私訳・源氏物語

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March 10, 2012
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カテゴリ: 源氏物語

都への帰途におつきになった暁は、岡辺の家を夜更けにお立ち出でになります。

都からの御迎えの人々が騒がしくて気忙しいのですが、
人のいない間を見計らって娘に、

「うち捨てゝ 立つもかなしき浦波の 名残いかにと 思ひやるかな

(あなたをうち捨てるようにして明石の浦を出立するのが、とても哀しいのです。
あなたがどんなに悲嘆にくれることかと思うと、後ろ髪を引かれる思いがします)」

と、御文をお遣りになります。娘からの御返事は、

「年経つる 苫屋も荒れてうき波の かへるかたにや 身をたぐへまし

(年月が経てば、この苫屋も荒れ果ててしまうことでございましょう。
そのような憂き目を見るのなら、波に任せて海に身を投じてしまいとうございます)」

とあります。その時の気持ちのまま詠んだ歌をご覧になると、
悲しさを堪えてはいらっしゃるのですが、ほろほろと涙がこぼれてしまうのでした。

 事情を知らぬ人たちは、

『このような侘しい御住いであっても、何年かを住み馴れなさったのだ。
それを今は限りとお思いになれば、涙が落ちることもあろう』

と思うのです。

しかし良清などは『並々ならぬご執心よ』と、苦々しく思います。

供人たちは、帰京の嬉しさにつけても、

「今日を限りにこの浜辺と別れるのは、まことに名残り惜しいことだ」

と感慨深く、それぞれ涙ながらに詠み合った歌もあったようですが、
従者の歌など書き記す必要などありましょうや。






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最終更新日  March 5, 2017 10:19:18 PM
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