はにわきみこの「解毒生活」

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2005.03.25
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 龍一はふうーっと長いため息をついた。

「ごめん。でもホントなの? 東華が昔妊娠した時の相手って、龍ちゃんなの?」
「東華から聞いたんじゃないの?」
「ううん。不妊治療について聞いたら、昔、妊娠したことがあるから必要ないと思ってたって言ってたの。それだけ。それに、さっき、東華が初恋の人だって聞いたもんだから。もしかしたら、と思ったの」

「言っておくけど、千紗が言うようにしょっちゅう東華の話がでたわけじゃないよ。あいつは、ふとしたタイミングに質問をはさんでくるんだ。今思うと、それをつなぎ合わせて、ひとつの話ができあがっていたんだな」

「好きな人ことは何でも知っておきたいのよ、きっと」

「でも阿南は恋人の過去をほじくったりはしないだろ」

 確かにそうだった。祥二と付き合ってもう4年が経つが、彼の過去について気にしたことはない。ルックスも悪くないし性格だって明るく前向き。ヤツのような男がモテなかったわけがない。 しかし、ヘタに昔話を聞きだして、嫉妬に駆られるのがいやだった。だったら知らない方がよっぽどすっきりする。自分から質問するだなんて愚の骨頂だ。



「まあね。でも阿南の場合は、 知りたくないこと、 の間違いじゃない?」

 またしても心臓が不整脈を打った。なにかが引っかかる。龍一の言葉のいくつかは、腕のいい鍼灸師のひと鍼に似ている。ここぞ、というツボに鍼が刺さった時のように体が勝手にピクッと反応してしまうのだ。

「知らない方がいいことだから、知りたくない。別に矛盾はないでしょ」
「知らない方がいいことっていうのは、結果論だろ。その内容を理解してからでないと、知った方が良かったのか、知らなかった方が良かったのかはわからない。阿南の場合は順序が逆だ。知りたいことも、知りたくないこともひっくるめて、質問しないというスタンスでいたんだろ」

 自分の人生をズバリと言い当てられて、私は身がすくむ思いだった。これが龍一の占いのスタイルなのか。
「だって。人の心には、ずかずかと踏み込んじゃいけない領域があると思わない? 少なくとも私にはそういう場所がある。だから人に対してもそれをしない。ルールを遵守する、それだけのことよ」

「オレには、ズバッと切り込んできたじゃない。ついさっき」
「それは――」
 そうだった。さっきの私のしたことは、主義に反することではないか。相手が心にしまっていた話を無理に聞き出そうなんて。

「私だけ知らなかったってことが…龍ちゃんから友達扱いされてないって気がしたから」
「そりゃあ、東華とのつきあいが長く続いたんなら、阿南にだって話をしたさ。だけど、二人の関係がものすごく時間で決着していたとしたら、どう?」


「いいさ。阿南だってビックリしたんだろうから。じゃあ、誤解のないように話をするよ。初恋の話」
 龍一は大きく息をすってから、ゆっくりと話し始めた。





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最終更新日  2005.03.29 07:08:53


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