イギリスで1年間お金を使わずに生活する実験をしたアイルランド出身の29歳の若者「マーク・ボイル」が、自らの生活をユーモラスな筆致で綴った、痛快なノンフィクションがある。
「 ぼくはお金を使わずに生きることにした 」THE MONEYLESS MAN:A Year of Freeconomic Living(Boyle,Mark) 吉田 奈緒子【訳】 紀伊國屋書店 (2011/11/26 出版)
この実験で証明したいのは、お金がなくても「生き延びられること」ではなく「豊かに暮らせること」だ――
「金なし生活」のオープニングに彼がしたのは、スキッピング(飲食店、スーパーマーケットなどのゴミ箱から食材を収集すること)によって、150人規模の無料のパーティを開くこと。
そして著者は、インターネットの掲示板で「フリーサイクル」という不用品交換サイトで、無料で入手したトレーラーハウスを手に入れる。週三日農作業をすることと引き換えに農場の片隅にトレーラーハウスを置かせてもらうことに成功し、太陽光発電パネルをとりつけて、半自給自足の生活を始める。
手作りのロケットストーブで調理し、歯磨き粉や石鹸などの生活用品は、植物、廃材などから手作りする。衣類は不要品交換会を主催し、移動手段は自転車。
故国でテレビ番組に呼ばれれば、手配されたフェリーのチケット以外はヒッチハイクで乗り切り、
実験の過程では、もちろん大変な目にも遭い、金を使わない生活は何事にも手間がかかる。友人に会うために往復60キロを自転車で走らないといけない。ネズミの被害に悩まされ、食中毒にもなる。孤独との戦いも辛い。
大学で経済学と経営学を学んだ彼は、食品業界で実際に働き「生産と消費が遠くなることによって、人々が過酷な競争にさらされ、ますますお金に振り回されつつある現状」に疑問を感じ、一石を投じようと実践を決意。
固定艱難で身動きが取れないと思いこんでる現代社会に、まだまだ未開の試されていない部分が存在し、ルールや法律を変えなくても実践できることが有ることを証明してみせた。
「分解」リストと名付けたノートに自分が消費してきた物を片っ端から書き出し、自分が必要とする物すべてを、お金を使わずにどうやって手に入れることができるかを検討し、実践していった。
何が必要で何が無駄なのかが自ずと明確になってゆく。
彼の1年間の金なし生活をユーモラスな筆致で綴った体験記は、貨幣経済を根源から問い直し、真の「幸福」とは「自由」とは何かを問いかけてくる、現代版「森の生活(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー)」だ。
彼の記事がイギリスのテレビや新聞で紹介されるや、世界中から取材が殺到し、大きな反響を呼び、世界の10の言語に翻訳され、14か国で刊行されているという。
吾々は本来、お金に頼らなくても生きられる様々な能力を備えている。いろいろなものを作りだす力、様々な問題を知恵と工夫で乗り切る能力、一人では不可能なことでも協力し合って成し遂げる総合力。
著者のボイル氏は、その後本の印税をもとに信託基金を設立し、英国内に土地を取得して「お金のいらないコミュニティー」を、仲間とともに運営している。
また、彼が始めた「フリーエコノミー・コミュニティー」というウェブサイトでは、無償であらゆるスキルを教え合い、道具、空間を分かち合うことができる。
そこには、現在160カ国、約35,000人が参加しており、46万種類の技術、10万個の道具、500以上の空間が集まっているという。
金を使わない生活を始めることで見えてくるもの。
本当に必要なものと不要なもの。不可能と思われていたものが、案外簡単にクリアできることこと。作る楽しみを手に入れ、気付かなかったことの新たな発見に出合うこと。
人と人とのつながりが深まり、かえって心が豊かになってゆく。
東日本大震災、原発事故を経験した今こそ、新たな価値観の創出が求められている中で、個々人が出来ることはたくさんある。
既成概念と固定観念を払しょくする、それだけで見えてくるものが有るということだ。
アメリカ合衆国のペンシルベニア州・中西部などやカナダ・オンタリオ州などに居住するドイツ系移民(ペンシルベニア・ダッチも含まれる)の「アーミッシュ」という人口約20万ほどの宗教的集団がいる。
移民当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られる。
アーミッシュは現代文明を完全に否定しているわけではなく、自らのアイデンティティを喪失しないかどうか慎重に検討したうえで、必要なものだけを導入して生活しているのだ。
◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」と
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。
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