真っすぐ前を見て、あたかも目的があるかのように雪雲が次から次へ音もなく流れていきます。
何も手に付かず仕事部屋の机の前に座っている。安定した精神を保ってはいるものの、目標が定まらずモチベーションは行き場を失って空回りしている。
刺激を求めて図書館までひとっ走り。久しぶりのジョギングだ。
目的の本は見当たらず、雑誌のコーナへ。芸術新潮の棚を覗く。そこに「小村雪岱(1887―1940)」の特集の一冊を発見。眼を惹きつけられてしまった。
泉鏡花『日本橋』 装丁小村雪岱 (特選 名著復刻全集) 近代文学館
少年時代から鏡花の幻想的な文学世界に魅(ひ)かれていた雪岱は20歳の時、縁あって作家本人と出会い、1914年、鏡花の小説「日本橋」の装丁を手がけた。
表紙は、無数のチョウが舞う川の情景を、細い線とさわやかな色彩で表現。見返しには、路地裏を情緒豊かに描いた。
好みがうるさい鏡花にも認められ、以後、鏡花文学の装丁や口絵のほとんどを担当した。
多色刷り木版などを使った装丁は、実に素晴らしく贅沢だ。
細身の女性、雪や雨、柳や草花などの主要モチーフがしっとり感を効果的に演出する一方、構図にメリハリがある。
黒を大胆に使ったりする挿絵にはぞっとするほどの魅力がある。
泉鏡花「註文帳」/『愛染集』より 「註文帳」の一場面を描いたものか。極端なパースペクティヴ、しどけない姿でたたずむ遊女、そして画面全体を覆い隠すかのような雪、雪、雪。この世のものではない美しさ。
泉鏡花『芍薬の歌』 見返し 大正8年 春陽堂 装釘小村雪岱
泉鏡花『愛艸集』 見返し 大正7年 春陽堂 装釘小村雪岱
2月14日まで埼玉県立近代美術館で開催中で、実物を見てみたいという思いが募る。
「日歌」が千首を超えたのを機に、 「游歌」 とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートすることにしました。
★ 「ジグソーパズル」 自作短歌百選
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