Laub🍃

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2012.09.20
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「……何だ、ここ…………」


 僕は、夜空に包まれていた。
 地上と僕を繋ぐのはただ一本の草の綱だけ。

「……」

 いや、ここは柾目ちゃんの夢の中だ。
 そこらへんに生えていそうな草が僕の体重を支えられる位丈夫だとか、島が空に浮かんでいるとか、そんなことはおかしくもなんともない。

「………飛び降りるか」


 なんとなくだけど、さっきあのまま、草原を歩き回っていても多分ろくな成果は得られなかっただろうと思う。似たような草の中をずっと歩くだけ。多分柾目ちゃんにとっては草が生い茂っているそれだけで幸せなんだろう。あの島には柾目ちゃんの理想の一つが独立して存在している。


「………」




 まるで宇宙空間に居るかのように、只管続く闇。

『無理だ、こんな……』

 突然、同僚の声を思い出す。

 ぶんぶんと頭を振り払うが、その記憶はまとわりつく。

 暗い夜空に浮かんでくるのは、失敗と挫折の記憶。

『それでも彼らは、可能性の道を選んだんだ』
『俺達は、あいつらを実験に使ってるようなもんだろ』
『……志願者が少なくなったら。あるいは、耐え切れなくなったら。僕達も、礎の一つになるんだ』


 けれど願わくば、成功としての礎であることを僕は望んだ。

 きっと、同じように大事な人の夢の中に入った彼等もそうだった筈。


「……柾目ちゃんはきっと、真っ直ぐだから」




だから、


「……飛び降りよう」



恐ろしい場所へ飛び降りる為の、




……新たな世界へ行くための 勇気を。





真っ直ぐに、ただひたすら真っ直ぐに―――僕は闇の中へと飛び降りた。





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最終更新日  2015.06.13 23:52:03
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