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2009.01.25
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森博嗣『有限と微小のパン』
~講談社ノベルス、1998年~

 S&Mシリーズ第10作、シリーズ最終作にして、シリーズ最長作品です。
 では、簡単に内容紹介と感想を。

ーーー
1997年12月下旬(西之園萌絵、23歳;犀川創平、36歳)

 西之園萌絵は、友人の牧野洋子、反町愛とともに、長崎県の有名テーマパーク、ユーロパークを訪れた。ユーロパークは日本最大のコンピュータ・ソフト・メーカであるナノクラフトが設立した施設で、西之園萌絵はナノクラフトの株主にして、その社長・塙理生哉の許嫁とされていたこともあったのだった。
 ユーロパークでは、過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件が起こったという。女性が、まるで龍にかみ殺されたような死体を発見し、警察に届けたところ、次に現場に行ったときには死体は消えていた、というのだ。
 偶然、空港で再開した島田文子もこの事件のことを知っていた。彼女は、事件は本当のことだと言う。

 いつの間にかホテルの部屋で眠っていた萌絵。居酒屋から帰ってきた洋子たちに事情を説明し、警察に連絡するために外に出ると、そこではさらに事件が待ちかまえていた。教会のガラスが割れる音、悲鳴。3人が教会に入ると、彼女たちの案内をした女性がうずくまっており、そばには、男性の死体があった。ところが、先の電話で到着した警察たちとともに再び教会に入ると、死体は消えており、ただ、その腕だけが残されていたのだった…。
 その後も彼女たちは、さらなる事件に巻き込まれる。
ーーー

 何度目かの再読で、真相には衝撃を受けたはずだったのですが、今回完全に物語に飲み込まれてしまい、真相を完全に忘れていました。それが語られるシーンでは、ああ、そういえば!と思うと同時に、深く納得でした。
 この物語は10章からなっていますが、各章の冒頭には、シリーズの各巻(第1章なら第1作、といった具合に)からとられた言葉が引用されています。ここからも、本作がシリーズ集大成ということがうかがえますね。
 事件ごとに、西之園さんも、犀川先生も、国枝先生も、どこか変わっていきます。そうした人間模様というか、ミステリを抜きにした物語も楽しいシリーズでした。
 昨年末頃からシリーズ再読を始め、ついに通読したわけですが、良い読書体験でした。面白いです。

 それでは、印象に残った部分を引いておきます(文字色反転)。

子供で夢を見る親は、もう「親」という生き物だ。それは人間の生を放棄している。ついつい人は、そうした装飾に包まれた安楽を望む。

それが楽だからだ。
子供に夢を託した方が、自分が夢を実現するよりも楽だからだ。


(2009/01/18読了)





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Last updated  2009.01.25 09:50:16
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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