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内大臣は葵の上の弟であるから、
光源氏とは義理の兄弟(源氏が兄・内大臣が弟)になる。
父は左大臣(後に太政大臣)であり、母は桐壺帝の妹宮なので、
源氏とはいとこ関係にある。
二人は若い頃からライバル意識を持って育つが仲が良く、
源氏が須磨に蟄居している時には、
世間体をものともせず会いに来る豪胆なところがあって好ましい。
この二人は何かにつけて対象的だ。
光源氏には長男・夕霧(源中将)、冷泉帝、明石の姫君の三人しかお子がいない。
秋好中宮が内大臣家の弘徽殿女御を抑えて立后したが、明石の姫はまだまだ幼い。
「内の大臣は、御子ども腹ゝいと多かるに......女はあまたもおはせぬを、
女御もかく思しゝことの とゞこほり給ひ 姫君も かく こと違ふさまにてものし給へば
いと口惜しとおぼす」(蛍)
(内大臣には妻妾腹に多くの子息がいてそれぞれに出世しているが、娘が少ない。
それなのに出世頭で自慢の娘・弘徽殿女御の立后は思い通りに進まず、
入内を目論んでいた雲井の雁は源氏の息子・夕霧と恋仲になってしまったので
帝に差し上げることができず、何とも残念でたまらない)
せっかく長男・柏木の中将が見つけ出した近江の姫は早口で、
その上言う事なす事品がない。
「三十文字あまり 本末(もとすえ)あはぬ歌、くち疾くうち続けなどし給う」
歌を即座に詠むのはいいとしても、惜しい事に上の句と下の句の辻褄が合わない。
「草わかみ 常陸の浦のいかゞ崎 いかであひみむ 田子の浦波
(私は賤しい田子でございますが、何とかして女御様にお目にかかりとう存じます。
常陸の浦は、いかがでございましょうか)
ここに出て来る地名は「常陸」「いかゞ崎」「田子の浦」と、
知っている歌枕を思い切り並べたのだが、
常陸は東国でいかが崎とも田子の浦とも離れている。
つまり「本末あはぬ歌」なのだが「お目にかかりとう存じますが、いかがでございましょう」
と言いたくて「いかが崎」を、自分を卑下して「田子の浦」を、
お伺いもせず日が経ってしまったので「常陸」を入れたにすぎない。
いってみれば駄洒落のオンパレードということになる。
これではさすがの弘徽殿女御に呆れられるのも無理はない。
内大臣も娘が少ないのに「どいつもこいつも、困ったもんだ」と頭を悩まし、
「こんな娘を見つけ出しやがって」と、柏木に八つ当たりしている。
この人は雲井の雁の恋愛事件でも母の大宮に文句を言っているから、
いつも人のせいにする困ったお人のようだ。
柏木は、後に源氏に降嫁する朱雀院の女三宮に横恋慕し子を産ませたくせに、
源氏の嫌味に堪えかねて病死するような軟弱者で、
残念ながら父親の強引な性格を受け継がなかったらしい。
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