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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理第3章で党幹部のビジネス活動が語られているので、見てみましょう。p128~131<最大勢力は「資本家」>(前略) 共産党は労働者階級のための組織である以上、資本家は対立するため「敵」だった。資本家から私有財産を没収してすべての富や資源、サービスを人民が共有する共産主義を目指していた。毛沢東時代は「清貧」が党幹部の美徳とされていた。 ところが江沢民が党規約で共産党が「広範な人民」を代表すると定義し直したため、改革開放以来、中国で増えた経営者や資本家らも含めることができるようになった。 これは、党内で市場経済化の流れに合わせて起業家らを取り込まないと、政権党として基盤を維持できないという危機感があったためだ。中国がちょうど世界貿易機関(WTO)に加盟し、経済のグローバル化に対応していこうとした時期に重なる。「労働者階級を代表する党」と位置づけてきた共産党は、改革を通じて幅広い層を取り込むことができるようになり、党の構成員が大きく変わるきっかけになった。<利権集団への変貌> ここでもう一つ大事なのは、江沢民の「三つの代表」理論は、民間の企業経営者を取り込んだだけではなく、巨大な権限を持つ共産党幹部が経済の市場化を通じて企業経営者や不動産所有者、金融資産保持者といった資本家にに変貌し、中國社会の大半の富を堂々と握ったことにある。 言ってみれば、共産党員がいよいよ共産主義という理想をかなぐり捨てて、大手を振って金もうけに邁進することができるようになった。既得権益層に党が政治的なお墨つきを与えたに等しい。貧富の格差が一気に広がるきっかけをつくった。 そこには労働者のための共産党という視点はほぼない。持てる者ほど共産党による統治の維持を必要とし、持たざる者ほど共産党から遠ざかってしまう矛盾をはらむようになった。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、温家宝元首相の一族は平安保険公司を利用して27億ドルの不正蓄財をしていたと報道している。程暁農氏ら在米中国人経済学者の『中国・・・とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ』によれば、共産党高級幹部の子弟や親族が権力を利用してビジネス活動を本格化したのは、江沢民と胡錦涛の時代だった。 具体的には、国有企業を管理していた共産党高官はその国有企業の純資産額を不当に低く見積もり、銀行融資で自ら購入。民営化プロセスの中で株の一部を高値売却し、巨万の富を得つつ、経営者としても居座るという手法が横行していたという。党高官は濡れ手に粟で、企業経営者にも大規模不動産や高額の金融資産の所有者にもなりうる。こうした勢力は、先ほどの党員区分の「ホワイトカラー層」に分類されている。 同書は「金融やエネルギー業界に進出し、私募ファンドの運営や国有企業の掌握によって、まさしく一族と国家が一体となった利益運搬メカニズムをつくりあげた」「彼らは公然と国有資源と公共財の山分けに走ったが、これは中層・下層の役人による腐敗行為のあしき手本となった」と指摘する。 さらに具体的に党幹部の名前を挙げて業界のつながりを記している。たとえば李鵬元首相の子女は、中国の電力業界を支配している。息子の李小鵬氏は中国華能集団の社長・会長を歴任し、「アジアの電力王」と呼ばれた。江沢民の息子、江綿恒氏が通信業界を牛耳ってきたのは、党関係者の間では有名な話だ。元国家副主席、曽慶紅氏の息子、曽偉しは石油業界に手を出していた。『中国共産党支配の原理』2:ウクライナに残された中国人7000人『中国共産党支配の原理』1:習近平氏の怖さ
2024.06.06
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図書館で『もぎりよ今夜も有難う』という文庫本を、手にしたのです。おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。rakutenもぎりよ今夜も有難う「巴里の空の下ケムリは流れる」で石炭暖房の故障騒ぎを、見てみましょう。p29~32<巴里の空の下ケムリは流れる> 学生時代ストーブにコークスをくべた記憶があるのは、何歳から何歳くらいまでの世代だろうか。同い歳の東京生まれに聞いても、いったいそれ、何時代のどこ地方の話? と、まるで昔話を聞くように煙たい目をする人もいる。 東京の南のはずれの下町だけど、我が小学校時代、暖房はいわゆるだるまストーブだった。日直がバケツでコークスを取りに行き、休み時間に少しずつくべてゆく。人並みはずれた暑がりのわたしは、頼まれもせぬのにストーブ番を買って出て、炭の量を最小限にごまかしていた。 中学に入ると、校舎こそおんぼろの木造だったけど、暖房はすっかり全校温度調整されたヒーターが設置されていた。わたしは特別に許しを得て夏用の制服を着、窓際の席を与えられて、すきま風を入れてしのいでいた。 二十代になって、もう一度コークスの暖房に巡り合うことになるとは思いもよらなかった。時は昭和、でも最期の数年である。石炭やコークスの思い出なんて、終戦後に給食で脱脂粉乳を飲んだとか飲まないという話と同じくらい遠い過去になっていた、はずだった。 私が働いていた銀座文化では、入れ替え時間が忙しくないプログラムの時はたっぷりとお昼休みがもらえた。時間はあってもお金がないもぎりたちは、お弁当を持ち寄っては眺めの良い場所にくりだして、のんびりとランチタイムを楽しんだ。日比谷公園、晴海の埠頭、銀座通りに並んだデパートの屋上。なかでもわたしがお気に入りだったのは、銀座文化の屋上である。 裏通りのビルの上から眺めるこの街は、地上とはまるで別人の顔をしていた。銀座のどまん中とは言え、それぞれのビルの上には洗濯物がつるされた屋根部屋があったり、さびたデッキチェアやビーチパラソルが放られていたり、ひそかに育てられた植木が花を咲かせていたりする。日本一の高級商店街の上空にも、少しだけ暮らしの匂いが漂っていたのだ。 もぎりたちはスクリーンの向こうに広がる異国の街に憧れて、よく銀座通りをニューヨークの五番街に見立てたりしていたけれど、銀座文化の屋上はさながら、巴里の屋根の上だった。わたしたちは、「彼の地のアパルトマン暮してのはもしかしたらこんなふう?」と思いをはせながら、フランスパンならぬ、木村屋のあんぱんなどをかじったものだ。 ある冬の一日、そのアパルトマンからの眺めに異変が起こった。いつものように屋上の扉を開けると、夏場にはその存在に気づきもしなかった煙突から、もやもやと黒い煙がたなびいていたのだ。せっかく広げた白いごはんにススがふりかかり、風に合わせて右に左に向きを変える煙に追われて、わたしたちは大あわてで屋上から退散した。 その時はじめて、わたしはこの建物の秘密を知ったのである。「ボイラーの調子が変です!」と報告に行ったわたしたちに「石炭炊いてるからね」と語った社員の北村さんの口調には、ほんの少し内緒の響きがあった。世の中はバブル直前。すでに1980年代である。 そんな時代に映画館が二館と、東宝東和の試写室に川喜多記念映画文化財団なども入っていた銀座のどまん中のビルディングが、石炭の暖房であたためられていたことに、わたしはえらく衝撃を受けた。 ということは、わたしは最も多くの映画を石炭の暖房で観たことになる。銀座文化2で何度もかかった「ブレードランナー」の再映も、わたしたちは石炭のぬくもりの中で観たわけだ。ビルの谷間を車が飛びまわり、レプリカントが暗躍するサイバーパンクな近未来を、すでに手に届くところに感じていたはずなのに。 しかし不思議なことに、わたしはあのビル全体を暖めるだけの大量の石炭が搬入される様子を見た覚えがない。同期のもぎりたちにたずねても、その構造を確かめた者は誰もいないのだ。『もぎりよ今夜も有難う』1:渡り鳥映画館へ帰る
2024.06.05
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図書館で『もぎりよ今夜も有難う』という文庫本を、手にしたのです。おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。rakutenもぎりよ今夜も有難うまず冒頭の「渡り鳥映画館へ帰る」を、見てみましょう。p9~12<渡り鳥映画館へ帰る> みずからの出自を問われたら、「映画館の出身です!」と胸張ってこたえたい。 俳優としての経歴ならば、「大学時代から小劇場の舞台に立ちまして、その後Cmに誘われて、ほどなく映画にも顔を出し・・・」などと言うのが筋かもしれない。でも心の底では、わたしは演劇でも映画でもなく、映画館の出身なのだ、とかたくなに思っている。 十八の頃から約7年間、銀座の映画館で働いた。いわゆるアルバイトの“もぎり嬢”として。大学があった吉祥寺より、劇団の稽古場があった池袋より、はるかに多くの濃いい時間を銀座で過ごした。四丁目の交差点、和光の裏にある銀座文化劇場、現在のシネスイッチ銀座が、もぎりのわたしの生まれ故郷である。 父親が死ぬまでJRのことを「国鉄」、映画のことを「活動」、と呼んではばからなかったように、わたしも新しいしゃれた名前を呼びなれず、二十数年経た今もなお、銀座文化、と呼んでいる。『キネマ旬報』という老舗の映画専門誌の上で、映画好き、を名のれるほど立派な鑑賞歴ではないけれど、とにかく中学に上がった頃から、少ないおこずかいをやりくりして映画にはまめに出かけた。勉強とか学生生活、というものに上手になじめなかったわたしには、放課後や週末ごとの映画通いは、日曜の礼拝に通うような、それは神聖な行事だった。映画を観ている間だけ、なにかから救われる。 学校の帰りが遅くなるたび父親に、「またカツドウか!」と怒鳴られたものだけど、でも、この特別な課外活動のおかげで、ぐれもせず大したまちがいも犯さず、とりあえずまっとうな大人になれたのだ、と今もわたしは信じている。 幼い頃から、どんな映画を観てもたいてい口もきけないくらい感動してしまう。見終わるとひと言もしゃべれなくなってしまうので、歳とともに、誰かと連れ立って行くことが少なくなっていった。 だいたい、せっかくロバート・レッドフォードやポール・ニューマンと同じ世界にいる時に、なぜ同行の友だちのひそひそ声に呼び戻さなければならないのか。それがわからなかった。わたし自身はよく覚えていないけど、わざわざクラスメイトと一緒に出かけたのに、「離れた席で観させてほしい」と主張して、ひとり、かぶりつきの席で背筋を伸ばし、身じろぎモセズスクリーンに観入っていたらしい。 あまりに映画の世界に入りこみすぎるので、明るくなっても夢からさめずに困った。「ジョーズ」を観て、湯船につかれなくなったのもこの頃だ。お風呂はじきに克服したが、海で泳げるようになるのには、それから数年がかかった。 あの頃は、映画を映画と思っていなかった。目の前の光景がつくりものだなんて、考えたくもなかったのだ。うっとりするようなラブシーンの後ろで、何十人のスタッフがカメラやマイクを構えているなんて想像すらしたくない。だからいくら好きでも、映画の中で働きたいとは思わなかったのである。 とにかく、ただスクリーンのそばにいたい。映画のそばで働ける仕事がしたい。受験勉強にいそしんでいた時分から、大学に入ったら映画館で働こうと決めていた。そしてできればそれは、幼い頃から通いなれた日比谷や有楽町、銀座界隈の劇場であってほしかった。 学生がアルバイト先を決めるのに、これほどピンポイントのこころざしを持っていることもそうないだろう。わたしは大学に入るなり、この地区の映画館に片っぱしから電話をかけた。 かつての日比谷スカラ座や日劇や有楽座、丸の内ピカデリーに松竹セントラル。しかしこれらの映画館は皆東宝や松竹の直営で、もぎり嬢もチケット売り場も売店も、正式の社員が雇われていたのだ。そして、この地域で唯一学生アルバイトが入りこむ余地があったのが、この銀座文化だったというわけだ。銀座文化は中高生の頃、名画座なのに一本立てでしかも250円というお手軽さが気に入って通っていた、なじみの映画館だった。 宝物のような7年間だった。毎日のように映画館に通い、好きな時に劇場に入り、好きな映画を何回も観た。そしてなにより、一緒に働く仲間たちはそろいもそろって大の映画好きで、仕事中も仕事後ものどが痛くなるまで映画の話に明け暮れた。時給が安いことなんて、ほとんど苦にならなかった。
2024.06.05
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理第6章で共産党の死角が語られているので、見てみましょう。p242~246<ウクライナに残された中国人7000人> 中国外交を見てきて最もあぜんとさせられたのが、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻をめぐる対応だ。米国は1年以上前からロシア侵攻のリスクを把握し、日本や欧州だけでなく、中国にもくり返し伝えてきた。 2022年2月の侵攻前には、米国のインテリジェンスを信じて日本や欧州の主要国はウクライナにいる自国民に退避勧告を出した。2月中旬には退避を事実上終えていた。 対照的な対応を取ったのが中国だった。たとえば侵攻2日前の中国外交部の記者会見で、「ウクライナに駐在する中国大使館のスタッフは全員大使館にいるのか。ほかの公的機関はどうか」との記者の質問に、汪文斌副報道局長はこう答えている。「ウクライナ東部情勢に重大な変化が起きた。中国大使館はすでに在留中国公民と企業に対し安全を守るよう注意喚起した。中国外務省と大使館は引き続き在留中国公民、企業と緊密に連絡を取り、領事保護・支援を迅速に行い、その安全と正当な権益を確実に守る」。あとでわかることだが、事実何もしていなかった。 恥を忍んで白状するが、じつはこのときまで筆者も中国の判断が正しいのではないかと考えていた。ロシアの侵攻はないのではないか。なぜならウクライナ侵攻の直前に習近平氏がプーチン氏と会談していたためだ。2022年2月24日の北京冬季五輪の開幕式に合わせてプーチン氏を主賓として招待し、食事会まで開いている。共同声明では「上限のない協力」を謳ったばかりだった。 その中国が2月下旬になっても自国民をウクライナから退避させていないということは、ロシアの侵攻は「脅し」ではないかと推理した。だがものの見事に外れた。 侵攻した当日の中国外務省の記者会見はやはり歴史に残る内容となった。「現在、どれだけの中国公民がウクライナにいるのか。彼らに何か最新の指示を出したか」との記者の問いかけに華春瑩報道局長はこう答えた。「具体的人数については現在まだ把握していない。中国大使館は安全注意情報を出した。中国人民には団結奮闘し、互いに助け合うよい伝統がある。困難に遭遇したら、助け合うことを希望する。大使館は全力で支援する」 侵攻が始まっても中国が何の手も打っていなかったことがわかる。現地で団結して助け合えとはあまりに無責任な言い方だ。のちにウクライナに7000人以上の中国人が取り残されていたことが判明する。ロシアと蜜月を謳う中国はウクライナ侵攻をめぐる情報を何もとれていなかったことが、白日のもとにさらされてしまった。<ダイナミズムを欠く組織体質> 再び『失敗の本質』に戻る。同書は3つ目の失敗パターンとして「自己改革が起こらないダイナミズムを欠く組織体質」を挙げる。日本軍の最大の過ちは「言葉を奪ったこと」だと言う。戦争のやり方が歩兵と艦隊から空母機動部隊や航空機、重火器に移っても内部で声が上がらず、イノベーションが起きなかった。組織の末端や情報やアイデア、問題提起が中枢につながることを促進する若くて柔軟な「青年の議論」が許されていなかったと指摘する。 海外メディアの報道によれば、米国はウクライナ侵攻のリスクをくり返し中国に伝えたが、「西側のバイアスがかかった情報」と顧みることはなかった。だが7000人以上もの自国民がウクライナに残されている以上、退避の方法は最低限検討しておくべきだった。『失敗の本質』が指摘するいわゆる「青年の議論」がまるきり欠けていた。それが中ロ首脳会談で侵攻の情報をとれず→ゆえに侵攻はない、あってはならない→侵攻リスクにかかわる情報はすべて遮断・・・との判断に傾いていたとしたら、組織の病巣は深いと言わざるをえない。 「失敗の本質」から抜け出せなかった日本軍は、米国や中国との無謀な戦争に突入し、最後は無条件降伏まで追い込まれた。共産党が同じ病にかかっているとしたら、事態は深刻だ。東シナ海や南シナ海、台湾海峡で米国や日本、台湾と双方が予知せぬ衝突が待ち受けているかもしれない。<公務員試験に殺到する若者> ここから先は、いまの若者の視点から共産党が中国をどのような方向に導いているのかを見ていきたい。若者や女性ほど社会情勢の変化に敏感で、この国の未来を映し出す鏡となるためだ。 習近平氏を頂点とした共産党・国務院(政府)への権力が集中する状況を目の当たりにした若者は、民間企業への就職から公務員試験に殺到するように変わった。若者は自分の未来に真剣だ。リスクを恐れ、無難にやることが生き残る最善の道という風潮が、蔓延し始めている。 2023年1月7,8日に実施された国家公務員試験は、一部の職種の倍率は6000倍に達した。習近平指導部がIT(情報技術)企業などへの締めつけを強化し、民間企業離れが広がっていることが影響している。『中国共産党支配の原理』1:習近平氏の怖さ
2024.06.02
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理習近平氏の怖さが語られているので、見てみましょう。p96~99<最大の危機、香港デモ> 習近平氏は軍改革を機に、一気に党・軍の権力を手中に収めることに成功する。2016年には毛沢東、鄧小平、江沢民に続いて4代目の党の「核心」に位置づけられた。2017年には国策映画「すごいぜ、中國」を制作し、まさに絶頂の時期だった。 強権を手にした習近平氏が最大の正念場を迎えたのが、2019年3月から2021年夏まで香港に広がった民主化を求めるデモだった。 このデモは、香港政府が捕まえた刑事事件容疑者を中国大陸に引きわたすことを可能にする逃亡犯条約改正案への反対運動で始まった。参加者は香港政府に①条例改正案の全面撤回、②これまでの衝突を「暴動」と認定したことの撤回、③デモ参加者への刑事責任追及の撤回、④警察による暴力行為を独立調査委員会を立ち上げて調べる、⑤香港の行政長官の辞任と直接選挙の実現・・・を突きつけた。これらは「五大要求」と呼ばれデモは大きなうねりをみせた。 2019年6月16日のデモでは、主催者発表で最大約200万が参加し、1997年の香港返還以降で最大のデモとなった。これは香港市民の4人に1人以上が参加した計算だ。デモ鎮圧までに8000人以上が逮捕される大混乱となった。 当時、習近平指導部が最も恐れていたのは、民主化デモの中国大陸への伝播だった。とくに香港と広東省は隣接しており、人々の往来も多く影響を受けやすい。広東省は中国国内で最大の国内総生産(GDP)を誇っており、経済発展が著しい。自由を求める空気はもともと強い。 広東省が香港のデモに「感化」されれば共産党の統治が足元から揺らぐリスクさえあった。ちまたでは習近平指導部が人民解放軍を投入してデモ隊を鎮圧するのではないか、天安門事件の再来かとささやかれていた。<軍投入も検討していた習近平氏> デモが勢いを増していた2019年8月29日、不気味なできごとがあった。人民解放軍の兵士を乗せた装甲車の車列が広東省深圳市から続々と香港に入ってきたのだ。香港市民がざわつくなかで中国国営の新華社は「22回目の香港駐留部隊の交代作戦が無事に終了した」と配信。「今回の交代は香港駐留部隊法の交代規定によって施行するもので、党中央軍事委員会の承認を受けた正常な定例作戦だ」と説明した。 だが奇妙な点がいくつもあった。まず中国のこれまでの公式資料に交代は11月下旬に行うと書いてある。なぜ8月下旬に前倒ししたのか説明がない。また兵士の入れ替えだというのに香港から出ていく兵士の姿が確認できなかった。香港市民は軍の動向を注視しており、出ていけばSNS(交流サイト)などに写真や動画が上がるはずだった。「以前の交代式で兵士はバスに乗ってきていた」との指摘もあった。なぜ今回は装甲車でやってくるのか。 9月を迎え中秋節が近づく頃、当時北京にいた台湾人の知り合いが突然連絡してきた。「大変だ。習近平は軍を投入してデモ隊を弾圧するつもりだ」という。彼は香港に行き、香港駐留部隊に月餅を差し入れている業者の話を聞いたという。月餅は中国のお菓子の一種で、月のように丸く、平べったい形をしていることからこう呼ばれる。9月の中秋節前に贈り物として用いられる。 この月餅業者は、毎年中秋節の前に5000個の月餅を香港駐留部隊に届けていた。部隊内で兵士一人につき一つの月餅を配る習慣があるという。とすれば約5000人の駐留軍がいる計算になる。公式資料で確認してみると、1997年の香港返還を受けて約6000人の解放軍が駐留するようになったとの記事があり、数字はおおむね一致している。 これが今年は1万個に増えたという。駐留兵士は5000人から1万人に倍増したことになる。これが何を意味するか。香港駐留部隊の指揮権は北京の中央軍事委員会にある。つまり今回の増員劇は習近平氏が指示していたことになる。 中国側は増員を徹底して秘匿していたことから、軍の投入を本気で検討していた可能性がある。ちょうどこの時期、北京にある米国の大使館と日本の大使館の駐在武官は、解放軍の投入の可能性をめぐって頻繁に情報交換をしていた。 米国側から武力鎮圧の可能性をどう分析しているか連日のように意見を求められたという。担当者は町中に張りめぐらされた監視カメラから逃れるため、変装して散歩をするふりをしながら情報を交換したとふり返る。 越えてはいけない一線、レッドラインはどこにあったのか。いざとなれば軍によるデモ弾圧もいとわない習近平氏の意思が伝わってきた事件だった。香港のデモはその後、2019年12月頃から広がり始めた新型コロナウイルスの流行で下火になり、2020年6月に香港国家安全維持法が施行され、完全に封じ込められた。
2024.06.02
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・中国共産党支配の原理・もぎりよ今夜も有難う・『世界』2024年3月号<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten中国共産党支配の原理【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>追って記入rakutenもぎりよ今夜も有難う【『世界』2024年3月号】雑誌、岩波書店、2024年刊<出版社>より【特集1】さよなら自民党 派閥・世襲・裏金 30年前の1994年1月29日、政治改革関連4法が成立した。改革の矛盾や問題点は様々に指摘されてきたが、今回の裏金事件でついに破断界に達したかに見える。【特集2】働けど、働けど どこの職場でも人員が削減される中で、労働時間やストレスばかりが増えている。物価がどんどん高くなる一方で、賃金は増えそうになく、税金や社会保険料で手取りは目減りする。働きつづけたからといって、「老後の安心」は手に入らない。こんな社会にだれがした?<読む前の大使寸評>追って記入amazon『世界』2024年3月号
2024.06.01
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在115位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在36位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在23位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在22位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在105位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在1位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在3位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在43位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在12位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在46位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在84位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在45位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在8位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在21位・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、副本1、予約8)現在2位・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、副本?、予約8)現在9位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:西図書館で見っけ・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・内田樹『勇気論』:図書館未収蔵・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【米番記者が見た大谷翔平】 ディラン・へルナンデス著、朝日新聞出版、2024年刊<出版社>より本塁打王、2度目のMVPを獲得し、プロスポーツ史上最高額でロサンゼルス・ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。渡米以来、その進化の過程を見続けた米国のジャーナリストが語る「二刀流」のすごさとは。データ分析や取材を通して浮かび上がってきた独自の野球哲学、移籍後の展望など徹底解説する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/16予約、副本1、予約8)>rakuten米番記者が見た大谷翔平【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.06.01
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図書館で『宇宙へ』という本を、手にしたのです。著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へ最終章「わが名はテロリスト」の核心部あたりを、見てみましょう。p294~298「それじゃ、みんなに大事な話をしよう。少し時間がかかるかもしれないが、心して聞いてくれよ。コーヒーもあるみたいだしな」 そう前置きして、クリスは静かに話を始めた。 宇宙エレベーターの、核心に触れる話を。<8>「もう何年も昔の話だ。タクミやマサトたちの国・・・日本を巨大な地震とツナミが襲ったことは知ってるな」 拓海は真人を見たが、彼は知らん顔でクリスを見つめている。「俺たちはまだ子どもだったけど、もちろん知ってるよ」 忘れられない年だった。その前年は、〈はやぶさ〉の驚異的な帰還を目の当たりにした年だ。感受性の強い年頃の子どもたちには、おそらく一生つきまとう記憶だ。「その時、ツナミの被害をうけたフクシマの原子力発電所が、メルトダウンを起こした。セシウムなどの放射性物質が拡散し、周辺地域は何年にもわたって立ち入りが禁止されたり、住民が避難したりしなけりゃならなかった」 クリスに説明されるまでもない。子ども心にも、その後の騒動はよく記憶に残っている。震災直後の計画停電は、当時大坂にいた拓海たちは話に聞くだけだったが、夏にはほぼ日本中が節電を求められた。関西も例外じゃなかった。放射能が残留しているかもしれないと、風評被害で福島県産の農作物が売られなくなったり、京都の五山送り火で岩手県高田松原の被災松を焚くはずが中止になったり、福島産の花火を上げるのでさえ中止になったり。大人たちの大混乱を、声を上げることもなく子どもたちはじっと見つめていた。「スワベ社長は、そのフクシマの出身なんだ」 クリスの言葉に、突然霧が晴れたように、なにかがすとんと腑に落ちたようだった。「大学生の時に震災被害に遭った。実家は避難地域にあたっていて、その後長い避難所生活を強いられた経験を持つんだよ」 諏訪部敏郎は、その経験から自然エネルギー利用の促進に力を注ぐようになり、大規模太陽光発電所の建設や、ひいては宇宙太陽光発電所の建設をめざして活動し、それが高じて宇宙エレベーターシステムの建造に携わることになったのだとクリスは話した。「人間が作るものに、百パーセント安全なものはない。それが、スワベ社長がフクシマから得て教訓だそうだ。だからこそ、スペース・カーゴには二重、三重のフォールトヨレラント・・・冗長処理を施して、安全に留意してきた。みんなも言われるまでもないと思うが」 いったいこの話はどこに向かおうとしているのだろう。そわそわと落ち着かないイシュマエルや、時々意を決したように顔を上げては、クリスに頷かれるとうつむいてしまうセルゲイたちの姿を見るまでもない。拓海もクリスの話の着地点が読めないでいた。「人間が作るものが、人間に危害を与えてはいけない。それが、スワベ社長の大前提だ」「そいつはまた、ずいぶん理想主義者だな」 ベンジャミンが鼻の上に皺を寄せて毒を吐いたのは、彼が軍人だったからかもしれない。諏訪部社長の掲げる理想が、鼻についたのかもしれない。「なあクリス。歴史上、人類に危害を与えてきたのは、人間が発明したものばかりだぜ。世界中で、毎日何人が車に轢かれてると思う? 何人が人間のこしらえた拳銃で撃たれてる? 大砲は? ミサイルは? 核兵器は? 何人が鉄道に飛び込んで自殺している? 」 おためごかしもいい加減にしてくれ、と言わんばかりにベンジャミンが吐き捨てる。 クリスが鷹揚に頷いた。「おまえの言いたいことはよくわかるよ、ベンジャミン。しかし、しばらく黙って聞いてくれ。・・・スワベ社長は、宇宙エレベーターにもしものことがあっても、地上にいる人間には絶対に危害を加えることがないようにと考えた」 もしものこと・・・つまり、今回のように、ケーブルが破壊され、ステーションが地上に激突するかもしれないといった危機のことだ。「自爆装置でも組み込んだのか?」 存外真面目な声でベンジャミンが尋ねる。「それに近い」 クリスも真面目に応じた。「ただし、ステーションを爆破するわけじゃない。万が一・・・ステーションが地上に落下する可能性が出てきた場合には、ケーブルを自爆する。ステーションのずっと下でな」 制御室が沈黙に満たされたのは、一瞬のことだった。「それはいったい、どういうことだ? ケーブルを切ったりすれば、カウンターウェイトの遠心力でステーションは・・・地球から離れて飛んで行ってしまうじゃないか!」 イシュマエルが真っ赤な顔をして叫ぶ。大富豪のお坊ちゃんだけあって、メンテナンスマンの資格を取った後も、ここで働くようになった後も、基本的な性格はあまり変わらないようだ。クリスが話したのは、まさにそのこと・・・地上に被害を出さないようにするということだったのに、理解が追いついていないらしい。地上を救うために、ステーションを犠牲にする。クリスはそう語ったのだ。・・・それは当然の判断だ。 ステーションに滞在できるのは、現在のところ数名から多くても数十名。ステーションと、地上の犠牲を引き換えにすることはできない。もし静止軌道上からステーションが落下すれば、地上に何が起きるかは・・・たとえば、1908年にロシアで起きたツングーシカ上空の大爆発がいい事例になる。ツングーシカでは、直径百メートル規模の彗星とみられる天体が、地表数キロの位置で爆発したと考えられている。偶然にも近くに人家がなかったため、人的被害はなかったと伝えられているが、半径三十キロメートルにわたる規模で森林が炎上したという。TNTに換算して十から十五メガトンというから、とんでもない大爆発だ。それが、もしオーストラリア大陸の都市近辺で発生したら、どうなるか。 だから、いざとなればステーションを捨てるという会社や諏訪部社長の判断を、理性では支持しないわけにはいかない。 しかし・・・ しかし、感情は別ものだった。 自分たちは見棄てられるのか。万が一の際には、自分たちはステーションとともに捨てられるただの駒なのか。『宇宙へ』1:プロローグの冒頭
2024.05.28
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理「むすび-現代の日中関係」で日中の領土問題あたりを、見てみましょう。P207~211<歴史認識>「人民解放」から「改革開放」へ。中華人民共和国の歩みは、艱難をきわめた。犠牲になった人もおびただしい。「革命」に彩られ、内戦と戦争に明け暮れた建国以前と合わせてみれば、20世紀の中国は、いよいよ激動艱苦の道を歩んでいた、といえるだろう。 そんな百年、中国の思考・発言・行動は、目まぐるしい転変をくりかえした。けれどもその経過を貫いていたのは、中国の言動を根底で枠づける社会構造、論理枠組の本質が、いかに変わらなかったか、という事実ではなかろうか。 イデオロギー・体制は君主独裁制から立件共和制、三民主義からマルクス主義、計画経済から市場経済へ移り変わっていった。しかしその前提に必ず存在していたのは、「土」「庶」が隔絶し、上下が乖離した社会構成である。 これは歴史のなかでできあがった構造原理なのであって、中国は従うにせよ抗うにせよ、その原理に応じざるをえない。そんな論理が現代中国の言動パターンを形づくっていて、たとえば、わが日本と関りの深い世界観、時間と空間の観念も、同じことがいえよう。 時間の観念とは、いわゆる「歴史認識」のことであって、こう表現すればわかりやすい。その根はやはり20世紀のはじめ、ちょうど梁啓超が近代的な歴史学をつくった時にある。「中国」という国家と社会の歴史を書け、と呼びかけた彼は、断代史・紀伝体のスタイルをとる旧来の史書を非難して、「理想」がない、といいつのった。この発言には共感を覚えながら、同時に腑に落ちないところも残る。はたして旧史に「理想」はなかったのだろうか。 旧来の史学になかった「理想」とは、近代的な「愛国主義」のことである。確かにそれは、旧史学に存在しなかった。けれども儒教の教義という「理想」は、現前としてあったはずである。むしろその「理想」のほうに、史実分析・歴史叙述が従属していた。 梁啓超以後の「中国」人は、ふるき史学を厳しく批判して、断代史・紀伝体という体制・スタイルからは確かに脱却した。しかしながら、「理想」・イデオロギーを考証・叙述の前提・目的としてしまう論理構造は、旧史と変わってはいない。 旧史のスタイルとともに、儒教のドグマが退場したのはまちがいない。それでも愛国主義・三民主義・マルクス主義・毛沢東主義など、体制イデオロギーは最上の価値を与えられ、中国を覆っている。それが続くかぎり、「正統」のイデオロギー・ドグマを説明し、正当化する、という歴史の位置づけと役割も変わらない。 したがって「中国」の歴史学では、中華の史学と同じく、依然として体制イデオロギーを標準とした、史上の人物・政権・事件に対する正邪の判定を何より重視する。現代の「正しい歴史認識」も、そうした意味にほかならない。「満州国」は「偽」でなくてはならないし、「南京大虐殺」は「三十万人」でなくてはならないのである。 「中国」での歴史とは、かつての史学と同じく、政権・イデオロギーの利害得失を代弁、説明、主張するものであって、われわれが「学問の自由」「言論の自由」にもとづく、と普通に考えがちな歴史学とは、次元の異なる存在である。昨今の「歴史認識」問題もそう考えなくては、納得できないことが少なくあるまい。<領土問題> 同じく日本との関係で重大なのは、尖閣という領土問題である。そうはいっても、問題は日本に限ったことではない。中国軍の岩礁埋立てで波高い南シナ海でも、事情はまったく同じである。 そもそも中国ほど、国境問題・領土問題を抱えた国も少ない。そしてどの相手国に対しても共通するのは、一方的な主張と大国意識、卑俗な言い方をすれば、「上から目線」の存在であって、そこにはどうやら史上の論理が作用している。 たとえば「華」「夷」の秩序である。これは礼制にもとづく上下関係なので、中華は常に外夷より上位・優位にあると措定された。それはよい。両者の関係の客観的な実態はどうあれ、主観的な措定そのものは、まちがいない事実だからである。 しかし20世紀の漢人たちは、そうした礼制にもとづく秩序措定に代えて、「中国」というnationと国際関係を選択した。国際関係は主権国家どうしの対等を原則とする。それなら「中国」の世界観・空間認識は、かつての「華」「夷」の上下関係から一変したはずである。 たしかに20世紀の前半、帝国主義の圧迫を受けていたころは、列強との対等な関係こそ、「中国」の念願だった。しかし抗日戦争に勝利してそれを果す屋、またぞろ歴史的な遺制が顕在化してきた。 つまり、自分たち「中国」は中華・上位、周辺国は外夷・下位であるべしという世界観である。しかもそれが西洋流のnationや主権の観念と結びついて、自らのnationを守るべく「愛国」につとめ、いわば「攘夷」を厭ってはならぬ、という主張に転化した。その発現が日本やベトナム・フィリピンなどに対する大国意識、「上から目線」であり、相手に耳を貸さない領土問題での行動様式にほかならない。(中略) つまり、清朝の範囲内に暮らすモンゴル人・チベット人は、自分たち漢人より下位に属するので、その住地と一体化して同化すべきだ、と言う論理になった。たとえば、「五族協和」「中華民族」をとなえた孫文は、漢人への「同化」がその意味内容だと明言している。したがって習近平が「中国の夢」だと語る「中華民族の復興」も、ほとんど意味はかわらない。チベット人・ウイグル族が反発するゆえんである。『中国の論理』2:アヘン戦争あたり『中国の論理』1:はじめに
2024.05.23
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実「おわりに」にこの本の作成時の裏話が載っているので、見てみましょう。p234~237<おわりに> 本書は関東大震災から100年を迎える2023年9月1日前の刊行となった。よく周囲から「首都直下地震は30年以内に70%の確率で発生するといわれているけど、この確率の出し方に問題はないの?」と聞かれる。実は専門家に聞くと、「南海トラフよりも『えこひいき』した確率の出し方をしている」と言う人も多い。「元禄地震」と「関東大震災」は、関東を襲ったM8クラスの巨大地震だ。二つの地震は約220年の間が空いているが、関東ではこの220年の間にM7クラスの地震が8回発生した。単純計算するとM7クラスの地震は27.5年に1度起きていることになり、これを30年確率に当てはめると70%という確率が出る。地震本部は「相模トラフのプレートの沈み込みに伴うM7クラスの地震」の確率としているが、内閣府はこれを首都直下地震の確率として紹介している。 えこひいきのゆえんは、8回の地震の発生した領域の広さだ。首都直下というと23区内をイメージする人が多いのではないか。8回の地震の中には、1855年の安政江戸地震のように東京都の千代田区、墨田区、江東区などを強い揺れが襲ったものもあるが、他にも茨城県南部や神奈川県の小田原、三浦半島付近で起きた地震も含まれる。首都直下というよりは「関東直下」の方がイメージは近いだろう。 大都市は災害に弱く、首都が大地震に見舞われたら国が破綻しかねない被害になることは目に見えている。備えるのは当然だ。だが「30年間で70%」という伝え方は、地震の切迫性をアピールするため、わざわざ近隣の地震をかき集めて高い数値を出すような「せこいまね」をしているようにもみえる。 取材ではさまざまな立場の人から「確率を出さないと地震学の存在意義がない」「低い確率を出すと防災予算が下りない」などとの声を聴いた。確率は地震学や防災、政治の思惑が複雑に絡み合い、本質的な意味が見えにくい情報になっている。本当に必要な情報とは何か、立ち止まって考え直すべきだろう。 この問題を記事にする上で、乗り越えられないと思うような困難が幾度もあった。それがこうして1冊の本に仕上がったのは、奇跡とも思える出会いが連続したからだ。 まず、きっかけとなった鷺谷威名大教授の「告発」は、ともすれば告発した鷺谷氏が不利益を被る恐れがある内容だった。鷺谷氏が覚悟を決めて世に伝えたかった思いを、居合わせた私がたまたま受け取ったことで取材が始まった。しかし、この問題意識をどう記事化するかには苦労した。 私のプレゼンテーション能力が足りないことも手伝い、デスク陣に説明をしても「議論の過程で出た裏話」「科学的論争の一つ」と、一般の紙面で報じるのはそぐわないと判断されることが多かった。ただでさえ難しい科学のテーマだ。しつこく一般記事での掲載を求める私の姿は、日々のニュース対応で忙しいデスク陣の目にはさぞかし困った部下に映っただろう。 そんな時、助けの手を伸ばしてくれたのはニュースの深堀りをする中日新聞の特集面「ニュースを問う」の担当デスクをしていた秦融編集委員(当時)だった。私は秦デスクに「相談がある」とだけ伝え、会社から少し離れたファミリーレストランに呼んだ。簡単な雑談を終えると、秦デスクはテーブルに腕を置いて少し身を乗り出し、「で、ネタは何だ」とメガネの奥の目をギラリと光らせた。 約3時間に及ぶ打ち合わせの末、秦デスクは「南海トラフの高確率がきっかけで他地域に油断が生まれているとしたら、中部の新聞社としては見過ごせない」と、同面での記事化を約束してくれた。 こうして、2019年秋に何とか新聞連載として形にすることができたが、この問題を全国区のものに押し上げてくれたのはライバル紙の科学ジャーナリストたちだった。当時朝日新聞大阪本社科学医療部長で、地震学者の間でも有名な黒沢大陸氏は自らのツイッターで「中日新聞さん、よい仕事だった。やられた」と、連載を紹介してくれた。また、元読売新聞科学部デスクで今はサイエンスライターの保坂直紀氏は連載を読み、「不都合な科学は隠してしまえばよいのか。科学と社会はどう付き合っていくべきなのか。連載の背後に大きな問いかけを感じる」とメールをくれ、科学ジャーナリスト賞に推薦してくれた。 本書を書く上で最も大切だったのは、橋本学東京電機大特任教授の存在だ。橋本氏は確率の検討当時から科学のあるべき姿を貫き通そうとした気骨の地震学者だ。鷺谷氏や橋本氏が当時海溝型文化委員でなければ、「確率がえこひいきされている」とここまで問題にならなかったかもしれない。また、室津港の水深データの問題を高レベルな科学的議論として指摘できたのは、ひとえに橋本氏の執念ともいえる調査・研究があってのことだ。共同研究のメンバーの加納靖之東大准教授の協力も欠かせなかった。 高知での出会いにも恵まれた。先祖から子孫へ約300年間、連綿と受け継がれた久保野文書。史料の保管が難しくなる昨今、久保野由紀子さんがいなければ文書は失われていたかもしれない。高知城歴史博物館で文書の整理を担当した学芸員水松啓太氏が、偶然にも地震学を専攻していたことも幸運だった。水松氏のさまざまな指摘は研究を大幅に進展させた。 室戸ジオパーク推進協議会の専門員小笠原翼さんにはヒントとなる資料を献身的に提供していただいた。小笠原さんから紹介された室戸の郷土史家の多田運さんからは、室戸ならではの習慣や歴史など多くの知見を示してもらった。多田さんは2023年5月に死去された。本書をお見せできなかったことは残念で仕方がない。ご冥福をお祈りしている。『南海トラフ地震の真実』2:「えこひいき」の80%(続き)『南海トラフ地震の真実』1:「えこひいき」の80%
2024.05.22
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実まず「第1章 「えこひいき」の80%」の続きを、見てみましょう。p30~33<報じなければ葬られる> 鷺谷氏の告発は、ショッキングなものだった。「30年以内の発生確率が60~70%」という文言は、南海トラフ地震の枕ことばで、私も南海トラフ地震絡みの記事を書く際は毎回使ってきた。それが恣意的に決められたものだったとは・・・。 しかし、私がこの取材をしたのは2018年2月で、13年評価の確率が発表されてから5年近くもたっている。南海トラフの長期評価は社会の耳目を引くテーマだ。鷺谷氏もいろいろな記者と付き合いがあるはずで、中にはこの話をした記者もいたのではないか。「この話はどれくらい知られている話なんですか」と聞くと、鷺谷氏は「確率の決定の経緯は、当初マスコミに知られることを恐れて、表に出されていない話なんです。過去に別の新聞の科学部の記者さんにお話ししたことがありますが、記事にはなりませんでした」と静かに話した。 どうやら、この問題に取り組んでいる報道関係者はいないようだ。私が掘り起こさなければ、誰にも知られないまま葬られてしまうかもしれない。とりわけ東日本大震災以降、防災は報道の主要テーマだ。その内幕で問題のある意思決定がされているとしたら、それを知った記者には記事を通じて議論を呼びかける責務がある。「これは報じるべきですね」。私がそう言うと、鷺谷氏は「それはぜひ」と少し笑みを見せた。 しかし、当然鷺谷氏に聞いた話だけではなく、この内幕模様の裏取り取材をしなければ記事は書けない。複数の証人・・・いや、議事録などがあればいいが。そう思っていると、鷺谷氏は「確か会議の議事録は全て残っていると思いますよ。(地震本部の事務局の)文部科学省に請求すれば出てくるかもしれませんね」と教えてくれた。 政府は「行政文書管理ガイドライン」で議事録などの公文書の取り扱いについて規定している。それによると、外部の有識者らによる懇談会を開催する際は「意思決定の過程を検証できるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成する」と求めている。政府の専門家による会議である海溝型分科会はこれに当たるだろう。 議事録があれば、真相を一網打尽にして知ることができる。私は鷺谷氏に礼を言い、早速本社に戻り、議事録を請求する手続きに移った。<使わぬ手はない「情報公開請求制度」> 情報公開請求制度は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)によって、誰でも行政機関が持つ資料を請求することができると定めている。この制度を遣えば、当局による自発的な発表ではなく、当局にとって都合の悪い情報も得られる可能性がある。行政側が公開・非公開を決める余地が大きく、問題もあるが、権力の監視が役割の新聞記者が使わない手はない。 情報公開の請求方法は、請求する文書を管轄する行政機関のホームページに掲載されている。目的の史料が明確な場合は、「行政文書開示請求書」に必要事項を記入し、送付する。わからない場合は、請求する先の行政機関に設けられている開示請求の窓口担当に確認するといい。担当者が目的の文書の所在の有無や、行政文書やファイルの名称などを教えてくれる。また、申請から開示までにどれくらい時間がかかりそうか目途も付く。具体的な資料名が判らない場合は、「~に関する一切の資料」などと書くが、絞り込んでいないと余計な文書まで請求対象となり、その分開示に時間がかかることもある。 ちなみに請求先の行政機関自体の不正などを調べようとして、調査していることを感ずかれたくない場合、こちらが何について調べているかわからないよう、わざと関係ない部門の資料を含ませたりすることもある。(中略) 鷺谷氏の取材を終え、文科省に情報公開請求すると、約1ヶ月後に申請した文書の開示を認める「開示決定」が届いた。文書のコピーを選び手数料を支払うと、そのまた約1週間後についに文書が郵送されてきた。『南海トラフ地震の真実』1:「えこひいき」の80%
2024.05.22
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実まず「第1章」の冒頭から、見てみましょう。p15~18<第1章 「えこひいき」の80%>■地震学者の告発「南海トラフ地震の確率だけ『えこひいき』されていて、水増しがされています。そこには裏の意図が隠れているんです」 取材は、地震学者からの衝撃的な「告発」で始まった。 それは2018年2月9日、地震調査委員会が南海トラフ地震が30年以内に発生する確率を「70%程度」から「70~80%」に変更されるとの情報を事前にキャッチした。「いよいよ東海地方に大地震が迫っている」と直感した私の頭の中では「防災対策は十分か」「自身が起きた場合の被害予測は」など、さまざまなニュースの切り口が駆け巡った。 まずは専門的な観点が必要と考え、本社から名古屋大の鷺谷威教授(地殻変動学)に電話した。鷺谷氏は南海トラフの発生確率の検討に関わった政府の委員会の委員だ。当然、このときは防災のために警鐘を鳴らすコメントが返ってくると期待していた。しかし返ってきたのは、冒頭のえこひいきという意外な発言だった。なぜ、自らが検討した確立を否定するのか・・・。訳がわからなくなりかけている私に、鷺谷氏は続けた。「個人的には非常にミスリーディングだと思っている。80%と言う数字を出せば、次に来る大地震が南海トラフ地震だと考え、防災対策もそこに焦点が絞られる。実際の危険度が数値通りならいいが、そうではない。まったくの誤解なんです。数値は危機感をあおるだけ。問題だと私は思う」 ミスリーディング? 誤解? 問題? 予想外の言葉に頭が混乱した。要領を得ない私に鷺谷氏はさらに驚くことを言った。「南海トラフだけ、予測の数値を出す方法が違う。あれを科学と言ってはいけない。地震学者たちは『信頼できない』と考えています。他の地域と同じ方法にすれば20%程度にまで落ちる。同じ方法にするべきだという声は地震学者の中では多いんです。だが、防災対策を専門とする人たちが、今さら数値を下げるのはけしからん、と主張しています」 科学とは言えない? 20%? 下げるのはけしからん? 想定外のコメントの数々が、ますます頭を混乱させた。だが、80%の数値に何かカラクリがあれば、それを知っておく必要がある。 鷺谷氏によると、地震学者たちは、いったんは全国で統一の計算方法を用いて算出した「20%程度」という確率を素直に発表する案も検討したという。ところが、その方針を政府の委員会の上層部に伝えると、大反対が巻き起こった。 確率の出し方は大きく分けて2通りあり、それぞれのメカニズムを電話のやりとりだけで理解するのは難しかった。だが、南海トラフ地震の確率が高いのは特別な算出方法のためで、その方法を地震学者たちが変えようとすると上から圧力がかかったということに、裏の意図があるらしいことは理解できた。 東海地方に住む人間にとって、南海トラフ地震はずっと「必ず来る」と言われ続けている地震だ。そのため、名古屋出身の私も幼い頃から学校などで防災訓練を念入りに行ってきた。しかし、発生確率が作られた数字だったとしたら・・・。この問題は、しっかりと取材しないといけない。そう直感した。 そのときはひとまず電話を終え、デスク(原稿のまとめ役)に報告した。デスクも「70~80%」の数字の大きさだけがことさら目を引くことを警戒し「そんなにでかでかと書かない方がいいな。粛々と報じよう」と冷静に反応した。
2024.05.20
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理マカートニーを謁見する乾隆帝「Ⅳ 近代の到来」でアヘン戦争あたりを、見てみましょう。P130~134<1 「西洋の衝撃」と中国の反応>■マカートニー使節 かくて中国・東アジアは19世紀を迎えた。この時代は「中国の論理」が西洋近代に直面して、転換をとげてゆく過程にほかならない。それはここまでⅠ・Ⅱ・Ⅲ章に述べてきた時間観念・社会構成・世界秩序のそれぞれで生じたことであり、その結果、現代の中国が誕生する。 しかしながら、すべてが同時に、また一様に起こったわけではない。たがいにタイムラグがあり、深浅もまちまちだった。 ごく単純にいってしまえば、Ⅰ章とⅡ章の観念・社会というエリアでは、変化が容易に起こらなかったのに対し、Ⅲ章の世界秩序では、論理の相剋と破綻をきたした。そこを起点に中国が自らの姿を次第に、やがて全面的にあらためてゆく、というシナリオになろうか。その過程をわれわれは近代化、中国革命と呼んでいる。 そのためこうした転換をみるには、第三の世界秩序からはじめるのが便宜であろう。まず縁遠かったはずの外国人に、登場いただきたい。イギリスが1793年、史上はじめて派遣した全権大使・マカートニーである。 イギリスは18世紀の後半、すでに中国との貿易を大幅に伸長させていた。中国はその茶買付で、未曽有の貿易黒字と好景気を謳歌していたのである。それはイギリスから見れば、貿易赤字なので、改善の余地が少なからずあった。マカートニー使節の派遣は、そんな貿易の規制緩和と中英の国交樹立を実現するのが目的である。マカートニーを謁見する乾隆帝 マカートニーは乾隆帝に謁見を果したものの、その使命についていえば、まったくの失敗だった。乾隆帝はマカートニーに、イギリス国王ジョージ三世あて勅命を下げわたしている。いわく、わが「天朝」は「外夷の貨物に頼る」必要はないのに対し、「天朝」所産の「茶葉・磁器・生糸」は、西洋に欠かせない必需品なので、「恩恵を加えて優遇」し、貿易をさせてやっているから、過分の要求など以ての外、「遠人に恩恵をあたえ、四夷を撫育する道義をないがしろ」にする、との文面だった。物知らずな「外夷」・野蛮人に教え諭す口吻である。 そもそもマカートニー使節団は全権大使だから、西洋的な基準でいえば最も高位の使節、相応の礼遇があってしかるべきだった。ところが清朝側の待遇は、まったくの「朝貢」使節に対するものである。そこで「朝貢」使節のマナーである、皇帝に対する叩頭の礼も、実践しなくてはならなかったところ、さすがに宥免してもらった。あまりにも遠いところから来た「遠人」・野蛮人だから、ということで、これまた特別の「恩恵」ではある。 要するに、清朝では君臣こぞって、朱子学的な「華夷」意識一色だった。イギリスとの貿易は、それを極力排除したはずの「互市」カテゴリーにあったはずだが、そこにもすでに浸透していたわけである。多元的な秩序体系の併存がくずれつつあった兆候と見てもよい。 使命は果たせなかった一方で、マカートニーたちは滞在中、清朝の実地調査にいそしみ、多くのレポートを書き残した。その統治が危機的な情況にあることを「ボロボロに傷んだ戦闘艦」にたとえており、その末路を正確に予言さえしている。 そして野蛮人の待遇を受けたはずのかれは、清朝の人々を「現代のヨーロッパ諸国民と比べると、半野蛮人となりはてている」と断定した。互いを野蛮人と見下しあっているわけで、東西双方の世界秩序は、もはや大きな矛盾をきたし、衝突を待っていたといえよう。■アヘン戦争 そのイギリスは、旭日の勢いである。東アジアも当然、それとは無縁ではありえない。18世紀も後半に入って、世界経済が始動するなか、イギリスは本格的な工業化をはじめると同時に、中国からおびだたしい量の茶を買い付けた。その経済力はもはや清朝の世界秩序をも左右するほどになっていたのである。 そうしたなか、イギリスは清朝の待遇そのものに不満をいだきはじめた。それは個別の関係や取引からはじまって、全体的な統治構造・秩序体系全体にも及んでいる。それを象徴するのが、アヘン貿易であった。 アヘンは麻薬であり、清朝でも当然、禁制品である。しかし当時のイギリスと世界経済は、その中国への売却を必要不可欠としたばかりではなく、「自由貿易」というシステムで、それを正当化しようとした。 清朝側でも秘密結社の密売人など、強力な受け入れ体制 が厳然として存在している。双方あいまって、清朝が想定する対外秩序を掘り崩していった。 それを押しとどめようと奮闘したのが林則徐である。かれは時の天子、道皇帝の委任を受けて、アヘン貿易禁圧に乗り出した。しかし帝も林則徐もいかに善意で明察だったにせよ、世界観・秩序観では旧態依然、乾隆帝と選ぶところがない。さすがに有能な林則徐は、任に当たって相手のイギリスのことを知るべく、情報を集めて研究しはじめた。けれども実際の政策や態度は、「華夷」「攘夷」でしかありえなかったのである。『中国の論理』1:はじめに
2024.05.19
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理まず「はじめに」あたりを、見てみましょう。中国嫌いの著者のスタンスが見えるのがええでぇ♪Pⅲ~ⅶ<はじめに>■謎の国 見た目にはとっつきやすく、わかりやすそうな中国は、ほんとうは謎の国である。「ロシアのほうがはるかにわかりやすい」といったのは、西洋史学の大家だった。しかしわれわれ中国を専門に学んでいる者にとっても、やはり中国は謎である。その謎がおもしろい。おもしろさが嵩じて、うかつにも専門の職業としてしまった面もある。■言行不一致 もっとも、おもしろがってばかりはいられない。不可解、謎というのは不気味で、不安をかき立てるし、実害を被る時さえある。謎の中国をめぐっては、往々にして不愉快な事象もまぬかれない。 言行が一致しないことは、その1つ。いっていることとやっていることが著しく異なる、というわけで、なかんづく政府の言動がきわだっている。政治・権力というのは、多かれ少なかれ二枚舌の習性があるものだが、中国は格段に甚だしい。 日本人からみれば、自らに関わる尖閣など、領土問題もそうだし、相手のことなら、その内政じたいがそうである。「腐敗」が蔓延しながら、「法治」を呼号し、しかも言論を弾圧しているのは、いかにも理解しがたい。 政府だけではない。全体についても同じ、やはり日本に対する態度が、典型的である。中国人の多くは「反日」だろうが、その同じ中国人が日本を好んで、大挙して「爆買い」にやってくる。どうにも不気味で、愉快な光景ではない。 もっともそれを極論して、全くのウソつき、と断じてしまうのは、いささか躊躇する。おそらく故意にウソをついているのではない。中国人じしんにとっては、むしろごく自然なふるまいなのだろう。われわれにはそれがウソ、不自然に見えてしまうところに、謎の核心がある。 にもかかわらず、日本人は往々にして、自らの常識で中国をはかりがちである。欧米人とはちがって、近隣に暮らし、姿形も似ているし、同じ文字を使っているからである。しかし言行が一致しないことが、中国の謎から来ているのだとすれば、それをウソつきと片づけてしまっては、単なる知的怠慢にすぎない。謎は謎として、向き合う必要がある。■「一つの中国」 では、その謎はどうやったら解けるのか。そんな問いに対する解答があるなら、筆者が真っ先に知りたいところである。自身はようやく謎が謎であることを認識したにすぎない。 そうはいっても、謎であるとわかったら、貧しい知見ながら、その解き方を模索することはできる。なぜ言行が一致しないのか、そんなふるまいと、それをみるこちら側の常識・見方とが、どうしても食い違ってしまうのか。そうしたことを考えてみるのが、まず第一歩である。(中略) やはり現実は決して「一つ」ではない、けれどもその現実は認めがたい、だからこそ「一つ」であらねばならないし、「一つ」だといわねばならぬ。これが中国側の主張であって、やはりそこには、日本人の容易にはかりしれない論理がはたらいている。■「論理」と歴史 こうした中国の論理、ひらたくいえば、理屈のこね方は注目に値する。そもそも理屈というのは、時と場合、ないしは立場によって千差万別、いろいろ変わっても不思議ではない。しかしそんな表に出る多様な理屈をこねまわす方法、あるいは主張を成り立たせる骨格には、身に染みついた一定のパターンがあって、たやすくは抜けない、変わらないものである。日本人には日本人の理屈のこね方があり、中国人には中国人の理屈のこね方があって、そこにこそ、まとまった集団の個性があろう。 だから個々の理屈、その字面はわかったような気がしても、理屈のこね方、論理に考えを及ぼすと、わからなくなってしまうことも少なくない。「一つの中国」は、その典型である。相手をほんとうに理解しようとするなら、そこまで考えなくてはならない。 だとすれば、中国の謎とは、その論理にある。なぜそう思考するのか、発言するのか、行動するのか。そこに通底しているはずの論理を考察してみようというのが、本書の試みである。
2024.05.18
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・南海トラフ地震の真実・映画の巨人たち リドリー・スコット・中国の論理・宇宙へ(借り出し2回目)<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコット【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へ
2024.05.17
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在138位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在57位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在32位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在29位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在124位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在3位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在4位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在49位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在20位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在50位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在94位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在47位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在8位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約21)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.05.16
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々海外県のフランス語が語られているので、見てみましょう。p40~41<17 海外県のフランス語 Le francais d‛outre—mer> 歌手のダニエル・バラヴォワーヌは、フランス語はよく響く言語だと言いました。その通り。フランス語は遠くまで響く言語、カナダや太平洋のど真ん中、ニューカレドニア、マルキーズ諸島やタヒチにまで響き渡る言語なのですから。海外県のフランス語に接する機会があると、愕然とすることがしばしばあります。 ラジオ・カナダで時評を担当するわたしが接する人たちは、独自の美しい表現も編み出す見事なフランス語を操るのですが、彼らのなまりやイントネーションに思わず不意を打たれ、つまり、笑いそうになってしまうことがあるのです。 ケベックのフランス語話者たちは、かなり独特な話し方をします。具体的に説明するのは難しいですが、主な特徴のひとつに、巻き舌のRがあります。半分Rのような半分Lのような発音で、日本人のそれと少し似ています。 夫とともに招待されたタヒチのサロン・ド・リーブル(ブックフェア)に訪れたときのこと。タヒチのフランス語話者たちもまた、この巻き舌のR()を使うことを知り、おどろいたのなんの。さらに彼らにはフランス語と現地の言葉を頻繁にしかも絶妙に混ぜ合わせる、一風変わった癖があります。結果、本土のフランス人であるわたしには、彼らの言うことの半分しか理解ができません。 旅先であれ、フランス国内であれ、その土地によって多少なりともなまりはあるもの。よく言われるのはマルセイユ、トゥールーズ、そしてエクサンプロヴァンスのなまり。パリジャンだって「粘ついた」フランス語を話すと言われています。 わたしはといえば、ブルゴーニュ出身、厳密にはヨンヌ県の生まれです。さて、みなさんごぞんじでしょうか。お隣のソーヌ・エ・ロワーヌ県の人たちにもある変わった特徴があるんです。それは、なんと巻き舌のRです。『フランス語っぽい日々』2:新旧のシャンソン『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.16
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図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる「第2章 歩く力・走る力」あたりを見てみましょう。p50~52<ヒトの2足歩行―ヒトはコケながら歩く>■ヒト、恐竜、鳥 ヒトは立ち上がって2足歩行をするようになった。2足歩行の利点として次のようなものが考えられるだろう。①手が自由になった。②高い位置から見晴らせるようになった。③脳を重くしても、真っ直ぐに経っていてその真上に脳が乗っているので、支えるのが楽。④2足でしか立っていないので体が不安定になるが、その不安定さを利用して、歩くエネルギーを節約している。⑤直射日光が当たる面積が小さくなり過熱が防げ、また体が地面から離れているため、暑さ寒さの影響を受けにくい。 2足歩行をしているものには、ヒトの他に恐竜とその子孫である鳥がいる。ただし彼らはバランスの取り方がヒトとは違う。恐竜は永くて太い尻尾をもち、胴も尾もともに水平に保ちながら、重心のある位置あたりから肢を垂直に下ろして立っていたとされる。これはT字のやじろべえの姿勢であり、バランスのとれた安定した姿勢である。 鳥の場合は体を軽くするために長い尻尾を失ったし、飛ぶための強大な筋肉を胸のところにもった。そのため体の重心は股関節よりずっと前に移動した。それでもやじろべえ方式で立つために、大腿骨を水平にして前に向け、膝をほぼ重心の位置までもってきて、その位置で膝を曲げて脛(すね)から先を垂直に下ろした。鳥の肢は一見、われわれのものとは逆向きに膝関節が曲がっているように見えるが、あれは不座ではなくくるぶしの関節である。 鳥も恐竜もやじろべえ方式の安定した姿勢を保っているが、ヒトの場合は胴を垂直に立ててしまったため、トップヘビーの極端に不安定な姿勢になった。その点を逆手にとって省エネしているというのが、ここからの話題である。■胴の形 四肢動物は2つのやじろべえが前後に並んだものと見ることもできる。1つのやじろべえは、頭+「胴の前半分」の水平の棒が、真ん中で前肢に支えられているもの、もう1つは、「胴の後半分」+尻尾の水平の棒が後肢で支えられているやじろべえ。やじろべえだから体が安定する。 さらに頭と胴が釣り合い、また胴と尻尾が釣り合っているのだから、重力で頭や胴が垂れ下がらないようにと筋肉で持ち上げ続ける必要がなくなり、省エネになる。とくに胴は重いものだから、陸の大型動物は胴が真ん中で垂れ下がらないように工夫しなければならず、これが工夫の一つである。 ここで胴の形について考えておきたい。胴はおおまかに見れば前後に長い円柱形だが、断面の形は動物群ごとに違う。魚でもよく泳ぐものたちの胴の断面は幅が狭く背腹に長い楕円形であり、これは胴のくねりで水を押す面積をおおきくしていると解釈できる。 四肢動物の胴でも断面は背腹が少々長い楕円形である。重力で前後の肢の間の腹が垂れ下がらないように脊柱をアーチ状に上に凸にし、脊柱から内臓を吊り下げた。このため横幅より背腹の方が長い。胴は建築学的に見れば梁である。梁とは水平方向の支持材のことで、垂直方向の支持材が柱。胴を梁、肢を柱と観ることができる。梁は重力のかかる方向が厚い方が下にたわみにくい。だから胴も四肢動物のように背腹方向に厚い方が力学的に強くて重力で胴が垂れ下がりにくい。『ウマは走るヒトはコケる』1:ウニの歩行
2024.05.15
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図書館で『空港時光』という本を、手にしたのです。おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。rakuten空港時光台湾と日本を行き来しながら育ちましたより「音の彼方へ」で入国カウンターでの躊躇を、見てみましょう。p148~150<台湾> タイワン、のイントネーションについて。 日本では、タイワンと尻下がりのイントネーションで発音するのがふつうだろう。タイワンの「ワン」を、ワーン、と平らに伸ばして発音すると、途端に中国語っぽくなる。「タ」を少々濁らせて、「ダイ」と「ワン」をそれぞれ低く抑え込みながら言えば、もう立派な台湾語。(あくまでも私の個人的な感覚です) タイワーン、とダイワン。 日本生まれの妹はときおり混乱するようだが、台湾で生まれ、二歳半まで台北に住み、四歳の春に日本の幼稚園にあがるまではほぼ中国語と台湾語だけを聞いていた私は、どちらが中国語で台湾語なのか瞬時に判る。けれども私は、「台湾」が、日本語ではタイワンと発音すると知ってからは、タイワーンともダイワンとも言わないようになった。 友だちや先生といった日本人に対してはもちろん、たいわんじんである両親や親せきが相手の時も、日本風にタイワンと言うようになった。ほとんど無意識のうちにそうしていた。日本の学校に通うようになり、日本語を習得しつつあった私は、自分でも知らずしらずのうち、自分の中にある非日本的な響きを疎んじるようになっていたのである。 ・・・BR189便が台北松山空港に到着する。いよいよ「台湾」だ。今の私が、台湾、と日本語で思うとき、その「タイワン」という響きは、少なくとも三つのイントネーションを同時に秘めている。飛行機から一歩降りると、まだ建物の中にいるというのに、もう、南の匂いのする風に撫でられている気分がした。東京はあれほど冷え込んでいたのに。 これから国内線に乗り換えて、さらに南の台東へと向かう。まずは「入国」。ここでまた、エイコさんとはいったん別れなければならない。「外國人」の列の最後尾についたエイコさんに、あとでね、と手をふって、「本國人」の列へと向かう。「外國人」の列よりもそれはずっと短かった。 エイコさんや同じ飛行機に乗っていた日本人たちを何人も追い抜いて、その短い列に並ぶのは抜け駆けのようでちょっとうしろめたい。いや、堂々と振る舞えばいい。タイワン。私は、ここでは、外国人ではない。今、手にしているパスポートが、そのまたとない証ではないか。 私は、台湾(ここ)では外国人ではない。 私がそれを最も意識する場所は、空港だ。それも入国カウンターで、だ。何よりもまず、訪れた個人がどこの国家のパスポートを持っているかを問う場所。たとえ私が、どちらかといえば自分は日本人だと感じている、と主張したとしても、それがどうした。審査官は、私がナニジンであるかを私の持つパスポートによって判断する。 前のひとの審査が終わったようだ。赤い線の向こうに踏み出そうかどうか躊躇している私を、早くしろ、とばかりに審査官が見やる。そもそも一段高いところに座っているので、その視線は、どうしてもこちらを見下ろすものになる。審査する側とされる側。される側の私は、なすすべもない。それでも(それだから?)私は、明るく感じよくふるまう。『空港時光』1:出発と再入国
2024.05.15
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図書館で『空港時光』という本を、手にしたのです。おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。rakuten空港時光冒頭の「出発」の手続きを、見てみましょう。p6~8<出発> IMMIGRATION 出国 DEPARTED 入国審査官―日本国 HANEDA A.P 12 MAR. 2002 真新しいパスポートの一頁に、出国スタンプの判が捺された。ついに、出発だ。大祐(だいすけ)の興奮は募る。搭乗券に印字された搭乗口は「G 05」。Gに続く「0」を、アルファベットの「O」と一瞬みまちがえる。「Go」と「5」で、ゴーゴーか。大祐は可笑しくなる。 搭乗時刻まではあと半時間ほど余裕があった。あたりを見渡せば、名だたるブランド店が連なっている。子どもの頃に祖母や大叔母に連れられておとずれた百貨店の風景ににていると大祐は思う。ちがうのは、そこらじゅうに「免税 duty-free」という文字が躍っているということ。そして、天井まであるガラス窓一枚隔てたむこうには、滑走路が広がっていること。 雲一つない、よく晴れた空にむかって離陸する飛行機が見える。空を斜めによぎりながら遠ざかってゆくその姿を目で追っていたら声がよみがえる。・・・あたし、飛行機は自分が乗る日にだけ飛ぶと思ってたんだ。 かのじょとは、大学一年生のとき、中国語のクラスで知り合った。初回の授業で、就職に役立てたい、とか、三国志演義が好きだから、とか、漢字なら何とか読めそうなので、などいったことを第二外国語に中国語を選んだ理由としてクラスメートたちは答えていた。大祐も自分の番がまわってくるまでに何かそれらしいことを言わなければと思い、あまり深く考えずに、ジャッキー・チェンが好きだから、と答えた。「音の彼方へ」で再入国の手続きを見てみましょう。p138~140<台湾(中国)> 私の国籍。私という個人が属していることになっている国家の名称。それについて考えるとき、私は揺れる。ボールペンを置き、傍らのパスポートを手にとる。私とパスポートの付き合いは長い。考えてみれば三十年近くの歴史がある。三歳になるかならないかの頃からずっと、パスポートは私の身分を証明してきた。私が温又柔であると保証していた。ほかでもない私自身が、お名前は? と訊かれて、オンユウジュウです、と答えることができなかった時期から。 それ以来、一度も途切れることなくパスポートを更新し続けてきた。数えたことはないけれど通算十数冊目であるはずの私のパスポートの表紙には「中華民國 REPUBLIC OF CHINA」と金色の文字が記されている。真ん中あたり(日本のパスポートなら菊の紋章に該当する位置)には、太陽の形のマークが描かれてある。 これは中国国民党の党章を基本とした「中華民國」の「国章」だそう。国章の下側には「TAIWAN護照PASSPORT」とある。以前は「TAIWAN」の表記はなかった。それが記されるようになってからまだ十年も経っていない。(中略) 中華民国(=台湾)外務省の発行したパスポート。表紙に「REPUBLIC OF CHINA」と「TAIWAN」が同時に並ぶパスポート。台湾(=中華民国)じたいが、「中国(CHINA)」と「台湾(TAIWAN)」の間で揺らいでいる。「再入国記録」の国籍蘭には、「Nationality as shown on passport」という英文が添えられている。ただ「国籍」というのであれば「Nationality」だけでいいはずだ。何故「as shown on passport」と続くのだろう。パスポートを持たない人は、どうすればよいのだろう。もちろんそんなことはありえない。「再入国記録」の記入は、(渡航先がどこであろうと)日本からの出国を前提とした行為なのだ。そして、出国には、パスポートの掲示が不可欠なのである。
2024.05.14
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図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケるBuNa第1回 ウニの世界より最終章の「第11章 ウニの歩行」あたりから食いついてみようと思う次第です。p269~271<ウニの体はまったくユニーク> 私自身が研究したことにも若干触れて本書を閉じたい。私がもっぱら研究してきたのは棘皮動物、つまりナマコ、ウニ、ヒトデの仲間で、どれもきわめてゆっくりと海底を這う。こんな逃げ足の遅い動物はたいてい隠れているものだが、棘皮動物は海底に露出して暮らし、それでも食われてはいない。そのことは沖縄の海でナマコの多さに驚き、磯焼けの海のウニの多さにうんざりすればわかる。のそのそしていても食われないのはなぜかが、そもそも私の疑問だった。 その答えは3つの手段で身を守っているから。①毒(ナマコやヒトデ)、②硬い殻と棘(ウニ)、③硬さの変わる結合組織(これは棘皮動物すべてにある) ③については説明が要るだろう。ナマコやヒトデの皮(結合組織)は緊急時に非常に硬くなって動物を守る。このような硬さのすばやく変わる結合組織を私は「キャッチ結合組織」と呼んでおり、棘皮動物独特なものである。 ウニにもキャッチ結合組織があり、やはり身を守ることに関係している。ウニの殻はちょうど栗の毬(いが)のように見えるが、栗とは違い棘を動かすことができる。棘は殻の上の小さな丸い膨らみ(いぼと呼ぶ)の上に乗っており、棘といぼの間はボールジョイントそっくりの関節になっている。関節には筋肉があり、これで棘を振り動かす。 関節には筋肉の他に靭帯があり関節の脱臼を防いでいるのは哺乳類の関節と同様だが、この靭帯がキャッチ結合組織なのである。 これは緊急時には硬くなり、棘をガチッと立てて不動にし、槍ぶすまをつくって身を守る。このキャッチ結合組織が私のライフワークだった。だからいかにして動かなくて済むかの研究をずっとやってきたことになる。そんな人間が本書を書いてしまったのだが、移動運動の研究をまったくやらなかったわけではない。 ウニの棘の根元のキャッチ結合組織は固くなって身を守るだけでなく、ふだんは棘の動きのじゃまをしないように柔らかい状態になっている。だから棘を大きく倒して狭い隙間を通り抜けることもできるし、棘を振って歩くウニもいる。大学を定年退職する前の数年間、ウニの歩行の研究をしたのでここに紹介したい。<歩帯> まずウニの体について説明しておこう。ウニの殻はちょっと上下につぶれたボール状であり、これを地球儀に見立てる。殻の頂上が北極(背中側の真ん中)で、ここに肛門がある。口は南極、つまり地面に向いている面の真ん中が口。北極と南極の中間が赤道で、ここが殻の一番太った部分。赤道より下の南半球を口側、北半球を反口側と呼びならわしている。(中略) ウニの体は球形だがやはり5放射相称で、歩帯が5本、放射状に配列している。各歩帯は南極と北極をつなぐ経線に沿って走っており、そこに管足が並んでいる。歩帯と歩帯の間が間歩帯で、ここに歩くための棘がある。ウーム、やはりちょっと専門的すぎるようで、食いつき難いのでおま♪
2024.05.14
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々カリンが新旧のシャンソンについて述べているので、見てみましょう。p78~79<35 シャンソンで Èn chanson> 外国語の学習法でつい忘れがちなものに「歌 chanson」がある・・・息子が日本語で童謡を歌っているのを聞くたびそう思います。それまでは知らなかったけれど、日本のちびっ子たちがみんな知っている節回しのおかげで自然と覚えることができた言葉が童謡にはたくさんあります。 息子は歌でアルファベットを覚え、フランス語で10まで数えることもできるようになりました。言語にはその言語固有のメロディーというものがあって、たとえ何も理解できないとしても、よく聞いてそのリズムやイントネーションを覚えることが肝要。子どもは見事にそれをやってのけます。 日本人にとって「シャンソンchanson」といえば特定のカテゴリーを思い起させます。それは、必須の作詞家や歌い手の名とともに刻まれた1940~80年代のフランスの流行歌。シャルル・トレネ、ジョルジュ・ブラッサンス、ジャック・ブレル、セルジュ・ゲンズブール、エディット・ピアフ、ジュリエット・グレコ、シルヴィ・バルタン、ジェーン・バーキン、フランソワーズ・アルディ・・・以下略。 日本にはフランス好きの小さなアマチュア歌手グループが数多くあり、みなこうしたアーティストたちのシャンソンを覚え、たがいに感染力の強い熱心さで分かち合っていることにいつも驚かされます。 想像してみてください。パリのあちこちで演歌のリサイタルを開く、何十ものフランス人集団があるでしょうか。 いっぽうで、これらアーティストの全盛期以降もフランスの歌謡曲はかなり進化しているのに、残念ながらバンジャマン・ビオレ、ドミニク・A、ブリジット、ケレン・アン、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズといった才能豊かな彼らの後継者たちは、日本ではほとんど知られていません。 バンジャマン・ビオレに「東京の椅子 Une shaise a Tokyou」という歌がありますが、最近のアーティストたちはまだまだ日本では人気の座を獲得できていません。ぜひ一度聞いてみてください。きっと耳に残るはずです。イヴ・モンタン、ジャック・ブレル、エディット・ピアフ、シルヴィ・バルタンなどをよく聞いたが・・・最近のシャンソン歌手はさっぱり知らないのです。1940~80年代以降のシャンソンについては聞く機会がなくなったのだが、メディアが取り上げないためか、フランコフォニーの意気消沈のためか?『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.12
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々カリンが「言葉とは思考の方法」と述べているので、見てみましょう。p104~105<47 言語を替える、考え方が変わる Parler une autre langue, c‛est repenser> 外国語を学ぶ、それは単に母語の単語や文を別の言語で仕立て直すだけのkとではなくて、コンピュータのOSをすぱっと変えてしまうようなもの。わたしは日本で毎日そう実感しています。言葉とはつまり思考の方法。 いえ、もちろん、翻訳でも言いたいことはそこそこ伝わりますが、それで外国の社会に溶け込むことにはなりません。フランス人にとっては日本の場合が特にそう。なぜなら日本語を深く勉強すればするほど、わかってくるのです。解釈の余地の大きい曖昧な表現や遠回しの言い方が、この言語ではどれほど好まれていることか。 非常に直截な表現もたしかに存在します。だけど公の場やテレビ、政治家の演説では、こみいった文の言い回しや「~ではないかと思います」といった否定疑問表現のほうが重宝されます。 フランス語では、俗に言う「鍋のまわりをうろうろtourner autour du pot(遠回しの言い方を)」することは少なく、「言葉をもごもごmacher ses mots(歯に衣を着せ)」もしません。フランス人の意識では、それは失礼ではなく、率直であり、大人だということです。日本では逆に、習得した社会慣習のフィルターを通さず、考えをダイレクトに表現するのは、子供にしか許さない、幼稚なふるまいとみなされます。 そんなわけで、フランス人女性が日本に来て、母語同様にズバズバ日本語でものを言うと、どこか子どもじみた印象をあたえます。いっぽう、パリに来た日本人が、自分の本心をフランス語ではっきりと言い表さなかったら、人間が未熟だと思われます。
2024.05.12
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・ウマは走るヒトはコケる・空港時光・フランス語っぽい日々<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten空港時光【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々
2024.05.11
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在145位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在64位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在34位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在33位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在130位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在2位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在3位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在4位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在51位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在22位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在50位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在95位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在47位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』<予約分受取:2/04以降> ・絲山秋子『御社のチャラ男』(1/27予約、2/04受取)・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.05.11
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図書館で『地図で見るロシアハンドブック』という本を、手にしたのです。この本は2022年のウクライナ侵攻前に発刊されているが・・・2014年のクリミア半島侵攻には触れているので借りた次第です。【地図で見るロシアハンドブック】パスカル・マルシャン著、原書房、2021年刊<「BOOK」データベース>よりロシアの現状が一目瞭然でわかるアトラス!ウクライナ危機、国境の変化、世界の新たな均衡など、今日のロシアの地政学的利益が一目でわかる。<読む前の大使寸評>この本は2022年のウクライナ侵攻前に発刊されているが・・・2014年のクリミア半島内戦には触れているので借りた次第です。rakuten地図で見るロシアハンドブック「ウクライナⅡ」で2014~19年のウクライナを、見てみましょう。p133~136<クリミア半島> 14世紀から19世紀にかけて、クリミア半島はクリミア・タタール人の手中にあった。彼らのたえまない襲撃は、1571年にはモスクワにまでおよび、数百万人のスラブ人がオスマン帝国で奴隷となった。その後、[彼らのクリミア・ハン国は]ロシア皇帝エカチェリーナ2世の軍勢に征服され、タヴリダ県としてロシア帝国に組みこまれた。 おもにロシア人が住むクリミア半島は、1924年にボリショヴィキが「共和国」(主権をもたない)からなる連邦を結成したとき、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国ではなく、ロシア・ソヴィエト社会主義共和国にふくまれていた。 1954年、自身もウクライナ人であるフルシチョフは、「ウクライナ」(実際には当時はドニエプル地方のみ)とロシアの連合300周年を機に、クリミア半島をウクライナにゆずることを決めた。おもにロシア人であるクリミア半島の住人は、同じソヴィエト連邦の国にとどまっていたので、ほとんど反発はなかった。1992年にウクライナが独立したとき、クリミア当局と住民はロシアへの帰還を求めた。ロシア議会はこれを受け入れたが、エリティンは拒否した。1990年代を通じて、クリミアとキエフの関係はきわめてむずかしいものとなった。スターリンによって中央アジアに強制移住させられた少数民族のタタール人は、この10年のあいだに自分たちの土地にもどってきた。 2014年2月21日にキエフでクーデターが起こったあと、新政権に抵抗する住民の反乱が最初に起きたのは、クリミアだった。ロシア軍の支援のおかげでこの反乱は成功をおさめる。クリミアは住民投票をおこなって3月11日に独立、16日にロシア領への編入を宣言した。ウクライナ東部のドンバスでも反乱が起こった。2014年6月、ウクライナで内戦が勃発する。<2014年の危機とモスクワとの段階的な関係凍結> 2014年6月に前倒しでおこなわれた大統領選挙(EUの調停による2月21日の合意でまもられたただひとつの点だ)では、ペトロ・ポロシェンコが第1回投票で過半数を得て当選した。危機の中にあって、対立する両陣営と話すことができる唯一の指導者だった。西部でも東部でも、内戦の広がりをおそれていた国民は彼に信頼をよせた。 しかしウクライナは、厳しい経済状態にあった。ソ連から受け継いだ軍需産業では、まだ20万人近くが働いており、ロシアの軍需産業とも密接な関係をたもっていた。ところが、ウクライナ政府がNATOとつながりを持つ可能性があるというだけで、ロシアは共同プロジェクトをすべて中止したのである。 ウクライナのユージュノエ(設計局)=ユージュマシュ()グループは、ロシアの新型ICBM「トポル」の製造に協力することになっていたが、その計画はすぐにロシアの工場に移管された。このグループはソ連の3つの大型打ち上げロケットのひとつ、「ゼニット」も設計・製造していた。だがバイコヌール宇宙基地にも立ち入れなくなった。予定されていたブラジルとの協力関係も、資金不足から2015年に解消された。ウクライナの花形産業は壊滅させられた。 ソ連のアントノフ設計局を前身とする航空機メーカー、アントーノウは、2014年にすでに困難な状況にあった。2010年から2012年にかけて,6機しか販売していなかったのだ。(中略)<2019年、窮地> 2019年4月、ウクライナ政府は新たなロシアからの輸入禁止、ロシア語の使用を制限する措置、ロシアのおよそ10の出版社のウクライナでの販売禁止などを決定したのである。これに対してロシアは、ウクライナからのパイプライン管の輸入および、ロシアからウクライナへの輸出の70パーセントを占めている石油製品(40億ドル)と石炭(15億ドル)の輸出を禁止することを決定した。選挙前夜には緊張関係が頂点に達していた。 だがペトロ・ポロシェンコは2019年の4月の大統領選挙で、政治経験のないコメディアンに敗北した。ウォロディミル・ゼレンスキーは、支持政党をもたず、相手候補を支持する現行議会にはばまれながらも、73パーセントの票を獲得して大統領に選ばれた。 彼は議会を解散し、2019年7月にウクライナ最高議会選挙をおこなうことを決め、勝利した。しかし、選挙で大きなテーマとして掲げていた反汚職を実現できるかについては、懐疑的な見方をされている。 彼はきわめて悪化した経済状況を受け継いだ。モスクワとの対立は、とくにウクライナの経済にダメージをあたえている。2019年5月20日にゼレンスキー氏が大統領に就任したが、そのあたりのことがコメディアンから「戦時下の大統領」にで見られます。また、ロシアによるゼレンスキー氏暗殺計画を阻止、「スパイ」2人逮捕という気になる報道も出ています。
2024.05.09
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図書館で『外国人記者が見た平成日本』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪【外国人記者が見た平成日本】ヤン・デンマン著、ベストセラーズ、2018年刊<出版社>より現代日本に蔓延している悪性のニヒリズムはいったいどこから来ているのか? これほどまでに高まっている「不信感」はどうすればよいのか? 『週刊新潮』の名物コラム「東京情報」の執筆者で自称オランダ人記者ヤン・デンマンによる珠玉の平成日本の比較文化論。<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪rakuten外国人記者が見た平成日本「第5章 日本のジャーナリズムの弱点」で反捕鯨カルトを、見てみましょう。p324~327<イルカをめぐる雑音> 世界動物園水族館協会(WAZA)がイルカの追い込み漁を残酷だと問題視し、それを受けて日本動物園水族館協会(JAZA)が、和歌山県太地町産のイルカの入手を禁止したという。先日S・P・I本社に送った記事をもとに、一人の外国人特派員の立場からこの問題を考えてみたい。 食文化は、宗教と密接にかかわるものだ。ご存じのように、イスラム諸国では豚を食べることはない。彼らからすれば、日本のトンカツは論外である。日本でも仏教の影響で、明治までは四つ足のものは口にせず、たんぱく質は豆腐や納豆などで摂っていた。 中国は儒教の影響が強く、タブーがないので、なんでも食べる。「四つ足で食べないものは机だけ」と言われるように、犬や猫も食べる。 それではキリスト教諸国はどうか。 日本の捕鯨に一部の欧米人は文句を言うが、これも完全に宗教問題である。聖書の「ヨブ記」には、神がヨブに様々な試練を与える様子が描かれている。そこにクジラが登場するが、「神はクジラを遣わした」との記述がある。つまり、「神の遣いを獲ってはならない」というわけだ。 もっとも、欧米人は長年にわたり捕鯨を続けていた。その言い訳はすでに用意されている。メルヴィルの小説『白鯨』にはこうある。「我々はクジラを殺して、その油を絞る。その油はランプの灯となり、各家庭の中で、その光で神の言葉を読むのだ」<「恵比寿信仰」> 日本の捕鯨やイルカ漁も宗教と深い関係がある。 イルカ漁は和歌山だけでなく、熱海や能登、千葉でも行われてきた。ただし、必要最小限の量を捕獲し、その場で消費する。 私は取材した漁師から「恵比寿信仰」を教えてもらった。 釣竿を持ち鯛を掲げる恵比寿様は、漁師の神様でもある。その信仰においては、自分たちの浦に流れ着いたものは、神からの恵みであり、ありがたく頂かなければならない。 日本ではイルカもクジラも神の贈り物とされてきたのである。伊勢神宮の遷宮の際に使われる御物のひとつにクジラのひげがある。欧米が日本の捕鯨にケチをつけるのは、伝統文化への侵略に他ならない。 若い頃からクロード・レヴィ=ストロースの思考に馴染んでいた私は、自分たちと異なる風習を「野蛮だ」と切り捨てる態度がいかに野蛮なものであるか、身にしみて感じていた。 宗教により食文化が異なるのは当然であり、他国に口を出すのは慎むべきである。 私は日本でイルカやクジラを食べることに、それほど抵抗はなかった。千葉の九十九里に住む友人は、子供の頃、「イルカのタレ」というおやつがあったという。イルカの肉をしょうが汁に漬けて臭みをとり、しょうゆに漬けて天日干ししたものだ。これを炙れば酒の肴にもなる。 クジラも旨い。日本人は肉、骨、ひげ、皮にいたるまで、目玉以外はすべてを活用してきた。先述の友人によれば、戦後の給食でクジラは定番のメニューだったという。クジラのベーコンは今では高級食材だが、当時は安い弁当に入っていた。日本人にとって、クジラは思い出の味なのだ。 実はわれわれ欧米人にもクジラ好きは多い。渋谷のクジラ料理屋に行けば、欧米人も舌鼓を打っている。一部の反捕鯨カルトに、むやみに譲歩するのはナンセンスである。<エコ・テロリスト> 反捕鯨、反イルカ漁の背後には、グリーンピースやシーシェパードなどの環境保護を唱えるテロ集団が存在する。いわゆるエコ・テロリストだ。彼らがクジラやイルカに執拗にこだわるのは、ニューエイジ思想の影響である。 60年代のアメリカでは反ベトナム戦争のヒッピー文化が発生した。彼らはやがて「ガイア思想」、つまり地球は一つの生命体であるという思想に取り憑かれるようになる。瞑想により意識のレベルを高めることで地球と一体化するというオカルトだが、その教祖が脳科学者のジョン・カニンガム・リリーだ。彼は脳神経に電極を通す研究を行い、FBIなどの政府情報機関の洗脳に悪用されることもあった。また、法律で規制される前には、LSDを使って人体実験を行っていた。 LSDを使ってトリップすれば、動物、地球と一体化し、神に近づくことができるという荒唐無稽な発想である。(中略)『ザ・コーヴ』という映画がある。太地町のイルカ漁を隠し撮りした映画だが、監督のルイ・シホヨスは、インタビューで「ジョン・カニンガム・リリーとは友達だ」と言っていた。 結局、カルトは連鎖する。 テレビドラマの『わんぱくフリッパー』や映画『イルカの日』により、イルカは知能が高く、アシカやオットセイを食べるシャチのような獰猛な生物ではないというイメージが振りまかれた。しかし、イルカは別に平和的な動物ではない。弱い仲間をいじめて殺すこともあるし、気晴らしのためにアザラシを食べる前にいたぶることもある。 大体、人間に近いということは、残虐であるということではないか。『外国人記者が見た平成日本』1:文庫文化
2024.05.08
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図書館で『外国人記者が見た平成日本』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪【外国人記者が見た平成日本】ヤン・デンマン著、ベストセラーズ、2018年刊<出版社>より現代日本に蔓延している悪性のニヒリズムはいったいどこから来ているのか? これほどまでに高まっている「不信感」はどうすればよいのか? 『週刊新潮』の名物コラム「東京情報」の執筆者で自称オランダ人記者ヤン・デンマンによる珠玉の平成日本の比較文化論。<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪rakuten外国人記者が見た平成日本本を予約する際には、新刊本か文庫本かを選ぶことになるのだが・・・文庫本文化が語られているので、見てみましょう。p278~281<豊饒なる文庫文化> 2017年、文藝春秋の社長が全国図書館大会で「図書館で文庫を貸し出すのはやめてください」と発言した。それが文庫市場の低迷に影響している可能性があるとし、読者に対しては「文庫は借りずに買ってください」と訴えた。 アルバイトの小暮君が資料を配る。「文庫市場は2014年以降、年率約6%減と大幅な縮小が続いています。文庫は文藝春秋社の収益の30%強を占める最大の収益事業で、『週刊文春』などの雑誌事業を上回っているそうです。だから、文庫本の売り上げ低迷は死活問題なんですね」 もっとも、図書館の本の貸し出しは、出版物販売に負の影響を与えてはいないという研究結果もある。 フランス人記者が顎髭を撫でた。「オレは文藝春秋の社長の意見に賛成だ。そもそも文庫は、単行本として刊行された作品を、より広範な読者に対し、手に取りやすい価格で提供するものだろう。出版社からすれば、同じ作品を半分以下の値で売るわけで、たくさん売れなければ採算が取れない」<貧乏学生でもカントを買える> たしかにそうだ。図書館は、個人で入手するのが困難な本を、知識へのアクセスが社会にとって重要であるという理由で無料で貸し出している。高価な学術書や専門書の出版も、図書館の買い上げが生命線になっている。 しかし文庫は、そもそも誰もが容易に知にアクセスできるようにつくられたものだ。今の図書館は、誰もがいつでも買えるものを無料で貸し出し「市民のニーズに応えている」と勘違いしているのではないか。 イギリス人記者が同意する。「民間がやるべきことと公の機関がやるべきことの区別がついてないんだな。貸し出し数が多ければ市民サービスの要求に応えたと思い、貸し出し数が少ないと税金の無駄だと勘違いする。だが、税金の正しい使い道は、民間の論理では成り立たないサービスを公の論理で提供することなんだ。公務員が民間と同じ論理で動くのは、民業圧迫以外の何物でもない」 先輩ジャーナリストのY氏が頷く。「誰も借りないような難しい本を所蔵するから図書館は価値があるんです。文庫を無制限に貸し出すのは、文化の破壊につながると思いますよ。文庫は日本の読書文化の中核です。貧乏学生でもカントの『純粋理性批判』を買うことができる。図書館は無料だから、一見、貧乏学生に優しいようですが、肝心の版元がダメージを受けるなら、良書の出版が妨げられることになりかねません」 文庫の最大の魅力は、気軽に古典に触れられることだろう。文庫がなくなり新刊本ばかりになったら、薄っぺらい世の中になる。世界を見ても、古典を持たない国はバカにされている。一方、イタリアのように豊饒な文化、古典を持つ国は、経済的に停滞していようが一目置かれる。 日本には古事記、万葉集、源氏物語、平家物語などの古典があるが、われわれ西欧人が日本を重視する理由はまさにここにある。 小暮君が鞄から岩波文庫の『存在と時間』を取り出した。「僕は今、ハイデガーを読んでいるんです。岩波文庫は日本で最初の文庫ですよね」 Y氏が首を振る。「いや、新潮文庫のほうが先です。でも、休刊して、岩波文庫ができた後に復活している。岩波文庫の巻末に有名な『読書子に寄す』という創刊の辞があります。その中に、『吾人は範をかのレクラム文庫にとり』という一節がある。岩波はドイツのレクラム文庫を真似したのですね」 資料によると、レクラム文庫の創刊は1867年なので、明治維新の頃だ。岩波文庫の創刊は1927年、第一次新潮文庫は1914年である。 小暮君が身を乗り出す。「なるほど、文庫という形態は日本独自のものではないんですね」<似て非なるペーパーバック> フランス人記者が唸る。「だが、レクラム文庫の位置づけは、日本の文庫とは少し違う。ドイツは職人文化が根強いので、18歳で中等教育を終えてそのまま大学に進むのは一部のエリートだけだ。日本人はドイツと聞くとカントやヘーゲル、マルクスを思い出すのかもしれないが、レクラム文庫でそんなものを読むドイツ人はごく少数だ」 イギリス人記者はベトナム戦争を取材している。「アメリカのペーパーバックも文庫に似ているが、やはり位置づけが違う。通俗小説が中心だし、読み捨てを前提にしているので、非常に安い紙を使っている。日本の文庫は非常にいい紙を使っているだろう。ベトナムでは基地間の移動のため軍用ヘリに乗ったことがある。その待合所に、大量のペーパーバックが並んでおり、何気なく1冊を手に取ったら、面白くて移動中に大方読み終えた。移動先の待合所に置いてきたが、兵隊たちもそうしていたようだ。日本の文庫より、あらゆる意味において“軽い”のがペーパーバックの魅力だろう」
2024.05.08
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図書館で『習近平の敗北』という本を、手にしたのです。表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。【習近平の敗北】福島香織著、ワニブックス、2019年刊<「BOOK」データベース>より無能でも皇帝になれる共産党体制、すさまじい牢獄国家で暮らすということ、日本は中国とどう向き合うべきか!-政変、動乱、分裂…中国を襲う9の厄災。<読む前の大使寸評>表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。rakuten習近平の敗北「第六章 軍靴の足音」で米中の軍事プレゼンスを、見てみましょう。p216~227<中国は苦しい時ほど戦争を仕掛ける> 中国がどこかで戦争をするかもしれない。そういう予感はこの数年、ずっと漂っています。 中国は国内が不安定化すると対外戦争を行って国威発揚し、中国共産党の軍権掌握と人民の愛国心やナショナリズム高揚効果を狙う、と同時に軍内の不穏分子を戦場に送り出す、というようなことを実際にやってきました。 記憶に残るのが1979年の中越戦争です。結果的に中国はズタボロに負けるのですが、国内では大勝利を宣伝し、文革によって求心力が落ちた中国共産党の威信を取り戻す効果がありました。またその敗戦の責任を文革中にはびこった扱いづらい軍内左派の軍幹部に負わせて排除し、替わりに自分に忠誠を誓う将校を出世させ、軍権の掌握を勧めました。 実戦を通じて解放軍の弱点を理解した鄧小平はその後、大規模な軍制改革や、軍の近代化を勧めました。 この軍の近代化の成果を試す意味もあり、また1979年の敗北の雪辱を晴らすためにも1884年に再び中越国境紛争を起こします。実際は苦戦を強いられ多大な犠牲を払いましたが、やはりこれも大勝利と国内で宣伝され、鄧小平のカリスマ的地位を確立することになりました。(中略)<半島有事> この原稿を書いているとき、おりしも2回目の米朝首脳会談(2019年2月)がハノイで行われ、何の進展もないまま会議は決裂しました。両首脳は予定よりも2時間も早く会談を切り上げてランチもとらずに早々にホテルに帰ってしまったそうです。 この決裂の原因は、北朝鮮側が「制裁解除を先にせよ」と要求し、米国側は「寧辺以外の全核施設の廃棄や保有するすべての核弾頭の提出などが先で、それが終わってから制裁解除だ」ということで、米朝双方の主張が根本的に対立しているので合意できないのですが、実質進展がないものの、もう少し双方が取り繕って、基本的合意だとか、覚書きのような文書を出すこともできたわけです。そうせずにトランプが席を立って会議を決裂させたのは、同席したボルトン大統領補佐官の振り付けのようです。 半島問題の専門家、重村智計さんから聞いた話ですが、北朝鮮との話し合いは「交渉すると負け」なのだそうです。先に席を立って、北朝鮮側に追いかけさせて、北朝鮮に譲歩させるのが北朝鮮との正しい交渉術。ボルトンはそれを熟知していたので、トランプに交渉しないで帰るようにアドバイスしたのかもしれません。(ここで6ページほど中略) 北朝鮮には常に軍事クーデターの危険性が潜んでいますが、もし軍事クーデターが起きるとしたら、ほぼ必ず中国解放軍の協力があるでしょう。逆にいえば解放軍がその気になれば北朝鮮でクーデターを起こせます。解放軍、特に旧瀋陽軍区は朝鮮族も多く、軍事物資や資源の密輸入共謀関係があり、心情的にも利益供与的にも絆は深いのです。 習近平政権が命じてそうした北朝鮮有事をたきつけなくとも、解放軍内の不満や不安がそういう形で暴発することはありうるでしょう。旧瀋陽軍区は、汚職で失脚させられた軍長老・徐才厚の部下がまだ多くおり、不満をくすぶらせています。 また習近平サイドが、旧瀋陽軍区内のアンチ派を粛清する口実にするつもりで、軍内で何か問題を起こさせる、ということもあるかもしれません。北朝鮮政府内部がいつ倒れてもおかしくないほど求心力を失ったとき、ロシアも狙っている羅津、清津といった重要港はなんとしても先に抑えたい港ですから、どんな手を使ってもおかしくはないでしょう そう考えると、半島情勢は、韓国の文在寅が夢見ているような“お花畑”のようなものではなく、いつ引火爆発を起こしてもおかしくないガスが充満しているようなものといえるでしょう。<南シナ海有事> 南シナ海はどうでしょう。オバマ政権の8年間の間に、中国は南シナ海の領有権問題でフィリピンやベトナムらと争う岩礁島の実効支配を次々と固めていき、軍事拠点化を進めてきました。 具体的にはスビ礁、ファイアリー・クロス礁、クアテロン礁、ミスチーフ礁、ヒューズ礁、ジョンソンサウス礁、ガベン礁の7つの岩礁島を埋め立てて人工島にしているだけでなく、造りあげた島を基地化しています。このうち、スビ、ファイアリー・クロス、ミスチーフの3島には3000メートル級の滑走路ができています。また軍艦が着けられそうな港湾施設、レーダー施設なども設置されているようです。 ファイアリー・クロス、ジョンソンサウス、クアテロン、スビ、ミスチーフには灯台が造られ、中国の交通運輸部が運用しています。気象観測所も造られ、軍人だけでなく民間人(あるいは民兵)も常駐するようになってきています。 ロイターの安全保障専門家の見解をもとにした報道によれば、特にスビ島は解放軍海軍陸戦隊数百人が常駐することを目的に400以上の建物が建てられ、ちょっとした街がけいせいされているといいます。米国の民間衛星写真をみれば、バスケットコートや練兵場が並び、解放軍基地らしきものが確認できます。 1974年のベトナムとの西沙海戦で実効支配を奪ったウッディー島には、2700メートルの滑走路があり、2018年には爆撃機の離着陸テストが行われ、地対空ミサイル発射台が配備されるなど軍事拠点化が進んでいます。(中略) 2018年6月初め、シンガポールで開催されたシャングリラ会合ことアジア安全保障会議では、ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は演説で、中国が南シナ海の人工島で、ミサイル配備や電波妨害施設の設置、新型爆撃の離着陸テストなどを行っていることは周辺国への「脅迫と威圧」であると断言しました。 かつて習近平国家主席が「南シナ海を軍事拠点化する意図はない」と言ったことに反していると批判し、「必要なら断固とした措置をとる」と軍事オプションを臭わせました。 このとき、台湾の台湾の防衛能力強化のために米国が装備面で積極的に協力していくことで、「南シナ海における中国の軍事的脅威に対抗する」とも発言しており、南シナ海有事が台湾有事とも連動する可能性をほのめかしています。(中略) 中国と岩礁島の領有を争うフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はこうした米中の軍事的緊張が、自国が領有を主張する岩礁島が含まれる海域で急激に高まっていることについて、米中紛争に自国が巻き込まれる懸念を言い出しています。フィリピンは岩礁島を中国に実効支配され、その国際海洋法違反をハーグの仲裁裁判所に提訴して勝訴していますが、中国はこれを公然と無視しています。『習近平の敗北』1:習近平政権の変節
2024.05.07
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図書館で『習近平の敗北』という本を、手にしたのです。表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。【習近平の敗北】福島香織著、ワニブックス、2019年刊<「BOOK」データベース>より無能でも皇帝になれる共産党体制、すさまじい牢獄国家で暮らすということ、日本は中国とどう向き合うべきか!-政変、動乱、分裂…中国を襲う9の厄災。<読む前の大使寸評>表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。rakuten習近平の敗北「第二章 嫌われ習近平に漂う政変のにおい」で習近平政権の変節を、見てみましょう。p73~77<毛沢東ばりの対外強硬路線> また習近平の外交政策は毛沢東的対外強硬路線に近くなりました。鄧小平は「外国に学べ」とスローガンをうち、改革開放経済を進めた国際協調路線を打ち出してきました。これを「韜光養晦」、つまり、いつか大国として復活しようという野心を隠して、実力が不足している時代は、国際社会のスタンダードに自ら沿う姿勢をアピールし、外国から吸収できることはできるだけ吸収していく戦略でした。 この結果、米国や日本の資本や技術を呼び込んで中国の高度経済成長時代を実現し、WTO(世界貿易機構)にも加盟し、世界の向上として安価な労働力を使った低廉な中国製品によって世界市場を圧倒することができました。また豊かになってきた中国巨大市場は、世界から新たな消費市場のフロンティアとして垂涎の的となりました。江沢民、胡錦涛政権の外交路線もこれを受け継ぐ形で多極外交が基本でした。 ですが、習近平は、こうした野心を隠して「学ぶ姿勢」「国際スタンダードに寄っていく姿勢」の鄧小平的多極外交から、「中華民族の偉大なる復興」という野心を高らかに掲げ、世界が中国のスタンダードや秩序に合わせていくべきだという、中華思想的な大国外交路線に切り替えていきます。 米国に対しても、いずれ中国が米国と並ぶ大国になるのでそのように扱えとばかりに「米中新型大国関係」を提案しました。南シナ海の領有権を他国と争う岩礁島を実効支配していき、国際法廷(常設仲裁裁判所)で違法行為だという判決が出ても、「そんなものは紙切れだ」と完全に無視しました。 これはちょうど米国のオバマ政権がレームダックを迎え始め、EUの矛盾やほころびも顕在化してきたのに比して、中国は五輪(2008年の北京オリンピック)を経験し、リーマンショックを切り抜け、国際社会で評価が高まってきたので、国家として自信を持ってきたということも関係しているのでしょう。 ですが、中国をグローバル経済の牽引国と認め、責任ある大国に成長すると期待していた国際社会は西側の普遍的価値(〇)を完全否定して、中華秩序、中華的価値を受け入れよ、という中国の主張を受け入れるはずがありません。 習近平はコンプレックスが強く小心者ですが、ものすごく自信過剰で傲岸不遜なところがあります。 文革期に思春期を過ごし、ろくに勉強もせず、毛沢東の政治のやり方、権力闘争のやり方を脳裏に刻み付けていることから“文革脳”と呼ばれています。若い時代に海外留学経験もない彼は、国際情勢や国内情勢を読み違えたのだと私は思います。 結果として、あれほど親中的だったオバマ政権を怒らせることになります。米国はアジア太平洋リバランス政策をとって対中強硬姿勢に転じてきました。改革開放以来ずっと中国に対して一衣帯水の隣国として支援し、天安門事件後の国際的経済制裁のときにもいち早く中国との関係を正常化させた日本とも厳しい対立関係に入りました。 これまでの中国は、米国とちょっと関係が悪くなると日本と関係を良くするようにし、日本に対して強硬になるときには米国との関係を融和的にするというふうに、バランスをとってきました。そうすることで日米両国とも経済関係は良好にいじするという合理的な判断に基づく多極外交を行ってきたのですが、習近平体制になってからの中国は周辺諸国すべてに対して傲岸不遜で、攻撃的な姿勢になりました。 この延長線として、米国にトランプ政権が誕生し、米中冷戦構造に向けた西側世界の対中包囲網が開始されることになったのです。<クーデター未遂に脅えて大粛清> 鄧小平が作り上げた中国共産党の集団指導体制()を破壊し、毛沢東のような独裁者になりたがっている危険な指導者、それが習近平であると、中国共産党内の右派も左派も気づき始めました。 鄧小平路線や胡耀邦の信望者たち、つまり改革派、自由派、民主派の党内知識人は習近平を嫌い、彼のやり方はまずいと考えます。鄧小平システムが破壊されるということは、再び、動乱を利用した文化大革命や天安門事件のような血生臭い権力闘争が起こるかもしれません。 新左派、保守派も、習近平を危険視するようになりました。習近平はあたかも毛沢東のようになろうとしているけれど、習近平に毛沢東の後継を名乗るようなカリスマ性はひとかけらもありません。また中国共産党の規約にある個人崇拝の禁止を堂々と侵す習近平に社会主義国家指導者としての資質を疑う人も多いのです。
2024.05.06
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図書館で『写真で見る満州全史』という本を、手にしたのです。この本には、なんかデジャビュの感があるが・・・二度借りてもまあいいかということでチョイスしたのです。(帰って調べると、やはり借りていたので、この記事を(その4)とします。)【写真で見る満州全史】太平洋戦争研究会, 平塚柾緒著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より日本は大陸で何をしようとしたのか?…「幻の帝国」の前史から崩壊後まで!満鉄・関東軍・満州事変・満州国誕生・日本人街・開拓移民団・帝国崩壊・シベリア抑留・負の遺産…私たち日本人が今知るべき歴史!【目次】消えた帝国を歩くー現在も姿をとどめる「満州」残影/第1章 満鉄と関東軍/第2章 満州事変/第3章 関東軍の満州支配/第4章 日本人が住んだ街/第5章 満州帝国の繁栄と崩壊<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると・・・まさにタイトルにあるとおり写真が満載のビジュアル本となっているのが、ええでぇ♪rakuten写真で見る満州全史どこから読んでもいいのだが、「第5章 満州帝国の繁栄と崩壊」から満州開拓移民団あたりを見てみましょう。p154~156<百万戸・五百万移民計画>■武装試験移民からスタート 満蒙開拓団、あるいは満州開拓団は当初は「移民」と呼ばれた。最初の移民は満州国を成立させてほぼ1年後の昭和8年(1933)3月である。東北・北関東11県の在郷軍人会が募集した、独身男性だけの集団で約500人。全員が小銃や手榴弾を携行し、機関銃も何挺か装備しており、武装移民と呼ばれた。 入植地は吉林省チャムスの南約60キロの樺山県永豊鎮で、満州に着いてからの引率者は東宮金男だった。いうまでもなく張作霖爆殺の実行部隊指揮官だった大尉で、行政処分で予備役編入になっていた。そして、この当時は「関東軍付・吉林軍顧問」という肩書だったから、東宮の背後には関東軍が控えていた。 彼らが入植した永豊鎮は未開の原野ではなく、百戸ほどの農村で、当時は匪賊の跳梁で七十戸ほどに減っていた。東宮はそこの老若男女に、一人当たり五円を支給して追い払った。五円という価値は政府が移民隊員一人当たりに支給した1ヶ月の食事補助額に等しく、もちろんそれで1ヶ月は食べられない額である。東宮は「民有既耕地七百町歩人家百十四戸を全部移民隊のものとする計画に対しては、満州人がかわいそうになりやや躊躇せざるべからず」と日記に書き記した(『満州武装移民』教育社)。 永豊鎮で確保した土地は既耕地七百町歩だけではなく全体で四万五千町歩あり、今の横浜市や金沢市ほどの広さである。この地は「弥栄村」と名づけられ、満州開拓の宣伝のために大いに利用された。 二回目の武装移民(五百名余り)はやはり吉林省で、依蘭県七虎力に入ったが、これはのちに地振村と命名された。 この土地は第一次武装移民のあとに設立された東亜勧業㈱が強制買収したものだった。同社は関東軍をバックにして吉林省やそこに隣接する黒龍江省の各県で強制買収を行い、全体として可耕地の約六割を獲得したという。 これほどの横暴に対して、追い出された農民たちが黙っているはずはなく、同地の徳望家・謝文東をリーダーに戴き、武装闘争に転じた。日本では抵抗発祥の地の名をとって土竜山事件と呼ばれるは、「兵力」は約1万人だった。 関東軍は一個連隊(約2500人)を投入して鎮圧につとめたが、途中で連隊長が襲撃されて死亡するほど激しいものだった。七虎力から湖南営にさがった第二次武装隊を3ヵ月にわたって包囲、関東軍もそれに対して討伐隊を繰り出し、各所で激戦が展開された。農民側は約五千人が殺されたという。 武装移民は昭和11年(1936)11月まで断続的に第五次まで続いたが、これが試験移民と呼ばれるものである。第四次からは在郷軍人会は募集から手を引き、武装もしなかった。■百万戸・五百万人の「満州開拓団」計画 本格的な移民は「満州開拓団」と呼ばれ、当初は「五ヵ年・二万戸移住」計画のもと、一開拓団が千戸規模に拡充された。ところがこれが実現されないうちに、昭和11年(1936)6月、広田弘毅内閣は「二十カ年・百万戸・五百万人」移住の政策を打ち出した。これからが本格的な満蒙開拓団の時代に入るのである。『写真で見る満州全史』3:皇帝・溥儀と満州帝国p102~103『写真で見る満州全史』2:「関東軍」の登場>p26~27『写真で見る満州全史』1:ラストエンペラー・溥儀p102~103
2024.05.06
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図書館予約していた『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』という雑誌を、待つこと12日でゲットしたのです。このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機泉房穂・前明石市長SPECIAL INTERVIEWで泉房穂・前明石市長の提言(続き)を載せているので、見てみましょう。p48~49<悪循環の日本 最大の要因は「時代」> そうこうしているうちに、日本の国力は低下し続けている。 私は、その最大の要因は「時代」だと考えている。「右肩上がりの時代」から「右肩下がりの時代」になったということだ。 右肩上がりの時代には、財源が増えるので、これまでやっていた10のことをやりつつ、新しく1のことをやることができた。しかも、財源は11どころか、12、13・・・と増えていった。 だが、今やそんなことは不可能になった。右肩下がりの時代には、問題が増える一方で、使えるお金は減っていく。11のことをしなければならなくても、財源は10ではなく9、8、7・・・と減ってゆく。何が必要かといえば、これまでの10を見直すことだ。「何を続け、何をやめるか」という方針転換が、政治家には一段と求められている。 ところが、今の政治家は、時代の変化を直視せず、「魔法の杖」なんてないのに、いまだに右肩上がりの時代感覚でシステムを維持しようとしている。それでいて国民を救うという「情熱」もなく、不必要な政策をやめるという「方針転換」も決断せず、「責任」を取ることからも逃げ続けている。「政治家のフリをしている政治家」があまりにも多いのだ。 時代の変化について、私が心配していることの一つに少子化問題がある。今の日本が特にしんどい状況にあるのは、大きな時代の転換点に直面しているのに、この問題にうまく対応できていないことにある。 私はかつてフランスの少子化対策を学んだが、93年に出生率が1.66にまで落ち込み、「このままでは国が滅びる」との危機感から国家を揚げて「方針転換」し、一気に子ども施策に重点を置いた。それは国民の気持ちをも変える大転換であった。 日本も同様の「方針転換」ができなければ、これまで築き上げてきた社会構造が坂道を転げ落ちるように崩れる可能性がある。 国家予算も膨張し、税・保険料の国民負担も増えるばかりだ。社会を運営していくためにどうしても必要な予算や負担なら理解できる。しかし、今の政治家から「なぜそれが必要なのか」という納得のいく説明は聞こえてこない。国民の負担を減らすために何かをやめる、何かを諦めるといったことも一向に示されず、選挙対策として、必要性が疑わしい公共事業などがいまだに続けられている。 30年間給料は上がらず、経済成長もせず、国民負担は増えるばかり、おまけに昨今は物価高も直撃している。国民の不満はマグマのようにたまっており、いつ大噴火してもおかしくない状況だ。 まさに、「今の3対1」から「本来のあるべき3対1」の関係性への大転換が求められている。 それには、官僚自身が変わらなければならない点も多々ある。だが、そもそも官僚は選挙で選ばれているわけではなく、各省庁に就職している公務員である。政治家とは異なり、責任の取りようがない。さらに、政治家が官僚に責任をなすりつけようなことが横行すれば、官僚は委縮し、合理的な判断ができなくなる。これでは、官僚の良いところまで失われてしまう。 だが、政治家が本気になって覚悟を示し、大きな決断に基づき「私が責任を取るから、思い切りやってほしい」という覚悟を示せば、多くの官僚たちは国民のために懸命に業務を遂行するものだ。これは断言してもいい。『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』3:泉房穂・前明石市長の提言『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』2:PART 1 未完の公務員制度改革 『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』1:INTRODUCTION
2024.05.05
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図書館で『日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー』という新書を、手にしたのです。著者は経済産業省主導のクールジャパン政策を厳しく問い詰めているが・・・「成長戦略の柱」などのごまかしや官僚の限界を見てみようではないか。【日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー】 ヒロ・マスダ著、光文社、2020年刊<「BOOK」データベース>より「日本再生のカギ」「成長戦略の柱」などと叫ばれ、国を挙げて推進されてきたクールジャパン政策。映画産業に関しては「ハリウッドで日本映画を作る」と気炎が上がっていた。ところが、実際は全く成果を上げられないどころか数十億~数百億円の赤字を垂れ流す、壊滅的な状況となっている。巨匠ヴィム・ヴェンダース監督からの言葉をきっかけにクールジャパン政策の問題点を長年追いかけてきた映画プロデューサーが、すべての元凶である経済産業省の不正や非常識を徹底的に暴くとともに、世界各国の成功例を基にした、クリエイター支援のあるべき姿を考える。<読む前の大使寸評>著者は経済産業省主導のクールジャパン政策を厳しく問い詰めているが・・・「成長戦略の柱」などのごまかしや官僚の限界を見てみようではないか。rakuten日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネーなにはともあれ「はじめに」の冒頭から、見てみましょう。p3~8<はじめに> ここ数年、「日本再生のカギ」「成長戦略の柱」などと叫ばれ、国を挙げてクールジャパンが推進されてきました。映画、テレビ、アニメ、ゲームなどのクリエイティブ産業もクールジャパンの具体例とされ、これまで1000億円以上に上る莫大な額の税金や、国の借金を原資とした財政投融資の公的資金が投じられています。 しかし、これらの「クールジャパンマネー」は1円たりとも、日本のクリエイティブを支える「人」に向けられることはありませんでした。 これはクールジャパンを批判することありきで、大げさに言っているわけではありません。本来ならばクールジャパンを推進する上で重要な役割を担うはずである、日本の制作現場には、巨額予算が文字どおり1円たりとも使われてこなかったのです。 では、クールジャパンの名の下に投入された1000億円以上のお金は、一体何に使われたのでしょうか? また、それは誰が、どのように運用してきたのでしょうか? クールジャパンをめぐる動きを見ると、その数々の事業を所管する経済産業省が主導的な役割をなした法律と制度濫用が横行しています。そして、こうした暴走を許す背景には、クールジャパン政策が始まる前から巧妙に仕組まれた、公的資金を搾取する「カラクリ」が存在しています。 クールジャパンの制度的、および組織的な腐敗の顕著な例として、本書が扱う「官民ファンドを使った事業」と「間接補助金を使った事業」が挙げられます。 これらの巨額クールジャパン事業は、税金、公的資金で賄われています。それにもかかわらず、官民ファンドは「民間企業」、間接補助金は「民間事業」と位置付けられるため、「民間の正当な利益を損なうおそれが認められる」等の理由で情報開示を免れられる、政府にとって都合のいい制度に設計されています。その結果、事業の中で流れている公金の流れは不透明になっています。 さらに、それらの事業がどれほど合理性に欠け、非効率で、日本のクリエイティブ産業の発展を妨げる「無駄事業」であったとしても、事業が適切であったか否かについて、私たちは「そこで何が行われたか」だけでなく、「なぜ巨額の損失を招いたのか」という失敗の原因すら知ることができません。 もちろん、「官民ファンド」「間接補助金」ともに、公平、公正に運用するための法律やガイドラインが存在します。しかし、そうしたルールすらも初めから、政府が自分たちに都合よく作っているため、国民の財産をチェックしたり安全な運用を担保したりする機能は果たせていません。 そればかりか、妥当性や必要性が疑われる事業においても、重要部分の情報を隠すことにより、政府は何の根拠もなく、それらを全く問題のない「適法」な投資、事業にすることができます。 この状況を例えるなら、監督官庁である経済産業省が、悪質な反則行為を目撃しても決して笛を吹かない「八百長審判」になっているだけでなく、反則チームと事前に打ち合わせているようなものです。 本書では、クールジャパン行政のこうした反則行為によって、合わせて40億円以上の税金と公的資金が消失した事業令として、産業革新機構(現:産業革新投資機構)が作った官製の映画会社「株式会社Àll Nippon Èntertainment Works」(以下、ANEW)と、民間の広告代理店も関わっている「ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金(J-LOP)」による搾取の裏側を明かしたいと思います。(中略) 私は決して、最初から「クールジャパン政策をターゲットにしよう」と思いたって調査してきたわけではありません。また、多くのクールジャパン事業を所管する経済産業省に私怨を抱き、重箱の隅をつつくように粗探しをしたわけでもありません。 きっかけは10年前、映画監督からのある一言でした。 私は当時、『パリ、テキサス』でカンヌ国際映画祭パルムドーム(最高賞)受賞などの経歴を持つ、ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督の新作品に、脚本と共同プロデユースで関わっていました。その映画は日本の小説を原作にしており、日本での撮影を予定していました。 映画を作るにあたって、日本ではどのような支援策があるのかを調べ始めました。するとわかったのが、日本には本当の意味で変化を生むことのできる施策が存在しないという事実でした。効率的で有効な、ビジネス面から見て常識的な施策は全くなかったのです。 さらに調べていくうちに、産業支援の観点からあってはならない、不適切な事業に巨額の公金が流れている実態も判明しました。その背景をちょうさすると、ことごとく姿を現したのが「クールジャパン」であり、「経済産業省 商務情報政策局 文化情報関連産業課」だったわけです。 六本木のホテルでヴィム・ヴェンダース監督に会った時のことです。「なぜ日本には、こんなに有効な産業施策がないのですか?」 ヴェンダース監督は日本での企画を諦め、次回作を政府支援が潤沢なカナダで撮影すると話していました。その後実際に『誰のせいでもない』(原題:Èvery Thing Will Be Fine)をカナダで撮影しています。 私はヴェンダース監督に「今の日本の産業支援制度の状況は変えないといけません。今回の経験から、この問題に取り組んでいきます」と話しました。ヴェンダース監督には「あなたがこの状況を変える一人になれますよ」と言われました。
2024.05.04
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・地図で見るロシアハンドブック・習近平の敗北・外国人記者が見た平成日本<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【地図で見るロシアハンドブック】パスカル・マルシャン著、原書房、2021年刊<「BOOK」データベース>よりロシアの現状が一目瞭然でわかるアトラス!ウクライナ危機、国境の変化、世界の新たな均衡など、今日のロシアの地政学的利益が一目でわかる。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten地図で見るロシアハンドブック【習近平の敗北】福島香織著、ワニブックス、2019年刊<「BOOK」データベース>より無能でも皇帝になれる共産党体制、すさまじい牢獄国家で暮らすということ、日本は中国とどう向き合うべきか!-政変、動乱、分裂…中国を襲う9の厄災。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten習近平の敗北【外国人記者が見た平成日本】ヤン・デンマン著、ベストセラーズ、2018年刊<出版社>より現代日本に蔓延している悪性のニヒリズムはいったいどこから来ているのか? これほどまでに高まっている「不信感」はどうすればよいのか? 『週刊新潮』の名物コラム「東京情報」の執筆者で自称オランダ人記者ヤン・デンマンによる珠玉の平成日本の比較文化論。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten外国人記者が見た平成日本
2024.05.03
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在158位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在70位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在40位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在35位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在141位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在3位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在6位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在4位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在55位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在27位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在52位・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、副本1、予約5)現在1位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在99位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在48位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/01予約、副本?、予約8)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』<予約分受取:2/04以降> ・絲山秋子『御社のチャラ男』(1/27予約、2/04受取)・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機
2024.05.03
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図書館予約していた『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』という雑誌を、待つこと12日でゲットしたのです。このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機泉房穂・前明石市長SPECIAL INTERVIEWで泉房穂・前明石市長の提言を載せているので、見てみましょう。p46~47<「方針転換」こそ政治家の仕事 官僚の長所をもっと伸ばせ> 誤解があるかもしれないので、自分のスタンスをはっきりと申し上げておきたい。 私は、「官から民へ」派ではなく、官僚バッシング派でもない。「公の仕事は尊い」と考えている生粋の“公派”の人間である。 もちろん、民間には民間の良さがあるが、この世の中、全てが民間だけでは成り立たない。儲からないことでも必要なことは山ほどあるからだ。行政サービスはその典型である。 人は生まれた瞬間から人によって支えられながら生きている。人間は集団で生き、社会をつくる。社会を運営していくためには、みんなのために使うお金と、みんなのために働く人たちがいる。それが税金であり、公務員だ。両者はまさに社会の基盤である。 私はまた、増税反対派ではなく、小さな政府派でもない。中負担高福祉派である。公務員がしっかり汗をかいて知恵を絞り、国民が満足できる高福祉社会を実現したいと切に願っている。 自著の中でも述べてきたが、こうした思いを持つに至ったのは、幼少期の経験が大きい。 私は兵庫県明石市二見町という小さな漁師町で育った。ずっと、貧乏であった。しかも、4歳下の弟には生まれた時から障害があった。チアノーゼ(酸欠状態)で息も絶え絶え。成長しても障害が残ることが明らかだった。(中略) こんな状況だったから、弟が生まれた時、医師は両親にこう言った。「このままにしましょう」 つまり、見殺しにしようとすることだ。とんでもない話であり、両親はそれに猛反対して、自宅に連れて帰った。命は救われたが、生涯が残った。2歳の時には、脳性小児麻痺で「一生起立不能」とも診断された。 その後もさまざまな葛藤があったが、幸い、弟は小学校に入る前には歩けるまでに成長した。嬉しかった。(中略) 誰かを排除する社会とは、自分が「少数派」になれば排除される社会でもある。だからこそ私は、自分がマイノリティーだと感じた時、生きづらさを覚える「冷たい社会」ではなく「やさしい社会」を実現したいと心の底からずっと思ってきた。 <「今の3対1」から「本来のあるべき3対1」へ> どのような社会にしたいかという理想像は人によって違うのが当然である。大事なことは、より良い社会にするためには、国であれ、地方であれ、まず、政治家が大方針を示し、その実現にむけて公務員がやりがいを持って、生き生きと働けるようにすることである。 マスコミの役割も大きい。放っておくと権力は必ず肥大化するからだ。だからこそ、マスコミは権力を監視して、政策に問題があれば叱咤し、良い効果があれば激励して伸ばしていくことが求められる。 これらは私たちの社会を健全な形で運営していくための基本中の基本である。これはいったい、誰のためあるのかといえば、すべては「国民」のためである。 だが、その「国民」をあまりにも蔑ろにしているのが今の日本であり、今の政治家である。最近は、改善されるどころか、ますますひどくなっている。 こうした状況の中で、「霞が関」についても昨今、政策立案・遂行能力が低下しているとの報道も目立つようになった。事実、私もそう感じている。 しかし、官僚だけが悪いという問題ではない。政治やマスコミにだって大いに問題があるからだ。 今の日本に真の政治家はほとんどいない。いるのは選挙屋ばかりである。この国を立て直したいと、本気で、覚悟を持って取り組んでいる政治家はなかなか見当たらない。日本社会の変革を諦めてしまっている国民も多い。 根が深い問題だ。根本には「政治家」「官僚」「国民」「マスコミ」という4つの関係性が本来のあるべき姿から大幅に乖離していることが大きい。 4つの関係性のうち、「今の3対1」から、「本来のあるべき3対1」にすべきというのが私の持論である。 90年代以降、政治主導となり、官僚が政治家を見て仕事をするようになったと言われているが、私からすれば、その様相は少し異なる。 今の日本は「官僚」が一番上にいて、その下に「政治家」、さらにその下に「国民」がいるという構造になっている。昨今の政治家は勉強不足が著しいから、いつまでも官僚に“お膳立てされた”政策を進めるしかなく、しかも、国民が納得できる説明もなく、負担増ばかりを強いている。 権力を監視し、時には異を唱え、国民を助けてくれるはずの「マスコミ」も一番上にいる官僚の横に位置している。日々の報道で、政治には一応の注文をつけるが、「国民負担やむなし」といったキャンペーンを張っている。これが「今の3対1」である。 だが、本来は、一番上に「国民」が位置し、その国民に選ばれた「政治家」が「官僚」を動かして共同作業を行い、国民のために政策を推進していくことが欠かせない。そして、「マスコミ」は一番上の国民の横に位置し、国民の声に寄り添う形で、権力を監視し、叱咤激励していく。これが「本来のあるべき3対1」の関係性である。『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』2:PART 1 未完の公務員制度改革 『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』1:INTRODUCTION
2024.05.02
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図書館で『写真で見る満州全史』という本を、手にしたのです。この本には、なんかデジャビュの感があるが・・・二度借りてもまあいいかということでチョイスしたのです。(帰って調べると、やはり借りていたので、この記事を(その3)とします。)【写真で見る満州全史】太平洋戦争研究会, 平塚柾緒著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より日本は大陸で何をしようとしたのか?…「幻の帝国」の前史から崩壊後まで!満鉄・関東軍・満州事変・満州国誕生・日本人街・開拓移民団・帝国崩壊・シベリア抑留・負の遺産…私たち日本人が今知るべき歴史!【目次】消えた帝国を歩くー現在も姿をとどめる「満州」残影/第1章 満鉄と関東軍/第2章 満州事変/第3章 関東軍の満州支配/第4章 日本人が住んだ街/第5章 満州帝国の繁栄と崩壊<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると・・・まさにタイトルにあるとおり写真が満載のビジュアル本となっているのが、ええでぇ♪rakuten写真で見る満州全史どこから読んでもいいのだが、「第3章 関東軍の満州支配」から帝国の誕生あたりを見てみましょう。p102~103<皇帝・溥儀と満州帝国>■国の運命を決した建国五日後の密約 昭和7年3月1日、世界の視線が上海事変に引き寄せられている間隙を縫って、「五族協和」「王道楽土」を掲げて「満州国」は誕生した。しかし満州国の運命は、早くも建国式が行われた数日後には決定されてしまった。昭和7年3月9日の執政就任式を前に、溥儀は一通の書簡に署名している。これは関東軍司令官と交わした重大な密約であった。 内容は次のようなものである。一、満州国の治安維持および国防は日本軍に委ねる。一、国防上必要な鉄道、港湾、水路、航空路の管理、ならびに新設はすべて日本に委ねる。一、日本人を満州国参議に任じ、中央、地方の官署にも、日本人を任用する。その選任、解任は関東軍司令官の同意を必要とする。 このように満州国は、最初から骨抜き状態で誕生した見せかけの“独立国家”だったのである。ところが、この密約は鄭考胥(満州国の国務総理に就任)が勝手に結んだもので、自分は5ヶ月後になって初めて知らされた、と溥儀は『わが半生』に記している。しかし、これは偽りであろう。彼は将来の皇帝就任という確約と引きかえに、新国家の重要な諸権利を引き渡したのである。 昭和7年9月15日、日本政府は正式に満州国を承認、両国の間に「日満議定書」が結ばれる。公表された「議定書」の本文には、「日本の既得権の尊重」「日満の共同防衛」、この二ヶ条しか見られない。しかし、付属協定として先の密約も認め合っていたのだ。それが世人の前に明かされたのは、戦後のことである。 後世に売国奴のそしりをまぬがれないと怖れたのだろうか、議定書調印式の満州国代表・鄭考胥総理は、挨拶をうながされても「いたずらに口をもぐもぐさせ、顔面神経をぴりぴり動かし泣かんばかりの」表情を見せるだけで、ひと言も発しなかったという。■「五族協和」のスローガンも虚しく 満州国では執政・溥儀を元首とし、国務院という組織が行政の中心とされた。国務院のトップ・国務総理が、すなわち首相である。清朝時代から溥儀の側近ナンバーワンである鄭考胥が、初代の国務総理に任命されていた。 しかし、鄭は乗り気ではなく、何回も「辞職したい」と申し出ている。「日満議定書」調印日の6日前にも「今度こそ辞める」と突然いいだし、自宅に閉じこもって登庁しなくなった。あわてた関東軍は、岡村寧次参謀副長を新京に向かわせ、何とか翻意させるというドタバタ劇を演じる。「駒井徳三総務長官の横暴ぶりにがまんできない」ことに、その辞意は発していた。国務総理とは言っても“飾り物”にすぎず、政府の実権は日本人の総務長官が握っていたのだ。ことに駒井は、2月に馬占山を帰順させるなど、自らの政治手腕に酔い、大変な高飛車ぶりだった。 駒井について溥儀はこう記している。「当時日本の雑誌『改造』は、公然と彼を『満州国総務総理』『新国家の内閣総理大臣』と呼んだ。駒井は元『満鉄』につとめていた男で、(略)東京の軍部と財閥の目にとまり、『中国通』とみなされたのだということだった」「彼の目から見た最高の上司はもちろん関東軍司令官であり、私という名目上の執政ではなかった」『写真で見る満州全史』2:「関東軍」の登場>p26~27『写真で見る満州全史』1:ラストエンペラー・溥儀p102~103
2024.05.02
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図書館で『宇宙へ』という本を、手にしたのです。著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へなにはともあれ「プロローグ」の語り口から、見てみましょう。p4~5<プロローグ> 船はずいぶん沖合まで来た。 上下する波と、エンジンの振動が全身を心地よく揺さぶる。 出港は昨夜の午後8時だった。宵闇を透かしても、海の向こうにはときおり行きかう船の灯火しか見えなかった。原田拓海は、船室のリクライニングする座席に座り、毛布を身体に巻き付けてほんの少しだけ眠った。緊張と期待が高まり、おまけに座席は拓海の体格には窮屈で、うとうととしたと思えばすぐ目覚めるような浅い眠りだ。 夜明けが待ち遠しかった。 じりじりとして、待っていた。 窓から光が射しこむと、もうじっとしていられなかった。「おい・・・真人。デッキに行くぞ」 隣の座席で眠っている篠原真人を揺さぶり起こす。真人のやつは、こんな時でも平気な顔をして、ぐっすり眠ってやがったのだ。「うん?・・・なんだ、えらく早いな」 真人は腕時計を見て、呆れたような顔をした。 冷たい風が吹き付けるデッキに出ると、先客の姿がちらほら見える。拓海と同じように、到着を待ちきれず波濤のかなたを眺めているのだ。みんな、水平線の向こうに目をこらしている。「あれか・・・!」 思わず声に出して叫んだ。 それはある意味、異様な光景だった。 きらきら輝く水平線のかなたから、直立して天に向かう四本のケーブル。 まっすぐ、まっすぐ・・・どこまでも伸びるケーブルの終着点がどこにあるのか。正確に知っている人間は、まだ少ないかも知れない。 拓海はデッキの手すりにしがみつき、もっとよく見ようと身を乗り出した。「興奮して海に落ちるなよ、拓海。おまえ、それでなくても背が高いから、バランス崩して落ちそうなのに」 真人が冷静な表情で双眼鏡を渡してくれる。こいつは端正な二枚目で、いつだってクールぶっているのだ。「おまえ、よくそんな平気な顔で見ていられるな。あれを! あんなすごいものを!」「だって俺は、一年も前からあそこで働いてるんだぞ。何回も見ているからな。今度だって、休暇で1週間ちょっと離れただけだし」 真人のやつの言い草に、拓海は軽くむっとする。自分は、これから初めてあの場所に向かうというのに。
2024.05.01
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図書館予約していた『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』という雑誌を、待つこと12日でゲットしたのです。このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機Special Report「霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なこと」のPART 1から見てみましょう。p20~22<PART 1「未完の公務員制度改革 政官関係に外部検証の視点を」:嶋田博子> 50代半ば以上の世代は、日本経済を支える優秀な官僚制が海外から称賛された時期を覚えているだろう。米国政治学者チャルマーズ・ジョンソンの『通産省と日本の軌跡』(1982年、勁草書房)などで、戦後の経済成長や社会の安定に果たした官僚の多大な役割が指摘された。拡大するパイの配分をめぐって、各章は族議員と組んで活発な政策競争を続け、国内でも「官僚は鼻もちならないが政治家に比べて清廉で有能」という評価が定着していた。 こうした評価は1990年代に一変する。少子高齢化から生ずる財政負担がバブル経済崩壊で顕在化し、冷戦終結から急激なグローバル化が進んだことで、従来の縦割りとボトムアップの限界が露呈した。 行政の立ち遅れが目立つ中、主要省からは機動性向上に向けて人事の自由化を求める声が上がる。 一方、同時期に、文部・労働両事務次官の逮捕(リクルート事件)、大蔵省過剰接待、厚生・防衛両事務次官の逮捕など、幹部閣僚の腐敗が相次いで発覚した結果、「政策失敗の原因は官僚の省益追求なので、選挙で選ばれる首相が厳しく統制すべき」という集権化が支持を集めるようになる。 ただ、期待が大きかった反動か、メディアや国会からの官僚バッシングは激しさを増し、議論は原因分析を超えた懲罰的な色彩も帯びていく。 組合からの訴えにより、働く側を置き去りにした改革を危惧した国際労働機関(ILO)からは、公務員の労働基本権制約への見直し検討や組合との協議などを要請する意見書が届いた。(中略) 国家公務員制度改革基本法(以下、基本法)の具体化に向けた法案は、2度の政権交代を挟んで3回廃案となり、14年、第2次安倍晋三政権の下でようやく成立したが、盛り込まれたのは幹部人事一元管理と内閣人事局創設の2項目だけだった。 これ以降、人事という手段を駆使し、首相の望む結果を出すべく邁進する「家臣型」官僚への転換が目指されるようになった。<■集権的な統制は正しい処方箋だったか> 公務員制度改革から10年経った現在、その狙いとは裏腹に霞が関の製作能力は劣化している。幹部官僚は所掌の知見に基づく政策提案を競う代わりに、選挙対策を最重視する官邸に従属した「下請け」に甘んじ、30代以下では政策形成から距離を置いて命じられたことだけを淡々と遂行する「吏員型」化が進む。公務員試験応募者は減り続け、政策立案に徹したい人材はコンサルティング会社やシンクタンクを選ぶ。 ただ、政治主導を徹底するなら吏員型で十分なはずだ。実際、「官僚丸投げから政権政党が責任を持つ政治家主導」を公約に掲げた民主党政権は、官僚を排して大臣らが政策設計を担おうとした。しかし、机上で作った自案のアピールには熱心でも実現に向けた煩雑な関係者調整には乗り出さず、どの政策も宙に浮いてしまった。 2012年末の自公両党の政権復帰後は、政策設計や調整を官僚任せとする慣行も復活したため、このまま吏員化が幹部級まで及べば、政策立案の空洞化、執行体制の無責任化が懸念される。 また、首相の意向が「国民の総意」とみなされ応答が絶対義務化したことにより、本省での勤務は過酷さを増している。国家公務員には罰則を伴う労働基準法上の上限時間規制が適用されない。新型コロナ禍対応部署では残業が月300時間を超える者が出るなど、多くの官僚が昼夜問わぬ要求で疲弊し、重要統計や法案のミスも相次いでいる。 こうした状況下で、幹部人事一元管理や内閣人事局への批判が強まっている。しかし、経済が縮小していく過程では、負担の配分や行政サービスの取捨選択などの痛みを伴う政策が主流とならざるを得ず、国全体を見渡して優先順位づけを担えるのは首相しかいない。それを実行できる人材を各省に配置することも必要で、集権的な統制自体は正しい処方箋だった。 誤解されやすいが、現在の仕組みは、実は本来の基本法の要請から外れている。想定されていた人事一元管理とは、首相の意思を暗黙のうちに察知できる「手足」を部下として自由に選ぶことではなく、主権者たる国民に政策判断や人事の理由を開示して理解を求めることだった。 だからこそ基本法では「政官関係の透明化」「官房長官の人事説明責任」が挙げられていたのに、実際の改革ではこの根幹が置き去りにされた。基本法のつまみ食いによって政権にとっては忖度される心地よい仕組みができたが、国民にとっては政策劣化が日常生活を直撃する。30日報道によれば、政府・日銀から5兆円規模の為替介入があったとのことです。今後どうなるやら。『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』1:INTRODUCTION
2024.05.01
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図書館予約していた『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』という雑誌を、待つこと12日でゲットしたのです。このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機Special Report「霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なこと」の冒頭から見てみましょう。p16~19<INTRODUCTION「弱体化する霞が関 もうこれ以上看過できない」> 霞が関の官僚が「エリート」の象徴から「ブラック」の象徴になったのはいつからだろうか。2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、官僚にも時間外労働の上限が定められ、月45時間かつ年360時間が原則とされた。 だが、多忙な部署の職員は月100時間未満かつ年720時間という上限になっており、重要案件や緊急案件に携わる場合は上限も例外も認められている。現役官僚からは「月100時間の残業なら、まだましなほうだ」(外務省)、「国会対応がある部署は、会期中は連日タクシーで帰宅している」(厚生委労働省)との嘆き節が聞かれる。 20年10月、国家公務員制度担当の河野太郎行政改革大臣(当時)が内閣人事局に指示し、これまでブラックボックスだった官僚の超勤時間の実態が調査された。結果は、総合職(キャリア)官僚のうち20代で約30%、30代でも約15%が「過労死ライン」とされる月80時間を超えており、まさに「ブラック職場」の象徴となった。 官僚のこうした過酷な働き方が明るみになったからか、霞が関という職場は学生からも、現役官僚からも明らかに“敬遠”され始めている。国家公務員志願者数の減少や、離職者数の増加は、もはや看過できない状況だ。(中略) 1999年に政治主導のための国会審議活性化法が制定され、委員会での答弁は、官僚ではなく、閣僚が行うこととなった。これにより官僚は閣僚の正確な答弁を用意することが重要な業務の一つとなった。 各党の議員による質問は、委員会開催日の前々日までに通告することが与野党間のルールで決められている。だが、国土交通省のある官僚は「質問通告のルールを守ってくれる先生が増えたと感じるが、守らない先生も一定数いる」と指摘する。 事実、内閣人事局が23年8月に公表した調査結果によれば、4割以上がこの期日を守っていない。 質問通告を受けると、官僚たちは質問をする議員からその趣旨や内容を事前に聞き取りする「質問取り」を行う。 官僚たちは忙しい中、議員会館に足を運ばなければならないだけでなく、「質問が多い先生に関しては、いつ部屋に呼ばれるか分からないので、部屋の前で各省庁の担当者が列をなして順番待ちしている」と国会対応を担当していた元官僚経験者は語る。 こうして質問内容を聞き取った後は、関係する部局に質問を割り振り、割り振られた部局の官僚たちが答弁を作成していく。内閣人事局の同調査結果によれば、全ての答弁作成が終了した平均時間は午前1時30分を越え、作成に要した時間は7時間にも及ぶ。(中略) 目の前の仕事に必死になることを否定はしないが、官僚が本来の能力を発揮し、最も時間を割くべきは、「これからの日本」にとって必要な政策を打ち出し、磨き続けることではないか。 官僚たちはいま、「冬」の時代を迎えている。だが、このまま官僚が疲弊し、本来の能力を発揮できなくなれば、日本の行政機能は低下し、内政の行き詰まりのみならず、国際交渉における下工作もできなくなり、外交面にも多大な影響を与えることになるだろう。課題先進国・日本にとって、霞が関の危機は日本の危機なのである。 官僚制再生には、官僚自身が「前例踏襲」のくびきから逃れる必要がある。ただ、官僚機構を生かすも殺すも政治次第である点は見逃せない。そしてその政治家を選んでいるのはわれわれ国民であり、霞が関の危機は決して「対岸の出来事」ではない。国民も当事者の一人として捉える必要がある。
2024.04.30
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図書館で『人間の未来 AIの未来』という本を、手にしたのです。おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪【人間の未来 AIの未来】 山中伸弥×羽生善治著、講談社、2018年刊<「BOOK」データベース>より人工知能、進化するロボット、iPS細胞による最先端医療ー私たちの暮らしはどう変わっていくのか?ノーベル賞科学者と史上最強棋士が「10年後、100年後の世界」を予言する。<読む前の大使寸評>おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪rakuten人間の未来 AIの未来どこから読んでもいいのだが、「第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?」から見てみましょう。p202~204<人間は不老不死になれるのか>羽生:たとえばiPS細胞による再生医療やゲノム編集技術によって、病気がすべてなくなったら、人間は不老不死になることも可能なのでしょうか。山中:いや、老衰は間違いなく起こるでしょう。今のところ、生きることができるのは、細胞の寿命である百二十歳くらいまででしょうね。 僕もびっくりした話があって、血液を作る細胞である造血幹細胞が骨髄にあります。生まれた時は確か1万個くらいと少ないんです。造血幹細胞自体はあまり増えないけれど、分化する途中に前駆細胞を作り出して、その子たちが急激に増えて赤血球や白血球、血小板になって、どんどん入れ替わっているんです。 ただ、造血幹細胞も時々は分裂しなければいけない。分裂していると、遺伝子に傷が入ったり、寿命で死んだりしていくものもあります。だから造血幹細胞はだんだん減っていくだろうとは思っていました。百歳くらいの人を調べたら、造血幹細胞が二個しかない。羽生:二個でやりくりしているわけですか。山中:その二個がすべてで、何もせずにゼロになったら、間違いなく終わりです。そrが老衰による死です。でも、そこで骨髄移植をすれば、移植された造血幹細胞が血液をつくりだすようになります。 心臓も基本的には生まれたままの細胞がずっと残っていますから、生まれて百年以上経てば、やがて心不全になります。ただ、これも心臓移植をすることができます。足が弱っても、人工関節などの技術が今は進んでいます。 あとは能ですね。能も基本的に生まれたままで、脳細胞は滅多に増えません。でも脳を入れ替えてしまうと、その人がいったい誰なのかわからなくなりますね。羽生:もはや本人とは言えなくなってしまう。山中:だから、決め手になるのは脳じゃないでしょうか。そこまでやるか、という話です。でも脳以外は、超大金持ちがお金にモノを言わせて臓器や細胞などの移植を続ければ、理論的には更新できます。一方で、臓器移植をするには、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を投与する必要があります。これには副作用があるので、免疫抑制剤によって健康が損なわれてしまう可能性があります。 基本的に老化によって造血幹細胞がどんどん減って、脳も間違いなく衰えてだめになるので、そう考えると、やっぱりヒトの寿命は百二十歳くらいが限界なのではないでしょうか。それとはまた別の問題として、それ以上生きていて楽しいかどうか、ということはありますけど。羽生:不老不死の体を獲得できるか、獲得できてもそれが幸せなことか・・・昔からあるテーマですね。山中:しかしそう考えると、生物って本当にすごいですよ。人間にしても、よくこんな精妙なものができたなと思います。たとえば進化論が説明するような偶然の産物だけで、本当に僕たちはできているのかなと感じる時もあります。『人間の未来 AIの未来』3:ヒトゲノム・プロジェクト『人間の未来 AIの未来』2:iPS細胞の最前線『人間の未来 AIの未来』1:フルマラソンで研究資金を集める羽生:山中:
2024.04.30
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機・宇宙へ・日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー・写真で見る満州全史<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>追って記入rakuten宇宙へ【日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー】 ヒロ・マスダ著、光文社、2020年刊<「BOOK」データベース>より「日本再生のカギ」「成長戦略の柱」などと叫ばれ、国を挙げて推進されてきたクールジャパン政策。映画産業に関しては「ハリウッドで日本映画を作る」と気炎が上がっていた。ところが、実際は全く成果を上げられないどころか数十億~数百億円の赤字を垂れ流す、壊滅的な状況となっている。巨匠ヴィム・ヴェンダース監督からの言葉をきっかけにクールジャパン政策の問題点を長年追いかけてきた映画プロデューサーが、すべての元凶である経済産業省の不正や非常識を徹底的に暴くとともに、世界各国の成功例を基にした、クリエイター支援のあるべき姿を考える。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー【写真で見る満州全史】太平洋戦争研究会, 平塚柾緒著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より日本は大陸で何をしようとしたのか?…「幻の帝国」の前史から崩壊後まで!満鉄・関東軍・満州事変・満州国誕生・日本人街・開拓移民団・帝国崩壊・シベリア抑留・負の遺産…私たち日本人が今知るべき歴史!【目次】消えた帝国を歩くー現在も姿をとどめる「満州」残影/第1章 満鉄と関東軍/第2章 満州事変/第3章 関東軍の満州支配/第4章 日本人が住んだ街/第5章 満州帝国の繁栄と崩壊<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると・・・まさにタイトルにあるとおり写真が満載のビジュアル本となっているのが、ええでぇ♪rakuten写真で見る満州全史
2024.04.29
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在164位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在75位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在40位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在38位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在148位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在5位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在7位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在5位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在56位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在28位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在53位・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、副本1、予約5)現在3位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在103位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本<予約分受取:2/04以降> ・絲山秋子『御社のチャラ男』(1/27予約、2/04受取)・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.04.28
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図書館で『人間の未来 AIの未来』という本を、手にしたのです。おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪【人間の未来 AIの未来】 山中伸弥×羽生善治著、講談社、2018年刊<「BOOK」データベース>より人工知能、進化するロボット、iPS細胞による最先端医療ー私たちの暮らしはどう変わっていくのか?ノーベル賞科学者と史上最強棋士が「10年後、100年後の世界」を予言する。<読む前の大使寸評>おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪rakuten人間の未来 AIの未来どこから読んでもいいのだが、「第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?」から見てみましょう。p98~101<ヒトゲノム・プロジェクト>羽生:お話を伺っていると、iPS細胞の発見もそうですが、生命科学の世界は本当に日進月歩で、予想をはるかに上回る速さでどんどん変化している感じですね。山中:ええ。でも、かたや「がんの撲滅」となると、僕が医学生だったころ、多くの研究者は「人類は2000年には完全にがんを克服しているだろう」と予想していました。僕が医学部を卒業したのが1987年だから、もう30年前のことです。 でもいまだにがんは克服されていません。もちろん、30年前に比べると治療技術ははるかに進んでいますが、やっぱりまだまだがんに負ける場合も多い。そうやって進展のスピードが予想より遅い分野も、いっぱいあるということです。羽生:そんなふうに研究が進むのが速かったり遅かったりするのは、どれだけ研究に力を注ぐかに左右される側面が大きいのでしょうか。山中:それもあります。でもいちばん大きいのは、「ブレイクスルーが起こったかどうか」だと思います。iPS細胞の発見もそうですが、生命科学すべての分野で、この10年20年のいちばん大きな発見は、何といってもゲノムの解読技術です。 ゲノムは細胞の中にあるDNAで書かれた遺伝情報一式で、いわば生物の設計図ですね。科学は未来を予測しますが、先ほどのがん克服にしても、だいたい未来予測は当たりません。ゲノム技術についても、20年前には今のような事態をほとんど誰も良そうしていませんでした。羽生:それだけ予想をはるかに超えて速く進んでいるということですね。山中:はい。1990年代の後半に僕はカリフォルニアにあるグラッドストーン研究所から日本に帰国したんですが、その時は自分でもまだ実験をしていました。 ゲノム解析をするために当時どうしていたかと言うと、電気泳動でDNAを分離する装置を自分で作るところから始まります。一晩かけて固まったゲルにDNAのサンプルを流し、何時間か電気泳動をした後、ATGC(アデニン、チミン、ッグアニン、シトシン)の四文字からなるDNAの塩基配列を読み取っていきます。だから一回の実験で、せいぜい五百塩基対、つまり五百字が読めるという程度です。羽生:20年前には、すごく手間がかかったんですね。山中:一回に一万字しか読めないんですから当然です。月に人類を送り込む「アポロ計画」に成功したアメリカが次に挑んだ一大プロジェクトが、1990年の初めから始まった「ヒトゲノム・プロジェクト」です。アメリカを中心にイギリス、世界各国の研究者が力を合わせて、一人で三十億塩基対あるヒトのゲノムを全部解読しようとする壮大な計画でした。 日本も少し貢献して、ヒト一人の全ゲノム暗号を10年以上の歳月と何千億円という資金をかけて、やっと解読したんです。なかなかうまくよめなかったりしていたんですが、計画は2003年に完了しました。それからコンピュータが加速度的に進歩して、革新的なゲノム解析技術がどんどん出てきました。羽生:結局、コンピュータの処理速度が上がったことが大きいのでしょうか。山中:処理速度も必要ですが、そもそもゲノムを読み取る速さで想像を絶することが起こっています。ゲノム計画で10年かかったことが、今は一日でできてしまいます。費用もどんどん下がって、2年ほど前までは10日くらいで何千万円もかかっていたけれども、今は百万円を切っています。この劇的な変化を2000年の段階で予想した人は、ほとんどいなかったと思います。羽生:じゃあ、全人類のゲノムを読むことも夢物語ではないということですか。山中:これも日進月歩です。少し長いスパンで考えると、ゲノム解読におけるこの変化がこれまでの生命科学の世界における考え方を破壊したと言うか、まったく違う段階に入ったという感じですね。『人間の未来 AIの未来』2:iPS細胞の最前線『人間の未来 AIの未来』1:フルマラソンで研究資金を集める羽生:山中:
2024.04.28
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図書館で『宮本常一 伝書鳩のように』という本を、手にしたのです。エッセイ集となっているが、宮本さんなら文化的センスに富んだエッセイとなっているのではないか、ということでチョイスしたのです。そういえば・・・熱血ポンちゃんの勇ましいエッセイを読んだなあ。【宮本常一 伝書鳩のように】 宮本 常一著、平凡社、2019年刊<出版社>より日本各地を歩き、漂泊民や被差別民、歴史の表舞台に姿を現さなかった無名の人々の営みや知恵に光を当てた「野の学者」宮本常一。膨大な著作のエッセンスを一冊に集成。<読む前の大使寸評>エッセイ集となっているが、宮本さんなら文化的センスに富んだエッセイとなっているのではないか、ということでチョイスしたのです。rakuten宮本常一 伝書鳩のようにどこから読んでもいいのだが、「自然を見る眼」が語られているあたりを、見てみましょう。p147~150<自然を見る眼>■三 自然の重さ この自然の重さの中で、時にはこれをはらいのけようとし、時にはこれにしたしみ、もつれあいにくしみあいつつ私たちは自然の本質というものをすこしずつ見きわめて来たのである。それだけに自然を見る眼はこまやかであり切実であったともいえる。迷信も科学もこうした中で芽吹き育って来た。■四 見すてられたものの中に 同時にわれわれは、われわれの眼にふれ、手にふれたものに、われわれの生命をきざみ、人間の歴史をのこして来た。非情に見える木や石にすら、それが人間の手にふれたものであるならば、そこに人間の息吹と歴史を感ずることができるのである。 ちかごろ出版された柳田国男先生の「海上の道」は暗示にとむ本である。現在日本の主流をなしている米作を中心にした農耕民族は、南方から琉球の島々をつたって日本に来、定住したものであろうと見ているが、その見方に多くの示唆を与えられる。 たとえばアイという風の名をとりあげて、それがいろいろのめずらしいものを吹き寄せてくれる風の名であったこと、さらにはヤシの実が波のまにまにただよいつつ佐渡や但馬や若狭、奥州などにも流れついた歴史をふりかえって、海流による南方のつながりのあったことを認めようとしている。 だがしかし、それだけで南方とのつながりを説くのではなく、4000年もまえに栄えたシナの殷という国が宝貝を貨幣として利用し、この貝をことのほか珍重していたじじつから、その貝を沖縄から求めたのではなかったかと疑っている。沖縄の宮古島はことに美しい宝貝の産地で他のものは比較にならぬ。殷がこの島の宝貝を用いたとすれば、シナ大陸と琉球の間には当然盛んな交通があったはずだし、また宮古に近い八重山には古見というところがある。古く稲作のおこなわれたところであるが、古見、久美、久米などはいずれもコメと共通した言葉であり、それはまた日本の本土にもひろがっており、そこで米作のおこなわれた歴史も古い。 柳田氏がイネの渡来を南方からであると実証づけようとするものはこうした風の名や潮流や宝貝や地名なのである。いずれも日頃は忘れ去られようとするようなものの中にすら、このすぐれた学者は人間の歴史をよみとっている。 また鼠に対する人間の態度・・・わをするにしても鼠に都合のわるいことはできるだけ聞かれないようにするとか、あるいは鼠に若干の尊敬と畏怖を持つことなどから鼠の浄土がまた日本人のやって来たところではなかろうかと、多くの例証によってわをすすめている。 また宝貝の頸かざりとハトムギでつくった頸かざりが、形も似、言葉も通ずるものがあることから、琉球では宝貝が頸かざりとして用いられ、ハトムギの方言を通じて琉球と日本の関係を見ようとしている。 ここに出て来る話の素材の一つ一つは多くの場合見すごされ忘れられるようなものばかりである。まして歴史の主流になり立役者になるようなものとは思えないが、それすら人間の息のかかったものとしてとりあげ方によっては古い日本人の祖先の歴史を文書で書かれたものよりも暗示ふかく教えてくれる。 同様にある一つの角度によって物を見ていこうとするならば、われわれの周囲のあらゆるものの中に、これと同様の真理と法則が含まれたまま、そこにだまって存在しているのではなかろうか。 見るということはいたって簡単な行為であるが、その見方には無限のひろがりと深さがある。そしてそのような物を見る眼は永い間かけて、一貫した態度でありふれたものをも見すてないで、見つけていく以外にひらけては来ない。『宮本常一 伝書鳩のように』2:すばらしい食べ方『宮本常一 伝書鳩のように』1:塩の道
2024.04.27
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図書館で『すごい! へんてこ生物』という新書を、手にしたのです。中を覗いてみると、表紙にヴィジュアル版と書かれたとおり、カラーおよびモノクロの画像が多いのが・・・ええでぇ♪【すごい! へんてこ生物】NHK「へんてこ生物アカデミー」制作班著、祥伝社、2020年刊<「BOOK」データベース>よりへんてこ生物に学ぶ生きる知恵。地球には、さまざまな「へんてこ生物」がいる。彼らの一見不思議な姿や行動には、厳しい生存競争を勝ち抜いてきた、驚くべき理由が隠されている。5億年にわたる厳しい生存競争から「逃げる」ことで生き延びた“天才軍師”オウムガイ、みずからの体に藻を育て「自給自足」を体得した“森の仙人”ナマケモノ、孤独な深海で透明の頭と可動式の目を獲得したデメニギスなどー。本書は、NHKで放映された「へんてこ生物アカデミー」を書籍化したもの。<読む前の大使寸評>中を覗いてみると、表紙にヴィジュアル版と書かれたとおり、カラーおよびモノクロの画像が多いのが・・・ええでぇ♪rakutenすごい! へんてこ生物ポリプテルス「2章 逃げるは恥だが役に立つ」から、ポリプテルスを見てみましょう。p24~30<逃げることから始まった ポリプテルス> 人生には、幾つもの壁が現れる。今日より明日、明日より明後日、一日一日をよりよく生きるために、われわれ人間は日々、その壁を乗り越えようと奮闘する。とくに高度経済成長期、がむしゃらに働くことが賛美された時代された時代を経て、日本人は「目の前にある壁は、乗り越えるべきもの」という価値観を刷り込まれてきた。 しかし、壁を乗り越えることが、唯一の正解なのだろうか。壁の前でUターンをして、ちがう道に逃げ込むことは、負け組の誤った生き方なのだろうか・・・。 ポリプテルスは、ポリプテルス目ポリプテルス科に属し、現在17種ほどが知られている。そのすべてが熱帯アフリカに生息する淡水魚で、体長は30センチから60センチほど。ギリシャ語由来の「poly(意味:多くの)」と「pterus:(意味:ヒレ)」というふたつの単語を組み合わせた学名のPolypterusは、「多くのヒレ」を意味する。それが示すように、細い円筒形の体にきれいに並んでいる背びれが太古の恐竜をイメージさせるとあって、近年では熱帯魚ショップでも大人気だ。 ハイギョやシーラカンスと同様、「生きた化石」と呼ばれるポリプテルスは、魚であって、魚ではない。一般的な魚類とは大きく異なるのは、その呼吸の仕組みにある。 多くの魚類は、えらに水を通すことで、水中に溶け込んだ酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を体外に排出している。人間における肺の役割を、えらが担っているのだ。 ところがポリプテルスは、えらだけでなく肺ももつ。その長さは腹部全体に及ぶものもある。その肺を使って、時折、水面から顔を出して外の空気も吸う。つまりえら呼吸もするし、肺呼吸もする二刀流。いったいポリプテルスとは何モノなのか・・・? そんなポリプテルスにたいして、ある実験がなされた。 カナダのマギル大学(当時)のエミリー・スタンデン博士は、陸上でポリプテルスを8カ月間育てる実験を行った。肺があるのであればと、ほとんど水のない環境で育てる実験である。 8カ月間、陸上での生活を余儀なくされたポリプテルスは、どうなったか・・・。 なんと、陸上で育ったポリプテルスは、水中で育てたものよりも、ひれを使って上手に歩くようになっていた。 さらにひれを支える3つの鎖骨にも変化が見られ、陸上で育てたポリプテルスは、鎖骨が細く引き伸ばされていたという。これは、ひれをより大きく動かすための変かではないかと考えられている。 この骨の変化は、かつて魚が陸上に進出する過程で起きた変化とよく似ている。約4億年前、淡水に住んでいた魚類(ユーステノプテロン)は、その後2000万年の時間をかけて原始的な両生類(アカントステガ)へと変化した。このときも鎖骨に同じような変化が起きていたのである。(中略) そんな彼らが生息地に選んだのは、天敵となる巨大な魚が入り込めない浅瀬だった。葉っぱや小枝がうず高く積もる浅瀬をかき分けながら川底を蹴って移動しているうちに、アカントステガは、いつしか地上を歩くことができるほど強い足を発達させていったと考えられている。敵から逃げる選択をしたアカントステガは、結果的に地上で生きるための装備を自力で手に入れたのである。(中略) 弱者であろうとも生き延びようと踏ん張れば、未来を変えることだってできる。 そして生き延びるための「逃げ」は、恥ずべきことでも、負けることでもない。生き延びて、未来へと生命をつなぐこと・・・それが地球上に暮らす生物にとって、なによりも重要なミッションなのだから。『すごい! へんてこ生物』2:オウムガイ『すごい! へんてこ生物』1:ウーパールーパー
2024.04.27
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図書館で『子供より古書が大事と思いたい』という本を、手にしたのです。パリの古書店について触れているが・・・さすがに仏文の学者だけあってディープなお話が見られるようです。【子供より古書が大事と思いたい】鹿島茂著、青土社、2019年刊<「BOOK」データベース>より買うも地獄、買わぬも地獄。達意の文章で綴る、洋古書の魅力とコレクション地獄の恐怖。「知的遊戯の宝庫、パリの古書店巡り」を増補、古書の匂いさらに色濃く、待望の新版!講談社エッセイ賞受賞。<読む前の大使寸評>パリの古書店について触れているが・・・さすがに仏文の学者だけあってディープなお話が見られるようです。rakuten子供より古書が大事と思いたい「間奏曲」という括りから、もうひとつ見てみましょう。p107~109<この限りなき悪循環> 最近、初対面の人から「鹿島建設の御曹司だって話ですけど本当ですか」というようなことをよく言われる。まったく、鹿島建設にとっては迷惑このうえないデマが流れているものだが、どうやら、この噂、私がフランスの高価な古書を買いあつめているという話を伝え聞いた人間が当て推量で流したものらしい。しかし、「火のないところに煙はたたない」の理どおり、噂というのはそれなりの根拠がなければ成立しえないものである。 といっても、私が鹿島建設に関係あるというのはまったくの事実無根である。これは鹿島建設の名誉のために言っておかなければならない。だが、よほどの家督でもないかぎり、大学教師の分際で高い古本が帰るわけはないという推測はきわめて正しい。したがって、いったいあいつはどこから金をひねりだしているんだという疑問が湧くのも無理はない。だから、やはりここはきちんと真相を明かしておく必要があるだろう。 はっきり言って、私の資金源は、これみな借金である。しかも親や親類からの出世払いの借金などという甘っちょろいものではなく、銀行やローン会社から、自宅を抵当に入れて借りた本格的な借金ばかりである。したがって、当然、ローンの返済は毎月容赦なく襲いかかってくる。そして、その額は、多重債務者の常として絶えず増加傾向にある。この調子でいけば、破産宣告はまずまちがいのないところである。 にもかかわらず、私はあいかわらず古本を買い続け、借金は雪だるま式に増加している。ではなぜ、こうした事態にあい至ったのか。それは、一言でいって、資料募集の無限地獄におちいったためである。この悪循環は、おおよそつぎのような経過をたどって地獄の釜の蓋を開く。 たとえば、私がパリのデパートについての本を書こうと思い立ったとしよう。そのとき、普通なら資料の募集には、①現代の研究者の書いた二次資料だけを購入する、②一次資料はパリの国立図書館(B・N)で閲覧する、の二つの方法がある。 たいていの研究者は①でお茶を濁すか、あるいは①を主体にして②を併用するというやり方をとる。なぜなら、留学生でもないかぎりそう年中パリにいることはできないからだ。 しかし、本を書き進めて行くうちにどうしても必要な一次資料が手元にないという事態は頻繁に起こる。こういうとき、常識のある研究者なら、つぎにB・Nに行く機会がくるまで待とうと考えるだろう。ところが、わたしは性格的にこの待機ができない。そして、不幸にもB・Nにある本はすべて古書店で探せることを知っている。そこで、パリの古書店にファックスを送り、一次資料のこれこれの本を至急探してくれとたのんでしまう。 これで、見つからないという返事がくれば、それはそれでいいのだが、たいていは合点引き受けたとばかり、関係書籍を取り揃えて送ってくるから始末が悪い。しかも、私の場合、たった1ページの絵入り新聞『モンド・イリュストレ』が必要なばっかりに、50年分の揃いを買うなどという愚行を犯してしまうから、結果は当然、破滅的なことになる。『子供より古書が大事と思いたい』2:お客様は人間『子供より古書が大事と思いたい』1:紙で決まる
2024.04.26
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図書館で『人間の未来 AIの未来』という本を、手にしたのです。おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪【人間の未来 AIの未来】 山中伸弥×羽生善治著、講談社、2018年刊<「BOOK」データベース>より人工知能、進化するロボット、iPS細胞による最先端医療ー私たちの暮らしはどう変わっていくのか?ノーベル賞科学者と史上最強棋士が「10年後、100年後の世界」を予言する。<読む前の大使寸評>おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪rakuten人間の未来 AIの未来どこから読んでもいいのだが、「第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?」から見てみましょう。p14~17<まだまだ「入り口」の段階>羽生:山中先生が発見されたiPS細胞は、日本語では「人工多能性幹細胞」と訳されていますね。山中:難しそうな名前ですが、要はどんな細胞にでもなれる能力を持った細胞です。そういう細胞は体内には基本的にはないけれども、それを人工的に作り出したので、「人工多能性幹細胞」と言います。「隊内にはない」と言いましたが、人間の一生で一回だけそういう状態があります。精子と卵子がくっついて生命が始まる受精卵のときです。受精卵から脳や骨や筋肉や心臓など二百種類以上ある体の細胞のすべてができるので、受精卵は「人工多能性幹細胞」です。なんにでもなれるという意味で、簡単に「万能細胞」と呼ばれることもありますね。 受精卵から出来た大人の体には、もうそういう細胞は基本的にはないけれども、僕たちは大人の皮膚の細胞や血液の細胞を採ってきて、少し操作を加えることで受精卵に近い状態に戻しました。どんな細胞にもなれる幹細胞、英語で「ステムセル」(stemcell)と言いますが、それがiPS細胞です。羽生:「初期化」と言われる操作ですね。山中:はい。「コンピュータを初期化する」と言いますけれども、同じようにリセットして、最初の状態に戻します。皮膚の細胞も血液の細胞も、もともとは受精卵だったので、それを逆戻しして、受精卵の状態に戻すわけです。 僕たちのCiRA(サイラ、京都大学iPS細胞研究所)の目的は、iPS細胞の医療応用です。それには大きく二つの分野があって、一つはiPS細胞から体の様々な細胞に分化させ、患者さんに移植する「再生医療」です。もう一つは、患者さんの細胞から作ったiPS細胞由来の細胞に病態を再現することによって、病気のメカニズムを解明して薬を開発する「創薬」です。羽生:マウスのiPS細胞の製作に世界で初めて成功したと発表されたのが2006年で、翌年にはヒトiPS細胞の製作成功を発表していらっしゃいます。ヒトのiPS細胞ができて2017年でちょうど10年になりますが、現状はどこまで研究が進んでいるんでしょうか。山中:成功した当時は、まだ完全に動物の基礎研究の段階でした。それから10年、世界で活発に研究が進んでいます。iPS細胞ができる仕組みの解明や、患者さん由来のiPS細胞を使った病気のメカニズムの解明が目立ちますけれど、再生医療や薬の開発といった臨床応用の研究も進んでいます。人間への応用の入り口に差し掛かっているかな、というところまでは来ています。羽生:もう実際に臨床のケースも出てきているということですか。山中:そうですね。実際の患者さんで、効果と安全性を確かめる臨床試験の段階にようやく到達しつつあります。 2014年の秋には、理化学研究所の高橋政代先生を中心とするチームが、iPS細胞から作った網膜の細胞を加齢黄斑変性の患者さんに移植する手術を世界で初めて行いました。加齢黄斑変性は加齢に伴って視力が低下したり失明したりする病気で、いま急増しています。50歳以上の方の約1パーセントはこの病気だと言われています。ヒトへの移植手術一例目の患者さんは、術後からこれまで非常に順調に推移していると聞いています。 ただ、これはまだ臨床応用の入り口で、ここからが大変です。僕はマラソンをやっているんですが、42キロのうち10キロくらい走ったら、けっこう走った気持ちになるんです(笑)。でも、本当にしんどいのは、残りの30キロのほうです。それと同じ感じですね。『人間の未来 AIの未来』1:フルマラソンで研究資金を集める
2024.04.25
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図書館で『人間の未来 AIの未来』という本を、手にしたのです。おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪【人間の未来 AIの未来】 山中伸弥×羽生善治著、講談社、2018年刊<「BOOK」データベース>より人工知能、進化するロボット、iPS細胞による最先端医療ー私たちの暮らしはどう変わっていくのか?ノーベル賞科学者と史上最強棋士が「10年後、100年後の世界」を予言する。<読む前の大使寸評>おお 山中伸弥先生の対談が出ているではないか・・・ちょっと古い本であるが、有意義なアイデアが見えるかも♪rakuten人間の未来 AIの未来どこから読んでもいいのだが、「第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?」から見てみましょう。p180~185<フルマラソンで研究資金を集める>山中:僕たちのCiRA(サイラ、京都大学iPS細胞研究所)には、若手研修者の挑戦をサポートする組織を特別につくっています。「未来生命科学開拓部門」というすごい名前がついていますが、まさに「失敗してもいいから挑戦して未来を開拓してほしい」という願いを込めています。iPS細胞技術を活用して、がんや感染症の発症メカニズムや免疫機構を解明するような、新しい生命科学・医療の分野を開拓する研究を目指しています。 その財源はどのようにして確保するかと言うと、「iPS細胞研究基金」をつくって、僕がマラソンを走ったりして寄付を集めて賄うことにしています。羽生:ファンドレイジング(寄付募集)マラソンですね。山中先生は毎年何回かフルマラソンに出場して、オンラインで寄付を集められていますよね。山中:はい。半分はスポーツとしてやっていますが、もう半分は寄付活動なんです。国からの助成金は大学に交付される運営費交付金のほか、さまざまなプロジェクトの競争的資金で、数年ごとにしっかりとした成果を出さないといただけませんから。羽生:要するに、使途というか目的が決まっているので、新規のものには使いにくいということですか。山中:いや、そういう挑戦的なことにも使っていいんです。でも三年、五年の助成期間が終わった後に、再度いただけるかと言うと、やっぱり目に見える成果がないと、なかなか続かない現実があります。 その点、アメリカは国に加えて州政府からも助成があります。それ以外に寄付がすごく多くて、民間企業、特にIT関係者が巨額の資金を研究者に拠出していますね。基礎研究もかなりサポートされています。 国からの資金は税金が原資なので、大規模災害の発生や政治的な判断によってその額が上下する可能性もあります。国からの資金だけに頼らないのは、研究費を調達する上でのリスク分散の側面があります。羽生:国だけに頼らず、民間のサポートを原資にしていく。山中:研究とは、もともとはそうだったと思うんです。昔は大金持ちが、芸術家のパトロンのように研究者をサポートして、自由な研究をさえてあげる。その結果として、さまざまな成果が出てきた。 だから、原点に帰ると言ったら変ですかれども、日本でも国の税金からだけでやりくりするのではなく、一般の方からの寄付で基礎研究を進める部分を今まで以上に増やしていかないといけないと思いますね。(中略)<「寄付先進国」アメリカに学べ>羽生:大口の寄付をする人で、アメリカと日本とでは気質が違うと聞いたことがあります。アメリカの方だと自分の名前を出すけれども、日本の場合だと匿名にしてほしいという希望が多い、と。山中:そういう方が多いですね。羽生:その辺りの文化の違いをうまく取り入れて、参考にしながら協力してもらえるような体制ができるといいですね。山中:アメリカには自分たちで財団を作って、何十億円、何百億円と寄付されているファミリーが本当にたくさんあるんです。それは日本では極めて例外的です。僕たちもたくさんの人の寄付で支えていただいていますが、日本は個人的な支援が多いですね。羽生:最近はクラウドファンディングのような試みもなされています。山中:僕たちもクラウドファンディングをやっています。マラソン大会に出て走っていると、まさに沿道で何十万人という方が見ておられますから。地道な努力がけっこう効きますね。アメリカでは研究機関の所長や医学部長は、仕事の半分くらいをファンドレイジングに費やしている印象を受けます。羽生:仕事の半分ですか。山中:そうしたファンドレイジングでどれくらい資金を集めてきたかが、彼らへの評価のかなりを占めますからね。だからアメリカでもそれぞれ努力しているんです。日本もやっぱり努力しないと、寄付は集まりません。羽生:ただ、そういうファンドレイジングを扱う仕事というか、触手というか、専門家そのものの数が、日本医はかなり少ない印象を受けます。山中:少ないですね。ただ僕たちのところでは研究所独自でファンドレイジングの部門を作っていて、数名がそれ専門にやってくれています。国立大学の研究所としては、極めてユニークなかたちです。羽生:確かにそうでしょうね。山中:さきほどのユニークな仕事をどう生み出すか、に関わってきます。このファンドレイジング部門も、別に僕たちが独自に考え付いたことでも何でもありません。アメリカでは普通にやっていることを日本ではやっていないので、それをやろうとしているだけです。だから決してすごい何かを思いついたわけではありません。その意味でも、アメリカを知ることは大切ですね。
2024.04.25
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図書館で『子供より古書が大事と思いたい』という本を、手にしたのです。パリの古書店について触れているが・・・さすがに仏文の学者だけあってディープなお話が見られるようです。【子供より古書が大事と思いたい】鹿島茂著、青土社、2019年刊<「BOOK」データベース>より買うも地獄、買わぬも地獄。達意の文章で綴る、洋古書の魅力とコレクション地獄の恐怖。「知的遊戯の宝庫、パリの古書店巡り」を増補、古書の匂いさらに色濃く、待望の新版!講談社エッセイ賞受賞。<読む前の大使寸評>パリの古書店について触れているが・・・さすがに仏文の学者だけあってディープなお話が見られるようです。rakuten子供より古書が大事と思いたい「間奏曲」という括りから、ひとつ見てみましょう。p125~127<お客様は人間> これは、フランスに行くたびに感じることなのだが、フランスでは「お客様は神様です」という思考法が存在しないようである。とりわけ古書業界ではその傾向が強い。 たとえば、ある古書店からカタログが届くたびに毎回何十万単位で注文を出しているとしよう。そして、支払いも滞りなく済ませているとしよう。日本でなら、すでに上得意扱いで、直接その店に出向いたら、それこそ下へも置かぬもてなしを受けるはずである。 ところが、フランスでは、こうした勝手な思い込みはきれいさっぱり捨てなければならない。というのも、フランスの古書店ではカタログでいくら大量注文を出していても、けっして上得意として扱ってはくれないからである。フランスに出掛けたついでにその店に立ち寄ってこちらの名前を告げてみても、「なにしにきた」とでも言わんばかりの接客態度に出会ってガッカリすることも二度や三度ではない。 もちろん、なかには、金満家の日本人とみて、揉み手するような態度に出る店主もないわけではないが、それはごくごく少数派である。たいていの店は、いくら大口の客でも、特別扱いすることはけっしてない。 といっても、これは人種差別なのではまったくない。つまりどの客に対してもこうなのである。彼らは、自分がプロとして自信をもって価値を算定し、これにリーズナブルなマージンを乗せた古書を売るのだから、買ってもらったからといって、いささかもへりくだる必要はない、ましてや大口客が店に来たからといって、床に顔を擦り付けるなどもってのほかと考えているのである。 なかには、たんに性格が傲慢で態度が悪いだけの奴もいることはいるが、愛想のないのを悪意のしるしと取ってしまうのは誤りである。 そのかわり、一見の客であっても、日本の商店のように邪険な扱いをされることはない。客が求めている本の題名を告げ、そして、それが店にあれば、どれほど貴重な本であろうと、躊躇することなく売ってくれる。稀覯本は、なじみ客に取っておくというような姑息なことはしない。 ここから導きえる結論はひとつしかない。商行為が正当なものであるかぎり「客は神様ではなく対等な人間だ」ということである。古書業者はリーズナブルなマージンで利益を得る。客は探している本を正当な価格で買うことができる。まさにギブ・アンド・テイクの関係である。だったら客が威張っていい理屈はどこにもない。客がいくら大口の注文をしようが、そのつどギブ・アンド・テイクの関係が成り立つのだから、とくに感謝をする必要もない、とこういうわけだ。 最初はこうした接客態度に面食らうが、慣れてくるとこれはこれで悪くないと感じるから不思議である。「神様」でなく「人間」であっても別に不愉快ではない。むしろ、変に恩を着せられたりすることがないので、プレッシャーを感じないで済む。 もっとも日本に戻ってきたとたんこの「人間宣言」は破棄される。「神様」でいるほうが気持ちいいにきまっているからである。『子供より古書が大事と思いたい』1:紙で決まる
2024.04.24
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