ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti @ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2007.04.09
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マリー・アントワネット 」。
私の席は二階。
当然、出演者の顔など、ほとんど識別できない。
それでも、私には彼らの表情がわかった。
彼らの「声」が、私にすべてをおしえてくれた。

声は振動、声は艶、声はドラマ。

土居裕子は、修道女のなりをしているからではなく、
歌う声の純粋さと神々しさにおいて、修道女である。

歌い方にこめられた夜の香りと、男を男と思わない肝っ玉ぶりによって、
売春宿の女主人である。
石川禅は、気弱で小ばかにされたキャラクターを演じているが、
ひとたびその歌声が響けば、彼が「王」であることがわかる。
気品と誇りと、虐げられたことのないのびやかさが漂うのだ。

そして、新妻聖子。
マリー・アントワネットの対極として据えられたもう一人のMA、マルグリット・アルノー。
物乞いであろうが、娼婦であろうが、革命闘士になろうが、
声が発せられた瞬間、「彼女が主旋律を奏でている!」とすぐにわかる。
声に魂が宿っている。歌そのものが感情である。音が訴えてくる。
たとえ歌詞が一つもなくても、彼女がメロディを口ずさむだけで、観客は魔法にかかるだろう。


ある時は大貴族然としてお公家さんチックを漂わせ、
かと思えばシトワイヤンを標榜し、革命家たちをけしかける。
しかして実体は、単に「王になりたい」という欲望を掻き抱き、
王妃を陥れようと暗躍するいじましい陰謀家。
物語の重要な鍵を握る人物として随所に出てくるオルレアン公は、

観る者を共感させる感情表現が見事だ。

大御所山口祐一郎扮するカリオストロ伯爵との対峙は、
拮抗して全体のバランスをうまく保っている。
鈴木は今回の凱旋公演からの新キャストだが、
すでにカンパニーを鈴木色に染めている。

もう一人の新メンバー、フェルゼン役の今拓也も、朗々と歌い上げる声はなめらかで声量十分。
まっすぐな人柄のフェルゼンを体現している。
曲の細部に感情の揺れがこめられれば、完璧なのだが。
これから2ヶ月、演じるほどによくなっていくことを期待する。

彼を受け止め、そして翻弄するマリー・アントワネットには、涼風真世。
前半は、何もわからぬ娘としての幼さを、後半は、子どもの母親として成長した姿を、と
意識的に演じ方を変えている。
特に子どもを失ってからのマリーが素晴らしい。
ただ、「演じる」マリーは見えてきたが、「歌う」マリーの印象は薄かった。
「王妃マリー・アントワネット」のオーラを大舞台で放つことのできる数少ない女優であるだけに、
歌声で他を圧倒すれば、さらに存在感が増すだろう。
欲をいえば、前半は単なるわがまま娘ではなく、憎めないイノセントさが、
後半は出自から匂い立つ気高さが、もっと際立つとよかった。

原作は遠藤周作。
ドイツ人ミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイにそれぞれ脚本と音楽を委嘱し、
彼らと綿密なやりとりをしながら、日本チームは栗山民也が演出、音楽は甲斐正人である。

自らがクリスチャンであり、フランス留学経験もある遠藤の本に、
ヨーロッパ人がインスパイアされるというところにこのミュージカルのすごさがある。
単に「王妃マリーの悲劇」で終わらせず、
人間にとって神とは何かという命題が「流れ星のかなた」という歌にこめられ、
それがすべての歌のモチーフとなっているのは、リーヴァイの信念。
「正しいと思ってやったことの結末は、すべて正しいのか」という
今日的なテーマは、クンツェの思うところである。
このテーマ性で栗山民也演出! はまりすぎ。
世界観の共有によって、民衆と王侯の物語はラスト集約されていく。

フィクションとはいえ、史実に沿った歴史劇なので、説明的になるところが多いのは否めない。
そこを狂言回しの劇作家・ボーマルシェ役の山路和弘が、軽妙に料理する。
彼は「距離を保て 束縛されるな あらゆるものに」という歌詞の示すものを、終始実行していた。
また「ギロチン」を意匠化した、簡素ながら存在そのものに意味のある舞台装置も斬新。
そこに表情を与える照明も、見逃せない。
進化した日本発ミュージカルの集大成。
「日本ミュージカルの基準」が変わる、作品である。
5月30日まで、東京・日比谷の 帝国劇場 で。お見逃しなく!


王妃マリー・アントワネット(上巻)



王妃マリー・アントワネット(下巻)






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Last updated  2007.04.09 09:06:23
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