能登の手染め日記

能登の手染め日記

Oct 5, 2016
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カテゴリ: 日々
昨年の夏に(2015年7月20日)鶴見俊輔氏が亡くなって思い出したのが、氏の「限界芸術論」だった。芸術の限界ではなく限界芸術という言葉が、不思議なニュアンスを伴って私の記憶に残っていた。

若い頃、勤めていた京都の染色会社の寮の一室では毎晩のように酒飲みトーク会が行われていた。先輩の話を聞いても何のことか、殆ど分からなかった18歳の私。理解するには「その手の本を読むしかない」と思った(笑
で、「美術手帳」「芸術新潮」をはじめ「美学入門」や「粋の構造」などなど、今でも何度読んでも分からない本を読み漁ったが(^^ゞ その中の一冊が限界芸術論だった。

「限界芸術論」の中で、鶴見俊輔氏は芸術を3つに分類している。
「芸術とよばれている作品」を「純粋芸術」(Pure Art)。
「純粋芸術に比べると世俗的なもの、非芸術的なものなど」を「大衆芸術」(Popular Art)。
「さらに広大な領域で芸術と生活との境界線にある行為や作品」を「限界芸術」(Marginal Art)としている。

「限界芸術」の例として、盆栽や生花、茶の湯などがあり、日常生活の落書き、ゴシップ、盆踊りや墓参り等も入れられている。今で言うと漫画、麻雀やゲーム、カラオケもそうかもしれない。「間」の概念、「省略の美」や「単純化の美」という図形や言葉。今では消えそうな「粋」や「わび」「さび」「渋み」の概念なども生活の中にある美といえる。

芸術と言うか・・・アートと日常生活の境界線のぎりぎりアート側の内容かな。「たのしい経験となるような記号」が芸術の限界領域にある。それは生活の中にある心ときめくような話であったり、行為であったりする。早い話、日常の趣味や娯楽の中にある楽しさが、芸術や美の源、生活文化の素といえる。

京都から能登に戻って10年ほどの頃、草木染めを発表し始めた頃に、集落のお婆ちゃんたちの希望で草木染め教室を始めた。

趣味の草木染め教室で当時75歳の生徒さんが絞って染めたタペストリー

この教室の活動に関してはブログにも何度か書いたので省略(^^)あのとき、日々に進化する草木染め教室の手ごたえが凄かった。お婆ちゃんたちは多忙な生活の中でも根気よく絞りを施して、何度も何度も染めを重ねて完成させる姿に喜びがあふれていた。趣味の教室のお婆ちゃんたちは販売を目的として商品を作ったこともない。もとより「純粋芸術」を目指したわけではない(笑)

いうならば「純粋な限界芸術」だったような気がする(^^
染めることを楽しみ、売る事もしない。ただ出来上がりを喜ぶという行為。ある意味、純粋に過ぎたような気もする(^^ゞ

長くなったので次回に続く。

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Last updated  Oct 5, 2016 06:06:26 PM
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