ら組三番町大安売屋碧眼の魔術士

2005年04月30日
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カテゴリ: ラピスの休日



 仲間と定めた者たちを淡々と守り続ける守護神として、そして的確なる戦略を示す者として、彼は知られていた。高みにいる彼のことを誰もがその畏怖し、また妬みともとれる匿名での中傷も多く得ていた。けれどそうしたものなど意にも介せず、彼はいつも毅然として狩り場へと向かっていく。


 その日、有翼の獅子なる聖騎士、シャルベーシャがいつものように大陸に降り立つと、仲間たちが誰もいない。光る名前は彼一人だけだった。

「さすがに土曜の夕方は仕方がないか・・・」

 彼は苦笑しながらも、いつもよりもずっと下の狩り場へと足を運んでいった。ふと気づくと、大陸政府の神々からの啓示が示された。初めてこの大陸へと足を踏み入れた冒険者に対する説明会があるようだ。1人の気軽さもあって、シャルベーシャは3つの世界の冒険者たちが唯一共に集える闘技場へと見物に出かけることにした。


「おひ・・・シャルベーシャだ・・・」

「初心者説明会にあの人が来るなんて珍しいな。」

 その姿を見て小声で噂し合う人々がいたが、彼はいつものように気にも止めなかった。見れば政府のお役人が色々な質問に答えつつ、それぞれの世界からやってきた指導者たちの同業組合へと新人を案内していく。お役人が返答に困るような質問が出れば助け舟を出しつつ、城の武器屋脇に立って、彼はゆったりと見物を続けていた。


「どなたか、ラピスからお越しの方はいませんか?」

 ラピスでの指導役を求めて、お役人が声をあげている。横にはまだ年若い戦乙女の姿があった。シャルベーシャ自身、いつも彼が住む世界でまだ青い名前の冒険者を見かければ、出来るだけ声をかけるようにしていた。しかし、ラピスに住む戦乙女では下手に指導役を買って出るわけにも行かない。

「ラピスのBSギルドの方はいませんかぁ・・・困ったなぁ。」

 お役人の困惑した声に、戦乙女は不安そうな表情になっていく。まだ知り合いもいないだろう。ここで誰かと出会えなければ、彼女はこの大陸の楽しさも知らないまま、去っていってしまうかもしれない。彼は意を決して一歩前に出ると、よく通る声で名乗り出た。

「ラピスの住人じゃないが、私でよければ案内役を務めましょう。」

 彼は彼女とパーティを組むと、戦乙女としての戦い方や装備のことなど、聞かれるままに答えていく。過去に一度この大陸を訪れたことがあったが、久しぶりに戻ってきたと言う彼女は、ほとんどの記憶を既に失っていた。


 それが、シャルベーシャとまぶしいほどに光り輝く戦乙女、凰赫の出会いだった。







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最終更新日  2005年04月30日 03時04分08秒
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