PR
カレンダー
キーワードサーチ
秋の夕べは常にも増して藤壺の宮への思いがつのり、
宮とご縁続きの姫をも求めたい御心が勝るようです。
北山で尼君が「消えむ空なき」と詠まれた夕べをお思い出しになられて
姫を恋しくも思い、また、見たならばがっかりするかもしれないと、
さすがに不安な気持ちにおなりなのです。
「手に摘みて いつしかも見む紫の 根にかよひける 野辺の若草
(いつか野辺でちらと見かけた若草を我が手で摘んで、早く見たいものだ。
恋しい藤壺の宮と縁続きの若草を)
十月には朱雀院の御幸が予定されていました。
舞楽にふさわしい人たちをお選びになりますので、
親王たちや大臣をはじめとして、それぞれの練習に余念がありません。
源氏の君も久しく北山の山里人を訪問なさらなかったのですが、それをお思い出しになって、
わざわざ御文をお遣わしになりますと、僧都からのお返事だけがありました。