趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

August 25, 2005
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對酒寄嚴維

陋巷喜陽和、衰顔對酒歌。
懶從華髮亂、閑任白雲多。
郡簡容垂釣、家貧學弄梭。
門前七里瀬、早晩子陵過。
【韻字】歌・多・梭・過(平声、歌韻)。
【訓読文】
酒に対して厳維に寄す。
陋巷陽和を喜び、衰顔酒に対して歌ふ。

郡簡にして釣を垂るるを容れ、家貧にして梭(ひ)を弄ぶを学ぶ。
門前の七里瀬、早晩子陵過(よぎ)らん。
【注】
○対酒 酒樽を前にする。酒を前に置く。
○厳維 字は正文。越州山陰(浙江省紹興)の人。至徳二載、江淮選補使崔渙のもとで進士となり、諸曁の尉を授けられた。広徳二年から大暦五年にかけて浙東節度使の幕に入り、検校金吾衛長史をつとめた。のちに越州に閑居した。大暦十二年、河南の幕に入り、河南の尉を兼務し、十四年、秘書郎となり、建中元年(780)没した。
○陋巷 せまく汚い町。貧しくむさくるしい裏町。
○陽和 春の暖かな時節。のどかで暖かい気候。
○衰顔 おとろえた顔。
○華髪 白髪。
○簡 おおまか。
○垂釣 釣り糸を垂れる。釣りをする。

○七里瀬 28番の七里灘に同じ。
○子陵 厳光の字。東漢(後漢)の人。光武帝に召されたが、仕官せず、富春山に隠棲し、耕作や釣りをして過ごした。『蒙求』《厳陵去釣》「後漢の厳光、字は子陵。少くして光武と同学す。光武位に即く。子陵乃ち姓名を変じて身を隠して見えず。後に斉国より上書すらく、一男子有り、羊裘を被て沢中に釣りす。帝其れ光かと疑ふ。聘して至る。諫議太夫に除すれども屈せず。乃ち富春山に耕す。後人其の釣りする処を名づけて厳陵瀬と為す」。
○早晩 いつ。
○過 たちよる。ここでは厳維を同姓の厳子陵になぞらえ、厳維が劉長卿の家を訪問することをいうのであろう。
【訳】

こんなにせまく汚い裏町に住んでいても、春の温暖な気候はうれしいもの。
おいぼれた顔で酒を前に鼻歌を歌う。
年老いてからは白髪頭の手入れもめんどうくさく、暇な時間もまるで空の雲のように次から次へとわいてくる。
郡の役所の仕事も大雑把で、合い間に釣りができるほど。家は貧乏なので女房どのは近所のオバサン連中から機織りを習う。
貧しいながらも暇の多いのんびりした暮らしを送っている我が家の前の七里瀬に、君はいつ立ち寄ってくれるのだろうか。





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Last updated  August 25, 2005 07:39:19 PM
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