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さて、夕霧の母方のいとこに、雲居の雁というお姫さまがいらっしゃいました。
彼女の母君が再婚なさいましたので、父君の内大臣が引き取られて、おばあさまの大宮にお預けし、ご養育をお任せしていました。
父の内大臣からご覧になられても「姫君のご様子はたいそうあどけなく、御髪のさがり具合や髪の生え際などが上品で、恥じらって少し横をお向きでいらっしゃいますご様子やお顔つきが実にかわいらしく、とくに御琴の絃をお押さえになる手つきが、上手に作られたお人形のように華奢」で幼いのです。母宮はご自慢の息子の来訪に喜び、きれいにお化粧し、「うるはしき御小袿など」に着替えてお迎えなさるのですが、「おとど御けしきあしくて」とご機嫌悪いご様子で、「母宮をご信頼申し上げてお預けしたのに、子供たちの好き勝手に放任なさって、嘆かわしいことです」と、一方的に文句を並べます。
大宮はびっくり仰天「けさうじ給へる御顔の色たがひて、御目も大きになりぬ」と、せっかくお化粧なさったお顔の色がさっと変わり、お目も大きく見開かれたというのですが、このリアルな表情描写に、当時の読者は笑い転げたのかもしれません。
それにしても「姫君は、何心もなくて」相変わらず子供じみていらっしゃるのです。