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西の対の姫の元には、しだいに女房たちが集まって参りました。
お遊び相手の童や稚児たちは、見た事もないほど華やかで当世風なご様子に
安心して遊ぶのでした。
姫君は源氏の君がいらっしゃらない寂しい夕暮れには、亡き尼君を慕い給いて
お泣きになるのですが、父宮のことは特にお思い出しになることがありません。
もともと父宮とは普段から親しく見慣れておいでではなく、別々に暮らしておいででしたから、
今ではただ源氏の君だけをたいそう慕い、いつもお傍を離れずにいらっしゃるのです。
お邸にお帰りになると真っ先にお出迎えし、嬉しそうにお話しをなさいます。
源氏の君の御懐に抱かれても、恥ずかしがりも嫌がりもなさいません。
そういう意味で、姫はたいそう愛らしい相手なのでした。
大人になって思慮分別がつき、嫉妬するなどして何かに付け面倒な夫婦関係になると、
『自分の気持ちとしては、違ってくる事があるかもしれぬ』と気兼ねされ、
女の方でも男を恨みがちになって、思いがけない離別などが起きて来るものなのですが、
姫は実に面白い遊び相手なのです。
『本当の娘であっても、これくらいの年齢になれば父親に心を許した振舞いや、
隔てなく起き臥しすることがなくなるのだが、これは全く風変わりな秘蔵っ子であることよ』
と、思っていらっしゃるようなのだとか。