PR
カレンダー
キーワードサーチ
紫の姫君が見て、たいそうお笑いになります。
「私がこんな醜い顔になったら、どうしましょう」
と仰せになると、
「いやでございます」
と、本当に染みつくのではないかと心配していらっしゃいます。
源氏の君は拭うふりをして、
「一向に白くならない。つまらないいたずらをしたものだ。帝がどうおっしゃるだろう」
とたいそう真面目におっしゃるのを、姫は『まあ、大変』とお思いになって、
寄り添って拭いて差し上げます。
「平仲のように、墨で黒くなさいますな。赤い方がまだ我慢できますから」
とお戯れになるご様子は、よくお似合いのお二方と見え給うのです。
春の日のたいそううららかな日で、開花が待ち遠しい中にも
梅のつぼみがふくらんで、まるで微笑んでいるような風情があります。
階隠の下の紅梅は特に早い時期に咲く花で、もう色づいていました。
「くれなゐの 花ぞあやなくうとまるゝ 梅のたち枝は なつかしけれど
(紅色の花というと、どうしてもあの姫の赤い鼻が思い出されて疎ましい。
梅の立ち枝は懐かしいのだけれど)
やれやれ」
と、ため息をおつきになります。
さてさて、これまでに登場した女人たちの行く末は、いったいどうなりますやら。