私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

September 9, 2011
XML
カテゴリ: 源氏物語

下向は九月の七日あたりですので、もう今日明日に迫っています。

御息所も気忙しいのですが、以前から「立ったままでも」と、
たびたび源氏の君から御文がありましたので、
『さあ、どうしたらいいものやら』とお迷いになるのです。

お逢いにならないのも、たいそう引っ込み思案なようですので
「物越しでの対面なら」と、ひそかに御来訪をお待ち申し上げています。

はるばる嵯峨野の野辺に分け入り給うと、もうそこはひどく物哀れな風景なのです。
秋の花はすでに萎れ、浅茅も枯れています。


その中にかすかな楽の音が野宮の方から絶え絶えに聞こえてくるのが
たいそう風流なのです。

親しい前駆の者を十数人、御随身はあまり仰々しくない姿にして、
いたくお忍びでいらっしゃるのですが、
源氏の君の格別気を配っていらっしゃる御よそおいがたいそうご立派ですので、
お供の好き者どもは嵯峨野という場所であるだけに、身に沁みて感じ入るのでした。

源氏の君ご自身も『今までどうしてここに来なかったのだろう』と、
来し方を悔しくお思いになります。

野宮は周囲を粗末な小柴で囲い、板葺きの家があちこちにあるという、
たいそう簡素な造りです。

黒木の鳥居などはさすがに神々しく見渡されて、
恋のためのお忍び歩きであるだけに憚られる上に、
神官たちがあちらこちらで咳払いなどしながら仲間同士で話している様子なども、
他とは違って見えます。

火焼屋
ここに物思いに沈みがちな御息所が月日を過ごし給うことをお思いになりますと、
たいそうお気の毒でお胸が詰まるのです。

にほんブログ村 本ブログ 古典文学へ にほんブログ村






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 6, 2017 05:43:59 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: