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カレーは、インド系、東南アジア系、洋食系の何れも現在では国際的に人気のある料理のひとつとなっています。
”カレーの歴史”(2013年8月 原書房刊 コリーン・テイラー・セン著/武田円訳)を読みました。
いまやグローバルとなったカレーについて、インド、イギリス、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジアの世界中のカレーの歴史を読み解いています。
現在私たちが食べているカレーには大きく分けて2つの源流があります。
1つは、185世紀後半、インドの広城を支配していたイギリス東インド会社の商人たちが、自分たちの舌に合うように現地の料理を大胆にアレンジしたアングロ・インディアンカレーです。
もう1つは、古くは商人たちの手で、19世紀にはいわゆる離散インド人によって草の根レベルで伝えられ、世界各地の食材や食文化と融合したカレーです。
そして、今日では、ヨーロッパや北米、中南米、アフリカ、オセアニアなど、世界中でカレー文化が根付いています。
本書には多くのカラー図版とともにレシピも付いていて、料理とワインについての良書を選定するアンドレ・シモン賞特別賞を受賞しています。
コリーン・テイラー・センさんはシカゴ在住のフードライターで、インドの食物についての造詣が深く、”シカゴトリビューン””シカゴサンタイムズ”などに寄稿しています。
竹田円さんは東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、専攻はスラヴ文学で、訳書と翻訳協力が多数あります。
カレーは、多種類の香辛料を併用して食材を味付けするというインド料理の特徴的な調理法を用いた料理です。
それを元にしたヨーロッパ系の料理や、同様に多種の香辛料を併用して味付けされる東南アジアなどの料理も指す場合があります。
カレーは18世紀にインドからイギリスに伝わりました。
当時、イギリスはインドを植民地として支配し始めていて、インドのベンガル地方の総督だったイギリス人が紹介したといわれています。
19世紀に、イギリスで初めてカレー粉が作られました。
インドにはカレー粉というものはなく、いろいろなスパイスを組み合わせて、カレーの味をつくっていました。
インドのカレーとの違いは、小麦粉でとろみをつけたところにもありました。
日本では、明治時代に当時インド亜大陸の殆どを統治していたイギリスから、イギリス料理として伝わりました。
カレーという言葉の定義は曖昧で、何かと議論の種になります。
本書では、カレーとは、スパイスを効かせた、肉、魚、または野菜の煮込み料理で、ライス、パン、コーンミールなどの炭水化物が添えられた食べもの、と定義します。
スパイスはその場で手作りしたパウダーでもペーストでも、店で売られている既成のスバイスミックスでもよいです。
この非常に広い定義には多くの料理が含まれます。
イギリス統治時代のインドで生まれた古典的なアングロ・インディアンカレー、タイの洗練されたゲーン、カリブ海の活力みなぎるカレー、日本人が大好きな庶民の味カレーライス、
インドネシアのグライ、マレーシアの絶品ニョニャ料理、南アフリカのバニーチャウ、ギボテイ、モーリシャスのヴィンダイ、そしてシンガポールの屋台に並ぶ激辛料理などなどがそれです。
カレーの第2の定義として、汁気のあるものもないものも、カレー粉で味つけした料理はすべてカレーと認めることにします。
カレー粉とは既成のスパイスミックスのことで、一般的なスパイスミックスの成分は、ターメリック、クミンシード、コリアンダーシード、トウガラシ、フェヌグリークです。
こちらには、ドイツのカレー・ヴルスト、シンガポールヌードル、カレーケチャップがかかったオランダのフライドポテト、アメリカのカレーチキンサラダなどの異種族混血料理が含まれます。
カレーという言葉の起源についてたくさんの説がありますが、おそらく、スバイスで味つけした野菜や肉の炒めものを指す南インドのカリルまたはカリという言葉が元になっているのでしょう。
そもそもインド人はカレーという言葉を使っていませんでした。
しかし今日では、インド人も、とくに外国人と話をするときには、家庭で作る煮込み料理全般をカレーと呼ぶことが多いです。
15世紀後半、ポルトガルが香辛料貿易を支配し、ペルシア湾、マラッカ海峡、インドネシア、インド、南アフリカという広域にまたがる一大交易網を築きました。
17世紀、ポルトガルはイギリスとオランダに植民地の大半を奪われました。
1807年に大英帝国で奴隷貿易が違法とされ、1833年に奴隷制度そのものが廃止されました。
これを受けてイギリスは、解放された奴隷に代わる労働力として100万人を超える長期契約労働者を連れてきました。
インド亜大陸から、西インド諸島、南アフリカ、マレーシア、モーリシャス、スリランカ、フィジーのプランテーションへです。
新参者のインド人たちは移民先の土地の食材と自分たちの食習慣を合体させて、新種のカレーを作り出しました。
今日イギリスでは、数千軒のレストランやカレーハウス、ほぼ同数のパブでカレーを食べることができます。
また、オランダのハーグやアメリカのニューヨークなどの都市の多くのレストランで、地元の素材で作られる洗練されたカレーを味わうことができます。
カレーというグローバルな料理は今も進化し、変化する時代に適応し続けています。
序章 カレーとは何だろう?/第1章 カレーの起源/第2章 イギリスのカレー/第3章 北米とオーストラリアのカレー/第4章 離散インド人たちのカレー/第5章 アフリカのカレー/第6章 東南アジアのカレー/第7章 その他の地域のカレー/第8章 カレーの今日、そして明日