私訳・源氏物語

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March 30, 2019
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カテゴリ: 源氏物語
薫中将は大君からのお返事をたいそう好ましく、
おうようでいらっしゃると、面白くご覧になります。

女房たちが宮に「これこれのお文がございました」とお目にかけますと、

「いやいや、懸想文のお扱いをするのは反って失礼にあたるでしょう。

世間の若い人と違って真面目な御気性でいらっしゃるからね。

私亡き後のお世話についてそれとなく頼んでおきましたから、
そのおつもりなのでしょう」

と仰せになります。

八宮ご自身からも、参籠後の贈り物へのお礼がありましたので、
薫中将は宇治に行きたいとお思いになります。

それにしても匂宮が、

「宇治山の隠れたところに住む女が、実際に逢って見勝りするようだったら、
さぞ心惹かれるでしょうな」

と、憧れていらっしゃいますので、

『宇治の姫君のことをお話し申して、好奇心を掻き立てて差し上げよう』

とお思いになって、のどやかな夕暮れに参上なさいます。

いつものようにあれこれ世間話をなさるついでに、
宇治の八宮のことをお話しになります。

先日見た暁の合奏や招月の内容などをくわしく申し上げますと、
匂宮はお心惹かれたご様子ですので『思った通りだ』と、さらにお話を続けます。

「それで、その大君からあったというお返事は、
どうして私に見せてくれないのです。私なら見せましょうものを」

とお恨みになります。

「おやおや、あなたさまこそ
たくさんの女からの文をお持ちでいらっしゃるのに、
一度も拝見したことがありませんな。

宇治の姫君は私のような日陰者が独占できるような方々ではございませんので、
ぜひお目にかけたいのでございますが、
高貴なあなたさまがどうして山里まで行けましょうか。

私のように気軽な身分でこそ好色を楽しめる世の中でございます。

人に知られず、世間から隠れたところに佳人は多くいるようでございまして、
浮気相手で世話のし甲斐がある、もの思わし気な雰囲気の女が、
山里の隅に住んでいるものでございます。

今申しました宇治の姫君は、
世間離れした聖でさぞかし無風流な女に違いないと侮っておりまして、
今まで興味もなかったのでございますが、
先日の月夜に垣間見た姿が、私の見間違いでなければ、
非の打ちどころのないご器量なのでございます」

と、匂宮の好き心を煽るのでした。





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最終更新日  March 30, 2019 05:08:18 PM
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