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2009.02.18
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(Dominique Simonnet et. al., La plus belle histoire de l'amour , Editions du Seuil, 2003)
~藤原書店、2004年~

 本書は、雑誌『エクスプレス』編集主幹のドミニク・シモネ(本書では、ドミニック・シモネと表記されています)が、9人の歴史家・小説家に行ったインタビューを通して、先史時代から現代までの愛の歴史を通史的に描いています。
 なお、ドミニク・シモネはミシェル・パストゥローとともに刊行した 『色をめぐる対話』 (邦題)という小著でも、インタビューアーとしての手腕を発揮しています。
 さて、本書の構成は以下の通りです。

ーーー


第一幕 まずは結婚
 第一場 先史時代―クロマニョン人の情熱(ジャン・クルタン)
 第二場 ローマ時代―禁欲的な夫婦の出現(ポール・ヴェーヌ)
 第三場 中世―そして肉体は罪とみなされ…(ジャック・ル=ゴフ)
第二幕 感情も加わって
 第一場 アンシャン・レジーム―性秩序の支配(ジャック・ソレ)
 第二場 フランス革命―美徳の恐怖政治(モナ・オズーフ)
 第三場 十九世紀―うぶな娘と淫売屋の時代(アラン・コルバン)
第三幕 そして最後に快楽
 第一場 狂乱の歳月―これからは気に入られなければならない!(アンヌ=マリー・ソーン)
 第二場 性の革命―遠慮なく楽しもう!(パスカル・ブリュックネール)


ドミニック・シモネによる執筆者プロフィール
訳者あとがき
ーーー

 プロローグで、愛の歴史は感情(愛)、結婚(生殖)、性(快楽)という3つの領域に還元されるとあります。愛の歴史は、これらの3要素の結びつきや解離をめぐって、揺れ動くことになります。これらはまた、それぞれの幕の標題にも使われていますね。

 第一幕第一場では、恋愛の感情はクロマニョン人から始まるといいます(埋葬の在り方からうかがわれるとか)。また、農耕の始まりととともに「のどかなカップルの時代も終わる」というのも面白いです。農耕の始まりとともにリーダーが生まれ、貧富の差が拡大する。『食の歴史』によれば集団生活を営むようになるため伝染病も広がっていくとのことですが、人類の発展にとって非常に重要な農耕は、同時に多くの負の面ももたらしているなぁ、とあらためて思いました。ちょっと脱線しましたが、愛の歴史についていえば、女性はしなきゃいけない家事がうんと増えますし、また、一定の権威者が人々の私生活まで牛耳るようになり、人々は自由に伴侶を選ぶことも難しくなっただろう、とのことです。



 ただし、ローマ時代のこうした道徳は人々をかなり抑圧していました。ところが、中世にキリスト教式結婚が広まると、夫婦の合意が必要となります。男女問わず、権力や家族の意向に逆らって、望まない結婚を拒否することができるようになる、このことをル・ゴフは強調します。

 …と、第一幕について外観的に書いてみましたが、第二幕以降も面白いです。

 ちょっと広い話にしてみれば(あるいは当たり前の話を繰り返すことになりますが)、結婚の平均年齢や、たとえば貴族層や農民層での結婚・恋愛の在り方の相違などは、それぞれの社会階層(身分)のライフスタイルの在り方とも関わってきますし、結婚・恋愛について社会・家族が押しつける価値規範というのも、同時代のより広い思想(たとえば宗教や政治的イデオロギー)や制度(たとえばいま読み進めているフランドラン『農民の愛と性』でも扱われている婚資)との関わりを見なければなりません。
 逆にいえば、本書を読めば、簡単にではありますが、愛の歴史を通じて、同時代の背景も浮かび上がってくる、といえると思います。

 インタビュー形式ですので、読みやすいだけでなく、内容的にも幅広い情報も得られ、有意義でした。

(2009/02/11読了)





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Last updated  2009.02.18 06:41:27
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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