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夕顔の巻には、有名な「物の怪」が登場します。
原文にはその正体が誰であるとは書かれていませんが、源氏自身が
「こんなふうに女を連れ出すなんて、六条あたりの人は
どんなに思い乱れておいでのことか。恨まれても当然だ」
と、内心で六条御息所に後ろめたさを感じています。
そしてその夜うつくしい女の夢を見るので、
読者には六条その人と容易に想像がつくようになっています。
源氏は、六条の深情けを普段から鬱陶しく思っているのですが、
前の東宮妃という高い身分ゆえ、単なる浮気相手という軽々しい扱いができません。
物の怪となった六条は言います。
「私があなたさまをこれほど深く愛しているのに、私の事など露ほども思ってくださらず、
こんな何の取柄もない女にうつつをぬかすなんて、私の立つ瀬がないじゃありませんか」
好きな男に恨みごとを言うくらい、女としてみじめなことはないはずだと思うのですが、
それほどまでして訴えるところに女の凄みと本音を感じて、たじたじとしてしまいます。
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