私訳・源氏物語

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October 9, 2016
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カテゴリ: 源氏物語
『堅物』という世の評判を取り、利口ぶっていらっしゃる大将は、
一条におわす女二宮のご様子を『やはり理想的な方でいらした』と心に残り、
表面では友情に篤いように見せながら、たいそうねんごろに訪問なさいます。

とはいえ下心では『このまま引きさがるものか』
という思いが日ごとに募って参ります。母・御息所も、

「ほんに、ありがたいお心持ちでございます」

と思っておいでで、
ますます寂しくなりゆく徒然には絶えず訪問なさいますので
慰められることが多いのでした。

大将は初めから懸想じみた態度でのご訪問はなさいませんでしたので、
『以前と打って変わってなまめかしい素振りをするのもきまりが悪い。
ただ、宮さまに私の深い情愛のほどを分かっていただき、
そうして自然に打ち解けてくださるようにならないものか』

と思いながら、お世話するべき機会にはご様子を伺っているのでした。
しかし宮ご自身から直接お話しなさることは全くありません。

『どのような機会をとらえたら、我が心に思うことを申し上げて、
宮さまにお近づきになれようか』

と考え続けて過ごすうち、宮の母・御息所が物の怪にひどくお悩みになられて、
小野というあたりにお持ちの山荘にお出ましになりました。

以前から帰依しておられるご祈祷の僧は、物の怪などを調伏した律師なのですが、
『比叡山から里には下りない』と仏に誓いましたので、
ふもとに近い小野に請い招いたのでした。

大将殿は、御車をはじめとして前駆のお供などまで、
みな用意なさいましたけれども、
故・衛門督の兄弟たちは繁忙を極める各自の日々の務めに取り紛れて、
一条宮邸の事などはお気づきにもなりません。

弟・辨の君は、女二宮を思う気持ちがなきにしもあらずで、
気色ありげに言い寄るのでしたが、殊の外つれないおもてなしでしたので、
強いてお通いにはなりませんでした。

ところが大将の君はたいそううまい具合にさりげなく
取り入っていらっしゃるのでした。





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最終更新日  October 9, 2016 09:27:05 PM
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