私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

August 9, 2008
XML

 葵の上は時々ご返事などなさるのですが、まだ弱々しげです。一時は危篤状態だったことを思いますと、源氏の君にとってはまるで夢のようではあるのですが、また一方では六条御息所のおん物の怪を見てしまったものですから、憂鬱になってしまいます。それでもお薬湯をおすすめするご様子は、お傍に仕える女房が見ても夫として甲斐甲斐しいお振る舞いでいらっしゃいます。

 いと、をかしげなる人の、いたう弱り、そこなはれて、あるかなきかの気色にて、臥し給へるさま、いと、らうたげに、心苦しげなり。御髪の、乱れたるすぢもなく、はらはらとかゝれる枕の程、ありがたきまで見ゆれば、「としごろ、何事ありて、思ひつらむ」とあやしきまで、うちまもられ給ふ。

 たいそううつくしい人がひどく衰弱なさり、正気を失ってあるかなきかの状態にあって、病床に臥していらっしゃるのは、とても可憐でいじらしいのです。御髪なども乱れることなく、はらはらと枕にかかっているのをご覧になって「今までどうして、この人のことを不足に思っていたのであろう」と、不思議な思いで葵の上を見つめられるのでした。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 9, 2017 08:03:09 PM
[源氏物語の女性たち] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: