私訳・源氏物語

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March 2, 2010
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カテゴリ: 源氏物語

 粗末とはいえさすがに遣戸口は洒落ています。
そこに黄色の正絹の単袴を長く着た可愛らしい童が出てきまして、こちらへ手招きします。

「この上に置いて差し上げなさいまし。枝も茎も風情のない花ですから」

 と、たいそう深く香を焚きしめた白い扇を差し出しました。

ちょうど門を開けて出てきた惟光の朝臣から、源氏の君に差し上げます。

「鍵を置き忘れまして、探しておりました。
このあたりには御身分を存じ上げるような人もおりませぬが、
お見苦しい大路にお待たせ申し上げまして」

と、畏まってお詫び申し上げます。

 車を引き入れましたので、お降りになります。

ちょうど惟光の兄の阿闍梨、婿の三河の守、むすめなどが集まっておりますところに
源氏の君がおわしましたので、光栄に思い畏まっているのです。

 乳母の尼君も起き上がりまして、

「この身は惜しくはありませんが、受戒いたしますと今までのように御前にお仕えして、
お目にかかれなくなります事だけが口惜しく、それで出家を決めかねておりました。



このようにお見舞いいただきお姿を拝見しましたからには、
阿弥陀仏のお迎えも心清らにして待つことができましょう」

と申し上げては、さめざめと泣くのでした。






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最終更新日  March 7, 2017 07:31:55 PM
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