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人が住む場所はかつて郊外化や人口分散から閑静な郊外の住宅地でしたが、最近はにぎやかな都心に移行しています。
都市に人が集まるのは自然な現象ですが、家賃が高くても都心に住むメリットはなんでしょうか。
”東京どこに住む? 所得格差と人生格差”(2016年5月 朝日新聞出版刊 速水 健朗著)を読みました。
東京に変化が起こりどこに住むかの重要性が高まっている時代での、都市暮らしの最新のルールを探っています。
速水健朗さんは1973年石川県生まれ、東海大学卒業、在学中よりアルバイトしていたアスキーにて契約編集者を務めた後、2001年よりフリーの編集者・ライターに転身しました。
コンピュータ関連の編集者出身ですが、メディア論、都市論から、ショッピングモール研究、団地研究、音楽、文学、格闘技まで幅広い分野で執筆編集活動を行っています。
江戸時代の江戸町人たちの長屋暮らしの人口密度に比べれば、いまの一極集中下の東京での都心の暮らしなんて、スカスカなものでしかない、といいます。
ほんのひと時代前までの日本人は、喧騒を離れて生きることが上等であると思っていましたが、昨今では、また久々ににぎやかな場所での暮らしが見直されています。
世界でも、ニューヨークを始めとする大都市が1970年代前後に迎えていた暗黒時代を抜け、都市再生の時代から、さらには都市復活の時代を迎えています。
東京でも、人は復活した都市に再び戻ってきて、都市生活を取り戻しつつあります。
日本人は引っ越しが嫌いで、生涯移動回数は4~5回くらいとなっています。
先進国の移動事情に比べると少なく、アメリカ人の生涯移動回数はこの4倍くらいです。
日本人には、1ヵ所に根付いた生活を送る文化が染みついています。
だが、これからの時代に、日本人は引っ越しを余儀なくされると思われます。
人口減少でこれまでどおりの経済活動の規模が維持できなくなる時代に、東京一極集中という名の人口移動が起きているからです。
都市人口が増えると、人口流動が増えるため、平均生涯移動回数は確実に上がっていきます。
さらに、人口減少が進むことによる不動産価格の変化があります。
人口が減る地域の地価は下がり続け、都心の価格はしばらく上がり続けることになるでしょう。
こうした環境の変化において、自発的にそこから移動をするかまたは定着を選ぶかで、人生は大きく変わってきます。
現代は都市間格差の時代へ変化しており、職業選び以上に、住む都市が人生の格差を生む時代です。
自分の置かれた状況を改善する手段として、住んでいる場所を変えることができるかどうかが問われているのではないでしょうか。
移動は、その人が持つ能力が試される機会でもあり、職業的能力、経済力、コミュニケーション力、テクノロジーヘの適応力が高い人であれば、どこに住もうと生きていけます。
また、より自分の生き方の好みに見合った場所を探し、楽しく生きられる場所を探して移動を続けていくことができます。
住む場所の選び方は千差万別ですが、住めば都とはよく言ったもので、人は誰しも、どんな街だろうと、住んでみることで満足できるというのは一面の真実です。
どの地にも文化があり、それがその人の将来に影響を及ぼします。
どこに住んだかで芽ばえる哲学や思想がありながら、そこに個人の事情が加わり、さらにその時代がもたらす事情が加わります。
人は、かつてよりも、住む場所に対してユーティリティーを重要視するようになっています。
ただし、コンビニに近いかどうかは、コンビニの数が飛躍的に増えたため、かつてほど便利さの指標にならなくなりました。
逆に減ったのがレンタルビデオ店で、いまどきはレンタルDVDは宅配や有料動画配信スタイルに移り変わり、住む場所とは無関係になりつつあります。
また最近では、スターバックスのような街の雰囲気を左右するチェーン店、また個性的でくつろげるカフェやワインバルがあるかどうかが重視されることもあります。
ユーティリティー以上に、街の個性が重視されているということかもしれません。
住む場所に関する最大のルール変化は、人口集中の原理です。
現在の人口集中は、これまでのそれとは性質が違っています。
かつての東京への人口流入は、東京の周辺部、つまり郊外への人口拡散を伴うものでした。
だが現在の人口集中は、都心部の人口増、つまり最都心部への集中です。
本書は、今起こっている東京への人口集中はどういったルールの変化、社会の変化がもたらすものなのかなどについて考察を行っています。
第1章 東京の住むところは西側郊外から中心部へ/第2章 食と住が近接している/第3章 東京住民のそれぞれの引っ越し理由/第4章 なぜ東京一極集中は進むのか/東京内一極集中という現象/人口集中と規制緩和/景気上昇と人口集中/第5章 人はなぜ都市に住むのか