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岸田政権で進む「高齢者の定義=70歳以上」へ引き上げ議論 実現すれば「夫婦で1800万円の年金損失&負担増」の試算~総理大臣が議長を務め、その諮問に応じて内閣の基本方針(骨太の方針)などを議論する「経済財政諮問会議」において、高齢者の定義を現在の「65歳以上」から「70歳以上」に引き上げる提案が行なわれたのだ。実際に引き上げられれば、国民生活に甚大な影響が出る可能性がある。今回の提案は、同会議の民間人議員全員が連名で提出した資料に含まれ、「高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき」と述べられている。~今回たまたま民間人議員が言い出したという話ではなく、政府はこれまでも、内閣府による国民意識調査の結果などを持ち出しては、高齢社会白書で〈高齢者を65歳より高い年齢とするとらえ方が幅広く支持されており〉と書くなどしてきた。年金財政の逼迫、社会保障費の膨張を考えれば、政府は「高齢者の定義」の見直しを狙ってきたとみていい。では、「高齢者の定義」が70歳以上、あるいは「75歳以上」になると、高齢者の給付や負担はどう変わるのか。現行制度では年金は原則として65歳受給開始、モデル世帯の年金額は月額約23万円(2024年度)。元会社員の厚生年金が月額約16.2万円、妻の国民年金が月額約6.8万円。70歳受給開始になると、5年分が受け取れなくなり、夫婦で約1380万円の年金損失、元会社員の単身世帯でも約972万円の年金給付が消失する。すでに企業に対しては、希望する社員に70歳までの雇用を提供することが努力義務になっているが、長く働かせて年金の支給総額を減らしたい政府の意図は鮮明に感じられる。~しかも、年金受給開始の年齢が引き上げられるなら、年金保険料を支払う期間も延びるだろう。今年は5年に一度の公的年金の財政検証があり、それを踏まえた年金制度改正が来年行われる。すでに、国民年金保険料を支払う加入期間を40年(20~60歳)から、45年(20~65歳)に延長する案が出ている。保険料は月額1万6980円(2024年度)なので、加入期間の5年延長で支払う保険料は約102万円増える。これが『高齢者は70歳以上』となって加入期間が10年延長(20歳以上70歳未満の50年)という話になると、1人あたり約204万円、夫婦で約408万円の負担増になります」夫が60歳まで40年間会社勤めをしてリタイアするモデル世帯の夫婦を考えると、支給減の1380万円と負担増の408万円を合わせて、1800万円近い老後資産が失われることになる。---わたしは団塊ジュニア世代のさきがけの年代にありますが、私の年代から公務員の定年が65歳に延長されます(現在は経過措置中)。その法案が成立した時に、「ああ、次は年金がやられるのだろうな」と思いましたが、そのとおりにことは進んでいるようです。団塊の世代よりは少ないですが、団塊ジュニア世代もまとまった人数がいますし、その後の世代は少子化により人口が減る一方です。だから、政府としてはできるだけ団塊ジュニア世代には長く働かせ、年金も出したくないのでしょう。ただし、この世代にはまともに働く口がなかった人も数多くいます。私自身は、狭義には団塊ジュニアより前の世代で(実質的には団塊ジュニアの最初の世代ですが)、最初に就職した時はバブルの最盛期だったし、転職時は一転してバブル崩壊後の就職氷河期でしたが、幸いにして正規雇用のお堅い(笑)仕事に採用され、今日まで働き続けています。しかし、就職氷河期の中、正規雇用に採用されなかった人や最初は羽振りよく働き始めた人でも、途中で会社がなくなったりリストラされたりして退職を余儀なくされた人も、大勢いる世代です。私自身はこの世代の中では比較的幸運な部類だったと思っていますが、世代全体としては、バブル崩壊後の長い不況によって、徹底的に虐げられてきた世代です。その世代が定年延長で狙い撃ちされ、次は年金支給開始の繰り下げでも狙い撃ちされようとしているわけです。おまえらの世代は邪魔だから、ギリギリまで働いて、年金なんか貰わずにとっとと死んでくれ、と言外にそういわれているように思えるのは、私のひがみでしょうか。ともかく、今の制度のままだったとしても、年金が受給できるのはおおよそ10年近く先の話です。その間に制度がどう変えられるんでしょうか。少なくとも、私にとって心楽しい方向に制度が変わる可能性など、絶対にないものと諦めています。どうせ65歳で年金なんか貰えない、その前提で人生設計をするしかありません。が、頭ではいくら理解しても、感情はまた別です。どうにも意気の上がらない話なんですよね。
2024.06.12
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安定神話どこへ…県職員採用試験、大卒申込者が過去20年で最少 前年度からも2割減「学生の民間志向高まった」鹿児島県は22日、来春入庁予定の2024年度職員採用試験(大卒程度)の申込者数が451人だったと発表した。前年度の552人から101人、18.3%の大幅減。県人事委員会によると、統計が確認できる03年度以降で最少だった。(以下略)---県庁合格者の4割が辞退…「人材確保推進チーム」新設 ペーパーレス化で8億円コストカット県職員の採用試験では昨年度、合格者の4割近くが辞退しました。~県によりますと、昨年度の職員採用試験では合格者の36.8パーセントが辞退したということで、21日の会議では、今年度「人材確保推進チーム」を設置することが報告されました。(以下略)---鹿児島県と言えば、もう15年くらい前になりますが、阿久根市で竹原信一という人物が市長を務めていた間、すさまじい公務員攻撃が展開されたことがありました。市職員の給料やボーナスをカットする条例案を、議会の議決によらず専決処分で強行するなどの異常な強権的市政運営を繰り広げた挙句、リコールによって市長の座を追われました。その鹿児島県で、採用試験の応募者数が今年度大幅減で過去最低となったそうです。しかも昨年の合格者の1/3が採用を辞退しているそうです。今年も同様に合格者の中から多くの辞退者が出ることが予想されます。たまたま目についた記事が鹿児島県でしたが、この状況は全国的に変わりません。おそらく鹿児島県も同様と思いますが、全国的に、昨年の採用試験の時点で過去最低レベルに競争倍率が落ちています。例えば、東京都特別区の昨年の採用試験(1類つまりいわゆる大卒程度の事務職)の昨年度の競争倍率は2.5倍と発表されています。私のおぼろげな記憶では、30年以上前のバブルの最絶頂期、公務員の競争倍率がもっとも低かった時代でも、東京23区の採用試験の競争倍率は3.5倍前後だったと記憶しています。しかも、上記リンク先を見ていただくと分かりますが、採用1181人の予定に対して合格者が3013人もいました。東京23区の採用試験の場合、合格者の中から23区各区が面接して採用していくのですが、合格者名簿に載っていても最終的にどこの区にも採用されない人が、多少は出てきます。ただし、全体の何割かは知りませんが、そう多くはないでしょう。それよりも、採用辞退者があまりに多いことが主たる原因で、採用予定者の3倍近くも合格者を出しているのでしょう。ちなみに、公務員は現在60歳定年から65歳定年へと定年延長の経過措置の過程にあります。そのため、この3月末には定年退職者はいませんでした(ただし、フルタイム勤務が終了して短時間勤務に移行する人はいた)。それにもかかわらず競争倍率が過去最低、言い換えれば採用予定者数が非常に多かったのは、一つには途中退職してしまう若手~中堅職員が激増していること、もう一つは、定年延長されても60歳で退職してしまう、まだフルタイム勤務ができる年齢でもやめて短時間勤務に移行してしまう職員が大勢いることが原因でしょう。つまり、採用試験の合格者はどんどん辞退するし、今働いている職員もどんどん退職しているという最悪の状態にあるわけです。なお、東京23区の今年の採用試験(来年度採用予定)の申込者数を見ると、鹿児島県と同様に、昨年度より申込者が減っていることが分かります(過去最低かどうかは調べていないので分かりませんが)。最終合格者はこれから決まりますが、採用予定者数は昨年より150人ほど多く、したがって合格者数(あるいは合格させたい人数)も去年より多く、ということは競争倍率は過去最低だった昨年度よりさらに下がることは確実です。さらにすさまじいのは教員です。東京都の教員採用、小学校で過去最低1.1倍 質の低下いっそう懸念東京都教育委員会が実施した2024年度の教員採用選考について、小学校の受験倍率が1・1倍だったことが分かった。都教委が29日、発表した。小中高、特別支援学校を合わせた全体の倍率も1・6倍で、初めて2倍を切った。いずれも過去最低だった前年を下回り、教員の質の低下や人手不足がいっそう懸念される事態となっている。(以下略)---倍率1.1倍ですよ、ほぼ無競争です。それが去年の採用試験ですから、鹿児島県の例、東京都特別区の例から類推すれば、今年は更に倍率が下がるとみて間違い何ないでしょう。阿久根市の竹原元市長について触れましたが、あの当時、公務員叩きが流行したのは阿久根市だけだったわけではありません。大阪の維新など、それで勢力を拡大したと言って過言ではないし、自民党の小泉政権なども同様でした。このブログでも、公務員叩きのコメントは少なからずありました。そうやって、全国的傾向として、公務員を叩き続けて、今では公務員という仕事は、多くの人が魅力を感じずに逃げ出すような待遇になってしまったというわけです。何か、「世界一の先進国」と言われていた日本が、気が付けばどんどん貧しい国になりつつある状況と、軌を一にしている気もします。この先に明るい未来が待っているようには、到底思えないのが現実です。
2024.05.25
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特集ドラマ「むこう岸」出演者・放送日決定のお知らせ“もと優等生”の少年と“ヤングケアラー”の少女出会うはずがなかった2人が奇跡をおこす!見失った夢を取り戻せ!有名私立中学をドロップアウトした少年が生活保護を受けて暮らす少女と出会い、再び未来への希望を見出してゆく。話題を呼んだ小説「むこう岸」を、魅力的なキャストでドラマ化します【あらすじ】とある公立中学校に転校してきた山之内和真は、「有名私立中学で落ちこぼれた」という秘密を、クラスメイトの佐野樹希に知られてしまう。「取り引きしない?」と樹希に命じられたのは、彼女を慕う口のきけない少年・アベルに勉強を教えることだった。エリート主義の父親からのプレッシャーに悩んでいた和真は、近所のカフェのマスターが子どもたちに開放している小さな部屋で、アベルや樹希と過ごすうちに、自分の居場所を見つけてゆく。だが、病気の母と幼い妹を抱え、生活保護を受けて暮らす樹希は、将来に希望が持てず、なりたかった看護師の夢もあきらめていた。そんな樹希を見かねて、「理不尽だよ」と和真が手にしたのは「生活保護手帳」。大人でも難解な内容を読み解き、なんとか解決策を見つけようと奮闘する。そして、ケースワーカーや塾講師など、周囲の大人たちを巻き込みながら、ついに起死回生の一手を見つけ出す。だが、その矢先、事件は起きた! はたして和真の未来は? 樹希は夢を取り戻せるのか?【放送予定】2024年5月6日(月・祝) よる9:30〜10:43 [総合]---生活保護制度をテーマにした柏木ハルコの漫画「健康で文化的な最低限度の生活」がドラマ化されたのが2018年のことでしたが、それ以来の生活保護制度を正面から取り上げたドラマが製作されます。NHKでの放送ということです。「健康で文化的な最低限度の生活」もそうでしたが、全国の生活保護ケースワーカーが組織した「公的扶助研究会」(公扶研)が協力をしている作品、ということです。原作は安田夏菜の同名の小説(児童文学)ですが、こちらは残念ながら未読です。どんな内容の作品か、楽しみにしています。
2024.04.26
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水原氏解雇で「ショウが大丈夫であることを願う。でも…」 同僚ベッツが騒動に語った冷静な言葉米大リーグのドジャースは20日、大谷翔平投手の通訳を2018年の渡米時から務めてきた水原一平氏を解雇した。巨額の不法賭博に関与したと複数の米メディアが報じ、球団も21日になって解雇の事実を認めた。大谷は21日のパドレス戦に「2番・DH」で出場。5打数1安打1打点で、チームは11-15で敗れた。試合後、同僚のスター選手、ムーキー・ベッツ内野手は「ショウが大丈夫であることを願う」などとコメントしていると米メディアが報じた。(以下略)---急転直下の大騒動には言葉を失うばかりです。とりあえず、具体的に何がどうなったのか、という細かい話には立ち入りません。はっきりしているのは、450万ドル(7億円弱)という巨額のお金をギャンブルに注ぎ込んで溶かしてしまった、そうなるまで破滅への道を止められなかった、という事実です。もちろん、判断力もあるいい大人が、そんなことをするのはとんでもない話ですが、そういう常識が通用しなくなるのが依存症の恐ろしさです。報道によれば違法博徒のことですが、米国では合法のカジノもたくさんあり、そこで破滅する人も少なくはないようです。日本でもギャンブル依存になる人は少なからずいます。ただ、パチンコで億という単位のお金を短期間で注ぎ込むのは、なかなか難しいように思います。競輪競馬はやったことがないので分からないのですが。いずれにしても、ギャンブルは社会的に百害あって一利なしというのが正直なところです。ただ、現在日本に存在する合法ギャンブルを突然廃止しても、おそらくギャンブルをめぐる諸問題はいきなり解決することはなく、むしろ非合法なギャンブルがはびこることになりそうな気がします。だから、現在認められているギャンブルを廃止するのは難しいところです。逆の言い方をすれば、ギャンブルを一度認めてしまえば、それがどれほど害悪であっても、廃止するのは難しいということでもあります。したがって、今あるギャンブルを禁止するのは難しいですが、少なくとも今から新たなギャンブルを公認するのは、とんでもないとしか言いようがありません。それにも関わらず、カジノが合法化され、大阪がカジノを作ろうとしています。破滅的な影響が生じる未来しか、思い描けません。行政がテラ銭を稼ぐために若者をギャンブル依存にして地獄に突き落とす、世も末です。
2024.03.22
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漫画、アニメ界から立て続けに訃報が舞い込んできました。「Drスランプ」「ドラゴンボール」などの漫画家鳥山明氏と、「ちびまる子ちゃん」の声優TARAKO氏です。お二人ともまだ60代です。まだまだご活躍が期待できる年齢だったのに、残念という言葉に尽きます。鳥山明氏は急性硬膜下血腫と報じられています。TARAKO氏は死因が非公開ですが、今年に入って闘病していたことが明らかにされており、亡くなる数日前にSNSに上げられていた写真で、収録現場で車いすを使用していた様子がうかがえます。収録の仕事はできていた、進行性、しかも今年に入ってからの急激な進行と考えると、どういう種類の病気かはなんとなく想像はできます。ただ、ここでは病名の推察がテーマではないので、それ以上は立ち入りません。TARAKO氏は、ちびまる子ちゃんのまる子役を32年近く務め(34年とも報じられていますが、1992年9月に一度放送終了して95年1月から第2シリーズが始まっているので、実期間は32年弱)、そのイメージが強いですが、私は中学生の頃に見た「戦闘メカ・ザブングル」のチル約が印象に残っています。それ以前の「うる星やつら」がデビュー作だったようですが、初レギュラーを掴んだのがこの作品です。そして、それ以降、まる子役までに、いくつもの作品でレギュラーを務めており、少なくともアニメ界では十分に知名度のある声優さんでした。ところが・・・・・死去を報じるニュース番組より、2018年に亡くなった原作者さくらももこさんの葬儀でのスピーチが少し流れています。「声優デビューしても、まる子が売れるまでずっとバイトしていたし、貧乏はお得意で」~動画が見つからないので動画は提示できませんが、別のニュース番組で、この後に「3000円のマッサージに行くのも苦労する生活をしていた」という趣旨のことをおっしゃっていたように記憶しています。アニメ界が、アニメーターも声優もどちらも収入が低く、かつ不安定であることは周知ではありますが、まる子以前からある程度のレギュラー番組を抱えていたTARAKO氏でも、「まる子」という超が付く大ヒット作に出会うまでは、声優だけでは食えていなかった、というのはなかなか驚きの事実ではありました。厳しい世界、というより厳しすぎる世界ですし、このままでは将来性も厳しいかもしれません。アニメーターの大きな才能は、どんどん海外に流れていくかもしれませんが、「日本語」という言語と切り離すことができない声優さんは、そうもいかないでしょう。どうなっていくのでしょうか。
2024.03.11
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東証4万円超え 「好景気の実感ない」「投資に興味」「一切しない」4日の東京株式市場で、日経平均株価の終値が史上初の4万円台となり、バブル期の最高値を更新した。しかし、人々に景気が良くなったという実感はあるのだろうか。新宿の街頭で聞いてみた。「株? 私は全く分かりません。お金がないし、余裕ができたらやるものですかね」JR新宿駅近くでチラシ配りをしていた男性は冷めた表情だ。最近、地方から東京へ引っ越してきたという。「景気が良くなっているとは全く感じないです。物価は上がっているし」大型書店の前にいた女子学生も無関心だ。アート専攻で読書好きだという。「同い年の友人がNISAをやっています。私も勧められたけど、頭良くないとできないから、と言って断りました」一方、隣にいた男子学生は「お金があったら投資してみたいです」と興味津々の様子だ。今の株価上昇率をみると、挑戦したほうがいいと思うそうだ。「真面目に働くだけでは、将来満足に暮らせるのか心配です」とも付け加えた。「日経平均が4万円を超えたのをみて、投資を始める人がいるでしょうね。私もやろうと思いましたから」。そう話すのは、デパートから化粧品を買って出てきた兵庫県姫路市の女性だ。聞けば、LINEで誘われた投資グループに参加し、40万円を振り込んでしまったという。女性によると、ラインで「投資の勉強をしてみませんか」と誘われ、「これだったら私にもできるかも」と思ったという。最初は無料で2、3カ月間、投資の勉強に励んだ。しかし、最後になって40万円を求められたという。振り込んだ後、東京に住む息子から詐欺の可能性を指摘された。消費者相談センターに相談し、40万円は無事に戻ってきたものの、苦い思いが残った。---株価はバブル期を超えたそうですが、世の中の生活実感はどうでしょうか。求人状況という点に限って言えば、悪くはないかもしれません。何しろ日本中が人手不足ですから。公務員が続々と「転職のため」と言って退職していく時代です。先日、1年あまり前に退職した若い元同僚とばったり再会し、聞けば、誰でも社名を知っている超有名会社に勤務していると言っていました。もっとも、死ぬほど忙しいとも言っていましたが。というわけで、若い人の求人に限っては好景気でしょうけど(私みたいな50代はダメでしょう)それは少子化で現役世代、特に若い世代の人口が減っていることの反映でもあります。80年代末から90年代初頭のバブル期、それは後から考えればバブル崩壊までの短い泡沫の夢に過ぎなかったわけですが、当時の時点では誰も「バブル」とも「もうじき崩壊する」とも思っていなかったわけで、多くの人が、すぐ足元にあった絶壁の存在にも気が付かずに、バラ色の未来が広がっていると思っていたわけです。一方現在、株価は三十数年ぶりにバブルを超えましたが、日本の未来がバラ色だなどと思っている人はほとんどいないでしょう。若い人の求人状況は悪くない、という一点を除き、絶望的に暗い未来しか描けません。それなのに、何故か株価だけが高いのは、ある意味で不思議なことです。ちなみに、私は株も投資も興味がありません。こんな株高がいつまでも続くとは思えないので。それが半年後か1年後か5年後かは分かりませんが、またバブル崩壊がやってくるでしょう。それを考えれば、今から株に手を出すなんて、考えられません。でも、バブルがはじけて景気が悪くなると、その影響はすべての人に降りかかってきます。株高の利益は一部の人にしかないのに、株が落ちた時の不利益は全員にのしかかってくるのだから、理不尽なものです。
2024.03.06
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東京のど真ん中で、生活保護JKだった話誰もが受ける可能性のある「生活保護」。その実態を少し覗いてみませんか?父は病気の後遺症で仕事につけず、母も病気療養中のため生活保護を申請することになった家族。「タネコちゃん、お魚の食べ方きれいだね」……なぜかって? 家族4人でサンマ1匹を食べあってるからだよ~~!!! 苦い内臓だって大事な可食部!!お金がかかるボウリング場はなかなか行けない……。だったら”無料で”遊べる公共施設に行けばいいじゃない!世は平成のゲーム戦国時代。欲しかったあのゲーム機も、貧乏な家庭では到底買うこともできず……。そんななか、ある漫画雑誌で作品中の謎を解けば抽選でゲーム機が当たるとの情報が!! これはやるっきゃない!そんな波乱万丈な暮らしのなか、ボランティア活動を通して仲良くなった区役所職員さんが、進路に迷った著者にかけてくれた驚きの言葉とは……!あなたも私も実は知りたい「生活保護の実態」。実際に生活保護を受けた著者だからこそ描ける、人生救済リアルコミックエッセイ!---以前に、「健康で文化的な最低限度の生活」という漫画を紹介したことがあります。テレビドラマ化もされた作品で、そのリアリティには福祉事務所関係の知人も大変感銘を受けていました。あの作品は、生活保護のケースワーカーを取材して作られた漫画であり、個々のエピソードは「ケースワーカーあるある」な話満載のようですが、ともかくもフィクションではあります。一方こちらは、生活保護を受給した側の視点、そして実話です。1冊読みきりなので、すぐ読める分量です。元は大企業に勤めていたが、脳腫瘍が原因でリストラにあい、転職したもののさらに脳梗塞で倒れた父、統合失調症の母、その母の圧迫から引きこもりになった兄と、高校生の妹(作者自身であり主人公)という4人家族。家庭状況は相当マイルドに、面白く描かれていますが、実際のところは漫画から受けるイメージよりさらに悲惨な状況であったことは、容易に想像できます。その悲惨な状況の中で、著者は「とにかく就職してこの家を出る」と決め、かなりの進学校の出身にもかかわらず、高卒で公務員試験を受け、無事合格して公務員となります。(結局、4年務めて退職し、漫画家のアシスタントになったそうですが)このように生活保護世帯から自立する子どもは、保護世帯の子どもの中では稀有な例、とまでは言えないそうですが、それでも大半の子どもがそうなる、というわけにはいきません。親は生活保護、子も不登校から生活保護、という「貧困の連鎖」もまったく稀ではないので、その連鎖から抜け出した著者は、幸運だし、よく頑張った人だと思います。逆に言えばもっと悲惨な状況のままという人も大勢いる、ということです。余談ですが、このように生活保護受給世帯から公務員に就職、という例は、他にもいます。私の勤務先にもいます。決して稀な話ではありません。ただし、私が知っている実例は、わたしよりかなり年上の方ばかりで、だいたいみんな退職していますが。バブル崩壊後の不景気で公務員の競争率が高くなると、真っ当な家庭の出身で小さい時から勉強がよくできた人で合格者が占められるようになって、貧困世帯出身者が入り込み難くなった傾向は否定できません。最近になると、人手不足で公務員の競争率が猛烈に低下しており、また状況が変わるかもしれませんが。ちなみに、この主人公は前述のとおり、進学校にもかかわらず高卒で就職しますが、生活保護でも奨学金と世帯酢分離によって、大学に進学することは可能です。ところで、この著者のブログを読むと、本人もご主人も同級生で、長く交際しながらなかなか結婚に踏み切れなかったのは、ご主人が長く非正規雇用だったためのようです。バブル崩壊後の不景気と、それによって就職氷河期世代の多くが不安定雇用を余儀なくされたことが、日本の出生率の動向に大きな悪影響を与えたことが分かります。
2024.03.04
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生活保護費を1日1000円ずつ手渡し、全額払わず 群馬・桐生市群馬県桐生市が生活保護を受給する50代の男性に対して1日1000円ずつ生活保護費を手渡しし、全額支給していなかったとして、群馬司法書士会が市長宛てに21日、運用改善を求める要請書を提出した。求職活動を支給の条件とし、ハローワークに行ったか確認するため職員の印鑑が押してある書面の提示を窓口で求めていた。市は男性に渡していなかった13万4180円を支払った。同会が提出後に記者会見した。要請書によると、男性は7月26日に生活保護を申請。8月18日から受給が始まった。支給額は月額約7万円と決まったが、1日1000円を窓口で手渡しし、月に3万数千円程度しか支給していなかった。10月初旬に同会に相談があり、副会長が男性と同12日に市を訪ねたところ、未支給分が支払われたという。男性は「1日1000円では生活が厳しい。分割の支払いも納得がいかない。病気の治療で通院もしているので、毎日ハローワークに通い詰めになるのはストレスだった」と話した。副会長は「交渉の際、一括支給するとすぐに使ってしまうので、生活指導の意味を込めて求職活動を条件に支給していたと市側から説明された」と述べ、「支給額が決められた基準を下回ることや、一定の条件を付すことは憲法と生活保護法に反している」と指摘。今後、訴訟を検討するという。生活保護は憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために一定の金額が支給される制度。年齢や居住地域など厚生労働相が定める基準で計算される最低生活費から、収入を差し引いた差額が支給される。市の担当者は、男性に支給額を全額は手渡していなかったことを認め、「分割支給に関して本人に口頭で説明し、了解してもらえたと思っていたが、理解を得られていなかったことが要請書により分かった。今後は受給者との相談や決定事項を書面化して理解を求めるなど検討していきたい」と話した。---またまたすごい事態が表面化しました。生活保護に詳しい知人に聞いたところ、保護費を分割支給すること自体はある、しかしこの件は異常、ということでした。生活保護受給者の中には、金銭管理ができない、お金を手にすればすぐ使ってしまう、という人が、一定の割合でいるのです。そのため、知人のいた福祉事務所でも、「書面による同意」のもとで金銭管理はやっていた、ということです。ただし、その割合はかなり低く、一人のケースワーカーで、よほど多くても2~3人、少なければ0人、受給世帯全体の1~2%程度ではなかったか、といいます。しかも、その多くは月2回払いとか、せいぜい週払いまでで、知人が経験した一番大変な例でも週2回払いまでだそうです。日払いなんてやったことはない、と。同じケース(受給者)に毎日対応し続けるのは大変だし、出張や休暇の場合は同僚か査察指導員に依頼しておかなければならないし、そんな面倒なことはとてもやっていられない、ということだそうです。週2回払いでもかなり大変だったとか。まあ、保護費を週2回渡すこと自体だけでなく、そのケースの対応全般が、ということもあるかもしれませんが。自分以外の担当で日払いの受給者は見たことがあるけれど、とうてい長期間維持することは不可能で、実際に短期間で終わったということです。したがって、この件も地区担当員(ケースワーカー)がわざわざこんな超面倒くさいことを個人的自発的にやったとは考えにくいのではないか、ということです。上司(保護課長か査察指導員つまり保護係長)の指示あるい言外の意向ではないでしょうか。さて、知人の勤務先の例では、現金管理を行う場合、もし光熱費や電話代が引き落としでないなら(口座引き落としの手続きを自分であるいは家族が取れるなら、そもそも金銭管理などする必要がない)それらの請求書を持ってこさせて、その分を払わせて、残ったお金を例えば週払いなら4分割して渡していく、もちろんその際に領収書をとり、受払簿には上司の印をもらい、また内部的なものではありますが定期的に上司や他係による検査も行っていた、ということです。その、知人のいた福祉事務所でも、その後諸事情からこの種の金銭管理を今はやっていないそうです。そもそも、保護費の現金払い(事務所払い)自体が、いろいろな事故の原因になりかねないので極力減らしていく、口座払いに速やかに変更していく流れが、全国どこの役所にもあります。確かに金銭管理ができない困った受給者に対しては、週払いなどの金銭管理はある程度有効なのですが、弱点があります。それは「保護費しか金銭管理できない」という点です。生活保護は、「補足性の原理」「他法他施策」優先という大原則があり、最低生活費(保護基準)にたいして収入の足りない分を援助するという制度です。例えば、保護基準が8万円で就労収入や年金が月6万円だったら、差引2万円だけ保護費が出ます。まったく無収入で、保護費が基準の全額出ている人に対しては、その保護費を預かって週払いにすることができます。しかし、年金や就労収入を取り上げて金銭管理するわけにはいきません。福祉事務所から支払う1万や2万の保護費を金銭管理しても、本人の口座に支払われる給料や年金を浪費されたら、何の効果もないのです。特に年金は隔月で2か月分が払われます。保護費は1か月分、年金は2か月分、これを切り分けて、使いすぎずに家計を維持すること自体、ある程度の才能を要することかもしれません。というあたりが、生活保護受給者の金銭管理についての一般的な話です。それと比べて今回の事例はどうでしょうか。そもそも、日払い、週払いは金銭管理能力に極めて大きな問題があることが分かっている人に対して行うものです。保護開始と同時では、そんなことは分かりません。住所不定者(金銭管理能力に問題のある人が多い)でもありません。それに対していきなり日払いというのは、ほとんど嫌がらせのように見えます。1日1000円というのもびっくりです。普通に考えて、1日1000円で生きていくことは、「物理的に餓死しない」だけなら可能でしょうが、「健康で文化的な」最低限度の生活を送ることは到底不可能です。光熱費や電話代はどうしていたのでしょうか。また衣類の洗濯は可能だったのでしょうか。電話がなくても洗濯しなくても、人は死なないかもしれませんが、マトモな生活を維持することはできません。採用の連絡を電話で受けられない人、面接時に衣類から異臭を発している人が、どこの会社から採用してもらえるか、ということを考えてみるべきです。ちなみに、引用記事には支給額は月額約7万円とありますが、正確には、桐生市(級地区分2級地1)の生活扶助基準は71,460円(10月までの額)になります。この男性に収入がまったくないとすれば、その全額が支払われていたのでしょう。アパートで家賃がかかっていれば、その家賃も住宅扶助として出ているはずですが、「代理納付」として家主に直接払われているのでしょうか。7月26日申請受理ということは、開始決定がいつであってもその日の分から保護費が出ます。7月分は6日分なので約1万4千円、8~10月分は71,460円、11月分はこれに冬季加算が4,000~5,000円加算されているはずなので、合計30万円ちょっとになります。で、1日1000円ずつ渡していたとすると、7月26日から11月11日まで109日間で10万9千円になります。で12日に残金13万4180円ってことは、差額が6万円ほど使途不明になるのですが、これはどうなったんでしょうか?・・・・まあ、おそらくその差額が光熱費や電話代を払った分なのだと解釈することにしましょう。そして、求職活動を支給の条件として、毎日ハローワークに通わせてハンコを押させてそれを確認していたそうです。これまたびっくりです。男性は通院しているそうで、病名は書いていないけれど、別報道では結核の既往があり、また「働く意思はあっても体がついていかなかった」そうです。その状態で求職活動を指示するにあたり、稼動能力調査は行ったのか?というのが知人の指摘でした。通院先の医師に「稼動能力調査」つまり働けるか否かを照会するものだそうです。「普通労働可」という回答であれば求職活動を指示するものの、「軽労働可」だと及び腰となり、「就労不可」では求職活動の指示はしないそうです。そもそも、生活保護法第27条によって受給者に求職活動を指示する場合は、稼動能力調査をしなければならないそうですし、それをやっていて、「普通就労可」という判定が出ていた、ということなのでしょうか?そうだとしても、求職活動指示と保護費の支給は直接結びついてはいません。つまり、福祉事務所の口頭指示に反した場合は、指示に従えという指示書→それでも従わない場合は弁明の機会を設定→保護停止または廃止、というのが指示違反に対するペナルティの仕組みということです。指示書も弁明の機会もなく、勝手に保護費を1日1000円日払い、などというペナルティの課し方が認められているわけがない、ということです。また、毎日ハローワークに行け、というのも、安直な発想だ、ということです。ケースワーカーはえてしてそういう発想にとらわれることがあり、知人も、明らかにぐーたらな受給者に腹を立てて、「ハローワークに毎日通うくらいのことはしろ」と思ったことはある、ということです。しかし、逆にハローワーク関係者に言わせると・新しい求人が毎日出てくるわけじゃないんだから、同じ求人票を毎日眺めるだけなので無駄・福祉事務所から指示されるのて、働く気もないのにハローワークに来て、福祉事務所に見せる求職活動報告書にハンコだけもらって帰っていく受給者がいる、そんなのに毎日来られたら迷惑ということなんだそうです。つまり、毎日ハローワークに行け、というのは、受給者に対するたんなる嫌がらせでしかなく、実際の求職活動の役には立たない、ということになります。それを知って、知人も考えを変えたとか。もちろん、働けるのに働かない人を安穏と保護を受けさせておいてよいわけではありません。が、そのためのやり方としてあまりに短絡的ですし、前述の別記事から読み取れる本人の生活歴からは、それでも「普通にバリバリ働ける状態だ」とはとても言えない状況が読み取れます。もちろん本人の言い分だけだと言えばそれまでですが。これらを総合して考えれば、桐生市の行ったことは、極めて問題が大きいというしかありません。また、先の書いたように日払いというケースワーカーにとってもやりたくない業務をやって(やらせて)いる時点で、これは職員個人の意図とは考えにくく、したがって他に類似例がありはしないか、という疑念を抱かせます。
2023.11.23
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京都で生存権を求めるデモ 「たまにはウナギも食べたいぞ」「生存権を求める京都デモ」が1日、京都市であった。生活保護の利用者と支援者100人が路上から訴えた。「たまには旅行に行きたいぞ」「たまにはオシャレもしたいぞ」「たまにはウナギも食べたいぞ」憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するよう政府に命じている。その政府は生活保護費を大きく削っている。京都では、生活保護を使いながら地域で自立生活をしている障害者が「生活保護改悪に反対する人々の会」(小松満雄代表)をつくり、「全京都生活と健康を守る会連合会」とともに政府を相手に裁判中だ。「人々の会」がさらに重大視しているのが「バッシング報道」の後遺症だ。政府による削減方針とおなじころさかんに報じられたのが芸能人の家族の「不正受給」で、実際は不正はなく生活保護への偏見と差別をあおっただけだった。そうした報道のせいで生活保護制度はとても使いづらいものへとおとしめられたと「人々の会」は怒っている。対抗手段として2019年にはじめたのが「生存権デモ」で、この日も先頭集団をあるいた。(以下略)---このデモをめぐっては、各方面から様々な意見が出ているようです。というか、例によってネット上ではバッシングする意見があふれかえっているようです。良し悪しとか「べき」論を度外視して現実論を言えば、今の日本のこの現実、生活保護叩きが跋扈している状況のなかで、私自身がもしもこのデモに参加していたとしたら、「たまには旅行に行きたいぞ」「たまにはオシャレもしたいぞ」「たまにはウナギも食べたいぞ」は言わないかな、と思います。ただでさえ生保バッシングで満ち溢れているのに、火に油を注ぐことになるのは明らかですから。と、言わざるを得ないのが今の日本の現実です、残念ながら。出る杭は打たれる、声高に主張する者は、とりわけ弱者の立場から声高に主張する者は、寄ってたかって袋叩きにされるのがこの国の現状です。賛否とか、それが実現できるかどうかはともかくとして、「旅行」「おしゃれ」「ウナギ」は、人間の欲望として、少なくとも道を踏み外したものではまったくありません。だって、わたしも旅行は好きだし、ウナギも好きですから(ただし、ウナギは絶滅危惧種なので、最近は食べないようにしています)。男だからおしゃれにはそれほど興味はないですけどね。世の大半の人は、その程度のささやかな願望は持っているはずです。ならば生活保護受給者が同様の願望を持っていたとして、なにもおかしくはありません。もちろん、それが権利として保証できるかどうかは別の問題です。願望がすべて認められる、というわけにはいきません。私も「旅行」「おしゃれ」「ウナギ」という願望をすべて実現すべきだ、とは思いません。でも、そのような主張を掲げること自体がおかしい、異常だ、反社会的だ、などということは、まったくありません。「旅行」「おしゃれ」「ウナギ」と具体例を書いてしまうと、共感を得にくくなってしまう傾向は否めないものの、一般論として言えば、生活保護の根拠である憲法第25条の生存権は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障と書いてあります。一切何の娯楽も余裕もなく、餓死せずにギリギリ命をつなぐだけ、というのが生存権の趣旨ではありません。正直なところを言えば、かつて、十数年前に知人から保護基準(最低生活費)の金額のいろいろなパターンを教えてもらった時、多人数世帯の最低生活費は「なんでこんなに高いの?」と思ったことがあることは事実です。母子加算なんかも、個人的には、思うところがないわけではありません。しかし、現実に生活保護世帯の大半を占める高齢単身世帯の最低生活費が「高い」とは思えないのです。元々がそうでしたが、それ以降保護基準はどんどん引き下げられています。かつて私が「高い」と感じた多人数世帯の保護基準は、その後大幅に引き下げられていますし、元々高いとは思えない単身世帯の保護基準も引き下げられています。それなのに、急激に物価上昇しつつある今、単身世帯の保護基準ですら、引き上げとはなっていません。「旅行」「おしゃれ」「ウナギ」などという表現の問題ではなく、そのことに対して、受給者が不満を抱くのは、おかしなことではありません。にもかかわらず、そのような主張をすること自体を許さないような社会状況が、この国をよい方向に導くことは決してないと言わざるを得ません。
2023.10.24
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「これまで消費税を着服してたくせに」ホリエモン インボイス反対運動に苦言「ちゃんと払えや」SNSでは賛否9月5日、実業家の堀江貴文氏が自身のXを更新。インボイス制度への反対運動に苦言を呈した。今年10月から始まるインボイス制度。これまで課税売上高1,000万円以下の事業者は、「免税事業者」として消費税の納税が免除されていた。しかし、今後はこのような事業者も消費税を納税しなければ、取引先の課税事業者が消費税の控除を受けられなくなる。免税事業者のままでいる場合は課税事業者との取引が停止になる可能性があり、課税事業者になっても消費税支払いによる負担が発生することになるため、個人事業主を中心に抗議の声が続出。9月4日には、個人事業主らでつくる団体が財務省などに制度の中止、延期を求める署名およそ36万人分を手渡した。すると翌9月5日、堀江氏は自身のX上で、この反対運動に疑問を呈した。堀江氏は署名に関する東京新聞の「インボイス反対に署名36万筆超 個人事業主ら、財務省に提出」というニュース記事を引用したうえで、《これまで消費税を「着服」してたくせによー言うわ。ちゃんと払えや》とコメント。個人事業主らの消費税免税に納得がいかない様子だ。続けて、《みんな払ってる消費税を払わずに下駄履かせてもらってなんとか成立していた商売はそもそも商売として成り立ってないんだよ》とも投稿した。さらに、堀江氏はユーザーの《対価が少ない声優さんからの声が目立つと言うのはその辺かもしれませんね》というコメントを引用。《まあ厳しいことを言うと単純に新しい事にチャレンジ出来てない怠け者ってことになるわな。こんなしょーもない署名運動する暇があったらVtuberでもやってひと稼ぎしなよ、って思いますわ》と、インボイス制度に反対する人たちに喝を入れた。---相変わらず、上から目線での馬頭暴言を繰り返しているようです。インボイス制度にはいろいろと問題があり、私の周囲で普段まったく政治色がなく、おまけに明らかに売上高1000万円以上の企業に勤めている知人(売上高は知りませんが、従業員が3人以上いる会社で売上高1000万円以下はあり得ないでしょうから)も、「この制度はひどい」と言っています。すでに消費税を払っている会社もインボイス制度に対応するため、高価な会計システムを更新しなければならないからです。それにしても、「これまで消費税を「着服」してた」というのは、明らかに暴言です。着服とは、「人に知れないように盗んで(不正な手段を使って)、自分の物にすること。」です。法的に認められて消費税の支払いを免除されていた会社が消費税を支払わないことは、「着服」とは言いません。しかも、それを「着服」と呼ぶのであれば、世の中のすべての小売業は諸費税を「着服」していることになります。例えば、どこかのスーパーに行って、陳列棚の値札を見てみましょう。1,100円(消費税100円)と書いてある商品を購入すれば、100円の消費税をそのスーパーが預かり金としてそのまま消費税として納税する-と、思っていませんか?いうまでもなく、違います。仕入れた商品の原価にも消費税がかかっているからです。660円で仕入れた商品を1100円で売った場合、仕入れた段階で問屋に60円の消費税を払っているので、差引40円の消費税しか払いません。が、その取り扱いを、今後免税事業者から仕入れた場合には認めない、というわけです。免税事業者から660円で仕入れた商品を1,100円で売っても、差額の40円ではなく100円の消費税を払え、というのです。従来通り差額40円の消費税納税で済ませられるのは、インボイス制度の登録をした適格事業所から仕入れた場合だけ、となります。そうなると、損をするので免税事業者からは仕入れをしない、ということになる可能性が高いわけです。などという超初歩的な話は措いて、粗利率が3割や4割の企業で売上高1,000万円では、もうほとんど生きていくことはできないでしょう。私の両親は、社員は夫婦だけ、という零細企業を営んでいましたが、さすがに売上高は1,000万円は越えていました。また、相手が一般消費者であれば(購入者が経費として処理するのでなければ)上記のような不利益はあまり影響はありません。つまり、売り上げ1,000万円というのは、サイドビジネスで他に本業を持っているのでなければ、建設業の一人親方とか、偽装請負のように、実態は雇用関係に近いのに、委託契約の形にされている、という例が大半を占めているはずです。アニメ業界で声優が反対の声を上げているのも、そういう事情からでしょう。実態は給料だけど、それを給料としてもらえば消費税を納税する必要はないのに、委託料の形でもらうと消費税を納税しなくてはならない、そのような不合理があるからこそ、1000万円以下は免税事業者、という優遇措置で何とかバランスがとれていたのでしょう。「みんな払ってる消費税を払わずに下駄履かせてもらってなんとか成立していた商売はそもそも商売として成り立ってない」残念ながら世の中には、そんなに恵まれた職に就いている人ばかりではないのです。そりゃあ、ホリエモンに比べれば商売の効率は低いでしょうが、それでやっとこさ食べている人が大勢いてその職がなくなったら収入が途絶えるのです。「単純に新しい事にチャレンジ出来てない怠け者ってことになるわな。こんなしょーもない署名運動する暇があったらVtuberでもやってひと稼ぎしなよ」これもまあ、空虚な建前論というものです。単純に、いつでもどんな環境でも新しいことにチャレンジできる、それは才能ですが、誰でもそんな才能を持っているわけではありません。新しいことをやって成功できる人は、さらに少ない。ホリエモンは新しいことに次々と手を出して成功してきた(受刑者にもなったけど)のでしょうが、そんなことが可能なのは、ごく一握りの限られた人間だけだと知るべきです。世の中には成功者がいれば必ず失敗者がいるのです。全員が成功を納めることなどできません。ホリエモンが完璧な能力を持っているからといって、世の中の大多数の人間が完璧な能力を持っているわけではないのです。それは別に、怠け者だからではありません。無限の能力を持っていないことを罵倒の材料にしている輩など、いつか自分が年老いて才能が摩滅した時に、自分自身にその言葉が降りかかってくることになあるでしょう。
2023.09.09
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いささか旧聞に属する話になってしまいますが61年ぶり異例の事態、そごう・西武スト 「守ろう」組合員ら拳上げセブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店大手「そごう・西武」の売却計画に対し、そごう・西武の労働組合は31日、西武池袋本店でストライキを実施した。大手百貨店では61年ぶりとなる異例の事態。「思い出の場所。変わらないで」「百貨店は今の時代に厳しいのでは」。支援を呼びかける組合員を前に、通行人からさまざまな声が上がった。店がある池袋駅周辺では、組合員約300人が午前11時半ごろから1時間近くデモ行進した。旗や横断幕を手にした組合員たちは「池袋の地に百貨店を残そう」「西武池袋本店を守ろう」と拳を突き上げ、沿道から時折拍手を浴びた。デモに参加した組合員の20代女性は「お店の先が見えずにもやもやしていたが、ストライキで私たちの思いを伝えられてよかった。この街に今の西武本店があり続けてほしいというのは私たちだけでなく、お客様の願いでもあると思えた」と元気に語った。同業他社の労組関係者や市民も応援に駆けつけた。阪急阪神百貨店労組委員長は「これまで署名活動などで支援をしてきた。ストライキの実施に至ったことは悔しく思う」。夜行バスで大阪府から来たという定時制高校教諭は「ストに立ち上がった人々を孤立させてはいけない、応援する人もいると伝えたかった」。昼間は働く生徒たちに労働者の権利を教える場面も多く「声を上げる現場を見て生徒に伝えたかった」と話した。組合員らはその後、最高気温34・1度(東京都心)の暑さの中、通行人に理解を求めるビラを配った。通行人からは、ストにさまざまな感想の声があった。(以下略)---この事態にはびっくりしました。そごう・西武労働組合はUAゼンセン同盟傘下の労働組合だからです。何を隠そう、inti-solは今を去ること約30年前、前勤務先でゼンセン同盟傘下の労働組合(そごう・西武ではありません)の組合員だったのです。別段、入りたかったわけではなく、ユニオンショップ協定が結ばれているため、入社と同時に自動的に組合員になっただけですが。4年間その会社に勤め転職したので、組合員だった期間も4年間ということになります。業種としても、デパートではありませんが流通業(といつも曖昧に言っておりますが、スーパーマーケットです。約30年も前なので社名を公開しても問題ないとは思いますが、一応まだ秘密にしておきましょう)正直なところ、よくある御用組合でした。労組の委員長をやると、次は店長になる、みたいな。おおよそまったく「戦わない」労使協調路線の組合でした。そのゼンセン同盟(の後身であるUAゼンセン同盟)傘下の組合が、今の時代にストを打つ、ということはまったく予想外の事態でした。労使協調路線と言いましたが、今となっては全労連傘下の労働組合だってストを打つ体力などないし、ほぼ労使協調路線になっている(あるいは、ならざるを得ない)のが現状です。かりに指導部が頑張ったとしても、よほどの切羽詰まった状況でなければ、全組合員が一致団結してストに結集、とはならないでしょう。ということは、逆に言えばそれだけそごう・西武の従業員が切羽詰まっていた、ということです。ストの本番どころか、その前提となるスト権投票すらおそらく経験したことがないであろう組合員が(前述のスーパーマーケットにいた4年間で、私はスト権投票の機会は一度もありませんでした)、ぞってストに賛成票を投じているのです。別報道によれば、組合員約4千人のうち、投票総数は3833票で賛成率は93・9%というので、圧倒的多数が賛成しています。労使協調路線をかなぐり捨てる他ないくらいに、不信感を抱き、ついに窮鼠猫を噛んだ、ということでしょう。やっぱりいざというとき、窮鼠猫を噛まない状態が当たり前になってしまったから、企業の内部留保ばかり増えて平均所得がどんどん減っている現状があるわけです。ストが実質的に撲滅されてしまった社会は、明らかに良い方向に向かっていません。そういうなかでよくぞストを決断してくれたと思います。残念ながら、ストにもかかわらずセブン&アイ・ホールディングスは「そごう・西武」の売却を決めてしまいました。とはいえ、マスコミの注目度は高く、ストの目的の一つである世論へのアピールは最大限の成功でしたし、買い取った米国の投資ファンドに対しても、一定のプレッシャーにはなるでしょう。
2023.09.05
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「公務員給与」調査…政府モデル公表「月給40万円」の衝撃度記事本文は省略月給40万円が「衝撃」らしいです。確かに、安月給だとは言いません。しかし、「衝撃」というほどの高待遇なら、そんな職場にひとたび就職したら、中途で辞める人などいないはずです。しかし現実には国の省庁では若手キャリア官僚の退職が激増しているそうです。若手キャリア官僚の退職43%増 13年度比、人事院が公表人事院は25日、中央省庁の幹部候補で、キャリアと呼ばれる総合職の退職状況を初めて公表した。在職10年未満の若手が対象で、2020年度の退職者数は109人となり、13年度の76人から43.4%増えた。調査によると、13年度から17年度までは、10年未満での退職者が100人以下で推移。年度平均は80人程度だった。その後、18年度116人、19年度139人、20年度109人と3年連続で100人を超えた。人事院は同日、国家公務員28万人ほどのうち、20年度に超過勤務の上限を超えた職員の割合は8.7%で、前年度より1.6ポイント増加したとの調査結果も公表した。---少し前の記事ですが、タイトルに43%増とありますが、これは前年に比べて退職者数が少し減った2020年度末を指して言っており、2019年度末は83%増です。「20年度に超過勤務の上限を超えた職員の割合は8.7%」というのも、確実にウラがあり、実際はそんなものでは済まないことは容易に想像できます。つまり、役所は予算が絶対であり、超過勤務の予算を使い切ってしまったら、申請をしない(できない)、超過勤務の申請がないから、職場に残っていてもそれは残業ではない、ということになってしまうのです。要するに、サービス残業が横行している、ということです。これは、国家公務員のキャリア組についての話ですが、おそらくノンキャリアの大同小異だろうし、私の知る限り、地方公務員も事情は変わりません。職員が年度途中に続々と辞めていく状況が生じています。おそらくどこの自治体でも同じであろうと思います。もちろん、年度途中での退職は以前からありましたが、別の道に進むために退職、という例は皆無ではなかったけれどかなり稀でした。例えばメンタルを含む病気とか、大なり小なり何らかの不祥事など、何かしら「問題が生じて退職に追い込まれる」例が以前は多くを占めていました。昨今はそうではありません。若手からベテランまで、不祥事も病気も何もない、能力の高い人、出世コースに乗っていたはずの人も、ボロボロと辞めていきます。もちろん辞めて次の仕事を探すという人もいますが、「もう次の仕事が決まっています」という人も少なくありません。その昔、「脱公務員天国」なんてことを掲げて公務員を攻撃し続けた首相もいましたし、その頃は当ブログでも公務員の「高待遇」を批判する方がいました。きっとそういう皆さんの「願い」が通じてこんな時代になってしまったのでしょう。いつの間にか、「役所」というのは全然魅力のない職場になり、人がどんどん逃げ出していくようになりました。彼らは大いに留飲を下げて、万歳三唱でもしているでしょうか。でもね、多分どこの役所でも似た状態に追い込まれていると思いますけど、そのうち、行政機能の破綻を心配しなけれゃならない状況が目前まで迫っていると思いますよ。私は、そうなる前に、60歳で勝手に定年して(定年は65歳に延長されていますが)少なくともフルタイムの正規職からはオサラバしよう、という気持ちが抑え切れないくらい強まっています。今はまだ無理ですけど。60までには子どもが卒業して自立している、はずなので。
2023.08.17
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政府、骨太の方針原案を公表 退職金課税の勤続年数優遇を是正政府は7日、経済財政諮問会議を開き、今後の経済財政運営の指針となる「骨太の方針」の原案を公表した。政権の看板政策である「新しい資本主義」では、同じ会社に長年勤めるほど優遇される退職金課税制度を見直す。勤続年数による格差を是正し、労働移動を促すことを盛り込んだ。財政政策では「中長期的な視点を重視」する考えを強調し、2025年度に基礎的財政収支を黒字化する目標は維持した。新型コロナウイルス対策で膨らんだ国の歳出構造を「平時に戻していく」と縮小の方針を明記した。岸田文雄首相は同日の会議で「時代の転換点とも言える構造的な変化と課題に直面している。30年ぶりの高い水準の賃上げや、企業部門に醸成されてきた高い投資意欲などの動きを拡大させるため、取り組みをさらに加速させていく時だ」と述べた。骨太の方針は与党と調整のうえ、16日にも閣議決定される。(以下略)---なんというか、絶望的感覚にとらわれます。退職金が転職の足かせだから、「労働移動を促す」という、一見もっともらしい理由をつけていますが、要するにこれからは退職金から税金をいっぱいとるぞ、ということです。現状、退職金の税金計算の基礎となる控除額は、勤続20年までが年間40万円×勤続年数、それを超えると年間70万円×20年を超える部分の勤続年数、となります。つまり、仮に勤続年数を38年(大卒22歳で60歳まで金属だとして)だと、控除額は2060万円になります(退職金がこの額以下なら税金がかからない)が、この優遇措置がなくなると1520万円までしか控除となりません。ちなみに、私は転職経験ありなので、60歳でも勤続38年には届きませんが、それでも勤続30年は越える見込みです。この結果、現状の制度では、私の勤務先の例では、ほとんどの定年退職者の退職金には所得税がかからないか、わずかな額しかかかりません。しかし優遇制度がなくなると、退職金に所得税がかかる人が相当増えるでしょう。わたしの年代は、定年延長によって、65歳までフルタイムで働けるようになります。といえば聞こえがいいけれど、言い換えれば退職金は65歳まで出さない、ということです。団塊ジュニア世代を狙い撃ちにして、「もっと働け」というわけです。もっとも、私は勝手に60歳で退職しますけどね。それ以降、65歳まで無職では耐えられないので仕事はしますが、子どもが独立してしまえば(独立してくれるよね・・・・・)フルタイムの給料が必要ではなくなります。そのフルタイムの給料自体も、60歳以降はそれ以前の7割に下げられるのですが。ところが、今度はその退職金から、税金をいっぱい取るぞ、というわけです。どうやら、国にとっては長く同じ勤務先に勤めるのは、駆逐すべき悪事らしいです。何というか、悲しくなります。だいたい、今更そんなことを言われたところで、時間をさかのぼって転職などできませんけどね。もちろん、それで増える税金は、ものすごく大きな額ではないかもしれません。多分、退職金への増税が嫌だからと1年早く退職しても損になる、程度の増税なのでしょう。それでも、こういうのは気持ちの問題が少なからずあります。で、次に控えるのは、現状65歳からの年金支給年齢の引き上げなのでしょう。定年年齢の引き上げが、団塊ジュニア世代を狙い撃ちのように行われたということは、退職金からの増税も年金支給年齢の引き上げも、団塊ジュニア世代がその年齢に達する前に狙い撃ちされるのでしょう。それでも、私などは最初に就職したときはバブル最盛期だったし、転職時はバブル崩壊後で就職環境は激変していたものの、ともかく運良く採用されて今に至っているわけで、私個人としては同世代の中では幸運な部類ではあります。でも、世代全体としてみれば、見捨てられた世代に近い(新卒就職時から既にバブル崩壊後という点で、私が転職した頃の新卒者の年代がもっと悲惨な世代になりますが)。最後には「おまえらの年代は邪魔だから長生きなどせずにさっさと死ね」と言われるんですかね。ひがみかもしれませんけど、そんな末路にならないことを願うばかりです。
2023.06.08
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銀座強盗「指示役」関与か…若者はSNSでの仕事探しに薄い抵抗感・決行しても使い捨ての現実回逮捕された男4人は高校生を含む16~19歳で、指示役の関与が疑われている。関東など各地で相次いだ一連の「闇バイト強盗」でも多くの若者が逮捕されており、犯罪の実行役として若者が「使い捨て」にされる実態が浮かぶ。警察庁によると、闇バイトに絡む強盗・窃盗事件は2021年夏以降、少なくとも14都府県で五十数件発生。60人以上が逮捕されたが、10~20歳代の若者が目立っている。このうち19歳の男3人は昨年12月以降、渋谷区神南の貴金属店で起きた窃盗など6都県の事件に関与したとみられ、逮捕後の調べに「インスタグラムを通じて闇バイトの募集に応じた」などと供述した。こうした事件の中でも、今回は銀座で多くの人が行き交う時間帯に店を襲い、通行人に見られたり撮影されたりしても動じる様子を見せず約10分にわたって強奪行為を続けるという極めて大胆な手口だった。(以下略)---引用記事は「極めて大胆な手口」と書いていますが、いくらお金に困っても、白昼堂々と衆人環視の下で強盗などやって、いくら仮面をかぶっていても、とうてい逃げ切れるはずもなく、あっという間につかまる、くらいのことは、マトモな判断力があれば高校生だって十分に分かるはずです。実際あっという間につかまったわけですし。というわけで、「大胆な手口」というのはそれで逃げ切れたら成り立つ言葉であり、どちらかというと「杜撰」「無謀」「自滅的」という方が正しいように思えます。一連の強盗事件はすべてそうですが、今回の事件はとりわけはっきりしています。なぜそうなのか。まだ、一連の逮捕者がどのような人物かは報じられていませんが、私の仮説としては、一連の犯人の中には、少なくはない割合で知的障害、あるいは知的ボーダー(知的障害と健常の境界線上の人たち)が含まれるのではないか、という気がします。療育手帳(東京では「愛の手帳」)が取れるレベルの知的障害者では難しいですが、知的ボーダーなら、運転免許を取得したり、全日制の普通科高校に合格できる人は珍しくはありません。もちろん、現時点で根拠となるソースは何もありません。ただ、同じ犯罪を犯すにしても、充分な知的能力があれば、もう少しは捕まらないための工夫はするものだと思えます。それに、世の中の犯罪の加害者にも被害者にも、知的障害、知的ボーダーはかなり多いのです。著名な例は、レッサーパンダ男による女子短大生殺人事件で、wikipediaの記述によればこの犯人は過去には障害者手帳の交付を受けていたということです。光市母子殺人事件の犯人も、Wikipediaに記述はありませんが、知的ボーダーないしは発達障害があると言われています。また、「累犯障害者」などという言葉があるくらいで、刑務所に出たり入ったりする前科何犯、何十犯の人の中には、かなりの割合で軽度の知的障害者が含まれていると言われます。そこから類推して考えれば、一連の強盗事件の犯人の、全員ということはないでしょうが、少なからぬ割合が知的障害か知的ボーダーである蓋然性は高いものと思われます。ちなみに、犯人が障害者(かも)というと、すぐに「障害を言い立てて心神耗弱で無罪や減刑なんて許せない」と叫ぶ人たちがいますが、現実には、障害を言い立てれば減刑されるようなら、「累犯障害者」が刑務所に出たり入ったりするはずがないのです。前述のレッサーパンダ男は無期懲役だし、光市母子殺人事件の犯人も1審2審は無期懲役でしたが最高裁で差し戻し後死刑判決になりました。万引きレベルの犯罪では、警察や検察が面倒くさがって知的障害者の犯行を起訴猶予にしてしまうことはあり得ますが、強盗、殺人レベルの犯罪では話はまったく違います。日本の刑事裁判においては、軽度の知的障害や発達障害系の精神疾患で心神耗弱を認めて減刑することは、まずありません。したがって、今回の犯人も、もし私の推測どおり知的障害あるいは知的ボーダーだったとしても、減刑されたり、まして無罪になることはないのです。私も、情状酌量の余地があるとは思いませんが、ただ累犯障害者には、そもそも親にも障害があったり、家庭が崩壊していたり、家庭環境が滅茶苦茶な人が多々いるのが現実です。環境がまともだったら、そんな悪事に手を染めることもなかったかもしれない、と考えると、何とも悲惨だ、という印象は抱きます。もちろん、現時点ではすべて仮説にすぎません。私の推測は外れ、かもしれないことはお断りしておきます。
2023.05.11
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生活保護の扶養照会、「仕送りした」親族は0.7% 朝日調査生活保護を受ける人の親族に対して、仕送りができるかどうかを自治体が尋ねる「扶養照会」について、全国74自治体を調べたところ、親族から受給者への仕送りにつながった例が、照会したうちの1%未満にとどまることがわかった。朝日新聞が、2021年度まで2年間の実績を調べた。扶養照会は、民法上で「扶養義務」がある3親等までの親族が対象。主に親や子、きょうだいに照会する自治体が多く、厚生労働省は、高齢の親族などは対象から外しても「差し支えない」としている。今回の調査で、各自治体が照会対象としてリストアップした親族のうち、実際に照会した割合(照会率)を計算すると、数%から約8割まで差があることもわかった。照会では、仕送りのほか、定期的な訪問や電話などによる「精神的な支援」が可能かも聞く。親族に知られることを理由に申請をあきらめる人がいるとして、生活困窮者の支援団体などの間では批判の声が強い。朝日新聞は扶養照会について、全国の県庁所在市、政令指定市と東京23区の計74市区にアンケートや情報公開請求を実施し、今年1月までに回答を得た。調べたのは、20、21年度に保護の開始が決まった世帯に関し、照会した親族の数▽照会を受けて仕送りした親族の数▽仕送りの金額など。74市区では、両年度に開始が決まった計20万6513世帯について、親族のべ22万7984人に扶養照会をしていた。その結果、仕送りをした親族はのべ1564人(約0・7%)だった。1千人への照会で、仕送りにつながったのは7人に満たない計算になる。両年度に74市区で保護の開始が決まった世帯数は、全国の5割強にあたる数字になる。照会したうち仕送りが得られた割合を自治体別にみると、全体の8割にあたる60市区で1%未満だった。うち水戸市など8市区は、2年ともゼロだった。---福祉事務所関係の知人に聞いても、「経済的援助」(仕送り)を受けている受給者など、まあまあ100人に一人、という話で、0.7%という数字はそんなものだろうと思います。保護を受けるまでは援助していても、受け始めた途端に安心してやめてしまう、という例も少なくありません。もともと親子兄弟と完全に縁が切れているという例も非常に多いようです。ただし、経済的援助は100人に一人でも、精神的援助はそうではありません。親子兄弟との縁が完全に切れている人が多いとは言っても、それでも多くの受給者は親族との何らかの交流があり、引用記事にあるように、福祉事務所的には「定期的な訪問や電話」のやり取りだけでも、十分に「精神的援助の範囲に入るのだそうです。当然のことながら、福祉事務所のケースワーカーだって、経済的援助が受けられる受給者が極めてまれ、なんてことは承知しており、そんなものに何の期待も抱いてはいませんが、それでも精神的援助には多少の期待を抱いて扶養照会を送るのだそうです。何度か紹介した「健康で文化的な最低限度の生活」という漫画(ドラマ化もされた)には、ビリビリに破いた後、それをセロテープで張り合わせて「援助不可」と書いた扶養照会の回答が遅れてくるシーンが描かれています。知人も、おおむねそれと同様の回答を受け取ったことがあるそうですし、知人の同僚にも、大筋似た経験をしたケースワーカーはいるそうです。それでも扶養照会を送るのは何故か。そういう決まりになっていて厚労省が求めているから、ということもありますが、それがすべてではないようです。万が一の際、というのは、受給者が入院したり亡くなったとき、ということですが、親族の連絡先が分からないと非常に苦労することが多いそうです。例えば受給者が入院する、親族がいれば親族が入院の手続きをしてくれますが、いなければケースワーカーが病院から呼び出されて手続きを求められる、のみならず保証人欄に署名を求められる場合すらあるそうです。ケースワーカーは入院の(に限りませんが)保証人になってはいけない、というのが鉄則ですが、書かないなら入院は無理です、などと言われることもあり、そうでなくても言外のプレッシャーもあって、署名せざるを得ない場合もあると言います。姑息な手段ですが、欄外に「××福祉事務所誰それ」と書くこともあるとか。入院だけでなく介護施設も同様です。残念ながらケースワーカーをやっていれば、そのような事態をゼロにはできないようですが、それでも極力そんな場面を減らしたい、連絡が付く親族は把握しておきたい、とは考えるものだそうです。さらに厄介なのが受給者が亡くなったときです。死亡届の届出人には、ケースワーカーはなることができません。親族、アパート等で亡くなった場合は大家、病院で亡くなった場合は病院長、となります。しかし、大家にお願いしても断られる場合があるそうで、そうすると親族が最後の望みの綱になるわけです。更に言えば、今は室内で孤独死した人の身元確認も、歯形記録の照合がDNA鑑定が必要です。鍵のかかった室内で死んでいたら他の人の可能性なんかないだろうと思うのですが、警察は身元確認ができない限り死体検案書に名前が入りません。歯科通院歴がなければ、親子兄弟の誰かとのDNA鑑定しかありません。まあ、最後の手段として、届出人になる人がまったくいない場合の死亡届け出のやり方はあるにはあります(本当に身元不明の行き倒れの死亡届に準じる)。しかし、それはその後の「火葬の費用は誰が、どう出すか」ということにつながるのですが、諸事情から極力避けたいことだと聞きます。行旅死亡人端的に言って、届出人がまったくいない死体検案書では葬祭扶助の対象にする余地がなく墓地埋葬法の行旅死亡人の扱いになるけれど、その場合費用は全額区市町村の持ち出しになってしまう、ということです。というわけで、親子兄弟誰も連絡先が分からない、という受給者が入院したり亡くなると、ケースワーカーがひたすら苦労することになるようです。それぞれの個人にとっては、死は生涯に一回ですし、入院も健康であればそう頻繁なことではありませんが、元々高齢者、障害者、病人が多い生活保護受給者100世帯を受け持つケースワーカーから見れば、受給者の入院も死も頻繁です。それが全部ケースワーカーの肩にのしかかってきたらとても保たないのです。だから、福祉事務所から見れば親族の緊急連絡先を少しでも把握するために、扶養照会は必須なのです。もちろん、全部が全部ではありません。DV逃げ母子の虐待元夫とか、そういう場合は扶養照会はしないのも鉄則だそうです(現実問題として、高齢単身者と比べれば母子世帯が入院したり亡くなる可能性は圧倒的に低いです)。また、長期間交流なく扶養期待性が著しく低い場合も扶養照会はしなくて良いし、現実問題として受給者が強く拒否する場合は扶養照会はしないそうですが、それでも、ケースワーカーとしては、経済的援助など期待はしていないけれど、せめて緊急連絡先の電話番号だけでも書いて返信を下さい、というのが本音だということです。扶養照会が保護申請の足枷になるというのも分かるのですが、それが必要な理由もあるわけです。
2023.03.30
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訪日外国人が昨年同月比“84倍”に増加 「“令和版ディスカバージャパン”で魅力PRを」 消費喚起はインバウンド対応次第1月、日本を訪れた外国人は約150万人で、2022年1月と比較すると約84倍になった。政府観光局の推計によると、1月に日本を訪れた外国人旅行者は149万7300人で、2022年の同じ月と比べて大幅に増加した。国・地域別では韓国が全体の3分の1を占めた。政府観光局は旧正月などの影響もあり、特に東アジアからの訪日客が多かったとしている。2022年10月に海外からの個人旅行の受け入れが再開されたが、新型コロナの感染拡大前の2019年の同じ時期と比べると44.3%減少した。(以下略)---訪日外国人の人数が急激に回復しつつあるようです。昨年1月の84倍、というとすさまじい激増ですが、ただしコロナ前の2019年1月と比べると55%だそうです。単純に月150万人を12倍すると、年間1800万人になりますが、これは訪日外国人が急激に増加し始めた2015年の1900万人に匹敵する人数です。実のところ、先週登った谷川岳でも、外国人の増加は体感しています。記事にも少し触れましたが、バックカントリースキーで来ている人の大半が外国人(ただし欧米系)だったからです。逆に、スキーではない登山者は大半が日本人で、登山=日本人、BCスキー=外国人という対比になっていました。往路のロープウェイで同じゴンドラに半分が日本人、半分が外国人でしたが、一人流暢な日本語の方がいて、おそらくその人がガイドだったのだろうと思います。「山頂まで行きますか?」というので、「もちろん!」と答えておきました。その前週の筑波山では外国人の記憶はないのですが、前々週の塔ノ岳でも、やはりある程度外国人が登っていましたし、昨年末の八ヶ岳・硫黄岳でも中国系の外国人の若いカップルの登山者がいました。しかし、「外国人率」で考えると、先週の谷川岳が圧倒的に高かったです。今や日本が稼げる分野が観光しかないとすれば、それはあまり望ましいことではないかもしれませんが、もはやそんなことを言っている場合でもないでしょう。いつまでも国を閉じているわけにもいかず、また外国人が安心して日本を訪れられる環境であることは、悪いこととは言えません。件の「闇バイト」による強盗などは気になりますが、それでも「日本なんか危なくて旅行ができない」という状態ではありませんからね。
2023.02.17
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生活保護の「地域差」、36年ぶりに見直しへ 6区分を半減 厚労省住んでいる場所で生活保護の基準額に差をつける「級地」の区分について、厚生労働省が見直す方針を決めた。いまの6区分から3区分に半減させる考えで、来年度から実施する。見直しは36年ぶり。地域差が減少したことなどを理由としているが、基準額が下がる世帯への影響を懸念する見方も出ている。生活保護費は5年ごとに水準の妥当性が検証され、来年度が改定の年。22日の社会保障審議会の部会では見直しへの報告書案が示された。生活保護はどこでも同一の生活水準を保障するため、物価や生活水準に応じて全国の市町村を1~3の級地に分類。各級地で二つに分かれ、計6区分ある。ただ、この分類は1987年に設定されて以降、市町村合併を除いて変更はなかった。自治体から見直しの要望があり、消費実態などを分析。報告書案は「87年当時と比べると地域間の差が小さい」「3区分まで減らすと差が出る」などと結論づけた。---現状の生活保護「級地区分」は、引用記事にあるように、6段階に分かれています。1級地から3級地までの、それぞれ1と2に分けられています。1級地1の保護基準が最も高く、3級地2が最も安い、ということになります。例えば東京都でいうと、23区すべてと市部も多くが1級地1です。1級地2は東京では青梅市と武蔵村山市。2級地1は羽村市、あきるの市と西多摩郡瑞穂町2級地2は東京には該当地域なし3級地1は西多摩郡日の出町、檜原村、奥多摩町と伊豆諸島、小笠原のすべての町村3級地2は東京では該当自治体なし、と思われます。(3級地2は、具体的な地域名ではなく「1級地、2級地及び3級地1以外の市町村」となっているため、見落としがなければ、としか言えませんが)ただし、「住宅扶助」については、厚労省がこの級地区分とは別に、都道府県および政令指定都市ごとに決めています。例えば東京23区と大阪市は級地は同じ1級地1ですが、住宅扶助の上限は異なります。単身で東京23区は53,700円、大阪市は40,000円(以内の実費額)となります。さて、引用記事によればこの級地区分を6段階から3段階に減らすことが打ち出されているようです。「22日の社会保障審議会の部会では見直しへの報告書案が示された。」とあるのは、厚労省ホームページ「第50回社会保障審議会生活保護基準部会 資料」中の(資料1-1)社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)の28~30ページがそれに当たるようです。生活保護の級地区分は、物価は大都市で高く、田舎では低い、という一般的傾向に基づいて設定されています。ただし、詳細に考えれば、そのような物価の差は、食費(食材料費)については当てはまるけれど、それ以外のものには当てはまりにくいことが想像できます。例えば、電化製品が大都市で高価で農村では安価、などという話は、あまり聞いたことがありません。それを裏付けるように、報告書案には、「第1類相当支出の級地間較差については、上位級地が高く下位級地が低い結果となり、隣接する階級間でも3級地-1と3級地-2の間では有意な差がみられた一方、第2類相当支出については、必ずしも上位級地が下位級地よりも高くない状況である」とあります。第1類とは、生活扶助の中で、同じ世帯でも人数が増えれば費用が2倍に増える、食費や被服費です。第2類は人数が増えてもそれに比例しては増えない(光熱費や電化製品、家具什器費など)お金です。生活保護の生活扶助基準は、この第1類+第2類の合計額で決定されています。では具体的に金額はいくらかというと単身世帯の生活扶助額(4~10月)は1級地1では20~40歳76,310円・75歳以上69,740円1級地2では20~40歳73,720円・75歳以上67,420円2級地1では20~40歳71,460円・75歳以上65,470円2級地2では20~40歳71,460円・75歳以上65,470円3級地1では20~40歳68,430円・75歳以上62,850円3級地2では20~40歳66,940円・75歳以上61,560円となっています。2級地1と2で同額になっているのは誤記ではありません。「生活保護手帳」(手持ちは昨年の2021年度版ですが、保護基準は現在も同じです)から計算すると、単身の場合の保護基準はまったく同額です。経過措置部分や、期末一時扶助などで付帯する扶助額には差はありますが。つまり、細部は措いて、生活扶助の主要部分において、保護基準は「地域によって6段階」と言いつつ、実態としては「ほぼ5段階」となっています。そして、上記の「第2類」に関して言うと、現行制度において単身世帯の第2類は1級地1は28,890円、1級地2から3級地2まではすべて27,690円であり、2段階の差しかありません。報告書案を見る限り、1級地1の第2類だけを高額にする理由はなしように思える一方、第1類に関しては級地による消費額の差は確かに存在しています。これを総合して考えると、第2類については、1級地1も他の級地と同額にして、全国一律の金額にしてしまうのは合理的であるように思われる一方、第1類に関しては6段階(実質的には5段階)を3段階に減らすことは、拙速であるように思えます。また、減らす場合、おそらく各級地の1と2を統合するのでしょうが、具体的な金額が1と2の中間になる場合、1の側の保護基準が下がる、ということになります。そのことへの警戒心は、受給者には当然あるでしょう。しかも、日本は長らくデフレ、またはほとんど物価が変わらない状態が続いてきており、そのため保護基準も近年はほぼ引き下げ(世帯構成によっては一部引き上げもあったけれど)が続いてきましたが、言うまでもなく、今年に入ってから物価は急激に上昇に向かいつつあります。この物価上昇を保護基準に反映させれば、保護基準も上がるということに当然なるはずなのですが、果たしてそのようになるかどうかは、何とも言えません。というか、ならないだろうという気もします。知人が生活保護に関わるようになった十数年前の単身世帯の保護基準(1級地1)は、40歳前後では8万円超、70歳以上でも7万5千円程度だったと聞いています。そこから引き下げが続き、現状は上記のとおりですから、すでに約5千円程度は下がっているわけです。知人によれば、多人数世帯では非常識に高額な保護基準が、その頃はあったそうです。しかし、多人数世帯の保護基準はかなり見直し(引き下げ)がされています。それでも更に保護基準の引き下げを行うのかどうかは、級地区分の話とは別に注目していきたいと思います。
2022.11.23
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「主要国の中でほぼ“一人負け”」円安、インフレ…なぜ日本だけが賃上げできないのか?なぜ日本経済だけが、ここまで弱ってしまったのか――。安宅和人、河野龍太郎、尾河眞樹、小林慶一郎の4氏が日本経済の現状を徹底討論した座談会「『日本ひとり負け』戦犯は誰だ?」(「文藝春秋」2022年10月号)小林 世界各国でインフレが加速しています。アメリカでは今年6月の消費者物価指数が前年と比べて9.1%も上昇、40年ぶりの高水準となりました。欧州の消費者物価指数も8.6%上昇しています。河野 80年代終わりに日本が先進諸国で先駆けて低成長時代に入って以来、これだけ世界的な規模でインフレが起こるのは前例がありません。小林 長らくデフレが続いた日本でも、景気がよくなったからというわけでもなさそうですが、円安や資源高を背景として~今年6月の消費者物価指数は、昨年同月を2.2%上回りましたね。河野 2%とよく言われますが、消費者のインフレの体感はもっと高いはずです。~物価上昇の体感はすでに5%でしょう。尾河 インフレも悪いことばかりではない。2%程度の緩やかなものであれば、消費・投資マインドが刺激されて景気も上向きになるというメリットがある。ただ、このところのインフレは要注意かもしれません。河野 元FRB議長アラン・グリーンスパン氏は、物価の安定を「我々が物価にわずらわされることなく、消費など日々の生活や経済活動をおこなえる状況」と定義しています。この文脈で考えれば、もはや物価が安定しているとは言い難い。スーパーで商品を選ぶ際に、しばらく悩む消費者も増えてきた。6月に日銀の黒田東彦総裁が「家計は値上げを受け入れている」と発言して大きな批判を浴びたのは、この消費者心理の変化を見過ごしていたからです。小林 私は個人的に、インフレよりも円安の問題が印象深いです。先日、アメリカから知人の経済学者が来日したので、一緒にランチに出掛けたんです。1300円くらいの中華を食べたのですが、相手は「このクオリティなら、アメリカでは5000円はするよ」と喜んでいました。日本は“安い国”になったんだなあ、と改めて実感しました。(以下略)---物価高騰は世界共通の現象ですが、日本の場合はそこに円安の影響も加わっているので深刻です。もちろん、物価が上がってもそれ以上に収入が増えれば問題はそう大きくはありませんが(基本的に物価上昇と給料の上昇にはタイムラグがあること、預貯金が実質的に目減りすることから、まったく問題がないわけではありませんが)、日本の場合は給料が増えないのに物価がどんどん上がっていく、つまりみんながどんどん貧しくなっているところに問題があります。ただ、それにしても世界はずっと、物価が上がり、それに応じて給料も上がって、相対的にまあまあ経済成長してきました。ひとり日本だけ、物価は上がらないが給料は下がり、実質的にマイナス成長状態でした。その結果、引用記事の最後にあるように、「1300円くらいの中華を食べたのですが、相手はこのクオリティなら、アメリカでは5000円はするよ」という状態になってしまったわけです。かつて円高を背景に「世界一物価の高い国」と言われたこともあるこの国の変貌ぶりには、隔世の感があります。この件で思い出したのは、小室圭夫妻のこと。結婚後、ニューヨークに移り住んで、年収600万円と報じられました。昨年当時の、1ドル105円~110円くらいの頃の600万円ですから、今の交換レートなら800万円相当でしょうか。最近は年収がもっと上がっているという報道もあるようですが、それは本題ではないので取り上げません。年収600万円としても、日本で大卒初任給でいきなりそれだけの年収をもらえる人はまずいません。突然急成長したIT企業とか、外資なら分かりませんが。私が額面で年収600万に達したのは勤続十年超(手取りでならもっと後)でした。ところが、その600万円という年収をもってしても、ニューヨークで暮らすには全然足りないというのです。これはニューヨークの一等地での特殊事例だとしても、日本人の旅行先として定番だったハワイで、家族4人の滞在費が1日22万円、2週間の旅行で250万円かかった、なんて報道もあります。かつて、国内旅行で沖縄に行くよりサイパンやハワイの方が安い、なんて言われた時代もありましたが、それも今は昔です。コロナ禍の前、急激に訪日外国人が増えたのも、結局のところ日本が相対的に物価が安くて、安価な旅行先になったからです。もちろん、前提として比較的治安がよく、観光面でも見るべきところが多い、魅力ある国ではあります。でも、それだけの理由で大勢の外国人観光客が訪れるようになったわけではありません。この状況を転換して、再び日本が経済発展を遂げることがあるのかどうか、私には分かりません。ただ確実に言えるのは、自国の現状を正しく認識しないかぎり、適切な道筋も見いだせない、ということです。今や中国のGDPは日本の3倍を越え、一人当たりGDPでは韓国に肉薄され、あるいは統計によっては逆転されています。ネットには「韓国経済が明日にも崩壊」みたいなおとぎ話が満ち溢れていますが、韓国経済が崩壊する可能性がどの程度高いのかは私には分かりません。しかし韓国経済が崩壊することより、日本経済が崩壊することの方が日本人にとっては重大事ではないのか?と思います。少なくとも私は日本経済が崩壊することは怖いし、その可能性が、韓国経済が崩壊する可能性より低い、とは思えません。日本は、もはや発展途上国、とまで言っては言い過ぎでしょうが、少なくとももはや先進国ではない、中進国程度になっているのが現実です。残念なことですが、その事実はもはや動かしがたいものと思います。
2022.09.14
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8か月の未納で失った「一生分の障害年金」 年97万円がゼロに...手足3本失った僕が直面した現実事故で手足を3本失った山田千紘さんは障害等級が最も重度な1級だが、「障害年金」を受給できていない。保険料の納付義務が生じる20歳になった後、定められた期間分を納付していなかったためだ。「もちろん僕に落ち度がある」という山田さん。代償は大きかった。障害基礎年金の受給額は年額約97万円。障害がある中で何かとお金はかかる。手足を失った絶望に加え、金銭面での不安ものしかかった。19歳の時に家庭の事情で大学を中退した後、半年ほどのアルバイト生活を経て、ケーブルテレビの会社に就職しました。20歳になってから8か月後のことです。就職から2か月後、電車事故に遭って右手と両足を失い、障害者になりました。20歳から就職までの8か月間、僕は納めるべき国民年金の保険料を納付していませんでした。当時の僕は目の前の生活をするお金に余裕がなく、年金を軽視していたのかもしれません。国民年金は過去2年までなら後から納付できるということだったので、「正社員として働くようになってからまとめて納めよう」くらいに思っていました。ところが、いざ働き始めて2か月で交通事故に遭って、厳しい現実に直面しました。障害年金を受給するには、障害の原因になったケガの初診日前日から数えて2か月前までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間で保険料納付か免除が必要。僕は20歳で被保険者になってから10か月の時に事故に遭ったので、8か月間のうち6か月分を納める必要がある。でも未納だったから、障害年金は受給できないということでした。僕は障害等級が最も重度な1級で、もし障害基礎年金を受給できた場合、現在の支給額は年に約97万円です。それが一生受給できません。(以下略)---年金保険料を払うべき(払えないなら免除申請をすべき)である、という話は過去に何回か書いています払えない人は免除申請しておけという話非正規雇用の若者も国民年金保険料を支払うべきである障害基礎年金についてもその時に一応触れていますが、その障害基礎年金を、保険料未納のために受給できなかった、という方の話です。何ともかわいそうな話ですが、制度がそうなっているので、どうにもなりません。国民年金の未納率は一時期より改善しているようですが、それでも100万人以上が未納だということです。生活が苦しくて年金が払えないなら、免除申請(所得に応じて全額免除から1/4免除まで)や支払い猶予という手段もあります。免除申請していれば、その期間分の年金額は、全額免除なら半額になります※が、逆に言えば手続きさえすれば、お金を払わなくても半額の年金はもらえるのです。手続きをしなければ1円ももらえません。ならば免除申請する方がよいに決まっているではないですか。※現在は年金保険料と国庫からの拠出が半分ずつなので、免除期間の年金は半額出ますが、2009年3月までは、保険料2/3、国庫1/3だったため、それ以前の免除期間分の年金は1/3しか出ません。それでも、老齢年金に限定すれば、年金は40年間完全に支払い続けた満額で月額約6万5千円(実際の支払いは2か月ごとなので2か月ごとに約13万円)です。1か月の納付は年金月額の約135円分に相当します。だから、1か月の未納くらい、たいした額ではない、とも言えます(なお、厚生年金の金額は、国民年金のように単純に保険料額×納付月数ではありませんので念のため)。でも、老齢年金での1か月の未納は「たいしたことはない」としても、障害年金ではそれが致命傷になることがあり得ます。引用記事にあるように、障害年金の受給にはケガの初診日前日から数えて2か月前までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間で保険料納付か免除が必要だからです※。※2026年3月までは、特例で初診日前日から2か月前までの直近1年間に1か月も未納がなければ障害年金の受給資格が得られます。もっとも、引用記事の例は直近の8か月で未納なので、この特例にも該当しません。とはいえ、ご本人は「もちろん僕に落ち度がある」と書いておられますけれど、なかなか20歳や21歳で将来の年金を心配したり、ましてや自分が障害者になった時の備えをする、というところまでは考えないものです。私だって、若い頃はそんなところまでは考えていませんでした。ただ、亡父が社会保障制度を重視する人で、といっても自営業だったので年金加入歴の大半は国民年金ですが、未納なく全部納付し、加えて国民年金基金も制度が始まった時から加入していました。年金自体もさることながら、家を改築した際、ローンの審査で年金未納歴の有無が調べられたこともあったそうです。未納歴があると審査が通らなかったのかどうかは知りませんが。そんなこともあって、父は「年金未納はよろしくない」と常々言っており、そのため私も、前職から現在の職場に転職した間の、たった1か月の無職期間も、国民年金に加入しています。だから、私の年金未納もゼロです。ただそれが自分事として心底「重要」と思うようになったのは、40を過ぎてからです。というわけで、まだ右も左もわからない若者が、ついつい年金を払わないのは仕方がないことであり、それを同行は言いません。ただ、それで何か起きてしまった場合、経済的不利益はすべて自分自身に降りかかってくる、その時になって「しまった」と思っても手遅れ、ということです。この記事の例のように。ただ、この記事の方は、これだけの障害を負ったにもかかわらず、その後定職についてちゃんと収入を得ておられるようなので、障害年金がもらえないことが、彼、あるいは家族に致命的な影響は及ぼさずに済んでいるようです。元々の能力の高さと幸運に恵まれたのでしょう。それは不幸中の幸いだったと思います。しかし、世の中の多くの人の場合はそうはいきません。年金が受給できるほどの障害を負った人が、仕事を継続する、あるいは新たに職に就くのは、なかなか困難を伴います。だから、1か月の年金未納が悲惨な結果に結びつく、という事態もあり得ます。福祉事務所関係の知人が漏らしていたことがありますが、やはり生活保護に至る人には、この種の社会保障制度について、いい加減な対応に終始してきた人が少なからずいるようです。生活保護の面接相談員は、保護申請を受ける際に基本的に年金加入歴を確認するのだそうですが、その際、年金保険料を払っていない人から、大要「年金には頼らない」という趣旨のことを言われたことがあると聞いたことがあります。あやうく「年金には頼らないのに生活保護には頼るんですか?」という言葉が出そうになって、かろうじて自制した、と言っていました。もっとも、それとは逆に、保険料を1か月の未納もなく全額払って国民年金を満額受給していて、それでも生活保護、という人も大勢いるのだそうです。国民年金満額受給の人は、もらっている年金額が全員同額なので、「収入認定額」を見ただけでそれとわかるそうです。満額もらっても生活保護基準以下、という国民年金の金額には問題はありますが、それてもないよりはある方がはるかにマシです。というわけで、人生どこに落とし穴が潜んでいるか分かりません。わずか8か月の年金の未納によて障害年金がもらえない、という引用記事のような事態も起こり得ることを肝に銘じて、年金はきちんと納付する、できないなら免除申請する(学生であれば学生納付特例制度の申請)べきである、ということを声を大にして申し上げておきます。ちなみに、うちの子にも、この記事を読んですぐ、20歳になったらすぐに学生納付特例制度の手続きをするように言いました。---余談ですが、引用記事に「障害等級が最も重度な1級で」とありますが、これについては補足が必要と思われます。これは「身体障害者手帳」の1級とは違います。障害基礎年金も障害者手帳(身体障害、知的障害、精神障害いずれも同様)も、程度が〇級と表現されるので混同しがちですが、年金と手帳の障害程度は異なった制度であり、申請や審査も別々です。引用記事の事例では、おそらく保険料未納で年金受給資格がない、とはつゆ知らず、病院で障害年金申請を勧められて、医師の診断書を書いてもらって(それが1級相当だったのでしょう)、ご家族が申請に行ったのではないでしょうか。この事例のように両足と片手切断では、手帳も年金も1級になるでしょうが、もっと程度の軽い障害では、手帳と年金で級が異なる、手帳は該当したけれど障害基礎年金は非該当、逆に障害基礎年金は出たけれど手帳は非該当、という事態も結構あります。そして、引用記事の「障害の原因になったケガの初診日前日から数えて」という記述から想像できると思いますが、障害基礎年金の受給に関して、年金加入歴と同様に重要なのは「初診日の特定(証明)」です。初診日がいつかが分からないと(診断書等で証明できないと)障害基礎年金は受給できません。身体障害では比較的まれですが、精神障害では、本人に病識がなく、あるいは手続きを行う事務処理能力がなく、何年も放置状態、ということがよくあります。その間に散発的に精神科に通院しても、それが継続しない。やっと手帳取得や障害基礎年金受給に動き出したときには、いつどの医療機関が初診だったのかもはや分からなくなったり、あるいは初診の医療機関が診療データの保存期間を過ぎている、最悪の場合はもうその医療機関が現存しない、という事態で障害基礎年金受給不可能、という事態が起こります。年金未納ダメ、ゼッタイ、と同様に、手続きの放置もダメ、ゼッタイ、なのです。
2022.08.24
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島田陽子さん「このままでは無縁仏に」1日6000円のドライアイスで遺体を区が保管中大腸がんによる多機能不全のため死去した女優・島田陽子さん。7月28日には、複数のスポーツ紙が27日に告別式がおこなわれたと報じた。報道によると、参列したのは「十数人の近親者のみ」~というのだが――。「これは、真っ赤な嘘ですよ。島田さんの遺体はまだ荼毘に付されてもいません」と、衝撃の証言をする人物がいる。島田さんの元マネージャーで、公私ともに付き合いがあった会社経営者の福島浩一朗氏だ。島田さんが都内の病院で亡くなった際は、島田さんが代表取締役を務める芸能プロダクションでマネージャーとして働くA氏だけがついていたという。「島田さんは、2019年に離婚されていますし、もう何十年も実母以外の親族とは連絡を取っていなかったため、遺体を引き取る親族がいなかったんです。妹さんが2人いるはずですが、やはり疎遠な関係だったようで……」病院が仕方なく渋谷区に連絡すると、親族が名乗り出ず、引き取り手がない遺体として、規定どおり、区の管理する施設に安置されることになったという。ところが上述のとおり、亡くなって2日後の27日に告別式がおこなわれたと、28日に報じられた。「いったいどういうことか、さっぱりわかりません。僕は8月2日に渋谷区役所に出向き、担当者に直接確認しました。すると確かに、遺体は区に引き取られており、『その遺体が “島田陽子さん” であることも確認しています』としたうえで、『ドライアイス代が1日6000円かかっています。遺体を引き取られる方に請求することになります』と言われたんです」だが、その場で福島氏が引き取ることは叶わなかった。「渋谷区では、3親等内の親族しか引き取ることはできないそうです。現在、区のほうで親族に連絡して島田さんの遺体を引き取る意思があるか確認しているそうです。島田さんの妹2人の、どちらかが私に委任してくれれば、私が遺体を引き取るつもりです。じつは島田さんは、生前にお墓も購入していたんです。そこに眠らせてあげたいと考えています」~だが、この福島氏の “計画” も、無事に島田さんの妹から委任を受けられなければ、当然、実行できない。「渋谷区からは、『いつまで遺体を保管できます』といった期限は教えてもらえていません。最悪のケースでは、このまま “身寄りのない人” として扱われて区で荼毘に付され、そのまま無縁仏として共同墓地に眠ってしまうことになります」ハリウッドでゴールデングローブ賞まで受賞した、誰もが知る大女優が、無縁仏になる――。---まさか、あの島田陽子さんが行旅死亡人と同等の扱いになるとは・・・・・。行旅死亡人というのは、ホームレスだけではなく、身寄りがまったくなく葬祭執行者がいない場合に適用されます。ホームレスでなくても、身元の分からない死者というのは稀ではありません。たとえば、住んでいる場所に住民票を置いていなくて、その人が誰だか分からない場合があります。あるいは、孤独死して、親族と連絡が取れない場合もその可能性があります。住民票があり、それが誰かも実際には分かっていたとしても、孤独死の場合は警察がDNA鑑定、または歯科通院歴がある人の歯型の照合をしないと死体検案書に氏名が入りません。しかし歯科通院歴がなくて親族もいない、または親族との関係が切れていてDNA鑑定に協力してくれないと、氏名不詳という死体検案書になってしまいます。島田陽子さんの場合は、健康保険証を提示して入院した病院で亡くなっているはずなので、もちろん身元は明らかです。この場合は行旅死亡人ではありませんが、ただ、遺体、遺骨の引き取り手がいない、おそらく葬祭の執行者もいない、ということのようです。この場合は身元が分かっていて行旅死亡人ではなくても、実際には行旅死亡人と同等の扱いとなります。墓地埋葬法に第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を準用する。と定められているからです。対応するのは役所の中で、たいていの場合は生活保護担当課であろうと思います。生活保護の葬祭扶助は、葬祭費事態の上限は定められていますが(東京23区を含む窮地区分1級地1の場合は20万6千円)、遺体を保存するためのドライアイス代には上限がありません。生活保護制度なので、費用は3/4が国費です。一方、墓地埋葬法による行旅死亡人等の葬祭は、全額がその自治体の予算です。だから、費用の上限は定められていませんが、実際には生活保護の葬祭扶助より更に安価で葬祭業者と契約している場合が多いと思われます。しかも、別途ドライアイス代なんて予算も契約もないので、もし誰も遺体を引き取ってくれなかった場合、そのドライアイス代をどう処理するか、頭を抱えていると思われます。ちなみに、生活保護にも葬祭扶助というものがあります。しかし生活保護は「生きている人のための制度」で、死者にはお金を払わないことになっています。したがって、葬祭扶助は亡くなった人ではなく、死んだ人の葬式を出す人(葬祭執行者・喪主)のための制度です。だから、葬祭執行者がいない無縁仏に葬祭扶助を適用することはできません。なお、「葬祭扶助単給」と言って、それまで生活保護を受けていなかった人が葬祭を出すお金がない場合、葬祭扶助だけの生活保護をかけることはできます。「最低生活費」の計算に葬祭費約20万円が上乗せされるので、葬祭扶助単給の保護基準は大幅に緩くなります。例えば、保護基準が12万円(家賃4万円、生活扶助8万円)という人がいたとします。保護の対象になるのは、収入が12万円以下かつ手持ち金も12万円以下の場合です。しかし、葬祭扶助だけなら、保護基準に葬祭費約20万円が上乗せされるので、12万円+20万円=32万円以下の収入かつ手持ち金も32万円以下なら、「葬祭扶助単給」の対象となり得ます。もっとも、その割には葬祭扶助単給は、さほど多くはありません。各福祉事務所とも、年間数例程度ではないでしょうか。そして、一番問題になるのは、保護を受けていた人が亡くなって身寄りがない場合です。法律通りに対応すれば、それは前述のとおり、墓地埋葬法に基づき行旅死亡人に準じて対応しなければならないのですが、各福祉事務所、色々な技を使って、それを葬祭扶助で通してきたのです。各自治体の行旅死亡人の葬祭予算は充分ではなく、保護受給者の葬祭をみんな行旅死亡人の準用でやってしまうと予算が足りないからです。しかし、厚労省は「それはならん」と言っており色々綱引きが行われているようです。身寄りない人の葬儀代 運用する自治体と是正求める国余談ですが、前述の墓地埋葬法に、死亡地の市町村長が行うと書いてあります。つまり、島田陽子さんは渋谷区の病院で亡くなったということです。仮に住んでいたのが別の自治体だったとしても、墓地埋葬法の適用になると、亡くなった病院の所在地の自治体が葬祭を行わなければならないので、その自治体にとっては突如として流れ弾が飛んできたようなものです。そのことも、生活保護受給者の墓地埋葬法適用を難しくします。つまり、A市に住んでA市で生活保護を受けていた人がB市の病院に入院して亡くなった場合、生活保護の葬祭扶助ならA市が行うのですが、行旅死亡人またはその準用による墓地埋葬法の場合、それをB市が行うことにことになるからです。全額市の予算の持ち出しで。だから「ふざけんな、そんなのA市で葬祭扶助でやれよ!!!!!」という話になってしまうわけです。なんにせよ、島田陽子さんがきちんと葬られることを願うばかりです。
2022.08.07
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元売りへの補助金が当初予算の20倍に…「だったらガソリン税を下げろ!」が有権者の願いガソリン価格の高騰が止まらない。6月27日時点のレギュラーガソリン全国平均小売価格は、1リットルあたり174円90銭。先週より1円高く、実に4週連続の値上げだ。政府は石油元売り会社に補助金を支給。岸田首相は「1リットルあたり210円であるところ、170円程度の水準に抑えている」とアピールするが、170円台でも約14年ぶりの高値水準。財政負担も青天井だ。今年1月27日の補助金の開始当初は1リットルあたり5円を支給。昨年度補正予算に800億円を盛り込んだが、3月10日から25円に引き上げ。昨年度予備費から3600億円超を充てることになった。さらに、4月28日からは発動基準を「172円以上」から「168円以上」に下げ、補助額も35円に増やした。期間も4月末から9月末までに延長し、予算額は6~9月までで1兆1655億円に上り、当初予算の20倍に膨張している。財務省の試算によると、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結を解除し、発動した場合、国と地方の税収減は1年間で計1兆5700億円になるという。すでに補助金への財政負担はトリガー発動の税収減分を上回り、だったら“いってこい”で減税してくれた方が、よっぽど国民も「恩恵」を実感するに違いない。「石油元売り大手3社の決算は、原油価格の高騰を追い風に過去最高益です。高騰で潤う大企業に補助金で喜ばせ、高騰に苦しむ消費者は二の次という政策は根本的におかしい。トリガー発動の方が明らかにクリアで効果的です。しかも、ガソリン価格にはガソリン税などを含んだ総額に10%の消費税を課す『二重課税』の問題があり、せめて消費税は除外すべきでしょう。ガソリン高騰は短期間で終わらず、一時しのぎの補助金では今後も財政負担が増え続けるだけ。消費者目線で考えれば、間違いなく補助金よりも減税です」ーーーペーパードライバー歴を三十数年で卒業した私の場合、スクーターはリッター60km超?も走るし、まだ合計8リットル程度しか給油していない(金額にして、ざっくり1400円くらい)ので、ガソリン高騰の影響がお財布を直撃まではしていません。しかし四輪車の場合は、EVは別にして、ハイブリッド車でも燃費はリッター30kmくらいのようですし、EVにしても電気代も上がっているので、影響は大きいでしょうね。ちなみに、スクーターを購入するに際しては、燃費も車種選びの基準の一つになっていました。第一希望だった(けれど入手できなかった)カブシリーズは燃費の良さで知られていますし、実際に購入したDIO110も、かなり低燃費です。引用記事によると、本来ガソリン価格はリッターあたり210円になっているところを補助金によって170円に引き下げている、と。本当にそうなのかどうかは実際には分かりませんが、リッターあたり25円の補助金がかなり大きいことは確かです。それにしても、原油価格高騰の陰で、ガソリン元売り各社は過去最高の利益を出しています。そんな石油会社に補助金をぶち込んでさらに儲けさせる、納得のいかないことおびただしいです。しかも、高額のガソリン税を取っておきながら補助金というのも不思議な仕組みで、記事が言うようにそれならガソリン税を減税するほうがはるかに単純で分かりやすいです。しかしおそらく実際は逆で、ガソリン税の減税をしないために補助金でお茶を濁しているというところではないでしょうか。それは、ガソリン税が道路特定財源になっているからなのでしょう。色々な、無理に無理を重ねた制度でめちゃくちゃなことになっている、というのが現実かなと思います。しかし、あれもこれも迷走しているとしか思えない自公政権ですが、目前に迫った参院選はどうやら盤石らしいです。もちろん、結果は終わってみなければ分かりませんが、どうも選挙が大きく盛り上がっているようには感じられず、下馬評からそう大きくことなった結果になりそうな予感は感じません。下馬評どおりの結果になったとすれば、日本人の大半は、物価高騰もそれに反して賃金が上がらないことも、この訳の分からないガソリン補助金も、その他のあれこれも、もっと広く言えば、衰退しつつある日本のかじ取りに関して、さしたる不満を持っていない、そのままで良い、と思っているということなんでしょうね。
2022.07.05
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《京アニ放火事件から3年》両親は不倫の末「駆け落ち婚」も離婚… 凶行に及んだ青葉真司被告の“特殊な家庭環境”とは?「5人家族のうち父、兄、妹が自死。母親は離婚後は疎遠に…」 京アニ放火・青葉真司被告が陥った過酷な家庭環境“負の連鎖”長いし、気が滅入る話でもあるので、引用は避けます。要旨としてはおおむね以下のとおりです。この犯人は、小学生のころには明るく元気な子だったが、中学では孤立し、高校も定時制になってしまったものの、埼玉県庁での文書集配アルバイトをおこなっており、その仕事ぶりは「とても真面目な好青年で、トラブルは全然なかったですし、職場でも仲良く働いていました。」と評価されていました。それが、両親は離婚、タクシー運転手であった父が事故を起こして働けなくなって自殺、残された3人の兄妹も、兄と妹が自殺、残った一人がこの容疑者でした(ただし、妹の自殺は2004年とあり事件前であることははっきりしていますが、兄の自殺が事件前か事件後かは明示されておらず、はっきりとは分かりません)。自殺した妹の部屋はいわゆる「ゴミ屋敷」だったとのことで、何らかの精神疾患があったことは間違いないと思われます。この犯人自身も各地で近隣トラブルを引き起こしており、境界性パーソナリティ障害あるいはそれに類似する障害があることは間違いなさそうです。ただ、各地で「深夜に目覚まし用のベルが鳴り響き、壁をたたく音や、わめく声」などの近隣トラブルを引き起こしたトンデモな人柄は、この記事を読む限り先天的に持っていたものではなく、最悪の家庭環境によって、おそらく父親の自殺以降にそうなってしまった、ということのようです。その点は、幼少時より問題行動を起こしていたという池田小事件の犯人とは違うようです。もちろん、父親と兄、妹が自殺しており、特に妹はゴミ屋敷だったというところから考えると、家族全員に何らかの精神疾患の要因はあったかもしれませんが、環境次第ではそれが顕在化せず無難な人生を歩んだかもしれません。もちろん、どのような環境であろうと、このような犯罪がいささかも免罪されるわけではありません。境界性パーソナリティ障害や妄想性障害は、基本的にそれだけでは責任能力を否定されません。池田小事件の犯人も、精神鑑定によって妄想性障害は認定されているものの、責任能力は認めら、死刑になりました。この犯人も、精神鑑定すれば同様の精神疾患はおそらく認められるでしょうが、責任能力が否定される可能性はほとんどないと思われます。となれば、犯した犯罪の規模から考えて、死刑以外の判決が出る可能性はほとんどないものと思われます。もっとも、現状は健康状態の問題から公判が開かれる目途は立っていないようですが。事件当時、この犯人は生活保護を受給していたと報じられています。残念ながら最後のセーフティーネットも、この犯人の人柄を回復させることはできなかったわけです。残念ながら、世の中には、先天的か後天的かは分かりませんが、このような壊滅的な人柄の人物が、稀ではあっても一定数存在します。後天的なものなら何らかの手段によって回復させることができそうなものですが、残念ながらそういう例は聞いたことがありません。社会資源が無限に提供できるわけではありませんし、金銭はともかく社会的な地位、居場所、家族関係の喪失感を復旧させることはどうやっても不可能ですから。負の連鎖を断ち切るのは、容易ではありません。そうは言っても、世の中にこういうタイプの壊滅的な人柄の人物は一定数存在しますが、小さな犯罪はともかく、このレベルの凶悪犯罪を起こすのは、このようなタイプの人間の中でも一握りに過ぎません。凶悪犯罪を犯した人の生い立ちは報じられても、そうならなかった人の生い立ちは報じられませんから。そういう意味ではセーフティーネットが役に立たないわけではなく、踏み外さないですんだ人生もまた、決して少なくはないものと思います。
2022.06.26
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宝島社の書籍『年収200万円で豊かに暮らす』が物議宝島社が6月7日に出版した『年収200万円で豊かに暮らす』という書籍がTwitter上で物議を呼んでいる。6月20日ごろから書籍名の一部を引用した「年収200万」がTwitterのトレンド入りを果たした。「年収200万円」という単語は、精神科医を名乗るユーザーが6月19日「色々と地獄を感じた、これを見た時」とした投稿がきっかけとなり、話題となった。Twitterでは「年収200万で豊かに暮らせるわけねぇだろ」「年収200万だと、金がもったいないと思っちゃって病院に行く気すらも起こらないんだよ」といった意見や「こういうのがスタンダードになると、日本全体が豊かじゃなくなり、衰退する」と日本の将来を不安視する意見も上がった。戦時中のスローガン「欲しがりません勝つまでは」「贅沢は敵だ」などを引用して批判する意見や、この書籍の価格が759円であることから「年収200万円なら、そもそもこの雑誌は高くて買えない」などの意見も出た。~これらの書籍の著者自身が、年収200万円で実際に生活できているかどうかは、気になるところ。Twitterでは「年収200万で豊かに暮らすっていう本に携わってる人で、実際に年収200万のやついなさそう」という指摘もある。国税庁が2021年9月に発表した「民間給与実態統計調査」によると、企業勤務で給与を得た「給与所得者」は5245万人で、1人当たりの平均給与は433万円で、同様に男女別では、男性532万円、女性293万円だった。年収別の状況は「100万円以下」と「100万円超200万円以下」を合わせると、年収200万円以下は1164万6000人(構成比22.2%)だった。総務省統計局の「人口統計」によると、日本の人口は最新数値で1億2493万人だったため、単純計算で国民の約1割が年収200万円以下ということになる。---記事の本題とは少しそれるのですが、年収200万円の層が日本の人口の1割という計算方法のデタラメさに、思わずのけぞってしまいました。だって、計算の根拠はあくまでも「民間給与実態調査」ですからね。その分母である給与所得者は5200万人というのだから、年収200万円以下の1100万人は1割ではなく2割超です。そしてこれはあくまでも給与所得者(名前から見て公務員を除いた)の統計です。もっとも、公務員を含めて計算しても、正規職で年収200万円以下という人はほとんどいない反面、非常勤職員(現在の名称は会計年度任用職員)で年収200万円以上の人もほとんどいないため、この割合は大きくは変わらないでしょうが。しかし、日本には給与所得者以外に年金生活者がいます。その人数は2600万人です。もちろん、その中にはまだバリバリ仕事をしている人もいるから、全員が年金しか収入がないわけではありません。でも、年金をもらう年齢で高給を得ている人もまた、少ないでしょうね。全国統計によると、全世帯中の住民税非課税世帯数は23.3%です(2019年国民生活基礎調査)。扶養家族が多いと、年収200万円以上でも住民税非課税になる場合がありますが、逆に単身世帯では住民税課税でも年収130万円までしか非課税にならないので、差し引きすると23.3%という数値は、世帯の全員が年収200万円以下の世帯数と、そうかけ離れてはいないはずです。しかも、世帯に1人でも住民税課税者がいれば非課税世帯数にはならないので、個人単位での住民税非課税者の割合はもっと高いはずです。おそらく3割は軽く越えるでしょう。いずれにしても、年収200万円以下の割合は、1割なんて小さな数字ではないことは間違いありません。。さて、人もうらやむ(笑)正規雇用である私の現在の年収は200万円よりずっと多いですが、将来もらえる年金はどうかというと、最新の「年金定期便」によると、かろうじて200万円に達する程度です。しかも、できることなら60歳より前に辞めたいと思っている私は、その願望を実現すると200万円を割ります。もっとも、これは厚生年金部分だけで、実際はそこにいわゆる三階建部分が加わります(前職の厚生年金基金が存続しているかどうか知りませんけど)。ただ、それを含めても年金を12ヶ月で割り返して、月20万円には届かないでしょう。これは額面の話ですから、手取りだと、所得税住民税を引かれ、健康保険料を引かれ、介護保険料を引かれたら、年収200万円切ります。なお、相棒も厚生年金加入歴がそれなりにありますが、私の扶養だった期間もあり、厚生年金も標準報酬月額も高くないので、もらえる年金は私よりかなり少ないはずです。相棒の年金定期便は見たことがないので、具体的な額は分かりませんが。というわけで、年収200万円以下で生活できるかできないか、ではなく、私だって将来はそれで生活するしかなくなります。あと10年ちょっとです。いや、分からないですけどね。今の給付水準が保たれているか。年金支給開始年齢が65歳のままか、年金額が今の水準を維持しているか、いずれもまったく保証がないのが現実です。ただ、年金もらっても仕事はしたいと思っていますけどね。雇ってくれるところがあるかどうかが問題です。夢も希望もない将来図ですけどね。せめてそのとき、子どもはまともな職について経済的に自立していてほしいと願う今日この頃です。
2022.06.24
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「売りたいのに売れない」 新車の納期超長期化で困惑する販売店のリアル毎月のように発表される自動車生産工場の稼働停止や生産台数調整の話題。トヨタは新型コロナウイルスによる上海ロックダウンの影響で部品供給が滞り、5月末から6月初旬にかけても各地の工場が稼働停止となるようだ半導体不足などの影響から、グローバル生産台数を含め、見直しが図られる昨今。新車納期の長期化で、大きな影響を受けているのが、全国の販売店だ。具体的な影響としては、注文を受け付けられるクルマが激減している。生産台数が減少していることがおおむねの理由であるが、騒音規制の影響もあるという。クルマの仕様が変わる際には、一度生産ラインを止めて、ラインの仕様変更をしなければならない。仕様切り替えまえに注文された前モデルは、顧客にしっかりと届ける。しかし、その生産が追いついていない。そのため、早めに現行モデルをオーダーストップとし、注文を受け付けない空白期間を設けてから、改良モデルを発表・受注開始となっているのだ。とりわけ販売ラインナップの多いトヨタでは、3月から5月にかけて大部分のクルマが一斉に空白期間に入り、約1カ月半から2カ月、販売店では新規の注文を受け付けられない。営業スタッフ一人当たりの受注残が、減っていかない問題はさらに深刻だ。通常でも10台程度の受注残を抱えるのが、ディーラーの営業マンだが、新車納期が長期化する今、30台程度の受注残を抱え、その納期は1年とも3年とも、はたまた4年以上とも言われる。減らない受注残に、営業マンの消耗は激しい。販売店自身の体力も心配になってくる。自動車販売店が、クルマの販売を利益に転化できるタイミングは、「登録」のときだ。つまり、クルマの注文を受けただけでは一銭の利益にもならない。クルマは生産されて車台番号がついてからでないと「登録」出来ない仕組みだ。つまり、納期が1年かかる新車の場合、注文を受けてから約1年後に、やっと販売したクルマの利益が確定し、売り上げとして計上できることになる。(要旨)---これは四輪車の話ですが、二輪車でもだいたい事情は同じです。先日原付2種の免許を取ってスクーターを購入した記事でも少し書きましたが、そもそも二輪の免許を取ろうと教習所に申し込んでから初回の教習までが2か月待ち(実際にはその初回教習の2日前にコロナの濃厚接触者になってしまったため3か月待ちになった)、教習終了まで3か月で最初に申し込んだ時から半年かかりました。二輪の免許取得希望者に対して教習所の受け入れ能力が足りていないわけです。そして、やっと免許が取れてバイクショップに出かけてみたら、一番「乗りたい」と思っていたホンダのクロスカブ、第二希望のスーパーカブ、ともに引用記事の前段部分の状態でした。つまり予約自体ができない状態というのです。ちなみに、この両車種とも4月にモデルチェンジしたばかりです。いくら新型が発表されても、実物は販売店には影も形もない(笑)ちなみに、購入希望には入っていませんでしたが、125ccのAT車では一番人気のPCXも、まったく納期未定ということでした。そして、AT限定免許の私には縁のない話ですが、125ccのミッション車も全車種納期未定。というわけで、第1希望も第2希望も手に入らない時点で、いつ納車、いやそれ以前にいつ予約が入るかも分からない第1希望を待つか、あきらめて今ある車種で妥協するか、という選択を迫られたわけです。いや、私がすでに免許を持っていて、二輪を持っているなら、妥協せずに1年でも待つという選択肢はあり得たかもしれません。だけど、半年かかってやっと手にした免許、ここからまた半年も1年も納車を待ったら、もう運転なんかできないだろうと思ったので、ここはすぐ手に入る車種で妥協することにしました。その両車種がダメだったらこれかなと思っていたのがホンダのDIO110とスズキのアドレス110で、DIO110は在庫があるというので(アドレス110も展示車があったので、多分在庫はあったと思います)購入を決めました。使用時期なところ、色に関しては第一希望ではなかったのですが、そこにこだわりはあまりありません。強いて言うと、黒は夏場に熱を吸って熱くなりやすいかな、ということと、夜間の視認性に難があるかな(でも、ライトがついているしね)ということは思いますが。ちなみに、DIOもアドレスも、原付二種のなかでは最安価な部類ですが、値段で選んだわけではなく、タイヤの直径がスクーターの中では比較的大きいから選んだのは、以前の記事に書いたとおりです。見た目的に、タイヤの小さなスクーター(とりわけ前輪)は、どうも私の美的センスでは、あまり格好よく思えないので。というわけで、ホンダのホームページには、「二輪車お届け遅延のお詫び」という一文が掲載されています。もちろん、他の各社も同じです。ヤマハ「新型コロナウイルス等の影響による生産・供給遅延のお詫び」カワサキ「モーターサイクルの生産状況・納期についてのお詫びとお知らせ」スズキ「スズキ車をご購入、ご検討いただいているお客様へ」その結果、車種や年式、状態にもよりますが、二輪では今、新車より中古車の方が高価という謎現象が起こっています。プレミアのついた稀少車ではなくてもです。中古車なら今そこに車両の現物があるのに対して、新車は、新モデルだろうが何だろうが実体はない、もはや概念的な存在でしかありません。それでは中古の方が高価になるのはある意味当然です。ただ、私は、最初の一台は中古より新車の方が無難かなと思ったこと、新車より高い中古には多少抵抗があること、ともかく第三希望ではあれ希望車種に新車があったことから、中古を選択しませんでしたが。そういえば、半導体不足で思い出したのは、春にモバイル用の軽量ノートパソコンを購入した際も、通販で購入したのは4月半ばでしたが、商品の到着は5月中旬、納品まで1か月以上かかりました。車の何年待ちよりはマシとは言え、これも半導体不足や海上輸送の逼迫など、同根の問題でしょう。それにしても、注文しても膨大な受注残を抱えて、いつ納車されるか分からない、だから新車より中古車のほうが高い、昔どこかで聞いた話です。そう、旧東ドイツの乗用車、トラバントです。かつてそれは、社会主義経済体制のダメさを物語るエピソードだったわけですが、30年経ってみたら結局資本主義だって同じだったというのが現状です。もちろん、旧ソ連型の社会主義体制がダメだったのはそこだけではないので、「だから旧ソ連圏の体制が良かった」とはなりません。しかし、「今の資本主義もたいして良いものではない」ということは言えるのではないでしょうか。
2022.06.22
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もし生活保護を利用できていたら。大阪の放火事件についての新事実2021年12月、大阪の雑居ビル内のクリニックで放火事件が起き、25人が死亡。あまりにも痛ましい事件に日本中が衝撃を受けた。そんな大阪の放火事件について、1月13日、重要な事実が報道された。~昨年12月17日、大阪の雑居ビル内のクリニックで放火事件が起き、25人が死亡。あまりにも痛ましい事件に日本中が衝撃を受けた。年末には61歳の容疑者も死亡し動機の解明は困難となったが、この事件に対して「拡大自殺」と指摘する声は多い。そんな大阪の放火事件について、1月13日、重要な事実が報道された。それは、容疑者が昨年と数年前の2回、生活保護の申請について大阪市此花区役所に相談に行っていたものの、受給には至っていなかったということだ。男性は土地、建物を所有していたが20年から家賃収入は途絶え、生活に困窮していたものとみられている。ちなみに生活保護は、住んでいない不動産を所有していると処分するよう言われるが、すぐに売れるわけではないので、売れる前に生活保護を利用し、売れたら保護費を返還すればいい。売れるのを待っていたら、その間に餓死してしまう可能性だってあるからだ。また、自らが住んでいる持ち家であれば、資産価値が二千数百万円ほどであれば住み続けながら生活保護を利用できる。容疑者は、このような説明を受けていたのだろうか。ただ漠然と、「不動産あると受けられないんですよねー」というような対応をされてはいなかっただろうか。(以下略)---雨宮処凛氏には賛同できる意見も多々ありますが、この記事に関しては「そのとおりだ!」とは言いかねるのが正直なところです。引用記事にあるとおり、この犯人は困窮しており、生活保護の相談をしていたけれど、申請はしていなかったので、事件時点では生活保護を受給していなかったようです。では、もし受給していたらこのような事件を起こしていなかったのでしょうか?本人も死んでしまい、「たられば」をいっても実際には分かりませんが、確かに生活保護を受けていれば事件を起こさなかった可能性は、ゼロではないでしょう。しかし総合的に考えて、その可能性が高いとも言えません。まず、彼が前例としてもっとも参考にしたのは京都アニメーションへの放火事件でしょう。その犯は、犯行当時生活保護を受給していたことが報じられています。生活保護で最低限度の生活を保障されても、このような凶行に走った容疑者がいる以上は、今回の犯人も「生活保護を受けていれば凶行に走らなかっただろう」とは言えません。知人の福祉事務所関係者に言わせれば、生活保護受給者が警察の厄介になる割合は、正確な統計などないからまったく感覚的なものではあるけれど、どう考えても世間一般よりは高い、とのことです。もちろん、だからと言って受給者の大多数が犯罪に手を染めているわけではありませんが。貧困とは通常はお金のない状態を指します。でも、お金がないことは、貧困の結果であって原因ではありません。では原因は何か、というと千差万別様々ですから一概には言えません。ただ、人間関係、人柄、社会的能力など(まとめて総称すれば「社会性」)に欠陥を抱えているるために疎外されて貧困に陥る人がかなり多いのは確かです。生活保護制度は金銭的貧困という「結果」を最低限度は解決しますが、社会性の不足という、貧困の「原因」を解決するわけではありません。社会性に、少なくとも致命的な問題は抱えていない人であれば、お金がないという結果を解決すれば全体の問題も解決できます。しかし社会性に大きな問題を抱えている人は、お金がないという結果を解決しても、それは対症療法にしかなりません。そして中には、京アニ事件の犯人のように、生活保護によって最低限度の生活が保障されていても犯罪を犯す人も現れます。人間というのは社会的生物であり、社会の中に居場所がなければ「まとも」でいるのは難しいからです。もちろん、生活保護受給者の中ても、そんな人は一部です(そんな人が大部分だったら、生活保護ケースワーカーなんて、やっていらんないでしょうし)。ただ、知人が経験則で語っていたことがあります。病気も障害もないのに、20代30代40代で生活保護に至る人は、人格や社会性の面で何らかの問題のある人の割合が、相当高い、と。以前に記事を書いたことがありますが、人格や社会性の面で問題があるのは「本人が悪い」のか、というのは、これは非常に難しく奥が深い問題ですが。(実際の生活保護の受給者は高齢者が大多数なので、全体としてみればそういう「ヤバイ」人の割合はかなり少数派だといいます)京アニの放火犯がまさしくそういう人間だったわけです。今回の犯人がどんな人物だったかは知りませんが、犯した犯罪の中身、報じられている前科や様々な行動を総合して考えると、かなり「ヤバイ」人であることは確かです。そして、そのヤバさが原因となって社会との接点を失い、疎外、孤立状態にあったとすれば、生活保護を受けてもそれが解消されるわけではありません。従って、この犯人が生活保護を受けていたとしても、時期は違っても結局は同様の凶行に至った可能性は高い、と私は思います。もちろん、可能性が高いだけで「絶対に」と言うつもりはありません。たとえ5%凶行の発生確率が下がるだけでも有益だと言われればそうかもしれませんが、問題の本質がそこだとは私は思いません。この犯人の生活保護の相談がどのような内容、雰囲気で行われたかは知る由もありませんが、そのような「ヤバさ」の片鱗が発露されていなら、面接相談員もそれなりにストレスを受けながら対応したのではないでしょうか。まあ、生活保護の面接相談員は、メンタル的にそんなにヤワでは務まらないでしょうが、どんなにタフな人間だろうと嫌なものは嫌だし、怖いものは怖いですからね。引用記事に「生活保護は、住んでいない不動産を所有していると処分するよう言われるが、すぐに売れるわけではないので、売れる前に生活保護を利用し、売れたら保護費を返還すればいい。」とあります。「売れたら保護費を返還すればいい」(法63条返還)のは事実ですが、裏があります。生活保護で医療費がかかると、本人に大きな不利益になるのです。これは以前にも説明したことがありますが、生活保護になると国民健康保険(75歳以上の場合は後期高齢医療)からは脱退となり、医療費は全額生活保護の医療扶助で支払われます。自己負担はありませんが、返還となると10割全てが生活保護費ですから、その全額が返還になります。受ける時はタダだけど、返すときは健康保険よりはるかに高くつくのです。この犯人の場合は、精神科通院はこの対象とならない可能性が高いですが(精神科への通院は「精神自立支援医療」という生活保護とは別制度があり、保護費の返還対象とはならない)入院や精神科以外の通院もあれば、その返還金は高額になる可能性があります。それを知らせずに保護を開始して、後で「医療費100万円返還です」などと言ったら大騒動になるでしょうから、その決まりは申請までに伝えているはずです。だから、それが嫌で保護申請をしなかった可能性は考えられます。家屋が本人の居住用物件と認められれば、引用記事にあるように「保有容認」(つまりそのまま持ってて良い)ですが、65歳以上になると「リバースモゲージ」制度の利用が義務になります。その不動産を担保に「社会福祉協議会」から生活費を借りてください、という制度で、簡単に言えば、あなたが亡くなったらその不動産は社会福祉協議会≒役所が頂いて、支払った保護費の穴埋めに使います、ということです。この犯人は61歳だったそうですから、65歳はたった4年後です。このこともまた、本人が生活保護利用をためらった理由の一つかもしれません。これらのことは国の生活保護制度の決まりとしてそうなっているのですから、個別の福祉事務所の対応がどう、という問題ではありません。日本のどこかに、これとは異なる対応をする福祉事務所があるわけではありません。というわけで、生活保護制度にいろいろと問題があること(例えば上記のような医療扶助10割返還という制度など)は確かだし、一般論として福祉事務所の対応に何の問題もない、というつもりはないのですが、かといって、この犯人が生活保護が受けていればこの凶行が防げた、責任の一端は福祉事務所(または生活保護制度の欠陥)にある、という言い分にも、どうも与することができないのです。
2022.01.21
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DaiGo改めて謝罪 想像力も理解も足りなかった路上生活者や生活保護受給者についての発言で物議をかもしたメンタリストDaiGoが14日、YouTube配信を通じ再度の謝罪をした。ネット上にはいまださまざまな声が躍っている。何があったのかここまでの経緯を振り返る。■8月7日DaiGoが自身のYouTubeチャンネルで視聴者からの質問に答える形で「自分にとって必要がない命は僕にとって軽いのでホームレスの命はどうでもいい」「邪魔だしプラスにならないしくさいし治安悪くなるしさ」「生活保護の人たちに食わせる金があるのなら猫を救って欲しいと思う」などと路上生活者や生活保護受給者に関して発言。同チャンネルは登録者数約245万人超と影響力もありネットは炎上状態に。(以下略)---こういう発言をする前に、言っていいか悪いか、胸に手を当てて考える、ということはできないのでしょうか。言ってしまった後で、どんなに必死で発言を取り消して謝罪しても(それがどれだけ真摯な謝罪かもはっきりしませんが)、残念ながら覆水は盆に返りません。確かに、一個人の視点からすれば、自分自身やよく知っている親族、知人友人の命は、会ったこともない赤の他人の命より重い、ということは言えます。例えば、私はこの騒動が起こるまでDaiGoという人物を知らなかったので、存在も知らないDaiGo氏やその家族より、自分や子ども、相棒の命の方がはるかに大事です。ただし、これは逆もまた真なりです。DaiGo氏にとってもまた、会ったこともない私や私の家族より、自分自身やその家族の方命の方がはるかに大事でしょう。それは否定しません。結局、万人にとってそうなのです。みんな、自分や周囲の人たちの方が、そうではない人たちより大事なのです。従って、社会全体として人を助ける(公的扶助)ときには、命の価値に差はない、誰の命も等価である、ということになります。自分のポケットマネーで周囲の人を助けるのとは次元の違う話ですから、そうでなければ収拾がつかなくなります。ホームレスの命というのは、別にDaiGo氏が言及しようがしまいが、事実として儚く簡単に失われているのが現実です。路上生活で70歳まで生きる人はいますが、70代後半まで生きる人はまれです。80代まで生きる人はほとんどいないのではないでしょうか。日本人の男性の平均寿命は84歳ですが、平均寿命までたどり着けるホームレスなんて、まずほとんどいないでしょう。路上生活とは、そのくらい(肉体的には)過酷なものです。それでも彼らが路上生活を選ぶ事情は様々あるでしょうが、ホームレスに精神疾患あるいは知的障害がある割合は、相当に高いと言われます。それは、別に本人に「非があって」そうなったわけではないのは言うまでもありません。本人に非がなくても、手の施しようがない、助けようがないタイプの人が存在することは、残念ながら事実です。本人と直接相対する時は、なかなかきれいごとが通用しない世界は、確かにあります。しかし、そうだとしても、「ホームレス」という属性だけで一律に「邪魔だしプラスにならないしくさいし治安悪くなる」などと言うのは、人間としてどうか、というものです。まして、居宅生活者も含めた生活保護受給者全般に対しての上記のような暴言には、唖然とするばかりです。本質的に、稼いで納税している人のお金が、稼いでいない納税していない人のために使われるのは、当然のことです。それによって社会全体が安定し、生活水準も向上するからです。累進課税とか社会保障といった所得の再配分の仕組みは、そういうものです。例えば、稼いでいない納税していない人の代表が子どもと高齢者です。「会ったこともない他人のガキの教育のために俺のカネなんて使ってほしくない、親が全部負担して学校に行かせてくれ」というのでしょうか。「会ったこともないジジイに年金保険料を負担するのは嫌だ」というのでしょうか。いや、そもそも医療保険制度自体が現役世代でも3割自己負担で7割公費負担です。では、「会ったこともない他人の病気やけがのためになんで俺が保険料を払わなければならないんだ」というのでしょうか。相互扶助というものを全否定すれば、究極的にはそういう理屈になるのかもしれません。ただ、現実問題として、腹の中ではそういうことを考えている人は、社会の中に意外と多く存在するのかも知れません。でも、そんなことを考えている人も、自分の子どもが学校に通うのに公費負担なしで全額自分で払えとか、病気になったりけがをした時に「医療費は10割自己負担です、事前に生命保険に加入しておいてね」と言われたら困るはずです。仮に子どもなんて作らない、病気もケガもしない(なんてことを自分で保証はできないはずですが)としても、自分の親も自分自身も、いつか必ず年老います。そのとき「年金はなしね、全部自助努力で生活しなさい」と言われたら、途方に暮れるはずです。現役世代で病気もなく働いている人だって、色々な事情で収入が途絶えて生活が追い込まれることは、当然あります。このコロナ禍の社会情勢では猶更です。飲食店、観光関係、芸術、エンターテイメント関係など、多くの業種で進退窮まっている人が大勢います。それにもかかわらず、生活保護の申請は案外増えていないと聞きますが、それは、持続化給付金など生活保護以前の制度によって救われている人が多いからでしょう。制度の内容は違うとはいえ、それらも(コロナ禍という特定の事態に特化した)公的扶助であることに違いはありません。相互扶助、困った時はお互い様、という意識がない、もし自分が同じ立場に置かれたら、という想像力が働かないから、そういう言葉が出てくるのでしょう。自分さえよければ、自分は「メンタリスト」(って、どういう仕事かよくわかりませんが、ユーチューバーその他で相当の稼ぎがあるのは確かなようです)で成功しているから生活に困ることはない、という意識があるからそういうことを言うのでしょうか。別にユーチューバーが悪い仕事だとは思いませんが、安定とも明日の保証とも無縁の仕事であることは間違いありません。すごい収入があるのでしょうから、来年いきなり無収入になることはないでしょうが、60歳70歳になるまで生活を保障できるわけではないでしょう。もちろん、安定とも明日の保証とも無縁の仕事はユーチューバーだけではなく、他にもいっぱいあります。私の父も自営業者(零細企業経営者)でしたから、常に安定も来年の保証もありませんでした。実際、私が中学生の頃、病気でかなりピンチの時期はありました。父の場合は回復しましあが、一時は飛ぶ鳥落とす勢いで肩で風を切って歩いていた人が、転落の末に、などという話は、そういう性質の仕事では珍しいものではありません。自分がそういう立場に追い込まれたとき、生活保護が最後の砦になる、そういう可能性は考えないのでしょうか。どんな人でも学校に通って大人になるし、いつかは死ぬ、そして、死ぬ前には働けない期間が必ず存在する。これは歴然たる事実です。仮に何一つ病気もけがもせず、ひたすら順風満帆に生きたとしても、最後は確実にそうなります。だから、相互扶助にいっさい助けられない、という人は世の中に存在しません。「情けは人の為ならず、廻り回りて我のため」なのですが、それに思い至らないのでしょうね。そして、それはどうも日本社会全体を覆いつつある「空気」と軌を一にしているようにも感じます。残念かつ恐ろしいことです。
2021.08.16
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羅臼岳登山の記事を中断して・・・・ホビージャパン、“転売容認”不適切発言の社員を退職処分 管理監督者も降格へホビー誌『月刊ホビージャパン』などを発行するホビージャパン社は26日、SNS上でホビー商品において「転売行為・買い占め行為」を容認するような不適切発言をした社員(編集者)について、退職処分とすることを、公式ツイッターにて発表した。ツイッターでは「弊社社員のSNS等での不適切発言に関する社内処分につきまして」とし、「該当社員 月刊ホビージャパン編集部 編集担当 退職処分」と報告。そのほか、管理監督者の常務取締役編集制作局長を取締役に降格、同誌の編集長を副編集長に降格、同誌の副編集長をデスクに降格することを伝えた。この騒動は『月刊ホビージャパン』の編集者がSNSで、ホビー商品において転売を容認するかのような発言をしたことで、「いや、ダメでしょ」「この意見は業界に関わる人として、いけないと思う」などと問題になっていたもの。(※該当のツイートは現在、閲覧不可)それを受け、ホビージャパン社は24日「この度SNS等におきまして、当社編集者が昨今のホビー商品についての一方的な見解を述べ、皆様のホビーに対する想いや、当社に対する信頼を裏切る事態になってしまっておりますこと、お詫び申し上げます」とお詫び。(以下略)---「退職処分」というのが懲戒免職なのか諭旨解雇なのか自主退職なのか分かりませんが、いずれにしてもクビにすることが犯した罪に対して妥当な処分なのかどうかは、私には分かりません。ただ、処分の妥当性はともかくとして、その発言が大きな問題をはらんでしたことは間違いありません。問題のツイートの内容は、以下のようなものだったそうです。「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られてるのが面白くないだけだよね?頑張って買えばいいのでは?頑張れなくて買えなかったんだから、頑張って買った人からマージン払って買うのって、普通なのでは。」「うーん… 転売問題が難しいところは、 転売されて困るのが一部のユーザーだけってことで、 ものは売れてるからメーカーも小売りも問屋も売り上げがしっかり立つから、 業界的には安泰なんですよ。 逆に、 いつでも買えて割引ガンガンのかつての状況って、店舗が死ぬので、 業界へのダメージもデカいんです。」クビが妥当かどうかは別にして、明らかにコアなユーザーを対象にした雑誌の編集者が、それらの「一部のユーザー」を敵に回すようなことを公言するのは、大いに問題ありでしょう。しかも、その事実認識自体が的外れなものでは、非難が殺到するのは当然だろうと思います。私は最近20年近く、プラモデルをまったく作らなくなってしまったし、それ以外も含めて、あまりプレミア的な価値のある希少性の高いものを求めたことがないので、転売による実害を受けたことは(もちろん利益を得たことも)ありません。ただ、転売行為の存在によって、主にホビー、エンターテイメント業界などが振り回されて多大な被害を受けてきた事実は承知しています。プラモデルにおいては法規制はありませんが、コンサート等のチケットについては転売に対する法的規制が導入されています。「業界的には安泰」だったら、その業界から転売行為に対する非難が起こるわけもないのです。それでも、私は転売行為のすべてを全面的に非難しようとは思いません。例えば行く予定だったコンサートに行けなくなってしまった、このままではせっかくのチケットが無駄になってしまうから、行きたいけれどチケットが取れなかった人に譲る、そういった行為を全面否定はしません。しかし、問題は最初から利益を得る目的で商品を買い、それを高価で転売して利ザヤを稼ぐ行為です。それも、ごく小規模であれば、商品流通のための潤滑剤と言えるかもしれません。でも、それが増殖して、「欲しいものはみんな転売ヤーが買い占めていた」という状態になってしまうと、商品流通を阻害することになってしまいます。ホビーやエンターテイメント業界は、狭い意味での生活必需品ではなく、多かれ少なかれ、「夢を売る」ことで商売をしています。その夢を買う側がいつも転売ヤーの買い占めによって購入を妨害されて、正規価格より高い値段での購入を強いられ続けたら、つまり夢を壊されたら、やがては多くのファンが離れて行ってしまうでしょう。「メーカーや小売りは、転売ヤーが買い占めても売り上げが立つから困らない」、転売ヤーが今後も永続的に買い占め続けてくれる保証があればそうかもしれません。しかし、構造的に言って、転売ヤーが買い占めるのは人気があって高値で転売できるからです。ファンが離れれば、高値で転売できないのだから彼らも離れます。つまり、誰も買わなくなって市場が崩壊するわけです。さて、そんなときに、競争原理至上主義の使徒、池田信夫が転売行為擁護の愚論を吐き散らして非難を浴びているようです。転売はユーザーの利益になる本当にほしいなら、高値で買えばいいんだよ。それが市場経済というものだ。~転売屋のやっていることは安く買って高く売るという市場経済の原則である。高い価格で買う人は、その商品を高く評価しているのだから損していない。ヤフオクやメルカリなどのオークションと同じだ。ガンプラの価格が上がったら、バンダイが増産すればいい。生産を絞っているから、転売屋がもうかるのだ。~---「本当にほしいなら、高値で買えばいいんだよ。」それが市場経済だと思っているとしたら、実に近視眼的です。そもそも転売ヤーが高価で転売して儲けられるなら、最初からメーカーなり小売店がもっと高価な価格設定にすれば、より大きな利益が得られるはずです。定価を5倍10倍にに吊り上げでも買ってくれるならそうすればいい。でも、そうしないのはなぜか、という問題です。それは、そのような行為で一時的な金儲けはできても、長い目で見たらファンを敵に回す行為であることを、メーカーや小売店は見抜いているからでしょう。前述のとおり、ホビー、エンターテイメントは多かれ少なかれ夢を売る商売です。「夢を売る」というのは大変に微妙で、いつも単に安価であればよいというわけではなく、時には高価なもの(より正確に言えば、高価であることがファンに納得してもらえるようなもの)も「夢」には必要になるときもあります。ただ、重要なことは「阿漕な金儲けをしている」と思われてしまったらお終いだ、ということです。別にガンプラがこの世に存在しなかったからと言って、誰も飢え死にするわけではありませんから。多分、あの業界もいろいろな経緯を経て、長い時間をかけてそう学んできたはずです。私が中学生の頃、ご多分に漏れず私もガンプラを作ったことがありますが※、当時は抱き合わせ商法というやつで、他のプラモデルとセットでしか売ってくれないお店が多かったです。私が購入した時もそうでした。「伝説巨神イデオン」の何かのプラモデルと抱き合わせだったような記憶があります。しかし今、そんな商売をしたら大問題になるでしょう。ガンプラ40年の歴史は「伊達じゃない」のです、多分。※作品としてのガンダムは、当ブログでも2回くらい記事を書いたことがあるくらい好きですが、ガンプラにはそれほどのめりこまず、作ったのは、確かガンダム1体だけだったと思います。1/700ウォーターラインシリーズとか、戦闘機、戦車、はてはお城や家の模型まで、プラモデル自体にはかなり好きだったのですが。一方、転売ヤーにとっては、市場がどうなるかなんてどうでもいいことです。ファンが離れようが何しようが、そんなことは関係ありません。目先の利益がすべてです。ガンプラの転売で利ザヤを稼いで、ガンプラの市場が破壊それたら、別の市場を標的に転売を行えばいいだけですから。そうやって、焼き畑農業のごとく市場という森に次々と火を放って、目先の利益を奪ってあとは野となれ、というのが「市場経済の原則」ならば、そんなものは早晩行き詰まります。チケット転売と違って、プラモデルの転売は違法ではありません。だから何をやってもよい、というなら、それを防ぐ側も、違法でさえなければどんな手段で対抗したって構わないはずです。ことは所詮(というのは失礼ですが)プラモデルだからこの程度の問題で済んでいますが、生活必需品だったらもっと大騒ぎになります。わずか一年前、マスクの品薄と価格高騰が大問題になりました。50枚入が4000円5000円という値段になったこともある。自分で使う分の買いだめはともかく、転売目的の買いだめもあったのではないでしょうか。安く買って高く売るのが市場経済だから、そのような行為は問題ない、と池田は言うのでしょうか。極論すれば、超巨大資本が日本中の米を買い占めて、キロ1万円で売ってもそれは正当な市場経済だ、と言うことになるのでしょうか。市場経済栄えて万骨枯る、というものです。こういう近視眼的市場経済は市場そのものを、ひいては社会を破壊するものと私は思います。
2021.07.28
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生活保護世帯のエアコン 自治体間で支給状況に30倍の格差関西地方のケースワーカーや研究者でつくる「生活保護情報グループ」が、政令市、中核市、特別区(東京23区)の計105自治体の生活保護世帯に対するエアコン購入費の支給状況を調べたところ、自治体間で約30倍の格差があることが分かった。~国は18年6月に自治体に通知を出し、18年4月以降に生活保護の受給を始めた世帯のうち自宅にエアコンがなく、高齢者や障害者、子ども、体調の優れない人がいる場合などにエアコンの購入費用と設置費用の一部を支給する制度を始めた。厚生労働省によると、支給額は物価によって変動し、今年度は国と自治体が購入費用として、5万4000円を上限に支給している。生活保護情報グループ~によると、生活保護を受けている1000世帯当たりの2年度分の支給件数は平均5・7件で、最低は山口県下関市の0・6件、最高は東京都台東区の19・8件だった。台東区と下関市で33倍の開きがあった。台東区の担当者は「他の自治体に比べて支給の判断を緩くしているわけではなく、厳密にやっている。支給対象者が多いことが影響していると思う」と説明。下関市の担当者は「保護世帯からの申請に基づき、対象世帯には支給している。たまたま、その年度の支給が少なかっただけだと思う」と話した。0・9件だった宇都宮市の担当者は「ケースワーカーが家庭を訪問した時にエアコンの有無を確認し、制度の案内をしている」と説明。0・7件だった札幌市の担当者は「エアコンを設置している世帯自体が少ないので、家庭訪問時に制度を伝えてはいない」とした。一方、8・7件だった兵庫県尼崎市は、制度が始まった18年度に生活保護世帯に対してエアコン保有の有無を調査し、リストを作成した。その後はケースワーカーが家庭訪問した時に変更がないか確認し、新たな生活保護世帯に対しては保護申請時の書類にエアコンの有無を書く欄を設けることで、漏れがないようにしているという。---生活保護でエアコン代購入費が一番多いのが台東区、というのはある意味非常に分かりやすいです。引用記事にあるように、生活保護でエアコン代が出るようになったのは2018年からで、それ以降の新規開始または転宅時に、65歳以上または障害者、乳幼児がいる場合でエアコンの持ち合わせがない場合は、エアコン購入費が出るようになりました。今年度はその金額は5万4千円とのことですが、生活保護に詳しい知人に聞いたところ、この金額は本体購入費用の上限で、別途取り付け費用も支給できるそうです。何故台東区で支給が多いかと言えばその理由は明らかで、住所不定とドヤ住まいが多いからでしょう。西の釜ヶ崎、東の山谷と横浜の寿町と言えば日本の3大ドヤ街で、住所不定者が多い。住所不定は一定期間は無料低額宿泊所(無低)などに入ってもらうそうですが、単身居宅生活能力があると認められればアパート転宅が認められる、とのことです。都営住宅にも通称ドヤ枠という優先枠もあるのだそうです。それでアパート(または都営住宅)に転宅する人が非常に多いのだそうです。台東区に都営住宅が多くあるわけではないので、他区の都営住宅に当選してその管轄福祉事務所に移管、ということになるのだそうですが、その場合も台東区で転宅に伴う費用はすべて出したうえで移管するのだそうです。前住地は路上か無低かドヤとなれば、当然自分のエアコンなど持っているわけもなく、従ってエアコン購入費の支給が多い、ということになるわけです。したがって、台東区の数値を他の福祉事務所と比較するのは、やや妥当性を欠くかもしれません。遠い昔は、生活保護ではエアコン所持が禁じられていました。保護開始時に訪問調査をするそうですが、そのときエアコンがあると「取り外せ」という時代があったそうです。それによって熱中症の死者が出たりして、大問題になり、知人が福祉事務所に異動した時には、すでにそんな話は昔話になっていたとのことです。もっとも、それでも実際問題エアコンを持っていない人も多いそうです。真夏に訪問調査に行くと、自転車で行くので大汗をかいて訪問先にたどり着くのですが、それで訪問先に入ると、さらに暑い蒸し風呂状態だったりすると地獄だと知人は言っていました。エアコンあっても使っていない人も多いとのことです。「エアコンの風が嫌いなので」という人が結構いるのだそうです、それも事実かもしれないけど、本当は嫌いなのはエアコンの風じゃなくてエアコンの電気代、という人も少なくないだろうな、という気がします。なお、光熱費に関して冬季加算というものはありますが(全国を6段階に分け、一番高いのは北海道・青森・秋田で、東京は一番低い第6段階)夏季加算というものはありません。引用記事に、札幌市の担当者は「エアコンを設置している世帯自体が少ないので、家庭訪問時に制度を伝えてはいない」とありますが、北海道だからそれも分かります。もちろんエアコンは冷房専用ではなく冷暖房ですが、北海道の冬はエアコンでは多分寒さをしのぐのは厳しいでしょう。灯油かガスじゃないと無理でしょうし、それが付いていないアパートなんてないでしょうから(公営住宅は分かりませんが)、エアコンを設置する必要性は低いのかもしれません。
2021.07.19
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「なぜ、今なのか」 最低賃金引き上げ決定に中小企業の不満噴出 雇用圧迫の懸念も中央最低賃金審議会の小委員会で最低賃金の大幅な引き上げが示されたことに対し、関西の中小企業からは悲鳴があがった。コロナ禍の影響がより大きい中小には人件費の増大で経営体力を奪われるとの懸念が強く、今後雇用を抑制する動きが加速しかねない。酒類の提供や営業時間などで規制が続く飲食業界。業種別のコロナ関連倒産件数は高水準が続くなどコロナの打撃が最も大きいなか、今回の決定に対する衝撃は大きい。「お酒の販売は重要な収益源。それを『悪』のようにいわれ、来店人数も制限されるなか、さらに賃金を上げろという。『なぜ、今なのか』という思いだ」和食チェーンを展開する企業の幹部は頭を抱える。この会社ではパートなどの非正規雇用が7割超を占め、人件費の大幅な上昇は避けられないという。最低賃金の引き上げは、パートなど非正規雇用者へのしわ寄せが大きい。兵庫県内で飲食店を営む女性は「人件費が上がるなら、パートの勤務を減らして正社員で回すしかない」と話す。関西でも店舗を展開する東京都内のサービス業の取締役は「わが社はパートやアルバイトが多い。時給を上げるならば、逆に労働時間を減らさなければならないだろう」と打ち明ける。生活を守る手段の賃上げだが、逆に雇用を圧迫する懸念が高まる。影響は海外勢との激しい競争にさらされる製造業にも及ぶ。大阪府東大阪市のゴム製造企業は「コロナ禍で国内景気が悪化し、海外輸出でも中国企業との競争で利益が上がらない。この状況で賃上げなど一体何を考えているんだ」と憤る。(以下略)---菅政権は大嫌いですが、この最低賃金引き上げが政府の意向を反映したものであるならば、他のことは支持しないけれどこれについては支持します。もちろん、充分なものではまったくないし、今の状況で最低賃金引き上げは、「当たり前だろ」とも言えますが。それでもやらないよりははるかにマシです。ところが、普段は政権にべったりの産経新聞が、この件だけ噛みついています。さすがは「働かせる者」の味方、働く者の敵だけあります。引用記事の色々な声を見ても、「和食チェーンを展開する企業の幹部」「兵庫県内で飲食店を営む女性」「関西でも店舗を展開する東京都内のサービス業の取締役」「大阪府東大阪市のゴム製造企業」(発言者の肩書は不明ながら、経営者であることは歴然)全て人を雇う側の言い分だけです。雇われる側の言い分は、一言たりとも載せていません。世に中小企業の数は多いとはいえ、それでも人を雇う側の立場の人数より雇われる側の立場の人数の方が圧倒的に多いはずですが、その言い分は一切載せない、というわけです。産経新聞の立場が実に分かりやすくも歴然としていて、いっそ清々しいくらいですよ。実際には、最低賃金の引き上げによって救われる、助かる、よりよい生活ができる人は、ものすごく大勢います。もちろん、最低賃金周辺の時給で働いている人が得になる半面、それによって損をする人もいます。世の中のあらゆる政策には、メリットとデメリットがあり、どんな素晴らしいと思える政策でも、そこにデメリットは必ずあるわけです。メリットしかない政策なんてものは、残念ながらありません。最低賃金引き上げは、雇われる人(の中でも低所得の人)にとって得になる半面、雇う人(あるいは会社)にとっては損になる。それは仕方がありません。全員にメリットしかない政策なんて存在しない以上は、誰かが損を被らなければなりません。小泉政権以来ずーーーっと、雇う側の得ばっかりが追求されて、雇われる側が損を被る政策ばかりが横行してきたのです。たまには雇われる側の得になる政策がとられても、罰は当たるまいよ。それすらも許せない、最低賃金の引き上げなんかするな、というのは、日本中の大多数の労働者が今後も低賃金で働き続けよ、人件費を圧縮して企業だけが儲けよ、ということです。それは、この20年以上進んできた日本の方向性そのものであり、それによって日本経済はどんどん縮小して、日本人(の大多数)はどんどん貧しくなっていったのです。その道を今後もどんどん進むべきだ、というのでしょうね。本当の「反日」はいったい誰なんだと言いたいですね。
2021.07.14
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生活保護申請者に不適切対応、横浜市の非情すぎる発言 “録音テープ”の中身を公開「生活保護の申請をしたい」横浜市の神奈川区福祉事務所を訪れたひとりの女性が申し入れた。すると面接担当者は誤った条件を提示し、本来は有効のはずの申請書を受け取らなかった。市は対応の不適切を認め、謝罪会見をすることになった~仕事と住まいを失った女性Aさんの所持金は9万円でした。数日後には携帯代金や各種支払い(約2万円)が引き落とされる予定となっています。先行きが不安だったAさんは、節約をしようと考え公園で過ごしていました。そして翌日横浜市神奈川区の福祉事務所を訪ね、アパートで生活できるよう生活保護の申請をしたいと申し出ました。ところが、対応した福祉事務所の職員は、生活保護の申請を希望するAさんを退け、記録に「申請の意思なし」と記載したのです。生活保護の申請希望者を追い返す行為は、福祉事務所による違法行為であることを広く知ってもらうため、録音していたテープを文字にして解説したいと思います。相談係:受付表に「お住まいなし」って書いてあるんですけど? 状況教えてもらってもいいですか?Aさん: 今現在の状況は仕事がなくて、来月までにはお給料入る予定なんですけど。今はお仕事なくて、住所がなくて、カプセル(ホテル)とかネットカフェとか(に泊まっています)。あと、何を言えばいいですか?相談係:お家のない状態だと、ホームレスの方の施設があって、そちらに入ってもらう。そちらは女性の方なので女性相談になる。注目したいのは、ここで相談係はまるで施設入所が生活保護の前提であるかのような説明をしていますが、これは虚偽の説明にあたります。施設入所の強制は生活保護法30条違反にあたります。本人が嫌がる場合は別の選択肢を考える責任が福祉事務所側にはあります。(以下略)---うーーーーむ。これを読んで考え込んでしまい、生活保護に詳しい知人にいろいろ聞いた結果、これは「普通の対応だろう」と私は思います。知人も、細部には問題はあるけれど、自分も同じ状況なら大差のない対応をする、と言っておりました。生活保護というのは、細部は省略して簡単に言えば、お金がない人を対象とする制度です。しかし、世の中の「貧しい人」には色々なタイプがいます。能力も人柄も健康状態(精神的な面も含めて)も問題がなく、「お金だけ」がない人もいます。生活保護制度の理念や、支援団体の考え方も、大筋ではそういう人を前提に考えているところがあります。ところが、世の中の貧しい人は、みんなそういう人ばかりではありません。知的、能力的、精神的、情緒・性格的のいずれか(場合によっては、その複数にまたがって)に問題があって、その結果貧しい、という例は決して少なくないのが現実です。そういう人は、「足りないお金を支援すれば貧困が解決」とはなりません。それでも、現に居宅生活、つまりアパートなりマンションなり戸建てなり、定まった住居で生活を営んでいる人は、大筋ではそう問題がない人が多数派です。だいたいは、足りない分のお金だけを渡しておけば、あとはおおむねまともに生活できる人たちです。しかし、住所不定者は、そうではない場合がかなり多いのです。そりゃ、自治体によっては申請抑制はあるかもしれません。福祉事務所で嫌なことを言われることもあるかもしれません。それでも、世の中の生活保護受給者の大半は、路上生活に落ちる前に福祉事務所に駆け込んで生活保護を申請しているのです。それなのに住む家まで失う前に手を打てなかった人たちが住所不定者です。もちろん、何らかの止むにやまれぬ事情があった人もいるでしょう。でも、そうではない人が相当高確率で混ざっていることは容易に想像ができます。しかも、知人の体験上でいうと、女性の住所不定の場合は特に、そういう人の割合が、男性の住所不定と比較してもかなり高い、ということです。都会での路上生活への心理的敷居は、女性の方が男性よりはるかに高いのは明らかですが、それなのに路上生活に至ってしまう時点で、かなり「突き抜けちゃっている」ということなのかもしれません。知人は、あからさまに言います。路上生活にまで至る女性の住所不定者で、問題なく単身居宅生活を送れそうな人なんて、ほとんど見たことがない、と。もちろん、実際には皆無じゃないでしょうし、あるいは問題のAさんも、実はしっかりした人なのかもしれません。でも、その人の人となりを何も判断できない初対面の段階では、そんなことは分かりません。その状態でいきなり女性の住所不定者にアパート転宅を認める福祉事務所なんかない、ということです。「女性の住所不定」という時点で、多分、単身居宅生活能力はないだろう、という推測に基づいて対応するのは、確率の問題からやむを得ないのです。記事には「本人が嫌がる場合は別の選択肢を考える責任が福祉事務所側にはあります」とあります。しかし、福祉事務所は魔法のつえを持っているわけではありません。限られた社会資源の中から、ある日突然やってきた住所不定者がその日から泊まる住み家(生活保護ですから、当然家賃額には厳しい上限がある)を探すのです。この施設は?嫌だ。ではこの施設は?嫌だ。となれば、あとはもう自分で探して、と言うしかありません。アパート生活を認めるとしても、その判断には1~2ヵ月かかります。また、認めたときに、直ちに物件が見つかって入居できるとは限りません。その間ホテルなどにずっと宿泊(女性の宿泊に耐える宿)するのは生活保護の住宅扶助上限金額から不可能ですし、仮に安価な宿(おそらく簡易旅館、いわゆるドヤになります)だとしても、福祉事務所はそれを避けたいものだそうです。なぜなら、ホテル(あるいはドヤ)では生活状況の把握ができないし、サポート体制もないからです。その人が単身居宅生活を送る能力があるかどうか、判断する材料が得られないし、最悪の場合、いつの間にかその宿からいなくなり、保護費だけを福祉事務所の窓口に受け取りに来ていたとしても、それを即座には見抜けないのです。では、この福祉事務所の応対にまったく問題がないかというとそうではなく、施設に入るにしても×ヶ月くらい様子を見てアパート生活を認めます、という出口をきちんと説明したのか(もちろん、説明したけど聞く耳持たず、の可能性もありますが)という点と、敷金礼金なしのいわゆるゼロゼロ物件は問題が非常に多く、多くの福祉事務所が避けているはずなのに、それをを勧めるのか(これも、「そんなに言うならこれしか手がないですが、いいんですか?」という趣旨だった可能性もありますが)という点には問題はありそうです。それに、おそらく説明の仕方、一方的、あるいは高圧的だった可能性はあります。そもそも、施設をどうしても嫌がる場合、その場での判断は後回しにして、「ではとりあえず宿を自分で探してきてください。その先の住まいのことは生活保護が開始になってから考えましょう」と、結論は先送りするやり方もあり得たのではないか、と知人は言います。でも、その点を除けば、この福祉事務所の提示した選択肢は「当然だろう」としか言いようがない、というのが知人の見解です。単身居宅生活能力がない人に、支援体制もないまま居宅生活を認めても、家賃滞納とかゴミ屋敷化、家主管理会社近隣住民などとのトラブルによって、惨憺たる結末を迎えることにしかなりません。しかも、施設といっても、女性が入所できるところには相部屋は多くありません。横浜の状況までは知りませんが、東京であれば、女性用の施設はほとんど個室だといいます。そういった状況を総合して考えれば、女性の住所不定者に施設を勧めるのはある意味当然だし、それを拒絶する相談者に対して、おおむねこういう対応になるのは仕方がない、と言うしかありません。なお、余談ですが、引用記事に「施設入所の強制は生活保護法第30条に反する」とありますが、それは一概には言えません。色々と批判の多い「無料低額宿泊所」に関しては、生活保護の制度上「施設」ではなく、入所を強制するのは、法的根拠のない指導・指示、ということに確かになります。しかし、制度上の位置づけがある「更生施設」「救護施設」の場合は話は別です。この場合、「施設に入所しなさい」という指示を行うことは違法ではありません。「強制できるものと解してはならない」というのは、嫌がる本人を身体拘束して無理やり施設に押し込むようなことをしてはいけない、という意味であって、入所指示によって「施設入所か保護打ち切りか、好きな方を選べ」という選択を提示することは強制ではない、と解されています。東京都生活保護運用事例集 P.372 問9-7 保護施設入所時における指導・指示1.~実施機関が保護施設への入所を行う場合に~本人の選択を奪うものではなく、その決定を拒否した場合には、保護の変更、停廃止をすることにより入所決定そのものが消滅することになるものである。2.~被保護者が居宅保護を希望した場合であっても、金銭管理や服薬等の健康管理等の日常生活上の課題を自己管理できない、または具体的な支援体制が整わないなどの理由によって居宅生活が困難であると認められる状態のままで、居宅における保護の実施を行うことは適当でない。---そしてもう一点、住所不定者でも最低生活費の算定には住宅費を算入する、という点。それは正しいけど補足が必要です。「家賃(宿泊費)がかかります」という言葉だけでは証拠にならないからです。泊まる宿の領収書か見積書(福祉事務所では「家賃地代証明書」と言うのだそうです)をもってきて、初めて住宅扶助を保護基準に算定できます。どこに住むか決まらなければ家賃(宿泊費)は決まらない、従って住宅扶助は保護基準に算入できない、ということになります。どこの福祉事務所でも、家賃地代証明書の提出を1日や2日は待つでしょうが、それが出るまでは保護開始の決定はできない(出なければ要否判定上申請却下)ということなります。知人によれば、「もし自分が対応したとすれば」、やはりまずは施設を勧めるだろうと。それで拒絶する場合は、もちろんそのまま放り出すようなことはせず、前述のとおり最終的な行先の結論は後回しにして、当座の宿泊場所は「家賃地代証明書」を渡して自分で探させるだろう、ということでした。それで宿泊先を決めてくれば保護開始だし、「家賃地代証明書」を提出できなければ、(最終的には要否判定によって申請却下になるけれど、その前に)自分で行先を探せないなら、施設に入るしかないでしょ、ともう一度説得するだろうと。もっとも、仮にその時いったん申請却下になったとしても、収入がなければ手持ち金は減ることしかないので、何日かしてもう一度申請したら、次は(住宅扶助を加算しなくても)手持ち金が基準以下になっている可能性は高そうです。
2021.04.09
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DHC会長の“サクラ投稿指示”に反対した新入社員が年末に懲戒解雇されていた!《本人告発》「文春に情報を出した」DHC新入社員が“濡れ衣”で懲戒解雇 弁護士は「不当解雇にあたる可能性が高い」昨年末、差別的な発言で炎上した大手化粧品メーカー「DHC」の代表取締役会長・吉田嘉明氏。「文春オンライン」特集班は、差別発言以外にも吉田氏が従業員に消費者の口コミを大量にSNSに投稿するよう指示していたことや、「愛社精神指数」と呼ばれる指標で賞与額を決めていること、人事評価で低評価の社員を「穀潰し」と呼んでいることなどを詳報した。そんな中で、ひとりの男性新入社員が研修中の人事部付きの身でありながら、懲戒解雇処分を受けてDHCを去っていた――。2020年4月、Aさんは都内の有名大学を卒業しDHCに入社した。しかしAさんの希望に満ちた日々は長くは続かなかった。2020年8月、“サクラ投稿” についての社内通達が掲示されたのだ。“サクラ投稿”とは、「らくがき板」というハガキに書かれた消費者の感想コメントを、SNSや口コミサイトに消費者に“成り代わって”大量投稿せよと吉田氏がDHCの社員に対して指示したものだ。引き受けた社員には月10万円の報酬が提示されていたが、無償で引き受けた社員は“ゴールド社員”、“DHC特別社員”といった称号で賞与・人事評価での優遇が約束された。Aさんは「これを知った瞬間、自分のなかで何かが崩れる音がしました」という。「だって、社員があたかもその消費者本人かのように振る舞い報酬を受けながら宣伝活動をするなんて、正々堂々としたやり方じゃないと思います。」「研修部署の先輩や、人事部との面談でも『この施策、おかしいと思います』と疑問をぶつけるようになりました」12月18日にAさんは人事部の女性社員X氏から突然の呼び出しを受け、退職を勧められた。Aさんは会長の差別発言について問題だと思っていないのかと尋ねた。X氏は突然早口になり、まくしたてるようにこう語った。「あれは問題じゃないけどね、会社としては問題だと思っていないけどね、はい。ヤケクソくじ何か問題ですか?」「自分のどの行為が退職を勧められるほど悪いことなのかを確認したかったため、『就業規則』を見せて欲しいと研修先の上長に頼みましたが見せてもらえませんでした」3日後Aさんは再度X氏に呼び出され、面談を受け退職勧奨された。自主退職を勧められていが失業保険が下りる『解雇』にしてくださいとお願いした。だがAさんに伝えられたのは「懲戒解雇」。「28日の夜にその理由がわかった」という。「文春オンライン」の DHC内部告発記事だ。取材班は12月25日にDHCへ質問状を送付しているため、Aさんが内部告発者であると考えたのだろう。しかし、取材班がはじめてAさんと連絡をとったのは記事公開後、年が明けてからだ。Aさんにかけられた嫌疑はまったくの事実無根なのである。「人事からは事前に『28日付で辞めたとしても賞与支給対象』だと伝えられていたのですが、懲戒解雇だったためか、その後に賞与が振り込まれることはありませんでした」---酷い会社です。ただ、多分中小企業のワンマン社長には、この手の手合いは少なからずいるだろうと思います。世の中の創業者社長は、他を圧するようなパーソナリティを持っている例が少なくないので。それが中小企業のままならよい、いや、よくはありませんが、規模が小さいだけに巻き込まれる人も少なくて済みます。しかし、間違ってこういうワンマン社長の体質のまま会社だけが急成長を遂げると、「巨大ブラック企業」の誕生です。私は先行する12月28日の記事は読んでいなかったのですが、「サクラ投稿」自体は他にもありそうな気はしますけど、やっぱりそれはどう考えても「禁じ手」です。それを社内でこんなに堂々と募っているとは驚きです。そりゃ、そんなことをすれば、一人の新入社員だけではなく、各方面から漏れるでしょう。こういう会社で、社内で誰もワンマン社長をいさめる人がいないから、ああいうネトウヨ発言の暴走も止まらないのでしょう。残念ながら、そういう種類の発言に喝采を上げるような種類の人も、社会の中に一定数いるのが現実ですし。ただ、そういう人たち、よりはっきり言えば、ネトウヨ層の人たちが果たしてどの程度化粧品だの健康食品だのを買うのだろうかと考えると、どうも吉田社長支持層(笑)とDHC顧客層は、それほど重ならないのではないか、という気がします。そういう顧客層に、ネトウヨ発言への反感があるかどうかは正直なところ分かりませんが、サクラ投稿に対する反感は、ないでは済まないんじゃないか、という気がします。以前にも書いたけど、私はDHCの製品はこれまでも買ったことがないし、今後も絶対に買わない、という思いを新たにしました。それにしても、Aさんは勇敢な人です。私は左翼(いや、元左翼)だけど、てんで意気地がないので、Aさんの立場だったら、社内で反対意見を言う勇気は全然ないな・・・・・。実生活では、右見て左見て黙っちゃうタイプ。とはいえ、それに対する仕打ちが懲戒解雇とは、これまたトンデモな処分です。おそらく労働審判あるいは裁判に訴えれば勝てる事案でしょう。Aさんにもはや復職の意志などないでしょうが、払われなかった退職日のボーナス、離職票、失業手当、履歴書の傷、金銭的にも今後の転職先探しの上でも、懲戒解雇は不利益が大きすぎますから、これだけは何としても撤回させなければなりませんね。ただ、こういうトンデモなワンマン社長、そのイエスマンの取り巻き、ブラック体質、やらせ投稿で評判づくり・・・・・・どれをとっても最低だけど、残念ながら似たような会社はいっぱいあって、氷山の一角のでしょうね。
2021.01.26
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4~6月期GDP、年27.8%減 コロナ直撃で戦後最悪 景気回復緩慢の恐れ内閣府が17日発表した2020年4~6月期の国内総生産速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比7.8%減、この成長が1年続いた場合の年率換算で27.8%減となった。新型コロナウイルスの感染拡大が直撃し、リーマン・ショック後の09年1~3月期(年率17.8%減)を超える戦後最悪の下落を記録した。7~9月期は反動で10%を超えるプラス成長に復帰するとの見方があるが、感染再拡大で景気回復ペースが緩慢になる恐れがある。マイナス成長は3四半期連続。政府は4~5月、感染対策で全国に緊急事態宣言を発令し、外出自粛や店舗休業などで国内の経済活動が停滞した。輸出も振るわず、内外需が総崩れとなり、けん引役不在に陥った。マイナス幅は1~3月期の前期比0.6%減から大幅に拡大し、新型コロナが日本経済に深刻な打撃を及ぼしたことが鮮明になった。GDPの半分以上を占める個人消費は外食や宿泊、娯楽サービスなどの落ち込みが大きく、前期比で8.2%減、年率で28.9%減だった。企業の経営環境悪化を反映し、設備投資も前期比1.5%減と2四半期ぶりにマイナスに転じた。---年率換算27.9%の減は、すさまじい事態と言わざるを得ません。もちろん日本だけの現象ではなく、米国では年率換算32.9%減、EUは40.3%減というから、いずれも日本を超える状況です。つまり、世界大恐慌の再来と言ってよいし状況であり(リーマンショックのときだってそう言われたわけですが)、しかも最近の感染再拡大状況から判断して、とても「7-9月期はV字回復!!」なんておとぎ話が信じられるような状況ではありません。ところが、です。東証、午前終値は2万3145円 一時200円超安上記GDP速報値が発表された日の株価の記事です。200円下がったというのですが、世界大恐慌並みの事態だというのに、それだけ?一連の新型コロナ禍に際して、2月下旬から3月半ばにかけて株価は大暴落し、24000円前後から一時は16000円台まで下がりましたが、その後は何故か回復して今は23000円台です。経済回復の反映として株価が回復したのなら喜ばしいことですが、そうではないことは今回のGDP速報値からも明らかです。1-3月のGDPは年率-2.2%(当初-3.4%と発表され、のちに上方修正)のマイナス成長でした。それで株価の大暴落が起きました。株価はその時の経済状態のみではなく、将来展望にも左右されるものでしょうから、これから先の新型コロナの経済への深刻な影響を予測して株価が崩落したわけです。実際、その後の状況はそのとおりになっています。それなのに、なんで年率-27.9%という経済崩壊状態だと株価が回復するのでしょうか。経済状態がすぐに急回復する・・・・・・と、見込めますか?どう考えても無理と思えます。現在の経済状態も将来の予測も真っ暗なのに、株価だけが回復している。あまりに謎過ぎる、いや不自然な事態です。経済という母胎が死んでいるのに、株価だけが生きてピンピンしている、まるでゾンビです。要するに、買い支え株価を吊り上げられている、ということでしょう。例の異常な金融緩和によって資金が株式市場に向かうように誘導されている、ということに加えて、日銀自身も直接的に株の購入を拡大しているようです。上場投資信託を買いまくる日銀、市場を歪めてしまわないか コロナ禍で株価上昇の意味きっと、我々の年金積み立ても、大量に株式につぎ込まれているんでしょうねえ。この状態が今後永続的に維持できるならめでたしめでたし、ですが、どう考えても無理でしょう。引用記事にも「出口戦略の難しさ」が指摘されています。永久には続けられないけれど、破滅的事態を伴わずにこの状況を終わらせることは、きわめて難しい。私が65才になるまで、まだまだ十数年あるわけですが、そのとき本当に年金がもらえるんでしょうか、いくらもらえるんでしょうか。いや、もう65才では年金はもらえないのでしょうが、受給開始年齢が引き上げられる、程度のことで済むんでしょうか。なにか、お先真っ暗な将来像しか描けない今日この頃です。
2020.08.20
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山登りが大好きな私も、「高いところが好き」の一員かもしれませんが(自虐)しかし・・・・。新宿駅、大改造でツインタワー世界一の乗降客数がある東京・新宿駅に新たなシンボルが誕生し、都心の風景が一変しそうだ。駅の東西に東京都庁を上回る、高さ約260mの超高層ビルのツインタワーを建設する構想が動きだした。関係者への取材で18日分かった。JR東などの鉄道会社や東京都、新宿区は、2040年代の完成を目指し、大規模リニューアルに着手。19日には駅施設の改良第1弾としてJRの「東西自由通路」が誕生する。新宿駅はJR、私鉄各社を合わせ、1日の乗降客数が約380万人。駅直結のデパートや地下街は事業者ごとに開発を進めたため「ダンジョン(迷宮)」と称される複雑な構造で老朽化も進んでいる。---東西自由通路は、良いアイデアだと思います。今まで、東西の行き来には、大廻りして大ガードを抜けるしかありませんでしたから。でも、260mのツインタワーという発想にはため息しか出ません。遠からず再開発が必要になるとしても、そんな超高層ビルが必要とは思えません。あれだけ超高層ビルが並ぶ街に、さらにもう一つ作る意味なんかあるのかよ、と。いや、いっそのことスカイツリーより高いビル(タワー)を建てるなら、観光の目玉としての経済効果はあるかもしれませんが、260mでは、世界何十位か知りませんが、特に観光の目玉になるほどのものでもないでしょう(もっとも、そんな目玉がなくたって新宿は人の集まる場所ですが)。今の時代にそんなビルを建てて、かけた費用に見合う経済効果が見込めるのか、そのあたりは冷静に算盤をはじいているのでしょうか。いや、公費を使わずに全額民間で建設費を賄うなら、好きにすればいいのかもしれないけれど、どうもこれからの時代に高い建物を作ることをよしとする発想は、冒頭に書いたように「何とかと煙」という印象を抱かずにはいられません。
2020.07.20
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生活保護手続きに1カ月 窓口で渡されたサンマ缶15個4月の生活保護の申請件数が前年から25%増とはね上がった。新型コロナウイルスの影響で仕事を失い、生活が行き詰まる人が増えたためとみられるが、窓口でなかなか申請を受け付けてもらえない例も相次いでいる。4月の完全失業率は前月比0・1ポイント増の2・6%に上昇した。会社から仕事を休まされるなどした休業者は前年同月の3倍以上となる597万人に達した。生活困窮者を支援する「つくろい東京ファンド」に相談した50代の男性の場合、日雇いなどの仕事をしながら都内のネットカフェに寝泊まりする生活をしていたが、新型コロナの影響で仕事がなくなった。5月下旬、東京都のある区の生活困窮者支援窓口に生活保護を申請すると、「支給決定には1カ月かかる」との説明を受けた。当時の所持金はわずか200円だった。1カ月も食べていくことは不可能だ。---ここだけを読むと、福祉事務所の窓口酷い、ということになりますが、実際はどうなのでしょうか。こういう場合、通常は保護申請から支給決定までのつなぎ資金は社会福祉協議会(社協)のお金を使う仕組みになっています。知人の福祉事務所関係者によると、自治体によって、福祉事務所が社協からつなぎ資金を預かっていて貸し出す場合と、社協に出向いてもらって貸し付けを受けてもらう場合があるようです。いくらまで貸すかは、各福祉事務所あるいは社協によって千差万別だそうですが、手持ち金200円で保護申請して、この種のつなぎ資金を一切貸さない、というところは、普通はないはずです。また、「1か月かかる」(正確には30日以内)というのは、法的にグレーゾーン。法的には2週間以内に決定しなければなりません。やむをえない事情がある場合には30日まで延長することができる、とはなっていますけど、よほどのことがない限り基本は2週間。ケースワーカー(あるいは面接相談員)も人間なので、「手持ち金200円です」という人に、1か月どころか「保護費渡せるのは2週間後、それまでお金は渡しません」とすら、普通は言いません。できるだけ頑張って何とか早く保護決定するものだそうです。とはいえ、ケースワーカーも魔法使いではありません。法律で決まっていれば自動的に何でもできる、というわけにはいかない。他の保護申請も来た、とか、あのトラブル、この起案、と忙しいときにそういう事態が起りがちで、何とかしたくてもどうにもならない時もあるそうです。それはともかく、普通はできるだけ早く保護決定するべく努力するのに「保護費は1か月後」と言ってつなぎ資金も渡さないなんて、鬼のような対応、と思うかもしれないけれど、私は逆の可能性を考えますね。というのは、知人だって「保護決定までのつなぎ資金なんか渡すかっっっ」って塩対応を取ったことはあると聞きます。そういう気持ちにさせてくれるような申請者は、往々にしているのです。あと、住所不定者(引用記事の場合がそう)は、つなぎ資金を貸すと、そのままドロンしてしまう例が多々あるので、つなぎ資金を貸さないことが多いようです※(ただし、住所不定者には、初めから返ってこない前提で、「バス券」とか鉄道やバスの最低運賃相当額、2~300円くらいを渡す例は多いようです)。社協でも、貸付の条件に、その自治体に転入して(住民票を置いて)×か月以上というので、住民票のない人には貸しません。無料低額宿泊所に入れば、食事が出るので、保護決定までくらいは何とかなる。それなのに「施設は嫌だ、今すぐドヤに入れろ」などとゴネられると、「ああそうかい、じゃあ勝手にして」という気分になることもあるとか。※社協から預かっているつなぎ資金はあまり多くないので、持ち逃げが多発すると、次に来た申請者に貸すつなぎ資金が欠乏してしまうのです。ケースワーカーや面接相談員も人間なので、相手の行動次第で鬼になることもあれば神になることもある、ということでしょうね。
2020.07.03
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株価急落 日銀が市場に5000億円資金を供給新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な株価の急落が続いているため、日銀は市場の動揺を抑えるため13日午前、5000億円の資金を市場に供給すると発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済の先行きへの懸念が強まり、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が過去最大の値下がりとなったほか、東京市場でも日経平均株価が一時1800円余り下落し1万7000円を下回る水準に急落しています。こうした中で日銀は、午前9時30分に国債を買い入れる形で金融市場に5000億円の資金を供給すると発表しました。今月2日と3日に同じ方法で資金供給することを発表していて、大量の資金を供給することで市場の動揺を抑えたいねらいです。日銀は、株価の下落に歯止めをかけるため数多くの株式をまとめてつくるETF=上場投資信託の買い入れも積極的に行い、今月2日以降12日までに合わせて5100億円を市場に投じています。---これ以外にも、いろいろと経済対策の話が出ています。一般論として、それらの対策が悪いものだとは思いませんが、今回のこの事態に対して解決策になるのかは謎です。11年前、リーマンショックの時は、リーマンブラザーズの破綻から生じた金融危機が原因でした。超単純化すれば、企業がいっぱい倒産したので株価が下落してお金が無くなった。今回は、この事態が続けばいずれそうなるでしょうが、現時点では企業がいっぱい倒産してお金が無くなったわけではありません。お金はあるけれど、自粛自粛で、人々がお金を使いたくても使えない状態になってしまった。だから原油価格も下がり、経済も回らなくなりつつある。そこにいくら資金を投入しても、「お金があっても使えない」状態をなんとかしない限り、根本的には解決しないのではないでしょうか。もちろん、個別に見れば、倒産必至の企業が倒産を回避する、などで「お金があっても使えない状態からお金がない状態へ」の移行を食い止める効果が、皆無とは言えないでしょう。しかしそれもかなり限定的じゃないでしょうか。そして、米国はイギリス以外のヨーロッパ諸国からの入国を30日間差し止めるというし、オリンピックをはじめとした大規模スポーツイベント、音楽やエンターティメント、旅行、交通運輸、あらゆる方面で経済活動が止められており、その状態が回復する見込みも当面なさそうです。実際、私の周囲のプロの音楽家など、猛烈に影響を受けまくっていますからね。ずっと以前、当ブログを開設した直後にリーマンショック騒動があり、そのとき、2008年の12月24日に家族で日本橋のデパートに行ったら、クリスマスイブにもかかわらず、店内がまつたくガラガラで、衝撃を受けたことがあります。日本橋の某デパート昨今はお店などに入っても明らかにお客が少ないと感じることが多く、この時のことを思い出して慄然とします。このままいけば、いや、もうそうなっているのかもしれませんが、リーマンショック級かそれ以上の事態でしょう。アベノミクスは、いつかは破綻するとは思っていましたが、まさかこんな経緯でそうなるとは予想していませんでした。アベノミクスだけではなく世界経済がまとめてひっくり返りそうな雰囲気ですが。※株価の比較で言うと、今回の暴落は2月21日に2万3千円台から昨日3月13日には一時1万7千円を割り込むまで、3週間余りで6000円以上も下落しています。リーマンショックの時は、2008年9月26日に1万2千円台から10月28日には一時7000円を割り込んでいるので、1か月余で5000円の下落です。つまり下落額はすでにリーマンショックを超えています。もちろん、元の株価が違うので、下落率は現時点ではまだリーマンショックの方が上です。でも完全にリーマンショックに匹敵する暴落ぶりだし、今回ここで下げ止まったかどうかも、まだ分からないですからね。私個人としては、株なんか一切手を染めていないので(手を染めなくて本当によかった)何の実害もありませんが、仕事上は影響大ありだし、私の将来の年金は、相当溶けちゃっただろうなあ・・・・・。
2020.03.14
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孤独死、40~50代が2割の衝撃 不安定な雇用影響か1日に1体以上、死後1カ月あまりが経過した遺体が見つかる――。統計データがないことから、実態把握が困難だった孤独死。だが大阪府警が初めて実施した調査により、深刻化する実態が明らかになった。識者らは、国がこうした調査に取り組む必要性を訴える。大阪府南部の団地で昨年1月、やせこけた80代男性の遺体が見つかった。ポストにたまっていた新聞に別の住人が気づいたが、死後約1カ月経過。妻に先立たれ、近所づきあいは乏しかった。府南部のアパートで昨年11月に見つかった70代男性の遺体は激しく傷み、死因は不詳だった。室内には9カ月前に賞味期限が切れた食品があり、このころに亡くなった可能性がある。遺族は「3年ほど会っていない」と府警に説明した。大阪府警は昨年1年間に事件性がなく屋内で死亡し、死後2日以上経過して見つかった独居者(自殺含む)2996人について調べた。うち死後1カ月以上たって見つかった遺体は382体。介護現場の経験がある淑徳大学の結城康博教授は「臭いで気づくまで発見されなかったということ。周囲の無関心さ、孤独死への無関心さがあらわれている」という。382体のうち男性は321人で、女性の61人に比べ5倍以上。高齢者の孤立問題に詳しい河合克義・明治学院大学名誉教授は「これまでは男性が働き、女性が家庭にいるというパターンが多かった。その分女性は地域社会でつながりを持てるが、仕事ばかりの男性は、定年後に孤立しているのでは」と指摘した。年代別にみると、70代男性が全体の26・4%となる792人で、世代別では最多。一方で、65歳未満は29%(868人)。孤独死が高齢者だけの問題ではないことを物語っている。「働き盛り層」とされる40代が159人、50代が392人と合わせて全体の18・4%にのぼった。40代はバブル崩壊後の就職氷河期の影響で非正規雇用を余儀なくされる人も多く、また50代がリストラ対象となっているケースも目立つ。こうした雇用の不安定さが影を落としている。---他ならぬ私自身、ゴミ屋敷とか孤独死の現場は、知らないこともない世界ですけど、人が死んだあとの匂いというのは、一度経験すれば二度と忘れないものです。そういえば、福祉事務所関係の知人も、多分私よりそういう経験が豊富なのかな?同じことを言っていましたが。人が死んだ後に匂いは、あからさまにいってしまえば「腐った魚のにおい」。魚屋でサンマかイワシでも買ってきて、夏なら1~2時間常温で放置しておけば、そっくりのにおいを再現できます。個人的には、台所の三角コーナーの生ゴミをうっかり捨て忘れると、それとそっくりなにおいを発して、ギョッとすることがあります。ただ、イワシやサンマを1尾放置して(三角コーナーの生ごみも)発するにおいは、せいぜい周囲1メートル以内のことに過ぎません。しかし人間の体はそれよりずっと大きいので、発するにおいも強烈です。私の経験では、木造はもちろん鉄筋、鉄骨の集合住宅でも、上下階、屋外10メートル先くらいまでは匂いが広がっていることがあります。それで、私も引用記事にあるような、いやそれ以上の印象を抱くのです。「臭いで気づくまで発見されない」とありますが、それどころか「この臭いなのに、周囲の人は何も思わなかったの??」と思ったこともあります。まさしく、近隣関係の希薄さを体感してしまいました。女性より圧倒的に男性の方が孤独死が多いとのことですが、確かに私の経験上も、女性の孤独死は遭遇したことがなく、すべて男性です。いざとなると、男は弱いのかもしれません。そして、孤独死は必ずしも貧困層だけが陥るとは限らないようです。私自身はどちらかというと貧しい人の孤独死しか見たことがありませんし、その種の経験豊富(?)な福祉事務所関係の知人も当然そうです。でも、世間一般的にはお金は持っているのに孤独死は珍しいケースではないようです。いや、広い意味ではお金は持っていても人間関係は貧しい、ということになるのかもしれませんが。いわゆるゴミ屋敷なども同様で、金銭的には案外貧困ではない例が少なくないようです。確かに、賃貸住宅(公営住宅を除く)でゴミ屋敷にすれば追い出される可能性が高いので、ゴミ屋敷状態を長期間続けられるの人は、持ち家である可能性が高そうです。孤独死はその後がまた大変です。鍵を閉めた室内で死んでいれば身元は歴然としているように思うのですが、警察はそういう場合に必ず歯科通院歴があれば歯型で、なければDNA鑑定で身元を特定します。基本的には親子。兄弟でも可能なのかは知りませんが、それ以上遠縁では無理のようです。該当者に連絡を取るのに時間がかかるし、毛髪などの採取にこぎ着けても、鑑定結果が出るまでに1ヶ月近くかかることが多いようです。話によく聞く「行旅死亡人」の場合は、本人の身元か分からない、ということになります。ホームレスの行き倒れが多いでしょうが、すべてがそうとは限らないようです。アパート普通に暮らしていても、孤独死後に身元が判明しなかった、という例もあるのだと聞きます。相当まれでしょうけど。孤独死を出した部屋は「事故物件」となり、アパートなどは借り手が付かなくなります。それ以前に、死後長期間経過して腐敗した遺体のあった部屋は、床などに腐った体液が染み出したりして、床を張り替えるくらいの工事をしないと人が住める状態にならない(それでも臭いは完全には消えないことがあるようですが)という話も聞きます。大家さんにとっては大損害です。だから、孤独死のリスクが高いと思われがちな独居の高齢者に部屋を貸したがらない大家が少なくありません。ところが、実際には40代から孤独死がある、というのは衝撃です。ただ、言われてみればあるかもしれない。私は家族がいるので、とりあえず孤独死の心配だけはないと思いますが、それも相棒が生きていて同居している限りの話です。子どもは、いつか独立するでしょうからね。20年後は多分まだ大丈夫と思いますが、30年後は私か相棒のどちらかは一人暮らしかもしれない。いや、そんな先のことを考えても仕方がないか。いずれにしても、高齢化の進行と単身世帯(特に単身高齢世帯)の増加によって、孤独死は今後も増えることはあっても減ることはないのだろうと思います。
2020.02.08
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訪日外国人が増えたのは、日本が「格安天国」だからではないか次の時代の日本の有力産業として観光業があげられている。訪日観光客数は2012年から増加が続き、2015年にはインバウンド(海外から国内へ)がアウトバウンド(国内から海外へ)を逆転。2018年には、3100万人超の外国人観光客が訪れている。観光地化する日本。自分の国に世界中から人が集まってくることは、それだけいい意味で興味を持たれているからだが、喜んでばかりいられない側面もある。数年前、町内にオーストラリア資本のカフェがオープンした。このお店で食事をとると結構なお値段になる。店内の他の日本人客らも、おそらく「え?あの値段でこの内容……」と戸惑っていたのだと思う。ところが、この店には外国人観光客、特に白人のお客さんが多いのだが、彼らは見るからにリラックスしている。どうして外国人客らはリラックスしているのか。彼らにとって、別にお高い店ではないからだ。食べ物以外のちょっとした買い物だってお得である。品揃え充実でお値段控え目のコンビニはどこにでもあるし、100円ショップという究極の激安店も存在する。家電量販店に外国人客が多いのも、高品質低価格の商品が多いからだ。20年、30年前は、日本は物価が高く、お金のかかる旅行先だった。それがこの間に、物価の安い国に成り変わっていた。このことはアジア各国を旅行しても実感できる。日本人にとって、何でも安くて豪遊できたアジア旅行も、そう言えるほどではなくなった。なぜか。世界中のほとんどの国で緩やかなインフが起きていたからだ。物価も上がり、各国民の所得も増えた。対して日本はずっとデフレ。モノの値段もたいして上らず、所得も増えない。OECDによると、時給の1997年から2018年の上昇率は、韓国167%、イギリス93%、アメリカ82%、フランス69%と各国ともアップ。唯一、マイナス8%とダウンしているのが日本だ。飲食店は安い労働力を使って格安の料理を提供できるし、他の各店舗も同様にお得なサービスやモノを売ることができる。日本人にはその実感がないが、外国人からしたら美味なのに安い、サービスがいいのに安いお買い得な国なのである。あんまり「安い安い」と言われると、「俺たちもしかして後進国になっちゃったの?」との不安が頭をよぎる。正確には、後進国ではなく、後退国なのだろう。いわば経済後退国。まだ一応先進国の仲間であるとはいえ、ほかのみんなが進んでいる間、足踏みばかりしていて、相対的に落ちこぼれちゃった発展停滞国と呼べるかもしれない。(要旨)---外国人旅行者の急増については、当ブログでも何度か触れたことがありますが、私が外国人旅行者の増加を実感し始めたのが2015年のことですが、この年の訪日外国人数は1900万人、それが昨年は3100万人ですか。このまま行くと、5年後くらいには4000万人か?それ自体は良いことでしょうが、外国人旅行者が増えた背景には、いつの間にか日本が「物価の安い国」になっていたから、というのは、なかなか鋭い指摘であるように思います。つまり、簡単に言えば日本の物価と賃金がほとんど上がらず、かつては物価の安かった国にどんどん追い越されてしまったため、今では外国人にとって日本が(相対的に)安く旅行を楽しめる国になった、ということです。経済後退の副産物、という言い方もできそうです。もちろん、それに付随して治安がよい、町がきれい(衛生的な意味)、交通機関の時間が正確、といったこともメリットではあるでしょうけど。私自身も、かつて1988年から2002年にかけて、15年間で7回(均せば2年に1回近く)海外旅行に行っていたのに、2002年の新婚旅行を最後に、経済的に海外旅行が不可能だったわけではないのですが、子育てとか仕事の事情など時間的な制約で、もう17年海外には行っていません。(もっとも、この間に相棒は2回海外に行っていますが)更に言えば、私が子どものころは、旧国鉄が毎年のように運賃値上げを繰り返していたし、それ以外もいろいろなものの値段がどんどん上がっていった記憶しかありませんが、現在は、JRの運賃なんて(他の私鉄も同様)、消費税率のアップ時を除くと、もう長いこと上がっていません。電子機器や家電製品なんて、値段が上がるどころか、待てば値段が下がるだろう、という状態です。今上がるのは消費税率と社会保険料だけです。日本と中国のGDPが逆転したのは2010年のことですが、それから9年、日本は停滞を続け、中国は高成長を続けており、あっという間に中国のGDPは日本の2倍を超え、もうじき3倍になりそうです。今はそれでも日本の物価は(給与水準も)「先進国の中では安い」というレベルですが、あと20年もすると、NIES諸国と言われた新興国にも抜かれてしまうかもしれません。中国の経済成長もいつまでもは続かないと思いますが、かといって、中国が没落すれば日本が代わりに再浮上する、ということもまたありそうにありません。むしろ、中国が沈めば一蓮托生で日本も沈没するしかなくなるでしょう。経済的な面で、どうにも日本の将来に明るい展望は開けそうにありません。
2019.06.06
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24時間のコンビニが「ブラック化」する構図大阪のとあるセブンイレブンの店舗が、本部の指示に反して24時間営業を中止したことがメディアで大きな話題を呼んでいる。午前1時から6時までは店を閉め1日19時間営業に変更した理由を、オーナーは「人が足らず(店が)回らない。時給を上げるのも限界がある。このまま24時間営業を続ければ、私が倒れるしかない状態だった」と語っている(朝日新聞 セブンイレブン「24時間営業限界」 FC店と本部対立)。消費者からしてみれば、24時間365日いつ行っても確実に空いているほうが便利だと感じる。しかし、まさにその24時間営業が、オーナー、店長、アルバイト全員に対するブラックな働き方を強要しているのである。ーーー今を去ること四半世紀前、私はあるスーパーマーッケットのチェーンで働いていました。最初は店舗で、それから東京本社にもいて、4年で退職して転職しました。その頃は大規模店舗法の縛りで、スーパーの設置や営業については、地元の商店街との合意が求められていたため、各スーパーの営業時間は比較的短いものでした。私がいたお店は、確か10時開店7時閉店、夏冬の繁忙期に限って30分延長だったと記憶しています。店休日も、12月など繁忙期をのぞけば月に2日あったように記憶しています。時代は変わり、今は私のいたスーパーの営業時間はなんと夜中の1時です。(同じ会社でもほかの店舗は10時まで営業が多いようですが)。当時だってスーパー業界は、今でいうブラック労働(という言葉は四半世紀前はまだなかったけど)の巣窟でしたが、あの会社に勤めていたのが今の時代じゃなくて、まだよかったと思います。それでも、多くのスーパーには開店時間と閉店時間がありますが、しかし24時間営業のコンビニには、それすらありません。確かに、24時間いつでも営業しているコンビニの存在は、生活を便利にしてくれます。しかし、その便利さが、どれほどの負担の上に成り立っているのかも、考える必要はあるでしょう。働くものにのしかかる、長時間労働という大きな負担、一晩中つけっぱなしの照明。その一方で、お客さんと売上はどうでしょう。私は夜中にコンビニに行くことは基本的にありませんが、近くを通過することはあります。それから、山登りに行くときなどは、早朝(朝5時頃)にコンビニに行くことはあります。そういうときは、まずガラガラです。私以外のお客さんがいるのを見ることは、ほとんどありません。一部繁華街などを除けば、深夜の時間帯の営業で、採算がとれているようには、とても見えません。24時間営業は便利と言っても、実際に真夜中に買い物にいく人は、繁華街など一部例外をのぞけばそう多くはありません。あれば便利、ではあっても、なければ困る、というほどではありません。どうとでもなることです。しかも、都市部なら、コンビニはあちこちに林立しているので、そのうち5店に1店くらい営業していれば、ちょっとした不便すらないのが現実です。その程度の「ちょっとした便利さ」のために24時間営業を維持するのは、私にはサービス過剰としか思えません。しかし、引用記事の先の方を読み進むと、それでも、セブンイレブン本部が24時間営業を強要する理由が分かります。粗利のうちの半分を本部がロイヤリティとして持って行く仕組みなのだそうです。売上から仕入れ原価を引いただけの粗利の半分を本部が持って行き、残りの半分からお店が人件費や光熱費等の経費を払う、つまりよほど大量の廃棄ロス(売れ残り)を出して粗利の時点でマイナスになるようなことがない限り、1時間に売上が100円にすぎなかったとしても、営業している方が本部の儲けが多くなるわけです。それにしても、このような仕組みで24時間営業の負担はすべてフランチャイズ店に押しつけ、利益だけを本部が得る仕組みで、それをいやだと思っても、契約を盾にして1700万円もの違約金で脅して、24時間営業を強いるのは異常なこととしか言いようがありません。これ、本当に24時間営業をしないことを理由に契約解除して、違約金1700万円を請求したら、裁判で公序良俗違反で契約無効になるのでは、と思います。今までそんな裁判は行われたことがないから、法的妥当性が問われなかっただけじゃないか、と。素人なので、間違いかもしれませんが。いずれにしても、セブンイレブンに限らず、各コンビニとも、営業時間について、各フランチャイズ店オーナーの裁量に任せ、24時間営業を強制しないようにすべきです。そうでなければ、将来的にコンビニを開業しようというオーナーはいなくなってしまうでしょう。
2019.03.05
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<裁量労働制>削除に「残念」 財界から失望の声安倍晋三首相が、今国会に提出する働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大に関わる部分を削除する方針を表明したことについて、実現を求めていた日本商工会議所、経団連、経済同友会の財界3団体トップからは1日、失望や遺憾の声が相次いだ。日商の三村明夫会頭は1日の記者会見で「非常に残念だ。政府は(裁量労働制について)実態調査をきちんとやったうえで再度法案を提出すると理解しているので、できるだけ早く実現してほしい」と、安倍政権に注文をつけた。三村会頭は「働き方改革は日本の成長戦略の一丁目一番地。労働者が自分の生活パターンに合った働き方を求め、企業がいろんな働き方の選択肢を提供するものだ」とメリットを強調。労働側には「大企業が裁量労働制の拡大で賃金コストの圧縮を目指している」との批判もあるが、三村会頭は「企業が労働者をどんどん働かせるために導入することはないと思う。残業代をケチるために裁量労働制を考えている経営者はゼロとは言わないが、非常に少ないんじゃないか」と反論した。経団連の榊原定征会長は1日、「柔軟で多様な働き方の選択肢を広げる改正として期待していただけに残念に思う。今後、新たな調査をしっかり行い、国民の信頼と理解が得られるよう全力を尽くしていただきたい」との談話を発表した。経済同友会の小林喜光代表幹事は「世界と比して低い生産性の向上が求められる中、今回の事態は極めて遺憾だ」などとするコメントを出した。---働き方「改革」関連法案から裁量労働制の拡大を削除すると報じられています。安倍政権の成立以来、安倍のやろうとすることがみんなとおり続けてきましたが、定額働かせ放題の拡大だけは半ば食い止めることができた、ということは、国政の分野で久しぶりに、本当に久しぶりにわたしが「朗報」と感じることのできるニュースでした。ただし、「半ば食い止めた」という言い方なのは、まだ「高度プロフェッショナル制度」が残っているからです。現状では、より多くの働く人に影響が出るのは裁量労働制のほうです。高度プロフェッショナル制度のほうは、年収要件が1075万円以上、対象職種も限定されていることから、対象者は現状では非常に少ない(1075万円もの年収を得ている人のほとんどは、経営者、役員、管理職、特別な技能を持つ人に限られ、おそらく現状でも残業手当をもらっている人は稀でしょう)。したがって影響も裁量労働制の拡大よりは少ないと思われます。ただし、高度プロフェッショナル制度の対象年収は、法律の条文には明示されません。省令で定めることとなっているので、いったん法案がとおってしまえば、年収要件は国会での法改正によらずに変えられます。なので、今は対象年収が1075万円以上でも、いったん法改正がとおってしまえば、それを引き下げるハードルは、法改正よりはるかに低いものとなります。裁量労働制と高度プロフェッショナル制度、違いは、裁量労働制は一応は残業手当がある(「みなし残業」で、何時間残業しても、事前に定められて時間数しか残業していない扱いになるが)のに対して、高度プロフェッショナル制度は、そもそも残業手当はない、という点にあります。定額働かせ放題、という本質は両者に差はありませんが、その定額の中に、定額の残業代が入っているのか、残業代という項目がまったくないか、という違いです。さて、しかし引用記事ですが、「労働者が自分の生活パターンに合った働き方を求め、企業がいろんな働き方の選択肢を提供するもの」という商工会議所会頭の言い分は、とても真に受けることはできません。企業の本質は、利潤を得ることにあります。もちろん、「労働者が自分の生活パターンに合った働き方を求め、企業がいろんな働き方の選択肢を提供する」ことに、企業がまったく無関心、というわけではありません。しかし、企業は慈善団体ではないのですから、裁量労働制の拡大をそこまで強く要求する理由が、そんなことであるわけがないのです。副次的にそのような効果「も」期待できる、という程度のことに過ぎず(ただし、本当にそのような効果が期待できるとは考えにくいですが)本質は、人件費を削減したい、ということでしょう。「残業代をケチるために裁量労働制を考えている経営者は〜非常に少ないのではないか」と言うのですが、その根拠は何ら示されていません。だって、現実に、今の制度の元でさえ、多くのサービス残業があるではないですか。別に、経営者が明確な悪意を持って労働者をこき使っている、とは言いません。それでも不払い残業は存在するのです。時給いくらのパート・アルバイトは別にして(それですら、不払い残業は皆無ではない)、月給制で働いている人で、不払い残業がまったくない、すべての残業代が保障されている、という人は、かなり少ないでしょう。もちろん、程度には差があるにしても、です。そして、安倍の提示した、誤ったデータではない方の調査によれば、裁量労働制で働く人は、そうでない人と比べて、平均的に見て労働時間が長いという調査結果が出ています。この二つの事実を並べれば、経営団体が裁量労働制を拡大したいのは、人件費を圧縮したいことが最大の動機であり、また、裁量労働制が拡大されれば、その思惑のとおりになる、つまり労働時間は変わらず給料が減るのか、給料が変わらず労働時間が増えるのかはともかく、給料は減らされることになるのは確実です。そうなる可能性が、ひとまず(あくまでも、ひとまず、でしかありませんが)遠のいたことは、良かったと思います。それにしても、今回の騒動で思ったのは、「連合」の中央部は何をやっていたのか、ということです。政府との取引で高度プロフェッショナル制度、裁量労働制を認めようとしたことは広く報じられているところです。その時点では、その結果、連合本部に対して抗議のデモ隊が押しかける事態まで起きています。正直言って、その時点では、曲がりなりにも労働者の代表であるはずの人たちがこんな態度を取るようでは、もう裁量労働制と高度プロフェッショナル制度はとおってしまったも同然、と私は思ってしまいました。が、そうはならなかった。この間、まことに残念なことですが、個々の労働組合は分かりませんが、ナショナルセンターとしての連合が、何らかの指導的な役割を果たしたようには、まったく見えません。もはや、連合は労働者を代表する意思を失ってしまったのかな、と、そんなことを思ってしまいました。
2018.03.02
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条件異なる調査結果を比較 厚労省働き方改革をめぐり、安倍首相が撤回した、国会答弁の基になったデータについて、厚生労働省は、条件の違う調査結果を比較していたことを認めた。安倍首相は先日、裁量労働制で働く人の労働時間について、「一般労働者より、短いというデータもある」としていた、過去の答弁の不備を認め、撤回・陳謝した。厚労省は19日、この答弁の基となった、5年前の調査のデータに関する調査結果を公表した。それによると、一般労働者の労働時間は、1カ月のうち、最も残業の長い日のデータを使う一方、裁量労働制で働く人については、単に1日の労働時間について聞いた結果を用いており、裁量労働制の労働時間の方が、短くなりやすい不適切な比較がなされていた。加藤厚生労働相は、「一般労働者と裁量労働制で、異なる仕方で選んだ数値を比較していたことは、不適切でありました。深くおわび申し上げます」と述べた。19日の衆議院予算委員会では、加藤厚生労働相がデータの不備について撤回する1週間前に把握していたことを明らかにしたのに対し、野党側は抗議して、委員会を退席するなど徹底抗戦の構え。野党6党は19日、国対委員長会談を開き、政府に対し、働き方改革法案の提出見送りを求める方針で一致した。 ---恣意的なデータを用いて「裁量労働制の方が労働時間が短い」という結論を出そうとして、それがバレちゃった、というお話です。だいたい、裁量労働制の拡大は、経済界(経営者)が要求していることです。企業経営者がどういう意図でそのような要求を掲げるのか、と考えてみればよいのです。社員の労働時間を減らしたいとか、給料をできるだけ増やしたいとか、そんな意図で彼らが裁量労働制の拡大を主張するわけがないのです。人件費を少しでも減らしたいと考えるのが大方の企業経営者です(もちろん、それを非常識な手法で強行したいとまで考える経営者はわずかであるにしても)。だから、企業はなかなか賃上げをしようとしないのです。裁量労働制の拡大も、当然そのほうが人件費が削減できると考えるから要求しているに決まっているじゃないですか。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査では、1ヵ月の実労働時間の平均は、専門業務型裁量労働制で206.5時間、企画業務型裁量労働制で197.2時間、通常の労働時間制で185.0時間であり、裁量労働制の方が労働時間が長という結果が出ています。裁量労働制の問題点は、過去にも記事を書いたことがあります。日本でも、すでに限定された職種で裁量労働性が導入されています。その建前は、時間管理をされず労働者自身が自由に時間管理を行う働き方ですが、実際にはたいていの場合、「名ばかり裁量労働制」で、時間管理の裁量権が労働者にはないのが実態です。以前の記事でも紹介しましたが、前述の同じ調査結果によると、裁量労働制にも関わらず、専門業務型裁量制の42.5%、企画業務型裁量制の49.0%の人が「一律の出退勤時刻がある」と回答しています。要するに、半分近くは「裁量労働制」と言いつつ時間管理されているのです。現状は、裁量労働制が認められるのは、専門性、特殊性が高い、限られた職種のみです。それでもこんな実態だというのに、裁量労働の対象を広げれば、実態はまったく裁量労働ではないのに、残業手当を払わないだけの、名ばかり裁量労働がさらに増殖していくことは必至です。仕事とは他者に何かを与えて、対価をもらうのが本質です。程度の差はあっても、他者との交渉のない仕事などありえません。また、雇用-被雇用の関係においては、期日までに成果を出せば、過程は問いません、などという仕事は、世の中にはほとんど存在しません。そもそも、「成果」自体が時間と不可分である仕事が多いし、そうでなくとも、雇い主、あるいは顧客との連絡、報告、協議は絶対に必要です。となれば、裁量労働などというお題目を掲げたところで、給与所得者である限り、勤務先や顧客、同僚や上司が稼動している日時に拘束されることは、避けようがありません。成果主義、と言えば聞こえが良いものの、成果を図る共通の物差しなどありません。同じ企業の中でも、部門により担当により、成果の物差しは異なります。まして、いわゆる管理部門など、何をもって成果とするのか。競争原理至上主義者たちは、労働の対価を時間という物差しで測るのは古い、と叫びます。ですが、古い(けれども社会に定着している)、というのはそれだけ物差しとして優れているということです。確かに、時間というものさしは万能ではありません。非合理的な部分が皆無とは言いません。しかし、世の中には万能の物差しなど存在しないのです。そういう意味では、労働の対価を金銭で支払う、ということ自体、報酬の支払い方として万能とは限りません。物々交換、バーター取引の方が優れている場面も皆無ではありません。それでも、現代社会において金銭より優れた支払い方法はないので、給与の支払いは金銭によってすることが定められているのです。時間による労働量の測定もそれと同じです。万能ではないのは確かです。が、それよりマシな測定方法は存在しない以上、時間によって労働の成果を測定することが基本原則となるのは当然のことです。そうである以上は超過勤務に残業手当を出すのも当然のことなのです。裁量労働制の拡大は、そのような雇用の基本原則を破壊するものであり、人件費を安くしたい企業経営者にとってはメリットがあっても、働く人にとって、概ねデメリットの方が遥かに大きいものと言うしかありません。
2018.02.23
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築50年「住み心地良かった」 札幌・火災の施設11人が死亡した札幌市の「そしあるハイム」の火災。関係者によると、建物は生活困窮者の就労支援が目的で、警察からの連絡などをもとに受け入れを決めていたという。居室は1人部屋で、浴室やトイレは共同、食堂もあった。家賃は月3万6千円。月2万円を追加すれば、3食付きになった。ほかに光熱費などもいるという。10年ほど前から入居している人もいれば、火災の数日前から暮らし始めた人もいた。建物に管理人がいるのは午前7時半~午後5時半。夜間は入居者だけになり、玄関の鍵は入居者がしめていたという。元スタッフによると、希望に応じて食事を提供し、病院の送迎や買い物の手助けなどもしていた。入居者は運営側で面談をするなどして決定。8年前から2年ほど住んだという札幌市東区内の男性は「8畳の部屋に住み、食事の提供も受けた。住み心地は良かった」と話す。札幌市消防局などによると、建物は50年ほど前に建てられ、2004年までは旅館として使われていた。(以下略)---また悲しい事故が起こってしまいました。火災を起こした施設は、「自立支援住宅」で、入居者の大半が生活保護受給者だと報じられています。しかし、生活保護に詳しい知人に聞いても、東京23区には、路上生活者の就労支援を行う自立支援センターというものがありますが、それとは違うもののようだし、「自立支援住宅」というものは聞いたことがないそうです。そうしたら、今朝の毎日新聞のによると、火災のあった自立支援住宅「そしあるハイム」は、法的な位置づけがあいまいで無届けだった、とのことです。厚労相は、「無届の無料低額宿泊所か、無届の有料老人ホームの可能性がある」として調査を行うということです。確かに、3食提供というところからは、実質的には無料低額宿泊所のようなものだった、と言えそうです。家賃は3万6千円だそうですが、調べると札幌市の生活保護の住宅扶助上限額は、単身世帯の場合3万6千円なので、完全にそれに合わせた額、つまり生活保護が前提の施設であることが分かります。3食提供で2万円だそうですが、他に光熱費や管理費もかかるはずです。この施設の場合どうだったかは分かりませんが、東京の無料低額宿泊所の場合は、3食提供だと、生活保護受給者の手元に残る、自由に使えるお金は1万5千円から2万円程度(法人によって差があるし、保護基準は年齢によっても違うので、それによって差が出ます)と聞いています。なお、札幌は級地区分が1級地2なので、東京23区より、生活保護基準は5千円程度低くなります(70代以上単身世帯だと、1級地1は7万4千円余に対して1級地2は6万9千円余)。その代わり、当然のことながら北海道は東京より冬季加算は高い。東京(冬季加算の区分6区)の冬季加算は2500円ほどですが、北海道(同1区)は1万2千円ほどです。法的位置づけとか、火災対策の面では色々と問題のあった施設であったことは確かだと思いますが、しかし、そういう施設がなかったら、ホームレス寸前の状況の人の住まいを確保できない、というのが現実です。しかも、多分としかいえませんが、この施設は各入所者が8畳程度の個室に住んでいたというので、東京の無料低額宿泊所(たいていは相部屋だそうで)より条件がよく、運営者と入所者の関係もかなり良好だったことが伺えます。だから、「無届だったからひどい施設だった」とは一概に言えないのです。東京だって路上生活で冬を越すのはかなりつらいはずです(特にこの冬は寒いから)。冬場だけ生活保護を受けて施設に入り、暖かくなると姿を消してホームレスになる人もいると聞きますが、北海道では、よほどの装備とスキルがなければ、冬の路上生活など生きていけないでしょう。「こんな無届の施設はけしからん、すぐに閉鎖すべきだ」なんてことを言い出しても、それに代わる、より条件のよい住居はどこにもないので、結局は入居者に路上生活をしろというも同然となってしまいます。そうでなくても、路上生活に陥る、陥りそうな人の中には、社会生活能力や対人関係に難のある人が少なくありません。知人によれば、アパートに入居しても大家や隣人とトラブルを起こして追い出されたり、施設に入っても同様のことを繰り返す人も、稀ではないそうです。そういう人の対応や、行き先探しにケースワーカーは疲弊することが多い、との話です。この施設も、きっと「ここでなければ生活できない」人がいたのだと思います。その一方で、ここでもトラブルを起こして出て行ったり追い出されたりした人も、多分いたでしょうが。一方では日本中に空き家が増えていながら、その一方では住む場所が確保できない人が少なからずいて(本人自身に一人暮らしで生活する能力が欠けている、という面はあるけれど)、なんとも非合理な話ですが、これが現実です。現実的には、この種の無届施設を少しでも無料低額宿泊所など無届ではない施設に移行させる(ために必要な設備、手続き、入所者の処遇などを整える)ように図っていくしかないのでしょう。
2018.02.03
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生活保護費67%の世帯が減額 18年10月から厚生労働省は22日、生活保護基準の見直しで世帯類型ごとの影響額を発表した。食費や光熱費など生活費相当分(生活扶助費)に子育て世帯や母子世帯に対する加算を加えた受給額は、推計で67%の世帯が減額となった。見直しは5年ごとに実施。受給者以外の低所得者層の消費実態と均衡するよう算定した生活費は当初、最大13.7%減だったが最終的には最大5%の減額に抑えた。来年10月から3年かけて段階的に引き下げ、国費分で年160億円(1.8%)を削減する。母子加算なども含めた受給額が減額となる世帯の割合は子どものいない世帯で69%と高く、特に単身世帯では78%に上った。子どものいる世帯では43%、母子世帯は38%だった。世帯類型ごとの影響額を生活費単体でみると減額は最大月9000円で、増額は1万2000円。町村部よりも都市部の世帯で減額になる傾向が強く、40代夫婦と子ども2人世帯▽子ども2人の40代母子世帯▽50代単身世帯▽65歳と75歳の高齢単身世帯などで最大5%減となった。町村部などの子ども1人の母子世帯では13.4%増となる。(以下略)---少し前に、この問題についての記事を書きましたが、その中で、私は大要として、母子加算の存在理由は不明確であること、一方で単身世帯の生活保護基準は現状でもギリギリであることを指摘しました。ところが、報道される具体的な削減案を見ると、案の定、大都市圏(おそらく、級地区分1級地1ということでしょう)では、単身世帯(60代と70代のみ例示されているので、それ以外の年齢については不明ですが)の削減幅が最大となっているようです。一番生活保護基準が厳しいと思われる世帯構成で一番削減幅が大きい、ということになっています。もっとも、そうなるであろうことはある程度想像がつきました。というのは、母子加算について色々と厳しいことを書きましたが、生活保護受給世帯数に占める母子世帯の割合は、6%から7%というところです。(社会保障審議会資料より)そこを削っても、全体としての削減幅はたかが知れているのです。一方、同じ資料によれば、高齢者世帯の割合は5割を超えています。また、上記の資料から、保護受給人員を受給世帯数で割り返すと、1世帯あたりの人員は1.3人になります。知人の福祉事務所関係者から、生活保護受給世帯の7~8割は単身世帯と以前に聞いたことがありますが、このデータはそれに符合します。つまり、生活保護受給世帯の圧倒的多数は単身世帯なのです。だから、生活保護費の総額を削減ありきで考えれば、単身世帯の生活保護費を大きく引き下げることは必須、ということになります。一方で、大都市圏で生活保護基準の引き下げ幅が大きく、地方では削減幅が小さい、あるいは増となる場合もあるとのことです。確かに、今の時代、大都市と地方の物価の違いは、家賃を除けばそれほど大きくないと思われるので、大都市と地方の生活保護基準の差を縮小していくことは、方向性としては間違ってはいないと思いますが、これも、受給者数の多い大都市の生活保護基準を削ること優先で考えたのかな、と思えてしまいます。いずれにしても、70歳代単身世帯の生活保護基準約7万5千円というのは、家賃は別途住宅扶助として支払われること、医療費はかからないことを考慮してもなお、ギリギリの金額と思わざるをえません。削減額たった160億円のために、そこまでやる、というのは非常に残念な話です。追記新しい保護基準の、もう少し詳しい内容を教えてもらいました。それによると、単身世帯の基準は厳しい引き下げである一方、子どものいる世帯については、必ずしも引き下げ一辺倒ではなく、世帯の状況によっては基準が引き上げられる例も少なくないようです。純然たる生活扶助の基準はすべて引き下げで、母子加算も減額になりますが、その代わり児童養育加算が中学生までから高校生までに拡大されるなど増額の変更もあるので、特に高校生のいる世帯では基準の引き下げはごくわずかにとどまり、あるいは状況によっては増額になる場合もありそうです。
2017.12.24
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<厚労省>生活保護、減額を最大5%に 批判配慮、幅を縮小厚生労働省は、来年度からの生活保護受給額の生活費相当分に関し、減額幅を最大5%にとどめる調整に入った。2~3年かけて段階的に実施する方針。厚労省は最大13%減の見直し案を示しているが、与党や有識者から大幅減額に対する批判が出ていることに配慮した。ただし、厚労省は保護費の減額分を、生活保護に至る直前の状態にある生活困窮者の支援拡充に充てる方針。受給額の減額を抑えると生活困窮者向けの予算が減ることも踏まえ、年末の予算編成で最終決定する。~受給額は5年に1度、生活保護を受けていない低所得者層の消費水準に合わせて見直している。低所得者層の消費が低迷していることなどから、受給額が多くの世帯で下がる。現在の決め方は、政府が克服を目指す貧困やデフレ、高齢化などの影響を直接受ける。この決め方について駒村康平部会長は「受給額は低い方に吸い寄せられる」と指摘し、政府に見直すよう異例の注文を付けた。厚労省案では子育て世帯のうち「母親、中学生、小学生の3人家族」(大都市部)の場合、今の生活費分の受給額より約1万円少ない14万円台になる。高齢者世帯の多くも引き下げられ、厚労省案通りに見直せば受給水準は中所得層の消費水準の5割台に落ち込む。これまでの部会では「最低生活水準は中所得層の6割を目指すべきだ」との意見が相次いでおり、委員の一人、岩田正美・日本女子大名誉教授は「注意信号だ」と危機感を示した。与党内にも「10%超の大幅減額は到底、受け入れられない」との声が上がっていた。~減額される可能性が高い高齢者世帯も不安を募らせる。東京都足立区の都営住宅で1人暮らしをする男性(76)は約10年前に胃がんを患い、手術後も体調不良で働くことができず生活費として月約7万3000円を受給している。医師から野菜や肉をバランスよく食べるよう言われているが「光熱費の節約ももう限界。体調が悪くなったとしても食費を削るしかない」と話していた。---生活保護は、憲法第25条に定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するためのものです。しかし、生活保護の基準(基準生活費)は、「健康で文化的な最低限度の生活にはどの程度の費用が必要か」という絶対評価による経費の積み上げではなく、生活保護を受けていない低所得層の生活水準との対比で決められています。そうすると、多くの人が収入が減って生活が苦しくなると、生活保護制度はその多くの人を助けるために機能するのではなく、基準を引き下げて生活保護の対象者を増やさないように機能する、ということになってしまいます。生活保護の捕捉率つまり生活保護の対象となりうる人のうち実際に生活保護を受けている人の割合は2割程度と言われています。つまり、生活保護を受けられるのに受けていない人も相当多く含まれる※「生活保護を受けていない低所得者層との比較」には問題があるでしょう。※ただし、生活保護の受給条件は収入だけでなく、資産の条件もあります。簡単に言えば、手持ちのお金が生活保護基準の1か月分より少ない(実質的には1か月分の半額)ことが生活保護の要件だそうです。したがって、現在の収入は生活保護基準以下でも、資産の要件で生活保護の対象にならない人はかなり多いものと思われます。というわけで、「総論としては」生活保護基準の減額には大きな問題があるように思います。特に、引用記事の末尾にあるような一人暮らし世帯(必ずしも高齢者に限ったことではありませんが、高齢者世帯が一番保護基準が低い)の生活保護基準は、現状でも明らかにギリギリであり、これ以上の減額は非常に問題です。※※引用記事に生活費として月額7万3000円を受給、とあるのは、おそらく不正確です。東京23区を含む、「級地区分1級地の1」の生活保護基準はネットで調べることができます。これによると、東京23区での70歳以上の生活保護基準(生活扶助のみ)は74630円。しかしこれ以外に家賃(住宅扶助、引用記事の例は、都営住宅なのでおそらく2~3万円)と介護保険料が加わったものが「保護基準」となり、さらに実際の受給額は、この基準から収入を差し引いた額になります。制度に詳しい知人によれば、この人の保護基準は10~11万円くらいで、受給額が7万3000円が事実なら、この保護基準から年金収入が控除されてその額になっているのではないか、とのことです。その一方で、「各論」になると、減額がすべて許されざるものかどうかは、いささか疑問の余地もあるようです。生活保護の母子加算、減額の可能性 厚労省方針厚生労働省は来年度、生活保護を受ける一人親世帯に支給する「母子加算」を見直す方針を決めた。支給水準は現在検討中の生活費をまかなう「生活扶助」の新たな基準額しだいで変わるが、減額される可能性が高い。(以下略)---母子家庭が、一般の世帯より収入が少ないのは、歴然たる事実です。したがって、その差を埋める制度が必要なのは確かなのです。そのための制度として、児童扶養手当(一人親の世帯に、子ども1人の場合月額約4万2千円、2人目以降5千円ずつプラス)があります。しかし、生活保護の母子加算(という名ですが、父子家庭も対象)は、それとは意味合いの異なるものです。母子加算というのは、前述の生活保護基準を、母子家庭だけ高く設定する制度です。つまり、収入が低いから足りない分を補填するのではなく、足りない分プラスアルファを上乗せする仕組み、ということです。前述の基準額表によると、子どもが1人だと22790円(2人目以降プラス1800円)が加算されるようです。母子加算とは別に、子どもがいる世帯には、「児童養育加算」があり、学校の様々な費用に充てる「教育扶助」もあるそうです。それにもかかわらず、同じ子どもがいる世帯の中で、両親が揃っている世帯より母子家庭の保護基準だけを優遇する理由は、いまひとつ明確ではありません。教育扶助や児童養育加算が不足であるというなら、それは母子家庭だけの問題ではないはずです。そういう意味では、母子加算は「守るべき最低限のライン」とは必ずしも言えないのではないか、というのが知人の意見でした。なお、最初の引用記事に「母親、中学生、小学生の3人家族(大都市部)の場合、今の生活費分の受給額より約1万円少ない14万円台」という記述がありますが、これも知人によれば、「住宅扶助も児童養育加算も教育扶助も母子加算も抜いた、裸の生活扶助部分だけの額」とのことです。それらの扶助を加えた現在の保護基準は、都営住宅なら23~24万、民間賃貸住宅なら28万円くらいだろう、とのことです。もっとも、この保護基準の全額が「受給額」ではありません。母子家庭なら仮に母親がまったく仕事をしていなくても、児童扶養手当(子ども2人で4万7千円)と児童手当(同2万円)は受給しているはずなので、前述の基準からこの合計6万7千円を差し引いた額が生活保護の支給額になる、ということです。追記:記事をよく読むと「生活費分の受給額」とあるので、間違いではないのですが、その「生活費」の定義が示されなければ、家賃や教育費も生活費だと考える人も少なくないはずで、非常に誤読を招きやすい記述です。
2017.12.19
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ホリエモン「生活保護世帯への進学支援は『税金の無駄遣い』」 実業家のホリエモンこと堀江貴文氏が、政府が打ち出した生活保護世帯の子どもの大学などの進学支援に対して「税金の無駄遣い」とツイートし、物議を醸している。堀江氏は12月10日のTwitterで「補助金だすとかマジおかしい」「税金で高等教育をあまり役に立たない人に施すのは間違ってると思う」と投稿している。~堀江氏の一連のツイートによると、大学は、一部の人のための教育機関であるべきとみなした上で・成績優秀者には給付型の奨学金制度があること・魅力が薄い、あるいは努力不足などで入学者を確保できない大学が淘汰されないことへの批判といった点から、疑問を提示したようだ。Twitter上では堀江氏に賛同する意見がみられた一方で、「そもそも学歴で判断する社会構造自体から変えるべき」という問題提起や「教育格差を減らすためには良い政策」といった反論もみられた。しかし、NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長は~成績優秀者が受け取れる返済が不要な奨学金の枠は、欧米などと比べて実際には非常に少ないと指摘し、給付型奨学金の拡充を訴えている。また~お茶の水女子大の研究では、世帯収入と子どもの学力は強い関係にあることがわかっている。また、世帯収入と保護者の学歴で測る社会経済背景が高いほど子どもの学力は高いことが明らかになっている。大学進学者と高校卒業者の間には大きな賃金の隔たりがある。男性の場合~月給でおよそ10万円の差がある。(以下略)---例によってホリエモンの暴言ですが、おそらく世間一般の「声なき声」の多数も似たようなものなのかもしれません。しかし、この話が税金の無駄遣いであるとは、私はまったく思いません。貧困の連鎖という言葉があるように、子どものいる生活保護世帯で、子どももまた(成人後に)生活保護受給世帯になる割合は、決して低いものではないと聞きます。短期的にはそうならなくても、低賃金の不安定雇用で就労して、ちょっと雇用環境が悪化したり自身の健康状態が悪化したとたんに失業するリスクを抱え続ける例も、かなり多いでしょう。自己責任至上主義者は、そうなっても仕方がない、親を恨め、とでも言うのかもしれませんが、誰を恨もうが恨むまいが、そういう人は結局生活保護に舞い戻ってくることになります。大学4年間の学費は、合計で400万前後というところでしょうか。一見高額に思えますが、25歳や30歳の人が生活保護になって、もしも一生生活保護だったりしたら、いったいその何倍のお金がかかるのか。医療費を除いて考えても、単身世帯(家賃含)の3年分くらい、複数人世帯の1人としても、まあ10年分くらいで400万円は超えるでしょう。それだったら、奨学金を給付することで生活保護から脱却してもらうほうが、トータルで見ればどれだけ安上がりか分かりません。損して得取れ、ということです。もちろん、大学に行けばよい職に就けると確実に保障されているわけではないですけど、大学に行かないとそもそも競争のスタートラインにすら立つことができないのが現実ですから。そういう意味では、いわゆるFランと言われるような底辺大学に行く意味があるのか(就職の面で)。というのは、私もちょっと疑問を感じるところではあります。だから、成績劣悪者、大学に行く気がそもそもない人まで無理に大学に行かせることはないでしょう。しかし、少なくとも人並み程度以上の学力と勉強の意欲、仕事をしていく意欲があるなら(限られた成績優秀者でなくても)奨学金の意味も効果も充分期待できます。加えて、「入学者を確保できない大学が淘汰されないこと」は、生活保護受給者がどうこうとはほとんど関係がありません。生活保護受給者は増えたと言っても2%程度、その生活保護世帯の中で子どものいる世帯は1割に満たない。その中で大学進学が問題となる年齢層の子どもがいる世帯が果たしてどれだけか、想像するしかありませんが、おそらく全受給世帯中のせいぜい1%程度ではないでしょうか。全世帯に占める割合で言えば0.02%くらい、ということになります。その程度の人数が底辺大学の淘汰や延命を左右することは、ほぼないでしょう。
2017.12.12
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客殺到、店内に押し込んだ 20年前、恐慌寸前だった日戦後日本で最も経済破綻が近かった日をあげるなら、ちょうど20年前の1997年11月26日である。多くの銀行で深刻な取りつけ騒ぎが起き、金融恐慌寸前となった。報じられなかった事実もふくめ、当事者たちの記憶をたどって改めて歴史に刻みたい。これからの私たちのために。あの日の記憶をたどると東京・日本橋にある日本銀行記者クラブの小窓から見えた曇天がよみがえる。この日全国の約20銀行の本店や支店に預金者が殺到した。これだけ広域に取りつけが起きた例は、終戦直後の混乱期を除けば戦後初めてだろう。午前10時ごろ全国各地の記者から取りつけが起きているとの電話が相次いだ。私は急ぎ東京駅近くの安田信託銀行(現みずほ信託銀行)本店ビルに走った。入り口に客の姿はなくホッとしたのを覚えている。だが扉を開けて、血の気が引いた。ふだんは客もまばらなロビーが、まるで満員の通勤電車内のように客であふれていた。外部に取りつけを見られるのは信用不安を広げるので厳禁だ。安田信託もその鉄則を守り、すべての客を無理にでも店内に押し込んでいた。この日の朝、仙台市に本店がある徳陽シティ銀行が経営破綻を緊急発表していた。その9日前、11月17日には北海道拓殖銀行が都市銀行で初めて破綻。24日には4大証券の一角、山一証券が自主廃業を決めた。大型破綻で預金者に高まっていた不安が地方銀行の破綻で一気に頂点に達した。このころ信用不安に見舞われた銀行の現場では数日で億円単位の預金が流出したところもあったようだ。「平時は1千万円ほどしか置かない支店に億円単位の現金を備えさせた」「山一証券の小さな支店に現金3億円を運んだ」。元銀行員たちの証言は生々しい。ーーー不定期ですが、ボチボチまた書いていこうと思います。次の記事は、今週中にできるかわかりませんが。1997年11月26日、多分このときの取り付け騒ぎと思われるものを聞いた記憶があります。当時いた部署の上司が、奥さんと電話していて、何とか銀行(名前は失念)が潰れそうだという噂で客が殺到しているので自分の預金も急いで引き出してもらう、みたいな話をしていたのです。日時を覚えていませんが、その上司が私の直属の上司だったのは1997年度の1年だけなので、多分この話と同じ出来事だろうと思います。ただ、当時このことはマスコミには一切報じられていないはずです。新聞のどこを読んでも、取り付け騒ぎのことは出ていませんでした。まだネット時代ではなかったので、全部の新聞を調べたわけではありませんが。破綻した金融機関の取り付け騒ぎは報じられても、まだ破綻していない金融機関のことは一切報じない、ああ、取り付け騒ぎを助長しないように自主規制しているんだなと、当時思った記憶があります。記事には、報じられなかった事実も含め、とあるので、改めてその推測のとおりだったんだなと納得しました。これ以降も、私の記憶ではみずほ銀行で、合併前の各銀行のシステムの違いに起因するシステム障害が頻発したことが顧客の不安を招き、取り付け騒ぎというような、一度に殺到するような事態ではなかったようですが、かなりの預金が引き出される事態がありました。何を隠そう、私自身も、当時みずほ銀行に持っていた定期預金を全部解約して普通預金に移してしまいました。(さすがに全部解約して現金で持って帰ろうとは思わなかったですが)その時の経験で、行員は預金の引き出しを妨げるような言い方は一切しませんせした。「現金でお持ち帰りですか?」と言われて、私の方が「いえいえ」と。下手な引き止め言動は信用不安を拡大しかねないという判断からそういう対応にしたのだろうと想像しています、以前、銀行は不良債権くらいでは簡単には潰れない、銀行が破綻するのは取り付け騒ぎが起こった時、というようなことを何かで読んだ記憶があります。そうなのでしょうね。ただ、日本は戦前の金融恐慌で取り付け騒ぎと銀行の倒産で大きな影響が出たことから、戦後はそのような事態を避けるべく細心の注意が払われてきました。ただ、それでも取り付け騒ぎは度々起きてきました。まったくのデマから火のないところに煙が立ってしまったのが、豊川信用金庫の取り付け騒ぎ。1997年といえば、まだインターネットが今ほどは普及していなかった時代です。それでも口コミは風のような勢いで広がり、20銀行なんて規模の取り付け騒ぎが起きた、ということは、これがもしも今だったらどうでしょうか。インターネットで、瞬時にそんな情報は全国に広まる。どんな対策でも支えきれないような規模の取り付け騒ぎになっているかもしれません。
2017.11.28
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今日は衆院選の投票日です。全国的に悪天候ですが、皆さん投票は済んでいますでしょうか。何党に投票してください、とは言いませんが、必ず投票には行くようにお願いします。百田尚樹「俺たちはワーキングプアだ。貧困だ!」と、ネットカフェに寝泊まりしている若者が言う。 しかし、世界のどこに、スマホをいじりながら漫画を読み、ネットカフェに寝泊まりしている貧困層がいるのだ。---百田の暴言は今に始まったことではないけれど、何も知らない人間がよくこんなことをほざくよなあと思います。百田の言い分は、マリー・アントワネットの(その発言は事実無根だという話もありますが)「パンがなければケーキを食べればよいのに」につうじるものを感じてしまいます。ネットカフェは、確かに安アパートに比べると高くつく場合があります(料金はピンキリでしょうが)。しかし、それでも手持金がないと、ネットカフェに泊まるしかなくなるのです。何故なら、アパートの契約には敷金礼金不動産屋の手数料などがかかるからです。ひとたび住みはじめても、2年に1回更新料がかかります。これらの費用を割り返して家賃に繰り入れても、ネットカフェが安アパートより高くつくかどうかはケースバイケースですが、仮にトータルでは安アパートの方が安くついたとしても、自転車操業状態のワーキングプアには初期費用が払えないのです。私個人はスマホを持っていません。家にパソコンがあり、モバイル環境ではガラケーとモバイルルータ+タブレットを使っているから。だけど、それは私が多少は余裕のある生活をしているからです。ギリギリの限界で住む家もない人がパソコンとカラケーを別々には持ち歩けない。しかしスマホがなくなったら今の時代に求職活動もできません。むしろ、安定した職についていれば、スマホもガラケーもなくても仕事に支障がない場合もありますが、不安定雇用であればあるほど、そうはいかないのです。なお、スマホについてもアパートと同様の傾向があります。格安SIMの方が大手キャリアより確実に安価ですが、格安SIMは自前で端末を用意しなければならないしため、やはり初期費用がかかります。また、ある程度面倒な設定も自分で行わなければならない場合も多いのです。その初期費用が払えない、格安SIMを自分で設定する知識、能力がない、などの理由で格安SIMを利用できない、そもそも格安SIMという知識自体もない、という人はまれではありません。人はパンのみで生きるにあらず。スマホが唯一の社会との接点という状態の人からスマホを取り上げたら、もう人間としての社会生活は送れないに等しいのです。もちろん、スマホしか社会との接点がない、というのはとっても残念なことです。でも、それが貧困というものです。貧困とは、必ずしも絶対的にお金がない、ということだけを意味するのではないのです。社会との接点を多く持っている人であればあるほど、一時的に苦境に陥ったとしても助けを求める手段を数多く持っているものです。しかし、社会との接点が少ない人ほど、苦境から脱する術がない。そういう人からスマホという最後の砦を取り上げれば、文字どおり路上生活か生活保護しか選択肢がなくなります。そして、スマホがない限りそこから抜け出す術はほとんどありません。スマホを取り上げて、社会との接点など完全に奪い去って、二度と仕事などしないでよろしい、一生生活保護で食べさせておくべきだ、というのなら、スマホを取り上げればよろしいでしょうが、それは結局社会的損失がより大きくなる選択としか思えません。
2017.10.22
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ワタミの求人条件に「死ぬぞこれ」 会社広報に真意を聞くと...「確実に死ぬな」「ブラックどころか、もはやグロやん」――そんな悲鳴がネット上にあがった。リクルートの求人サイト「リクナビ」に掲載された居酒屋チェーン「ワタミ」の正社員募集広告に掲載された給与・福利厚生(待遇)のことだ。大学新卒の基本給が20万2100円で、その中に月間127時間分の深夜みなし手当3万円が含まれ、「127時間を超えた時間外労働については追加支給」と書いている。127時間以上の残業の可能性がある、ネットで受け止められたのだ。「リクナビ」に2017年7月6日に掲載されているワタミの17年度の募集要項によれば、「大学・大学院・短大・専門卒/総合職」は51~100人を採用する予定とし、初任給の基本給は20万2100円で、その基本給には、「月間127時間分の深夜みなし手当3万円、営業手当1万円含む」「※127時間を超えた時間外労働については追加支給」となっている。~J-CASTニュース編集部が7月6日、ワタミに取材したところ、同社広報は開口一番に、「誤解を与えるような表記になってしまい、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と平謝りだった。ワタミ広報の説明によれば、この給与の数字は残業代とは全く関係無いが、「時間外労働」という文字を出したことが誤解の発端になってしまった、という。居酒屋勤務の場合は、16時、17時の出社があり、22時以降が深夜勤務に当たるため、月に22日間8時間勤務をした場合、月に60~70時間の深夜勤務が発生する計算になる。深夜勤務手当は1時間だけ働いても一律に3万円が支給される規定になっていて、127時間という数字は「理論上の最大値」として表示しただけなのだという。~---「表記の誤り」だそうですが、果たしてそうでしょうか。「127時間という数字は「理論上の最大値」として表示しただけ」なのだそうですが、「深夜勤務手当は1時間だけ働いても一律に3万円が支給される」というのもまた、「理論上の最小値」に過ぎないことは明らかです。あのワタミで、否、ワタミに限らず、深夜営業のある飲食業界で、1ヶ月の深夜勤務が1時間だけとか、ありえないにもほどがある。127時間が「理論上の最大値」だという言い分からは、「127時間以上の残業の可能性」は確かに低そうですが(可能性ゼロとも思えませんが)、逆に言えばほとんどの従業員の残業時間は「理論上の最大値」に達しないので、残業代は払わないよ、ということです。月間の所定内労働時間は、月の日数と休日のめぐり合わせで変わるので一概には言えませんが、概ね170時間から180時間程度です。残業がどの程度あるのかは知りませんが、5時間や10時間で済むとはとても思えません。月の総労働時間が216時間を越えると、時給換算で東京の最低賃金(時給932円)割れです。仮に出勤日数が22日の月であれば所定内労働時間は176時間、つまりこれ以外に月40時間以上の残業をすれば、最低賃金以下の給料ということになります。そして、ワタミの月の残業時間(や休日出勤)が40時間を越えるであろうことは、どう考えても確実でしょう。別の言い方をすれば、みなし残業手当3万円を最低賃金の25%増しで割り返せば、残業時間26時間分足らずです。どう計算しても、残業の実績より「みなし手当て」の方が少ないことは変わりません。もちろん、これはいわゆる額面支給額であって、手取りは社会保険料や税金が引かれるので、更に少ないことになります。これとは別にボーナスはあるにしても、月例給だけなら最低賃金割れの薄給過酷労働、というのが、この勤務条件とワタミの「いいわけ」から読み取れる事実です。つまり、勤務条件の表記は誤解を招くものだったとしても、ブラックな内実に関しては、誤解でもなんでもない、ということです。
2017.07.08
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埼玉で人並みの生活、月収50万円必要 県労連が調査埼玉県内で人並みに暮らすには月約50万円の収入が必要で、子供が大学に入ると支出が急に増え、奨学金がないと成り立たないとする調査結果を、県労働組合連合会(埼労連)と有識者がまとめた。「賃金の底上げとともに、教育や住宅の負担を下げる政策が必要」と指摘している。回答者の7割以上が持つ物を「必需品」とし、それを持つ生活を「普通の生活」と定義。回答者がよく買い物をしている店などで実際の価格も調べた。こうした積算で、次の各モデルの結果が出た。いずれも夫は正社員で妻はパート勤務、車はない設定。【30代夫婦で小学生と幼稚園児】さいたま市郊外で月5万5千円の賃貸住宅(2LDK約43平米)1カ月の生活費は▽食費約10万8千円▽交通・通信費約3万8千円▽教育費約2万7千円などの計約43万円。たとえば洗濯機は約6万円を法定減価償却期間6年で割り、月額836円とするなど、家具・家事用品の月額負担は1万8356円と積算。08年の前回調査と比べ、教育費と教養娯楽費が合計3万円近く増え、交通・通信費も1万円余り増えるなど、約6万8千円増。この支出のためには額面月収約50万円(年収約599万円)が必要。しかし埼玉県内の30代男性の平均年収は約411万円。【40代で中学生と小学生】30代より食費と教育費がそれぞれ約1万円増える一方、教養娯楽費は約1万3千円減り、額面の月収は約54万円(年収約647万円)が必要。平均の485万円との差は少し縮まる。【50代で大学生と高校生】東京の私大に通わせる前提で教育費が40代より9万円多い13万円、交通・通信費も約5万円と大幅増。教養娯楽費を30代より少ない約2万8千円、全体の支出は約58万円で、額面は約68万円(年収約821万円)。実際の平均は545万円。---細かいところを挙げれば、疑問の残る数字はありますけれど(たとえば洗濯機の法定減価償却期間は6年でも、実際にはもっと長い期間使えるものですし、逆に家賃は、東京23区内ではないとはいえ、家族4人ならもっと高い気も)、こういう調査って大事だなと思いますし、いろいろと参考になります。月収50万必要という見出しだけだと、一瞬、「そんなにかかる筈がない」と思いそうですが、手取りではなく額面支給額であること、ボーナスも含んでの計算であることを考えると、そんなに外れた金額とは思えません。たとえば、家族4人で夫の年収が額面で400万(ボーナス込とすれば、月給約25万、社保・税金を引けば手取り20万ちょっと)だったら、妻は働くでしょう。そうしないと生活はかなり苦しいですから。私は埼玉県ではなく東京の住人で、しかも賃貸ではないので家賃はかかっていない(ローンはありましたが)ので、一概の比較はできませんが、ざっと見て、やはり大学の学費がドカンとかかるのは明らかです。比較的学費の安い国公立大でさえ、初年度の学費・入学金は80万円以上だし、私大では文系でも100万円を超えます。直接大学に支払うお金以外にも、通学定期代や教科書、教材代その他いろいろなお金がかかるので、月13万(つまり年間156万円)というのは、初年度にかかる費用としては、充分に考えられる額だなと思います。もっとも、入学金がかかるのは初年度だけなので、2年生以降はもう少し安く上がるのでは?という気がしないでもありませんが。30年前に大学生だった私は、私大でも初年度50万円台、2年生以降は40万円台(当時としても、下から指折り数える学費の安い私大ではありました)でしたし、弟は国立大だったので、初年度の学費は30万円台だった記憶があります。それでも、両親は「国立でも学費はこんなに上がったの?」と驚いていましたが。何しろ、両親の時代(1950年代)には、国立大の学費は1万何千円だったそうですから。もちろん、1950年代と80年代、そして今では物価水準も異なります。ただ、それでも、平均所得の伸びをはるかに超える勢いで学費が上がっていることは明らかです。私が学生だった時代と現在では、平均月収に2倍もの差は絶対にない(ほとんど増えていないか、下手すりゃ減っているかも)のに、大学の学費だけは2倍近くに上がっているのです。で、こういう話を書くと、大要「貧乏人は大学に行くな」的な言い方をする人が出てくるわけです。その延長線上で、文系の大学なんて(ごく一部の高偏差値大学以外は)要らない、みたいなことを言う人もいる。残念ながら、大学に行けばよい就職先が保障される、というわけではないのですが、しかし、大学に行かないと就職のためのスタートラインにすら立てないのが現実です。もちろん、高卒や専門学校卒でも就職はできますが、選択肢はかなり制約されます。子どもの頃から「この仕事をしたい」という明確な意思があるならともかく、そうでないなら、子どもを持つ親としては、できるだけ幅広い可能性を確保してあげたいと思うのは人情というものです。我が家の場合、子どもは1人だし、中学まで公立なので、ここまでは学費はあまりかかっていません。高校はどうだろう。私立には中高一貫校が多くなっているので、中学が公立である時点で、高校も公立(都立)の可能性が高いですが、絶対ではありません。仮に高校・大学と私立だったとしても、医大、音大でない限りは、我が家は学費の工面は大丈夫でしょう。ただ、これだけ少子化が問題になっている時代に、学費は上がるばかり、それに対する「解決」が「貧乏人の子は大学に行くな」だとしたら、少子化はどんどん拡大するばかりでしょうね。
2017.04.18
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<東芝>解体の危機 相次ぐ優良事業の切り売り東芝は14日に発表した2016年4~12月期決算の見通しで、米原発事業を巡る7125億円の損失を計上することで実質的な債務超過となった。同事業で不適切な会計処理の疑いが発覚し、この日は正式な決算発表を見送らざるを得なくなるなど、経営は混迷の度を深めている。半導体事業を分社化して、株式の半数超の売却を検討することなどで債務超過の解消を目指すが、相次ぐ優良事業の切り売りで東芝は事実上の解体の危機に直面している。「正しいとは言いにくい」。東芝の綱川智社長は14日の記者会見で、2006年に54億ドルを投じて米原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)を買収した経営判断の是非を問われ、言葉を濁した。買収当時は新興国などの需要増加に伴う原発輸出の拡大を見込んでいた。しかし福島第1原発事故によって環境が激変。WHは08年に米国で4基の原子炉を受注したものの、当局による規制強化などでコストが膨らみ、東芝は今回の決算の見通しで、7125億円もの損失計上を余儀なくされた。このため昨年12月末時点で1912億円の実質的な債務超過となり、今年3月末までに事業の売却などで資金を調達し債務超過の状態を解消できるかが生き残りに向けた最大の課題となる。~東芝は15年の不正会計問題の発覚をきっかけに経営の悪化が深刻化し、16年3月期連結決算で4600億円の巨額赤字を計上。高い将来性のあった医療機器子会社を売却し、白物家電事業も売却するなどして再建を目指してきた。しかし今期も赤字見通しとなり、「虎の子」の半導体事業を手放すことになれば、東芝に柱となる事業はほとんど残らないことになる。一方原発事業について東芝は海外事業を縮小する方針で、綱川社長はWHの保有株売却も検討する姿勢を示した。しかし、原発事業を取り巻く世界的な環境は厳しく、買い手を見つけるのは難しいのが実情だ。---東芝をめぐる危機は何が原因か、非常に単純でしょう。つまり、国策に乗って原発に投資しすぎて、WHというとんでもない不良債権に、何千億円も投資してしまった。その不良債権ぶりが、東日本大震災を契機に露見してしまい、どうにもならなくなった、ということです。東日本大震災は、危機が露見する契機にはなったけれど、別報道によれば、WHは元々買収の時点で、そんな価値のないボロ企業だった、というのです。加えて、原発事故の後も原発にのめりこむ姿勢を改めようとしなかったことも、事態の一層の深刻化を招いたようです。失礼ながら、あれほどの大惨事を経験しながらなお、それまでの原発推進の姿勢を改めようとしない企業が、いや、企業に限らないでしょうが、危機に陥るのは、当然の報いと言わざるを得ないと私は思います。もちろん東芝だけの問題ではなく、原発推進を国策にした者、東芝を煽った者にも相応の責任はあるでしょう。具体的には、政府・経産省であり、WH買収の途中で手を引いたという丸紅(つまり、その時点でWHがとんでもないガラクタだと気が付いたのでしょう)でもある。ただ、子どもじゃないんだから、「騙されたんだから仕方がない」では済まない。丸紅が手を引いたときに、東芝自身も手を引く選択肢だってあったはずなんだから。いずれにしても、原発なんてものは、もはやリスク以外の何物でもない、と言うしかありません。事故が起きたら、その尻拭いは民間企業には-東京電力や東芝という世界に冠たる超巨大企業といえども-不可能なのです。結局、その尻拭いは国家が、つまりは我々の税金でやるしかありません。それでも原発推進をやめなければ、もう破滅するしかありません。
2017.02.17
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小田原市“生保ジャンパー”問題、実際に着ていたという職員に話を聞くと……?神奈川県小田原市で生活保護受給者の自立支援を担当する複数の職員が、「不正を罰する」といった文言を英語でプリントしたジャンパーを着用していたいた問題で、市は担当部署の部長以下7人を厳重注意処分とし、謝罪会見を行った。実際に取材してみると、ある職員は「不正受給者があまりに多いことの表れだった」と話す。「ジャンパーは、あくまで不正受給に反対するもの。中には、どう見ても健康な30代の若い男が受給を認められたりしているんです。上の人たちは直接、そういうのを見ていないからわからないんでしょうが、われわれだって納税者。腹の立つ受給者が多いのは確かですよ」(同)ジャンパーは60名以上の職員らが一人あたり約4,000円の費用を負担して製作したもので、「文言は過激だったかもしれないけど、不正受給者が後を絶たない現状をわかってほしい。生活保護を推進する弁護士やNPO法人の連中は、不正件数が全体の2%ぐらいだとか言ってますけど、それはハッキリ不正だと認定されたものを数えただけ。実際にはその10倍以上。全体の4分の1ぐらいいてもおかしくないと感じます」(同)という。それは驚きの数だが、実際にどんな不正がまかり通っているのか?「一番多いのが、こっそりアルバイトしている人たち。元いた職場の仲間から仕事を分けてもらってトラック運転手を続けている男は、生活保護を受けたことで収入が倍になっていた。ブログの動画やアフィリエイトで稼いでいる人もいます。それらを見つけて指摘しても『仕事復帰に向けて、リハビリでやっただけ。金は受け取っていない』とか、都合のいいことを言って逃げられる。絶対的な証拠でもないと、まず不正認定はされないんですよ。日中からパチンコ店に入り浸り、夜はクラブで踊ったりスナック通いしているような人もいるし、こういうタイプの多くは、『持病がある』とか大げさに言いますが、見た目には健康そのもの。本人も『申請が余裕で通っちゃいましたよ』と、半ば不正であることを認めるような口ぶりです」(同)(以下略)---「ある職員」なる者が、本当に実在するのか、実在するとして、取材に対してほんとうにこのように答えたのか、それとも、話の断片をつなぎ合わせてこのような「コメント」が作られたのかは分かりません。本当に小田原市の職員が、このような認識を取材に対して語ったとすれば、「信じられないことだ」と、ある知人が教えてくれました。「ジャンパーは、あくまで不正受給に反対するもの。中には、どう見ても健康な30代の若い男が受給を認められたりしているんです。」との発言があります。取材者によって発言の一部が切り貼りされたものでないとするならば、「健康な30代の若い男」が生活保護を受けることは、「不正受給である」という認識を、生活保護を担当する職員が持っている、ということになります。生活保護法の条文も、生活保護手帳も読んだことがない一般市民が、「健康な30代の若い男」(何で男だけ?子どもがいない限り女だって同じでは?)が生活保護を受けるなんて不正受給だ!と思うのは、仕方がないことでしょう。法律はともかく、感情のレベルでは理解できなくはないですから。しかし、給料をもらって働いている福祉事務所の職員が、「健康な30代の若い男」の保護受給が「不正受給」だと思っているとしたら、それは、「生活保護法を何も知らずに仕事をしています」と言っているのに等しいのだ、と知人は言います。生活保護法第2条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。 生活保護法第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。無差別平等なので、「困窮に至った経緯は問わない」というのが生活保護制度の基本原則です。「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを~活用することを要件」とはするものの、「急迫した事由がある場合」は例外なのです。だから、何らかの犯罪を犯して刑罰を受け、出所、あるいは執行猶予判決を受けて釈放されて、その足で福祉事務所に直行して保護申請、なんて例は特に珍しいものではないと聞きます。市民目線では、許し難いと思うかもしれません。知人も、最初は「許し難い」と思いながら仕事をしていたそうですが、そのうちに仕方がないと考えを変えたそうです。何故か。「刑務所から出てきて、お金を全然持っていない※仕事もない、場合によっては住む場所もない、という人を、犯罪を犯したお前が悪い、と放置しておけばどうなります?死ぬのが嫌だったら、盗みか何か、また犯罪を犯すしかないでしょう。自業自得だから生活保護なんか受けさせないことは、結果として死者と犯罪者を増やすことになる。それは本人のためにもならないし、社会全体としても危険なことなんじゃないですかね。」ということです。※出所者だから必ずお金がない、とは限りません。当然、保護基準より手持ち金が多ければ生活保護は受けられません。もっとも、なかなか理念どおりにはならず、出所して生活保護を受けても、また犯罪に逆戻り、という例も少なくないようですが。知人も、驚き、あきれ、頭にきて、悲しくなるようなことはいっぱいあるよと言っておりました。それはともかく、犯罪歴があってもなくても、仕事ができてもできなくても、「現に今」困窮していれば(つまり、「急迫した事由がある場合」には)生活保護は受けられますが、いつまでも急迫というわけにはいきません。当然ながら、充分働ける人が生活保護を延々と受け続けることは望ましくありません。だから、福祉事務所でも仕事に就こうとする受給者のための就労支援が行われます。それを無視して、求職活動も行わず、働けるのに働かない、仕事探しもろくにしない人は、就労(求職活動)指導→指示書→弁明の機会→生活保護打ち切り、ということになるとのことです。しかし、最終的にそうなったとしても、「働けるのに働かずに生活保護を受けていた」ことは、不正にはなりません。就労指示違反によって保護が打ち切りになったとしても、生活保護法78条による保護費返還請求はありえないのだそうです。生活保護法第78条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。(2項以下略)働けるのに生活保護を受けることは、不実の申請でも不正な手段でもないので、法78条による徴収対象にはならない、したがって、不正受給ではない。こんなことは福祉事務所の職員なら常識に属することなのだそうです。もっとも、実際には、医者の前であそこが痛い、ここが悪いと言って、稼働能力調査に「就労不可」という回答をもらって、働かずに保護を受け続けるような人もいるようです。ただ、そういう人は、目に見える精神障害ではなくても、実際には社会的不適応で、しょうがないんじゃない、とも知人は言います。「口では仕事を探しなさい、と言うんだけど、腹の中では、もし自分が採用担当者だったら、給料がタダでも来てほしくないと思うような人って、珍しくないんだよね」と。言葉は良くないですが、ダメ人間で他では相手にされないような人が生活保護になる傾向は否定できません。だから野垂死ね、というわけにはいかない。そういう人が犯罪に走らないためにも、生活保護で最低限の保障をするのは仕方がない、というところでしょう。で、不正は全体の1/4という推計も、事実ならば驚きの数字です。事実なら、ね。確かに、知人も、発覚する不正は一部だといいます。でも、実数は発覚するもののせいぜい2倍くらいではないか、とのことです。最新の統計によると、保護世帯類型別割合は、高齢者世帯が51%あまり、障害者、傷病者世帯が26%あまり、母子世帯が6%、その他世帯が16%です。高齢者にも障害者にも、ピンピンして働ける人、実際に働いている人は大勢いるそうです。不正もあるとのこと。ただし、割合で言えば、病気も障害もなくて若い人よりは、就労も不正もずっと少ない。当然でしょうね。だから、不正の多くは、母子世帯とその他世帯で起こります。しかし、全受給者に占める母子世帯とその他世帯の割合は22%に過ぎません。もしも全体の1/4が不正受給だとすると、母子世帯とその他世帯の全員が不正をしてもまだ足りない計算です。どう考えてもありえないと、知人は言います。不正受給の多くは、課税情報の照合と、金融機関の調査によって発覚するそうです。だから、勤務先が税の申告をせず、かつ給料が現金手渡しの場合(給料に限らず、その他の収入も)は、確かに不正は分からないそうです。しかし、そういう雇用先がどのくらいあるでしょうか。水商売とか、個人的なつてで雇われる零細企業、非合法な仕事には多そうですが、日本に存在する雇用の大半は、口座振り込みでしょう。それでも、チェックをすり抜ける不正は確かにあるそうです。予想もしていなかったような人の不正が発覚したり、状況的には極めて怪しいけれど、どうしても裏が取れない、ということもあるそうです。だけど、不正の実数が発覚するものの10倍、というほどにはザルではない。強いて言うと、住所不定者は、そういった課税データがない、氏名や生年月日を偽ったり(偽名で生活保護を受けることは、立派に不正受給になるとのこと)、ひどい場合は二重受給も直ちには発覚しにくいので、居宅生活者に比べて不正受給の割合が大幅に高くても不思議はない、とのことです。もっとも、一部の例外(山谷、寿町、釜ヶ崎など)をのぞけば、住所不定者の割合はそう高くはないし、不正が発覚しにくいのは「調査する前に失踪してしまうから」という面もあるのだそうです。知人の話を聞いて思ったのは、この小田原の「ある職員」がもし実在して、本当にこのような趣旨の話をしたとするならば、自分では職場の弁護をしているつもりで、実は職場の対外イメージを悪くしているだけなんじゃないか、自分の感情優先で、きちんと法に基づいた仕事をしていないんじゃないか、と思ってしまいました。本当に実在して、取材に対してこのとおりの話しをしたのなら、ですけど。
2017.01.31
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