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四月に若宮は、母・藤壷の宮とともに内裏にお入りになります。お顔は、あきれるほど源氏の中将に似ていらっしゃるのですが、こんな重大な秘密など帝はご存じありませんから、「美しさでは並ぶもののない者同士は、ほんとうに似通っているのですね」と、限りなくご寵愛になるのですが、それにつけても藤壷の宮は、源氏に生き写しであることに、お胸の休まる暇がありません。
「御子たちあまたあれど、そこをのみなむ、かゝる程より、あけくれ見し。されば、思ひわたさるゝにやあらん、いとよくこそ、おぼえたれ。いと、小さき程は、みな、かくのみあるわざにやあらん。」
御子たちはあまたあるけれども、小さな時から明け暮れ見ていたのは源氏の中将だけであった。そのせいであろうか、源氏の幼顔によく似ているように思われる。小さなころはみな同じように見えるのであろうか、と帝が仰せなので、源氏の中将は心の痛みにはっと顔色が変わる心地がします。
藤壷の宮は、「わりなく、かたはらいたきに、汗も流れてぞおはしける」どうにもいたたまれず、冷や汗も流れるほどなのでした。