私訳・源氏物語

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March 29, 2019
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カテゴリ: 源氏物語
薫中将は帰京なすったあとも老女房の話した事が思い出されます。

姫君達は思ったよりずっと上品で、おっとりとして優雅であった気配に
『現世を思い離れることは難しいものだ』と心弱さを思い知られるのでした。

そうして姫君達におん文をお上げになります。

懸想文のようではなく、厚手の白い色紙に、
よく選んだ筆で墨の濃淡も見所あるようにお書きになります。

「出し抜けに物申しますのは失礼になるかと存じまして
差し控えておりましたが、まだ言い足りないこともたくさんございます。

昨日も申しましたように、これからは御簾の前に気兼ねなく出られますよう、
お許しいただきたいものでございます。

父宮さまがお帰りになられましたら、
改めてお伺いしまして心の憂さを晴らしとう存じます」

と、たいそうすっきりとお書きになりました。右近の将監をお遣いにして、

「かの老女房を訪ねて、この文を渡しなさい」

と仰せになります。

宿直人が寒そうな格好でうろうろしていましたので可哀そうにお思いになり、
大きな折箱にたくさんの料理を入れてお上げになります。

その翌日には八宮がこもっておいでになる御寺にもお贈りになります。

『この嵐では山籠りの僧どもがどんなに心細く辛い思いをしていることか。

宮は僧たちに布施を贈らなくてはならぬであろうし』

とお思いになって、絹、綿などをたくさんお上げになります。

ちょうど八宮が山寺を出立なさる日の朝に届きましたので、
お勤めになった僧たちに綿衣、袈裟、衣など揃えて一領ずつ、
いる限りの大徳たちにお贈りになります。

一方、山荘ではあの宿直人が、
薫中将がお脱ぎ捨てになった艶にいい香りのする狩衣や
なよなよとした白綾の御衣を着ているのですが、
身分までは代えられませんので、
似つかわしからぬ袖の香を人ごとに咎められたり褒められたりして
窮屈な思いをしていました。

高貴な香りのせいで気楽に振る舞うことができませんので、
迷惑に思うのですが、洗ってもどうにもならず持て余しているのでした。





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最終更新日  March 29, 2019 09:19:23 PM
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