私訳・源氏物語

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佐久耶此花4989

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April 16, 2006
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 例えば、源氏が北山の尼君のところで幼い紫の上をすき見し、養育したいと申し出る有名な場面で、こんなあどけなくかわいいやりとりがあります。

 源氏の君が尼君に「どうか、あのお可愛いお声を、一声でもお聞かせいただけましたら」と、お申し出でになります。

 尼君はお困りになって「もうお休みでございまして」などとおっしゃる所へ、あちらから出てくる小さい足音がしたかと思うと、幼いお声で
「ねえ、おばあさま。あの山寺にいらした源氏の君が来ていらっしゃるのでしょう。それなのに、どうしてお会いにならないの」
と、あどけなくおっしゃるものですから、おそばの人たちは、源氏の君がこれをどうお聞きになられるかと、はらはらなさって「お静かになさいませ」と、たしなめたりなさるのですが、
「だって、おばあさまが、源氏の君にお会いしたら心地の悪いのが治った、っておっしゃったのですもの」
と、せっかくいい事を言ったつもりなのにと、心外なお気持ちでいらっしゃるのです。

 素直でやさしく物怖じしない紫の上の、ちょっとふくれたような表情までが見えるようで、私は読んでいておもわず顔がほころぶのです。





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最終更新日  March 8, 2017 07:13:30 PM
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