私訳・源氏物語

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November 12, 2011
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カテゴリ: 源氏物語

お通いになる事こそ稀なのですが、頼りなく哀れなご様子でいらっしゃるあの花散里も、
源氏の君のご援助で暮らしていらっしゃいますので、
都をお離れになる事をたいそう悲しんでいらっしゃいます。

それも理なのです。軽い気持ちでほんの少しお逢いになり、
お通いになった女君たちも、人知れず胸を痛めていらっしゃる方々が多いのでした。

入道なされた藤壺の宮からも、『御文を差し上げますれば、どのように取り沙汰されよう』
と、ご自身の御ために慎んではいらっしゃるのですが、
人目を忍んで源氏の君へはいつも御消息文があります。

源氏の君は
『昔、宮がこんなふうに私をお思いくださって、
ご情愛をもお示しくださったならどんなに嬉しかったものを』
と、お思い出しになるのですが、
『それもこれも、心の限りを尽くすべき宿縁だったのだな』と、辛いお気持ちになります。

三月二十日過ぎあたりに、都をお離れになるのでした。

皆には何もお知らせにならず、
ただお傍近くで使い慣れた者を七・八人ばかりお供にして、
小人数で目立たぬようにお立ち出でになります。

しかるべき方々には御文だけを、格別というほどでない女君にさえも、
ご情愛が偲ばれるように書き尽していらっしゃいましたので、
さぞや見どころもあろうかと思われるのですが、
出立の折の気持ちに紛れて聞かず仕舞いになってしまいました。






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最終更新日  March 6, 2017 11:37:31 AM
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