私訳・源氏物語

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November 11, 2011
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カテゴリ: 源氏物語

近頃は世の中が思うに任せず、不都合な事ばかりが多くなりますので、
強いて気にしないふうを装っていらっしゃるのですが、
次第に『今以上にひどい仕打を受けるかもしれぬ』と思うようになるのでした。

あの「わくらばに 問ふ人あらば須磨の浦に 藻塩垂れつつわぶと答えよ」
と詠んだ須磨という地では、『昔こそ人の住む家もあったけれど、
今では人里から離れすっかり荒れ果ててしまい、
漁師の住む家さえも稀だと聞いているが、人が多く落ち着かない住いは本意ではない。

さりとて都からあまりに遠ざかるというのも、残してきた女君達の事が気掛かりとなろうし』

と、みっともないほどお迷いになります。

様々な事、来し方行く末をお思い続けになりますと、悲しい事がたいそう多いのです。

厭わしいものとして思い捨てたはずの都なのですが、いざ離れるのだとお思いになると
たいそう捨て難い事が多く、中でも紫の姫君は、
明け暮れにつけ思い嘆いていらっしゃるご様子がひどくおいたわしいのです。

『一時別れたとしても、巡り巡って必ずや再会できよう』とお思いになっていらしても、
やはり一日二日離れるだけで『どうしていらっしゃるだろうか』と不安をお覚えになります。

女君も頼りなくもの寂しそうにばかりしていらっしゃいます。

何年と決まった期間のある旅でもありませんし、
たとえ再会する日を決めて別れていくとしても、
定めなき世ですから『ひょっとして、これが永久の別れへの門出かもしれぬ』と、
恐ろしくお思いになりますと、密かに『連れて行こうか』と思う事もおありなのです。

されど波風の他には何もない恐ろしい海辺に、
可憐な姫を引き連れて行くのも無理ですから
『なまなか心配の種になろう』と、お思い返しになります。

女君は『たとえ辛く苦しい旅路ではあっても、源氏の君とご一緒であるならば』
と、同行の意思をほのめかしては、諦めきれないのでした。






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最終更新日  March 6, 2017 11:37:52 AM
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