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それからほどなく、若君が無事お生まれになりました。どなたもどなたもお喜びでいらっしゃいますが、姫君のご容態はよくならないままです。
「若君の御めみの美しさなどの、春宮に、いみじう似たてまつり給へるを、見たてまつり給ひても、まづ、こひしう思ひ出でられさせ給ふに」
源氏の大将は、若君の御目元の美しさが東宮にたいそうよく似ていらっしゃることから、急に恋しく思い出されまして、参内しようとなさいます。
ここで源氏が「こひしう」思ったのは、東宮にではなく、東宮の御母・藤壺中宮に対してではないかと、私は思うのです。
「内裏にも久しく参っておりませんでしたから、気がかりですので、今日こそは参内しようと思いますが、もう少しお傍に近いところであなたとお話したいものです。このような物越しでは、あまりにも隔てがあるようではありませんか」などと、うらみ事を申し上げますと、女房も「ほんに、ご病気でおやつれとはいえ、お子様もお生まれになって、ただ体裁を取り繕うだけの御仲ではございませんでしょうに」と、葵の上のお近くに源氏の大将をお入れします。