私訳・源氏物語

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March 1, 2010
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カテゴリ: 源氏物語

御車もたいそう目立たぬようにやつしておいでですし、
先払いもお連れではありませんので、
ご自分の素生など分かるまいと気をお許しになって、
御車の物見窓から顔を差し出して覗いていらっしゃいます。

門は蔀のようになっていて下から押し上げるのですが、
覗くほどの奥行きがなくみすぼらしい住まいなのです。

源氏の君は哀れにお思いでしたが、
この世が仮の住まいであれば、玉楼であろうと同じことだとお思いになるのでした。

 板塀のような粗末なものに、たいそう青々とした葛が気持ちよさそうに這いかかって、
白い花がにっこり笑うように咲いています。

 源氏の君が「をちかた人に 物申す」と独り言をおっしゃいますと、御隋身が膝をついて、

「かの白く咲いておりますのは、夕顔と申します。
花の名は人のようですが、このように卑しい垣根などに咲くのでございます」

本当にその通り、ずいぶん小さい家がひしめき、むさ苦しいあたりで、
あっちもこっちもよろけたように傾いた軒先のつまなどに、這いまつわっているのです。

「立派な庭には咲かないで、こんな賤しい庭に咲くとは、気の毒な運命の花だね。
一房折りて参れ」

 源氏の君が仰せになりますので、御隋人は、
他人の家なのですが門に入って花を折ります。






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最終更新日  March 7, 2017 07:32:17 PM
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