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「六条を好きではない」と言いながら、思いがけず長文になってしまったことに、我ながら驚いています。
六条の心に添いながら書いていくとき、私にとっては共感できない部分が多々あるのですが、六条という女人が自分の「思い」にとても正直であり、良くも悪しくもこれほどまでに人の心を動かす力があるのだ、ということを実感しました。
これは取りも直さず作者が力と情熱を込めて書き上げた証拠ではないか、と私は思うのです。
上品で身分も高く、教養もあり好き趣味人でもある六条御息所というパーソナリティーに、その設定とは正反対の嫉妬・執念深さという、愛欲にかかわる業の深さを与えたところに「物語」の面白みがあり、作者の筆力の凄みがあるように思います。
「紫の上」の思いには矛盾がなく、私はすんなり気持ちを理解し共感することができました。しかし六条においては、その自己矛盾とも思える性格や行動を捉えることに戸惑いを覚え、幾たびも悩むことになりました。
今振り返って考えると、その「割り切れなさ」が六条の持つ愛欲の業なのかもしれません。