■私の好きな曲8、~ビリー・ジョエルの「あの娘にアタック」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 【アーティストの略歴】
ビリー・ジョエルは1949年アメリカのロード・アイランドに生まれて、現在は55歳。両親の影響で幼少時にピアノを習った。ティーンエイジの頃の彼はエルビスやビートルズに夢中になる。と同時に彼はアマチュア・ボクサーとしても活動したがこの世界ではプロにはならなかった。'60年代後半には「ハッスルズ」「アッチラ」というグループで活動したが売れなかった。今でもCDショップを丹念に廻れば売っています。 1971年に「コールド・スプリング・ハーバー」でソロデビューを果たす。しかしなんだか長髪に冴えないちょび髭面姿のこのアルバムは全く話題にならず廃盤に。ビリーが'80年代に入りスターになってから再発された。その後は一時ロスに活動本拠を移すが、アルバム「THE STRANGER」が大ヒットしスターの仲間入り。そこからのビリーのサクセス・ストーリーは良く知られている。だが、最近では全く新作を出さずに編集盤とライヴ盤しか出ていないのは寂しい限りだ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【この曲について】
◇この曲はビリーが1983年に発表した「イノセント・マン」に収録されている曲だ。ビリーは一作毎にそのスタイルを替えて来ることで有名で、前作の「グラス・ハウス」はロックンロール・スタイルを全面に出した。そして本作では'60年代のオールディーズの要素をふんだんに盛り込んだアルバムとなった。このスタイルは多いに当たり6枚のシングル・ヒットを生んだ。 ◆この曲の原題は「TELL HER ABOUT IT」で、彼女に自分の夢や自分が彼女に本気なのだという事を伝えろと歌っている。曲調は典型的なモータウン風のサウンドで、バックのコーラスもドゥワップ調でこだわりを感じる。ビリーのこの曲はラッパが高らかに鳴りこのラッパが曲のイメージを特徴付けている。メロディの展開もとてもスピード感があって聴いていて気分が高揚してくるナンバーだ。 ビリーのこのモータウン風のサウンドは、その後の「THE RIVER OF DREAMS」でも再現されている。こちらの方は黒人のドゥワップが更に強調されている。 △MTV全盛時代に当然ながらこの曲のビデオも制作された。このPVを観た方は多いと思うがもう一度思い出して欲しい。 この曲はビリーがエド・サリバン・ショーを再現したステージで歌うスタイルだ。それを街のTVが放送しているシーンもある。冒頭でエド・サリバンのそっくりさん(本人かな?)がビリーを紹介する。既に観衆はノリノリ状態でビリーが紹介されてこの曲をライヴで歌う。舞台の袖ではエド・サリバンがやはりノリノリでこの曲を聴いている。そして最後のほうでは宇宙船の中でもなぜかノリノリでこの曲を聴いている。 【ヒット・チャート、賞】
グラミー賞では最優秀アルバムにもノミネートされたが、この年はマイケル・ジャクソンの「スリラー」が一大旋風を巻き起こしたので残念ながら授賞は逸した。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【最後に】
この曲を含むアルバム『イノセント・マン』は是非アルバム全体を聴いて欲しい一枚だ。その中でも私の御薦めの一曲は「Leave A Tender Moment Alone(夜空のモーメント)」である。この曲はビリーが持つ本来の【都会の中の寂しさと孤独】が見事に表現されている。
更に、この曲をさり気無く盛り上げているのが、曲に流れるハーモニカのなんともいえない音色だ。このハーモニカを吹いているのがトゥーツ・シールマンスというベルギー人だ。ロック関係の音楽しか聴かない人には無名だろうが、この人はギターの名手でもありジャズ界では大物である。クインシー・ジョーンズとの共演でも有名で私も何枚かアルバムを持っている。 他にはビリーが一人で多重録音をしたコーラスだけのドゥワップ調の「The Longest Time」もお薦めである。一人で高音低音をこなしているビリーの器用さが光る曲。 シングル・カットはされなかったが「This Night」はクラシックのようなムードを持った曲。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集後記】
現在のビリー・ジョエルは全く創作活動を行っていないので、新譜は1993年を最後に出ていない。それ以降はベスト盤、ミレニアムのライヴ盤、チャリティー・コンサートでのライヴ位しか声は届いてこない。私生活でも2度目の離婚、バイク事故とか暗いニュースが支配している。 かつては日本でも絶大な人気を誇っていたビリーは、自分の前後の世代は洋楽に興味がない人も聴いていた。日本では「オネスティ」「ストレンジャー」「マイ・ライフ」とかが人気がある。 55歳のビリーはまだまだ老け込む歳ではない。是非再び創作活動を再開してビリーの今の声とサウンドを我々に届けて欲しい。