私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

October 11, 2012
XML
カテゴリ: 源氏物語

年が改まり、藤壺の宮の一周忌も過ぎました。

喪服の色も改まり、衣更えの季節ということもあって華やかなのですが、
それにもまして賀茂の祭りの頃になると空の気色が気持よく、
朝顔の姫宮は亡き父・桃園式部卿の宮を偲び、所在なくお庭を眺めていらっしゃいます。

御前の桂の下風がゆかしいにつけても、若い女房たちは
姫宮が斎院でいらした頃のことを思い出していますと、
ちょうど折よく源氏の大殿(おおいとの)より、

「今年の御禊の日は、のどかにお過ごしかと存じますが」

と御消息文が届きました。そして、

「御禊の今日は、

かけきやは 川瀬の波もたちかへり 君が御禊の ふぢのやつれを

(あなたさまが賀茂の斎院となられたときは、父宮が薨去なすって喪に服すことなど、
思いもかけないことでございました)」

と、紫の紙に、恋文ではなく普通の書状のように書いて、藤の花につけてあります。
折も折でしたので、朝顔の姫宮はお返事をなさいます。

「ふぢ衣 着しは昨日と思ふまに 今日はみそぎの 瀬にかはる世を

(父宮の薨去で喪服を着ましたのは昨日とばかり思っておりましたが、
今日はもう除服のみそぎをする日になってしまいました。
時の移り変わりは、速いものでございます)

はかなく」

とだけ書いてありますのを、いつものようにじっと見ていらっしゃいます。

除服の際にも女房の宣旨のもとに『朝顔の姫宮のおん為に』と、
置き所のないほどたくさんの御衣装をお贈りになります。朝顔の姫宮は

「まるで深い関係があるようで、何だかとてもみっともないわ」

とおっしゃるのですが、

『気を引くような懸想文などがこの御衣装に添えられてあったなら、
何とかしてお召料をお返しもしようけれど、
今までも表向きのお見舞いとしてはいつも差し上げてきたのですもの。
真面目な御文に対して、どういう口実でお返ししたらいいのかしら』

と、宣旨は困っているようなのです。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  October 11, 2012 03:16:40 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: