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2004.01.29
田中知事の住民票移転問題
(6)
テーマ:
素朴な疑問(16)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
田中長野県知事の住民票移転問題に関してちょっとした記事が出ている。このことに僕は素朴な疑問を感じている。田中知事は、何かと目立つことをするので、出る杭は打たれるという日本的な習慣でバッシングされることが多い。そういう田中知事をたたきたいというところでは「虚偽申請」というような悪意に満ちた言葉も見られる。さすがに報道機関の記事ではあからさまな悪意の表現はないものの、田中知事の方が間違っているという感じの記事が多い。それは、
「地方税法では、住民税は住民票の有無でなく、日常生活を総合的に判断し市町村が課税すると定められている。」
「田中知事は昨年9月に「住民税を泰阜村に払いたい」と住民票を移した。これまでに同村を訪れたのは数回という。」
ということが書かれている記事が多いからだ。これは、暗に田中知事の行為が、生活の基盤がないのに税金を納める先を変えるために、無理に住民票を移しているというイメージを抱かせるような書き方になっている。つまり何か悪いことをやっているんじゃないかというイメージを抱かせるような書き方になっていると思う。
しかし、この住民票移転で、田中知事が何か得をすることがあるのだろうか。たとえば税金を払う額が少し節約できるとか、個人的に何か得になることがあるのだろうか。そうであれば、田中知事の行為には不正があるという指摘もできると思うのだが、形式が違うということで批判するのはどうにも変だという素朴な疑問がわいてきた。
長野市は、今まで納められていた税金がなくなるのであるから、これは損失ということになる。損失を受ける側が批判するのはある意味では当然であるから、その立場からの言葉であることを考慮しながら、長野市長の言葉をちょっと眺めてみよう。次のアドレスだ。
https://wwws.city.nagano.nagano.jp/mail-mgz/backno/2003/1009091548.html
ここではまず、
「転出の理由について、長野市に市民税を払いたくない、合併しないで頑張っている泰阜村を応援したい、本拠地ではなくて自分の好きな場所に住民税を払うのは自由だ、国会議員だって東京に本拠があるのに、地元に住民票をおいているし、学生が住民票を移さず、東京の学校へ通っている例はいくらもあるというような理屈を言っ
この言い方は、僕はかなりの悪意を感じるのだが、田中知事は、本当にこんなことを言っているのだろうか。田中知事が言っていることの、本当に正確な引用というのを見てみたいものだ。誰かの解釈を通じた伝聞としての言い方では、悪意があればいくらでもねじ曲げて解釈できる。これがまず素朴な疑問の具体例の1番目かな。
「しかしながら、知事が住民票を移され、泰阜村に住民税を納めたいということについては、私としては、法治国家における自治体の長として、法に基づき何らかの手続きをしないわけにはいかないと考えています。」
この言葉に対しては、手続きが正しければ問題はないといっているのかな?という感じも受ける。そうすると、東京を活動の基盤にしている政治家が、地元に住民票を置いているという問題も、手続きさえ正しければ批判には値しないと言うことだろうか。最初の言い方では、実態がなければダメだという言い方に聞こえるけれど、形式が合っていればそれはいいと言うことなんだろうか。かなり官僚的な考え方だなという感じがする。これが素朴な疑問の二つ目だ。
「すなわち、今回の知事の行動に対しては、地方税法に基づき実態を調べた上で、生活の本拠である市町村(おそらく長野市ということになるでしょう)が住民税を課税することになるでしょう。」
長野市が実態を調べて、田中知事は長野市で住民税を納めることがふさわしいと結論を出したら、同じ基準で他の政治家についても考えてみることを、マスコミなどはぜひして欲しいと思う。田中知事に対しては厳しい基準を適用して、他の政治家にはそれを適用しなかったら、不当なダブルスタンダードになる。そうならないかどうかと言うのが素朴な疑問の第3だ。
「私とすれば、何の関係もない泰阜村長さんと、知事の住民税課税のことで協議するということは、まことに子供じみた話だと思っています。」
批判というのは具体的にやらなければならない。どの事実を指して「なんの関係もない」と判断するのかを指摘しなければ、それは単に個人的な印象だけじゃないかと思うだけだ。関係があるかないかは、客観的な事実を見て、その事実から判断できるものだ。「子供じみた話」というのも単なる印象にすぎず、どの事実を指してそういうのかがなければ、批判ではなく、単なる悪口にすぎない。
「両市村の協議が不調に終わった場合、調停をする役目は県知事さんだそうです。そうなった場合、今までの判例等に照らし合わせ、公平な判断をどのように下すのでしょうか。」
この批判だけは論理的に正当な批判だ。利害当事者が結論を下すような構造は、たとえちゃんとした結論であっても誤解を招く。これは、特殊なケースとして例外規定を設けて、田中知事本人が決定をしないような方向を取るべきだろう。
「例えば、選挙人名簿の管理は住民基本台帳を基に行われます。そのため、生活の実態のほとんどない人達が、その被選挙人の理念が好きだというだけで住民票を異動したら、現在の選挙制度というものはどうなってしまうのでしょうか。」
この批判は、論理に弱い人は、うっかりするとなるほどと頷いてしまうかもしれない。しかし、これは本当に田中知事が言っていることを正しく受け止めて解釈して批判しているのだろうか。という素朴な疑問を僕は感じる。田中知事は、理念だけに共鳴して、他の実態は無視して、今回のようなことをしようとしているのだろうか。田中知事の行為が、このことに論理的につながるというのなら、この批判は正当性を持つけれども、論理的につながらないのなら、自分の頭の中に生まれた妄想に対して批判を浴びせていることになる。これが、本当に田中知事の行為と結びついてくる論理的根拠があるのかどうかというのが、また素朴な疑問になる。
批判の最も重要なポイントは、この言葉に集約されるように感じる。しかし、法律というのは時代が変化すればそれに応じて変わる必要も出てくるだろう。まず法律ありきではなくて、法律に対して問題提起をするということであれば、あえて習慣に反することをして問いかけると言うことにも意味が出てくるような気もする。果たして、田中知事の行為はその方向で解釈できるかどうか。いつでも法律の方が重いと考えるのはどうだろうか、というのも素朴な疑問だ。
それでは、反対の側の利益受ける泰阜(やすおか)村村長の話を見てみよう。次のアドレスだ。
http://www.vill.yasuoka.nagano.jp/sonchou/
ここで、村長の松島貞治氏は、個人的な見解と断って次のように語っている。
「彼の行動は、単なるパフォーマンスではないと考えています。もともと、田中さんは、税金というものは、その使われ方が見える形が望ましい、見えるようになれば、納得した使い方をしている自治体へ納めることになるのでは、また、そのような自治体を応援したい。だから、複数の自治体に税金を納めてもいいのではないかという持論を展開しておりました。ここまでは、誰でもできるのですが、実際それに挑戦するという田中さんの行動力に敬意を表しています。」
正しいかどうかの結論は出せないが、一つの問題提起として受け止めているという姿勢が伺える。これを考えていこうという呼びかけではないかと僕は感じた。法律に照らして考えるべきだという考えと、若干違う受け止め方ではないだろうか。
という言葉では、これは田中知事がやるからこそ問題提起になるという見方を語っている。あくまでも問題提起なのであって、これが絶対に正しいのだと主張しているのではない。泰阜(やすおか)村は、介護という言葉が一般的になる前から介護に取り組んできたところらしい。つまり、田中知事としては、本当に住民のためになる政治をしている自治体にこそ、喜んで税金を払うという意識を持とうと呼びかけている、そういう問題提起として受け止めようと言うことではないかと思う。
利害当事者でありながら、自らの利益に厳しく控えめな言い方は、客観性を持つ要件があるのではないだろうか。こちらの考えの方に僕は共感する。この問題は、問題提起であって、どちらに共感するかが大事なことで、どちらが絶対的に正しいんだという風には結論づけられないのではないかと僕は感じた。
今日は、田中知事自身の考え方がどうなのかということまでは調べる余裕がなかったが、今度はそのことも詳しく調べて考えてみたいと思う。長野市長の批判が当たっているのかどうかと言う素朴な疑問を確かめてみたいと思う。
それにしても、以前竹中平蔵大臣が、アメリカに住民票を移して税金を節約していたという疑惑が報道されたことがあった。これは、税金節約という不正のにおいがあるにもかかわらず、大手マスコミメディアでは話題にされなかった。田中知事とは偉い違う扱いだなと思う。関連のサイトを検索したら次のようなものが見つかった。
http://www9.plala.or.jp/bruce-t2/2002/09_02.htm
http://www.otokusite.com/etc/takenakadaijinn.htm
http://www.fusosha.co.jp/spapage/2003/spa282701_02.html
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000215320011128003.htm
田中知事のことが問題にされるなら、このことも改めて問題にされなければならないのではないかと思う。
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最終更新日 2004.01.31 13:08:18
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