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左の大臣には、北の方でいらっしゃいます帝の御妹宮腹に、「ただ一人、かしづき給ふ」たいせつにかしづいていらっしゃる姫宮がお一人おいででした。
この姫宮には春宮からも入内のご希望がおありだったのですが、はかばかしいお返事もなさらなかったのは、源氏の君のご元服の添い臥しに、との父・左大臣の腹積もりがあったからでした。
源氏の君が「十二にて御元服したまふ」「その夜、大臣の御里に、源氏の君まかでさせ給ふ。作法、世に珍しきまで、もてかしづき聞えたまへり。」
左大臣は「我が願い叶ったり」とばかりに、源氏の君を婿君として、世に珍しいまでご立派なお作法をもって、大切にお迎えになります。
ところが、
「女君は、すこし過ぐし給へる程に、いと若うおはすれば、似げなく恥づかしとおぼいたり」
ここを、歴代の訳者は次のように表現しています。
谷崎源氏 「女君はまた、御自分が少し年嵩でいらっしゃるのに、婿君がひどくお若いので、不似合いで恥かしくお感じになるのでした。」
与謝野源氏 「姫君のほうが少し年上であったから、年下の少年に配されたことを、不似合いに恥ずかしいことに思っていた。」
瀬戸内源氏 「女君は、源氏の君より少し年嵩でいらっしゃるのに、婿君があまりに若々しいのが、御自分と不似合いで恥ずかしく、気が引けるようにお感じになります。」