどがアメリカやイスラエルの支持でロシアとの関係を悪化させる政策を打ち出し、裏目に出て窮地に陥っている。ネオコンの「脅せば屈する」という戦術は機能しなくなっている。
明治維新から日本は米英の金融資本を中心とする私的権力にコントロールされてきた。その私的権力は当時からユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、世界を制覇するという長期戦略を持っている。そうした私的権力にとって日本列島は侵略の拠点であり、日本人は傭兵。彼らが日本を支配するために築いたシステム、つまり天皇制官僚体制が揺らいでいるということでもある。ところで、その日本では5月11日まで「疑似戒厳令」状態になる。