4月2日 南風一
俺が好きだった彼女は
学年で一番の早生まれだった
だから今なら5十云歳ということになる
(にわかには信じがたいことだ)
地方の田舎から都会に出て
何に悩んでいたのか今となっては定かではない学生時代を終えて
きみにいつでも電話できる仲になって
ようやく天にも昇る気持ちとはこういうものかと
悟った
きみはあけすけに
好きな職場の同僚のことを話したし
俺も半分本気 でも半分冗談で
もしきみの恋が実らなかったら
俺と結婚しようなんて言ったかも知れない
そうこうするうちに
俺は結婚することになって
半年ぶりだったかな
きみに電話した
俺が結婚したと切り出すと
きみはきつい口調で怒った
「よくもまあ奥さんのことも考えず
恥も外聞もなくぬけぬけ私のところに電話をかけて来れたものね」
「分かった。ごめん
二度と電話しないから。じゃあ」
あれからもう26年
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