《櫻井ジャーナル》

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2025.05.07
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 ドナルド・トランプ政権はウクライナでの戦闘を終結させ、利権を確保しようと考えているのかもしれないが、パレスチナではイスラエルによる虐殺を止めようとはしていない。19世紀に始まった帝国主義の枠組みから彼も外へ出てはいないと言える。その枠組みの中でライバル勢力と戦っているわけだ。ライバルの中にはジョー・バイデンやバラク・オバマが含まれているが、このふたりも帝国主義という枠組みの中で活動している。ジョージ・W・ブッシュも同じだ。

 1991年12月にソ連が消滅した際、アメリカは冷戦に勝利し、「唯一の超大国」になったと考えた人は少なくないだろう。その直後、アメリカで外交や安全保障の分野をコントロールしていたネオコンは1992年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。当時の国防長官はリチャード・チェイニー、執筆の中心人物はポール・ウォルフォウィッツ国防次官だった。このドクトリンの基盤を考えたのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。

 世界制覇戦争の手始めとしてネオコンはNATOを東へ拡大させ、ロシアへ迫る。ミハイル・ゴルバチョフ政権との約束を無視したのだ。

 1990年に東西ドイツが統一された際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権の国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連側に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと語ったとする記録が公開されている。

 また、ロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックはゴルバチョフ大統領に対してNATOを東へ拡大させないと約束、ドイツの外相を務めていたハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 しかし、ソ連が消滅して以来、アメリカはNATOを東へ拡大させ、ロシアへ迫る。1999年3月にはユーゴスラビアを先制攻撃で破壊した。そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センター、バージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、ネオコンの計画通りアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、泥沼化する。そして「チェンジ」を掲げるオバマが登場、そのオバマを崇める人が現れ、そうした人びとはその後の世界情勢が理解できなくなった。

 そこでオバマ政権は2010 年8月に「PSD(大統領研究指針)11」を承認し、 ムスリム同胞団や サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中核とする武装勢力を使い、目障りな体制を転覆させるための戦争を始めた。2011年2月にリビア、同年3月にはシリアでも戦争を開始、11月にはNATO軍とアル・カイダ系武装集団が連携してムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すことに成功、カダフィ自身を惨殺。その後、オバマ大統領はリビアから戦闘員や兵器を輸送するだけでなく、政権転覆を目指す傀儡軍への支援を強化した。

 しかし、​ アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)はそうした行為を危険だと考え、ホワイトハウスに警告する報告書を2012年に提出している ​。 反シリア政府軍の主力はAQIであり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、さらにオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告したのだ。その時にDIAを率いていた軍人がマイケル・フリン中将にほかならない。

 この警告通り、2014年には新たな武装集団ダーイッシュが登場、この集団はこの年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧した。フリン中将の警告が現実なったのだが、その年の8月に彼は解任されてしまう。オバマ大統領は政権を好戦的な布陣に変更するが、2015年9月末にロシア軍がバシャール・アル・アサド政権の要請で介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させたが、イドリブへ押し込めたところで止まった。

 しかし、ダーイッシュから派生したHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)や RCA(革命コマンド軍)が 昨年12月8日にダマスカスを制圧し、その後、アラウィー派やキリスト教徒を虐殺し始め、ドゥルーズ派が民族浄化の対象になりつつある。HTSの黒幕がトルコであることから次にクルドを狙うと可能性が大きい。そのHTSや RCAはイスラエルを攻撃しないと公言している。シリアは「ガザ」になりつつある。

 ブッシュ・ジュニア政権と同様、オバマ政権は侵略、破壊、殺戮を繰り広げた。大統領が交代してもアメリカが帝国主義国であることに変化はない。オバマも帝国主義という枠組みの中で行動したのだが、その枠組みから抜け出したくない人びとは、オバマが大統領に就任した際、彼を英雄視した。オバマ政権のジョー・バイデンが大統領の時代、アメリカはロシアとの戦争へ向かい、破綻。そこでトランプが登場してくるのだが、この人物も帝国主義の住人である。「良い警官と悪い警官」の幻影から抜け出さない限り、帝国主義の枠組みからも抜け出せない。

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【​ Sakurai’s Substack ​】






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最終更新日  2025.05.07 12:56:29


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